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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 小 西 香 苗

     学 位論 文題名

    Prenatal exposure to PCDDs/PCDFs and dioxin ― like PCBs in relation to birth weight

(ヒト胎児期におけるPCB .ダイオキシン類曝露が出生時体重に及ぼす影響)

学位論文内容の要旨

     【背景および目的】

   ダ イオキシ ン類な どの一般生活環境に韜けるヒトへの影響は1980 年代後半から報告さ れているが、特に経胎盤や経母乳による胎児や乳児への曝露影響が懸念されている。疫学 的 にはPCB 類やDDT の胎児 期曝露 による早 産や SGA のりスク上昇や、出生時体重や身長の 低下などが報告された。しかしダイオキシン類の影響について報告したものはまだ限定的 で 、 Vartiainen らは フィンランドで母乳中のPCDDs と PCDFs 濃度が出生時体重に弱い負の 影響を与え、その関連は男児において顕著に認められたと報告している。しかし、これま での研究は横断研究で母乳中ダイオキシン類濃度を胎児期曝露として代用していた。本研 究ではダイオキシン類およぴ PCB 類の胎児期曝露が出生時体重に及ばす影響を明らかにす ることを目的として、妊娠期から立ち上げたコホート研究にて前向きに検討を行った。ま た、ダイオキシン類の胎児期曝露をより正確に評価できる母体血を曝露指標として異性体 レ ベ ル で 詳 細 に 検 討 し 、 さ ら に 影 響 の 性 差 も 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。      【対象および方法】

   本研究は、環境化学物質によるヒト次世代影響の解明と予防医学的リスク評価を目的と し た前向き コホー ト研究「環境と子どもの健康に関する北海道研究 (Hokkaido Study on Environment and Children sHealth) 」の一部である。研究対象者は、2002 年7 月〜2005 年 10 月に、札 幌市内 の一般病院産科を受診した妊娠23 〜35 週の妊婦で、同意を得た母児 514 組である。妊婦およびそのパートナーに対して、既往歴、教育歴、経済状況、生活環 境、喫煙習慣、食品摂取状況などに関する自記式質問紙調査を実施した。また、妊娠中期

〜後期および出産直後に母親から採血を行い、医療診療録から妊娠週数、新生児性別、出 生 時 体 格 、 出 産 歴 な ど を 含 む 母 親 と 児 の 妊 娠 ・ 出 産 時 情 報 を 収 集 し た 。    曝露評価として、PCB .ダイオキシン類濃度を、高分解能ガスクロマトグラフイー・高分 解能マススペクトロメトリー (HRGC/HRMS) で測定した。PCB ・ダイオキシン類の異性体(29 種 類 ) の 測 定 は 、 測 定 十 分 量 の 母 体 血 の あ っ た 426 検 体 に つ い て 行 っ た 。    流産・死産・早期脱落者(10 名)およぴ妊娠高血圧症候群・糖尿病・新生児心不全・双 胎妊娠・早産児(43 名)を除いた 461 名のうち、母体血中PCB .ダイオキシン類濃度が得ら れ た 398 名 を 最終 解 析 対象 者 と した 。 異 常値 を示した 1 名は 除いた 。統計解 析はSPSS Ver13.0 を用いて、出生時体重と対象者の属性および母体血中PCB .ダイオキシン類濃度と の関連を検討した。本研究は、北海道大学大学院医学研究科の医の倫理委員会の承認を得 た。

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    【結果 】

  対 象 者 の 基 本 属 性 に つ い て 、0検 定 、ANOVA、 ス ピ ア マ ン の 相 関 係 数 に よ り 出 生 時 体 重 と の関連 を検討 した結 果、新 生児 性別(p〈0.05)、妊 娠週数 (p〈0.01)、出生時身長(p〈0,05)、

出生時 頭囲(p〈O.01)、母 身長(p〈O.05)、母非妊娠時体重(p<0.01)で有意な関連がみられた。

母 体 血 中PCB .ダ イ オ キ シ ン 類TEQ濃 度(WHOー1998)の 平 均 値 は 、Total TEQ値 が17.5 (3.4―16.5) TEQ pg/g lipidで あった 。

  母 体 血 中PCB. ダ イ オ キ シ ン 類 濃 度 と 出 生 時 体 重 と の 関 連 を 、 母 親 の 出 産 歴 、 出 産 時 年 齢 、 身 長 、 非 妊 娠 時 体 重 、 妊 娠 中 の 喫 煙 習 慣 、 近 海 魚 摂 取 、 採 血 時 期 、 お よ び 妊 娠 週 数 、 新 生 児 性 別 で 調 整 し た 重 回 帰 分 析 で 解 析 し た と こ ろ 、10倍Total PCDFs濃 度 が 上 昇 す る と 出生 時 体 重 が 有意 に 減 少 し た( ロ ニ ニ ―273g,95%CI:ー506―−40)。 同様にTEQレ ベル では、Total PCDDs TEQ( ロ ー232g,95%CI: ―417 ‑→46)、Total PCDFs TEQ(B=―259g,95%C工 : −446―

