博 士 ( 獣 医 学 ) WICKRAMASEKARA RAJAPAKSHAGE BANDULA KUMARA
学 位 論 文 題 名
A study on mitochondrial genome and the glycolysis pathway of diminazeneaceturate‑resistant Babes 幽 g :めS 〇.ぬメiS01ate ロ】レぁりり
(体外培養ジミナゼン耐性め6es ぬめs 伽株のミトコンドリア遺伝子 ならびに解糖系に関する研究)
学位論文内容の要旨
Babesia gibsoni は犬に感染する血液原虫であり、犬バベシア症を引き起こす。
犬バ ベシ ア症の治 療におい ては、しば しば再発 がみられ ることと 、ジミナ ゼン
・アセチ ュレート ( diminazene aceturate; DA) などの バベシア症治療薬に対す る薬 剤耐 性原虫の 出現が問 題となって いる。ト リパノソ ーマなど の他の血 液原 虫に おけ る薬剤耐 性に関す る研究にお いて、耐 性獲得に ミトコン ドリアや 解糖 系の変化 が関与し ているこ とが報告 されている が、 B . gibsoni の薬剤耐性獲得 機序 につ いては報 告がない 。そこで本 研究では 、 DA 耐性 B . gibsoni 株の耐性 機 序を解明 すること を目的と して、 in vitro にて作製したDA 耐性 B . gibsoni 株を用 い、 ミト コンドリ ア遺伝子 ならびに解 糖系に着 目して、 DA 耐性 B . gibsoni 株 に ついて分 析を行い 、野生株 と比較検 討した。
第 1 章では 、 DA 耐性 B . gibsoni 株のミト コンドリ ア遺伝子について解析した。
ま ず 、 DA 耐 性 の 性 質 の安 定 性を 観 察 する た めに 、 DA 耐 性 株 を4 週 間 、 DA を 含 まな い培 養液で培 養し、そ の後再度 200 ng/ml の DA を含む培 養液で2 週 間培養し た。 そ の 結果 、 この 株 は DA へ の 再暴 露 後に も DA 耐 性 株と 同 様 に増殖 したこと から 、 DA 耐 性 の性 質 は 失わ れ ず DA 耐 性株 に お いて 安 定し て 維 持され ることが 明ら か に なっ た 。こ の こ とか ら 、 DA 耐 性株 に お いて は 何ら か の遺 伝子が野 生
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一因としてエネルギー産生量が野生株よりも低下していると予測し、研究を行 った。本研究では培養にて増殖したDA 耐性株ならびに野生株のB .gibsoni を回 収して原虫溶解液を作製し、溶解液中の酵素活性ならびに代謝産物濃度を分光 光 度計を用い て測定した。その結果、予想とは逆にDA 耐性株の細胞内ATP 濃 度ならびにグルコース濃度は野生株よりも明らかに高いことが示された。いく っかの血液原虫における薬剤耐性に関する研究において、原虫が薬剤耐性の性 質を維持するためにより多くのエネルギーを利用していることが報告されて いることから、DA 耐性B .gibsoni 株においてもそのDA 耐性の性質を維持するた
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め に 、 よ り 多く の ATP 、 す な わ ち ェ ネ ル ギー を 必 要 と し てい る可 能性 や、 DA 耐性 株は 増殖 が低 下し ている こと から 、む しろ ATP の消費 が低 下し てい る可能 性 も 考 え ら れた 。 DA 耐 性 株 に お い て 細 胞 内 ATP 濃 度 が 高 い原 因を 解明 する た めに 、バ ベシ ア原 虫に おいて 最も 重要 なエ ネルギー産生の場として考えられて いる 解糖 系の 活性 にっ いて、 さら に検 討を 行った。まず、解糖系の律速酵素で あ る 乳 酸 デ ヒド ロ ゲ ナ ー ゼ 活性 と、 最終 代謝 産物 であ る乳酸 濃度 に変 化は な く 、 DA 耐 性 株の 解 糖 系 の 活 性は 変化 して いな いこ とが 示され た。 さら に、 ピ ルビ ン酸 キナ ーゼ 活性 と、TCA サ イク ルな どで も利 用され る重 要な 中間 代謝物 であ るピ ルビ ン酸 濃度 につい ても 変化 が無 かっ た。 さら に第 1 章に おい て、ミ ト コ ン ド リ アに 存 在 す る COXI 、 COXIII 、 およ びCYTb の 遺伝子 転写 量の 明ら か な 変 化 は 認 めら れ な か っ た こ と か ら 、 DA 耐 性 株 で は 細 胞内 ATP 濃 度が 上昇 し て い る が 解 糖系 や TCA サ イ ク ル な ど の 代 謝は 活 性 化 し て いな いこ とが 示唆 さ れた。