―72)、Total PCDDs/PCDFs TEQ(ロ ―256g,95%CI:−449ー‑64)、Total TEQ(ロニニ―221g,950CI:

―399 ‑―42)に お い て 、 出 生 時 体 重 が 有 意 に 減 少 し た が 、 新 生 児性 別 で 層 別 して 解 析 す る と 、 男 児 に お い て の み 負 の 関 連 が 認 め ら れ 、 女 児 で は 有 意 な 関 連 が み ら れ な か っ た 。 次 に 、 異 性 体 レ ベ ル で 検 討 す る と 、2,3,4,7,8‑PeCDF(B=ー225g,95%CI:‑387ー ―62)に お いて の み 出生時 体重に 有意な 減少が 認め られた 。

    【考察 】

  動 物 実 験 か ら ダ イ オ キ シ ン 類 な ど の 環 境 化 学 物 質 に よ る 次 世 代 影 響 と し て 、 生 殖 毒 性 、 催 奇 形 性 、 胎 児 発 育 遅 延 、 甲 状 腺 機 能 障 害 、 免 疫 機 能 低 下 、 神 経 発 達 障 害 な ど が 懸 念 さ れ て い る が 、 ヒ ト の 曝 露 評 価 に 基 づ く デ ー タ は 極 め て 少 な い 。 本 研 究 は 、 母 体 血 中 ダ イ オ キ シ ン 類 濃 度 を 胎 内 曝 露 指 標 と し て 出 生 時 体 重 に 及 ば す 負 の 影 響 を 、 毒 性 メ カ ニ ズ ム 解 明 や 公 衆 衛 生 学 的 予 防 の た め に 重 要 で あ る 異 性 体 レ ベ ル で 明 ら か に し た 初 め て の 報 告 で あ る 。 本 研 究 のPCB. ダ イ オ キ シ ン 類 濃 度(17.5TEQ pg/g lipid)は 、 福 岡 県 の 女 性(22.1TEQ pg/g lipid)や オ ラ ン ダ の 女 性(28.4 TEQ pg/g lipid)よ り も 低 く 、 台 湾 の 女 性(13.6 TEQ pg/g lipid)よ り も や や 高 い レ ベ ル で あ っ た 。 こ の よ う に 比 較 的 低 濃 度 曝 露 に も か か わ ら ず 、PCDDs TEQやPCDFs TEQに お い て 出 生 時 体 重 が 有 意 に 減 少 し て い た 。 こ の こ と は フ イ ン ラ ン ド の 研 究 で 母 乳 中PCDDs /PCDFs TEQ濃 度 と 負 の 相 関 関 係 が み ら れ た と の 報 告 と も 一 致 す る 。 異 性 体 レ ベ ル で の 検 討 で は 、 母 乳 中OCDD濃 度 に お い て の み 出 生 時 体 重 と 関 連 が み ら れ た と の 報 告(Tajimi,2005)が あ る の に 対 し て 、 本 研 究 で は2,3,4,7,8ーPeCDFに お い て の み 関 連 が み ら れ た 。 台 湾 油 症 児 の2,3,4,7,8―PeCDFを 含 むPentaCDF血 中 濃 度 は5倍 対 象 児 群 よ り 高 い こ と が 報 告 さ れ て お り(Guo,2004)、 さ ら に 油 症 患 者 の 血 中 総TEQ濃 度 の 70% を2,3,4,7,8―PeCDFが 占 め て い る と の 報 告 (Masuda,2001) も あ る 。 ま た 、 2,3,4,7,8―PeCDFが 胎盤に 特異的 に蓄 積する ことが 報告さ れてお り、2,3,4,7,8ーPeCDFが特 異 的 に 胎 盤 に 蓄 積 し て 胎 盤 機 能 を 阻 害 し 、 あ る い は 胎 児 に 直 接 的 に 移 行 し て 胎 児 発 育 に 負 の 影 響 を 与 え て い る 可 能 性 も 示 唆 さ れ た(Wang,2004)。 ま た 、 ダ イ オ キ シ ン 類 の 出 生 時 体 重 へ の 影 響 は 男 児 に お い て の み 有 意 に み ら れ 、 胎 児 期 に お い て 男 児 の 方 がPCDDsやPCDFs に よ り 高 い 感 受 性 を 示 す こ と が 示 唆 さ れ た 。PCB. ダ イ オ キ シ ン 類 曝 露 影 響 の 性 差 は 、 こ れ ま で 高 濃 度TCDD曝 露 で の 性 比 低 下 や 一 般 生 活 の 低 濃 度PCB類 曝 露 で の 幼 児 期 の 女 性 的 遊 ぴ 行 動 の 増 加 な ど が 報 告 さ れ て 韜 り 、 男 児 の よ り 高 い ダ イ オ キ シ ン 類 へ の 感 受 性 は 性 ホ ル モ ン等の 関与が 示唆さ れるが 、今 後さら に検討 が必要 であ る。

  本 研 究 は 、 ダ イ オ キ シ ン 類 の 異 性 体 レ ベ ル で 詳 細 に 検 討 を 行 い 、 よ り 大 き な サ ン プ ル サ イ ズ で 、 胎 児 期 曝 露 を 母 乳 よ り 正 確 に 評 価 で き る 母 体 血 に て 評 価 を 行 い 、 詳 細 な 交 絡 因 子 の 調 整 を 行 っ た 点 に お い て 、 こ れ ま で の 研 究 に 比 較 し て 結 果 の 信 頼 性 が 高 い と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

    Prenatal exposure to PCDDs/PCDFs

    and dioxin ― like.PCBs in relation to birth weight

(ヒト胎児期におけるPCB .ダイオキシン類曝露が出生時体重に及ぼす影響)

  一般生活環境におけるダイオキシン類の経胎盤や経母乳による胎児や乳児への次世代影 響が懸 念されて いる。 疫学的に はPCB類やDDTの胎児期曝露による早産やSGAのりスク上 昇や、出生時体重や身長の低下などが報告されているが、ダイオキシン類の影響について 報告したものはまだ限定的であることから、本研究ではダイオキシン類の胎児期曝露が出 生時体重に及ばす影響を明らかにすることを目的として、妊娠期から立ち上げたコホート 研究にて前向きに検討を行った。また、ダイオキシン類の胎児期曝露をより正確に評価で きる母体血を曝蕗指標として異性体レベルで詳細に検討し、さらに影響の性差も検討する ことを目的とした。研究対象者は妊娠23〜  35週の妊婦で同意を得た母児514組である。妊 婦およびそのパートナーに対して、既往歴、教育歴、経済状況、生活習慣などに関する自 記式質問紙調査を実施し、医療診療録から母親と児の妊娠・出産時情報を収集した。また、

妊娠中期〜後期および出産直後に母親から採血を行い、母体血中PCB.ダイオキシン類濃 度を29種 類の異 性体にっ き測定を 行った 。本研究で得られた母体血中PCB.ダイオキシ ン類濃度(17.5 TEQ pg/g lipid)は、世界的に見ても比較的低濃度の曝露レベルであった に も か か わら ず 、PCDDs TEQやPCDFs TEQに お いて10倍曝 露 レ ベル が 上 昇す る と 出 生時体重が有意に230〜250g減少していた。また、新生児性別で層別して解析を行うと、

男児においてのみ負の関連が認められ、女児では有意な関連がみられなかった。さらに異 性体レベルで検討を行うと、2,3,4,7,8‑PeCDFにおいてのみ出生時体重が有意に225g減 少する結果であった。2,3,4,7,8‑PeCDFが特異的に胎盤に蓄積して胎盤機能を阻害し、あ るいは 胎児に直 接的に移行して胎児発育に負の影響を与えている可能性も示唆された。

  発表後、副査の有賀教授より、高濃度曝蕗影響と低濃度曝露影響でのメカニズムの違い について、出生体重への影響についてのメカニズムについての質問があり、動物実験など から異なるメカニズムの存在が示唆されていること、甲状腺機能を介するメカニズム、Ah レセプターとエストロゲンレセプターとのシグナル経路の応答が.関係している可能性もあ る等の回答があった。異性体で有意差みられた2,3,4,7,8−PeCDにおいての影響の性差の質 問に対しては、男児・女児ともに有意差がみられたが、男児で影響が大きかったと回答し た。

  主査の水上教授より、先行研究において高濃度曝露で出生男女比が変わったには何故か、

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典 正

尚  

  玲

上 賀

水 有

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

有意差のみられた2,3,4,7,8―PeCDF異性体の濃度において、男児を出産した母親と女児を 出産した母親で、その濃度の違いはあったのかとの質問があった。これらに対し、今後検 討したいとの回答した。地域による曝露濃度の違いはどのように説明されるのかとの質問 に対して、日本における発生源の90%はごみの焼却に由来すると言われている。また、体 内曝露源の98%が食品由来で、日本人の場合はその70%ぐらいが魚摂取に由来すると回答 した。

  副査の岸教授より、甲状腺機能を介して体重が減少しているとの考察をされるのなら、

この対象者で出生体重が低い子どもの母親の甲状腺機能をみるべきではないかとの質問が あり、甲状腺機能の検討を行なっていなぃが今後、検討したいと回答した。また、ダイオ キ シン類 濃度が10倍上昇すれば出生体重が250g減少する結果であったが、同じコホート で 喫煙に 関する遺伝子多型の結果でも300g減少する報告があるが、喫煙とダイオキシン 類の相対的な影響の違いについての質問に対しては、今後の検討課題であると回答した。

  本論文は母体血中ダイオキシン類濃度を胎内曝露指標として出生時体重に及ばす負の影 響を、毒性メカニズム解明や公衆衛生学的観点から重要である異性体レベルで明らかにし た世界で初めての報告として高く評価され、今後更なるヒトにおけるダイオキシン類の次 世代影響解明への貢献が期待される。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院 課程における研鑽や取得単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な 資格を有するものと判定した。

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参照

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