本研究では、ぢ. gibsoni のDA 耐性獲得において、ミトコンドリア遺伝子は直 接 的 に は 関 与し な い こ と が 示さ れた 。ま た、 DA 耐 性株 のエネ ルギ ー濃 度は 増 加し てい るに もか かわ らず、 解糖 系は 活性 化していないことも示された。今回 の 研 究 で は 、DA 耐 性 株 に お ける ミト コン ドリ ア等 の酵 素活性 の変 化は 検討 し ていないことから、今後はDA 耐性ぢ.gibsoni 株のミトコンドリアを中心として、
その 代謝 活性 の研 究を 行うこ とで 、ATP 濃 度が 上昇 してい る原 因が 明ら かにな ると 期待 され る。 これ らの研 究を 通じ て、 DA 耐性B .gibsoni 株の耐性機序が明 らかになるであろう。
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学位論文審査の要旨 主査 副査
副査 副査
教授 教授 教授 准教授
滝口 片倉 大橋 山崎
学 位 論 文 題 名
満喜 賢 和彦 真大
A study on mitochondrial genome and the glycolysis pathway of diminazeneaceturate ― resistant Babes 幽 g め S 〇 n/iS01atem ロ 加
( 体 外 培 養 ジ ミ ナ ゼ ン 耐 ´ 陸 ぬ 6es 幽 g め s 弸 株 の ミト コ ンド リ ア 遺伝 子 な ら び に 解 糖 系 に 関 す る 研 究 )
Babesia gibsoniが引 き起こす 犬バベシア症では 、ジミナゼン・アセ チュレート(diminazene aceturate; DA)な どの 治 療薬 に対 す る薬 剤耐 性 原虫 の出 現 が問 題と なってい る。トリパノソ ー マな どの 他 の血 液原 虫 にお ける 薬 剤耐 性に 関 する 研究 に おい て、 耐性獲得 にミトコンドリ ア や 解 糖 系 の 変 化 が 関 与 し て い る こ と が 報 告さ れ てい るが 、B gibsoniの薬 剤 耐性 獲得 機 序 に つ い て は 報 告 が な い 。 そ こ で 本 研 究 で は 、DA耐 性 丑gibsoni株 の 耐 性 機 序 を 解 明 す る こと を目 的 とし て、 ミ トコ ンド リ ア遺 伝子 なら びに解糖系に着目し て、DA耐性丑gibsoni株 について 加vitroに て分析を行い、野 生株と比較検討した 。
は じ め に 、DA耐 性Bgibsoni株 の ミ ト コ ン ド リ ア 遺 伝 子 に つ い て 解 析 し た。 ま ず、DA耐 性 の 性 質 の 安 定 性 を 観 察 す る た め に 、DA耐 性 株 を4週 間 、DAを 含 ま な い 培 養 液 で 培 養 し 、 そ の 後 再 度200 ng/mlのDAを 含 む 培 養 液 で2週 間 培 養 し た 。 そ の 結 果 、 こ の 株 はDAへ の 再 暴 露 後 に もDA耐 性 株 と 同 様 に 増 殖 し た こ と か ら 、DA耐 性 の 性 質 は 失 わ れ ずDA耐 性 株に おい て 安定 して 維 持さ れる こ とが 明ら か にな った 。 この こと から、DA耐性株において は 何 ら か の 遺 伝 子 が 変 化し てい る こと が疑 わ れた 。こ の ため 、DA耐 性獲 得に よ り変 化す る 遺 伝子の候補と して、シトクロー ムcオキシ ダーゼ・サブュニ ットI(C〇 M、シトクロー ムcオ キ シダ ーゼ ・ サブ ユニ ツ 卜m(a孤 刪 、お よび シト クロームb(Cy乃)のミトコ ンドリア遺伝子 について 解析を行った。丑び6sD厨か らミトコンドリアI)NAをク ローニングし、ミトコンドリア DNA上 に 存 在 す るC〇 灯 、CQ卿 、 お よ びCy乃 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た 。 そ れ ら の 塩 基 配 列 と 予 想 さ れ る アミ ノ酸 配 列をDA耐 性 株と 野生 株 との 間で 比 較し たが 、 明ら かな 差 は認めら れなかった。
続 い て 、DA耐 性 株 な ら び に 野 生 株 のBgfみ 舶 所 のC( 以7丶Ca刪 、 お よ びC灯b遺 伝 子 の 発現 量を 比 較し たと こ ろ、 明ら か な差 はな か った 。以 上 のこ とか ら 、DAはC〇 弧CQ卿、
お よ びCm遺 伝 子 の 塩 基 配 列 や 発 現 量 に 直 接 的 に 変 化 を 引 き 起 こ さ ず 、 ミト コ ンド リア 遺 伝 子 はBび 加D所 のDA耐 性 獲 得 に お い て 中 心 的 な 役 割 は 担 っ て い な い こ と が 明 ら か に な った。
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次 に 、DA耐 性 株 の エ ネ ル ギ ー 産 生 量 と エ ネ ル ギ ー 合 成 系 と し て の 解 糖 系 の 解 析 を 行 っ た 。 こ れ は 、 培 養 に お け るDA耐 性 株 の 原 虫 寄 生 率 が 野 生 株 に 比べ て 常に 低い こ とか ら、
DA耐 性 株 の 増 殖 カ は野 生 株よ りも 低 く、 その 一 因と して エ ネル ギー 産 生量 が野 生 株よ りも 低下 して い ると 予測 し 、研 究を 行 った 。本 研 究で はB. gibsoniの 酵素 活 性な らび に代謝 産 物 濃 度 を 分 光 光 度 計 を 用 い て 測 定 し た 。 そ の 結 果 、 予 想 と は 逆 にDA耐 性 株 の 細 胞 内ATP 濃度 なら び にグ ルコ ー ス濃 度は 野 生株 より も 明ら かに 高 いこ とが示され た。いくっかの血 液 原 虫 に お け る 薬 剤 耐 性 に 関 す る 研 究 に お い て 、 原 虫 が 薬 剤 耐 性の 性 質を 維持 す るた めに より多くのエネル ギーを利用している ことが報告されて いることから、DA耐性ぢ.gibsoni株に お い て も 、 そ のDA耐 性 の 性 質 を 維 持 す る ため によ り 多く のATP、す な わち エネ ル ギー を必 要 と し て い る 可 能 性 や 、DA耐 性 株 は 増 殖 が低 下し て いる こと か ら、 むし ろATPの 消費 が低 下し てい る 可能 性も 考 えら れた 。 さら に、 バ ベシ ア原 虫 にお いて最も重 要なエネルギー合 成 系 と し て 考 え ら れ てい る 解糖 系の 活 性に つい て 検討 を行 っ た。 解糖 系 の律 速酵 素 であ る乳 酸デ ヒド ロ ゲナ ーゼ 活 性と 、代 謝 産物 であ る 乳酸 濃度 に 変化 はなく、DA而中陸株の解糖系 の 活性 は変 化 して いな い こと が示 さ れた 。ま た 、ピ ルビ ン 酸キ ナーゼ活性 と、重要な代謝産 物 であ るピ ル ビン 酸濃 度についても変 化が無かった。上 述のとおり、ミトコ ンドリアに存在す る COXI、COXIII.お よ びCYTb遺 伝 子 の 発 現 量の 明 らか な変 化 は認 めら れ なか った こ とか ら、
DA耐 陸 株 で は 細 胞 内ATP濃 度 が 上 昇 し て い る が 解 糖 系 やTCAサ イ ク ル な ど の 代 謝 は 活 性化していないこ とが示唆された。
本 研 究 に よ り 、B gibsoniのDA耐 性 獲 得 にお い て、 ミト コ ンド リア 遺 伝子 は直 接 的に は関 与し ない こ とが 明ら か にな った 。 また 、DA耐 性株 のエ ネ ルギ ー濃度は増 加しているにもか か わら ず、 解 糖系 は活 性 化し てい な いこ とも 示 され た。 こ れら の知 見 は、 今後B gibsoniに お け るDA耐 性 機 序 を 解明 す る上 で重 要 であ ると 考 えら れる 。 よっ て、 審 査員 一同 は 、上 記博 士 論 文 提 出 者 ヴ ィ ッ ク ラ マ セ カ ラ ラ ジ ャ バ シ ヤ ゲ イ バ ン デ ュ ー ラ ク マ ラ 氏 の 博 士 論 文 は 、 北 海 道 大 学 大 学 院 獣 医 学 研 究 科 規 程 第6条 の 規 定 に よ る 研 究 科 の 行 う 博 士 論 文 の 審 査等に合格と認め た。
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