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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) マ キ シ モ ラ リ ー ロ ベ ス カ セ レ ス

     学 位論 文 題名

    Water status of plants growlng

inSalineSOilSunderfoliarappliCationofglyCinebetaine      壬

   ( グリシンベ タイン葉面 散布と塩類 土壌に生育 する植物の 水分挙動)

学位論文内容の要旨

土壌への塩類集積は世界の半乾燥地で共通して見られる現象である。この塩類土壌地帯は 農地や草地として利用されている場合が多く、砂漠化現象とともに半乾燥地における地域 環境劣化の主な原因となっている。このような塩類土壌地帯には土壌中の高い塩濃度に適 応するための生理特性を獲得した植物が生育している。

  植物の耐塩生理特性には塩分が植物体内に吸収されるのを防ぐ、あるいは吸収された物 質の濃度を薄めるために水分を多く吸収するなど多様なメカニズムが存在する。耐塩性植 物が浸透圧調節物質を自らの体内に生成し体内水分の移動と利用を容易にすることも耐塩 生理特性のーっである。

  本研究で取り上げたグリシンベタインは浸透圧調飾物質のーっで、ビートや棉などに多 く含まれているベタインの一種である。ヒユやコンギクの仲間など塩類土壌地帯に生育す る塩生植物内に多く蓄積する。glycinebetaineは環境的に全くの無害で合成も可能のため、

農業分野では葉面施用により作物の増収をはかる試みがなされている。しかし、グリシン ベタインの施用により植物の水分生理がどのように変化するかを体系的に研究した例は極 め て少な く、Makelaら (1998)に よるト マトを供 試植物と した研究が見られるにすぎな い。

  そ こで 本 研 究 では 耐 塩 性が ほ と んど な い イン ゲ ン(PhaseoんswZ駟刪を供 試植物 と してグリシンベタインの葉面施用がインゲンの生長・光合成・蒸散量・気孔コンダクタン ス・植物水分含量・葉内金属イオン含量などインゲンの水分生理にかかわる諸要因におよ ばす影響を明らかにするとともに浸透圧調節物質が植物の耐塩性を増大させるメカニズム を明らかにすることを目的とする。

  実験は中国河北省南皮県にある中国科学院石家荘農業現代化研究所南皮生態実験站所属 試 験圃場 内の土壌 塩類集 積レベル が異なる2圃 場を使っ た野外実験(1998年、1999年の 4月〜5月) と北大農 学部附 属農場内のビニール温室内における土壌塩分をコントロール した精密実験(2000年6月〜9月)を組み合わせて行なった。

  圃 場実験は塩集積レベルが高い王寺区とやや高い南皮区の2区で行なった。インゲンは 播 種後15日 まで苗床 で育て その後それぞれの実験区に移植した。インゲンへのグリシン ベ タ イ ン施 用 は 濃 度10mMと30mMの 溶 液と 対 照 とし て グ リシン ベタイン を含ん でいな い 水を各 個体全部 の葉面 に噴霧し て行なっ た。施 用は1998年 には移植直後から3日間隔 で 、1999年に は気孔コ ンダク タンス測定後1週間後から3日間隔で行なった。供試個体数 は 各処理 とも45個体 である 。植物個体に対して行なった測定は気孔コンダクタンス、純 光合成速度、葉面積、葉内水分量である。

  温室内 精密実験 は2000年6月から9月に かけて 行なった 。供試 植物は十 分に水 分をあ

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たえた 苗床で10日間育て 、その 後面積1/2000aのプ ラスチック製ポットに移植した。ポ ット内 の土壌 としてマ ーミュ キュライトとピートモスを1:1で配合したもを用い、肥料 として 液肥(Hyponex,N‑P‑K,5‑10‑5)を 灌漑水と ともに7日間隔で施用した。土壌中の 塩分濃度は灌漑水中にNaClを混入し、その量を変えることによりO(対照)、30、50、100 mMの4段階に 分けた。 グリシ ンベタインの施用濃度は野外実験と同様に0(対照)、10、 30 mMの3段 階とし、 ポット へのNaCl施用 直前に 植物個体 全体に 噴霧し処 理した。 供試 個体は 各処理 に5個 体、合計60個体で ある。植 物体の 測定項目は気孔コンダクタンス、

金 属 含 量 、 純 光 合 成 速 度 、 葉 面 積 、 葉 内 水 分 量 、 蒸 発 散 量 で あ る 。   野外実験および温室内精密実験の結果、耐塩性が極めて低いとされるインゲンにおいて もグリシンベタイン溶液の葉面施用がインゲン体内水分状態の改善をもたらし、光合成速 度を増加させることが明らかとなった。この様な結果は耐塩性が比較的高いトマトやコム ギでは得られていたが、インゲンの様に耐塩性が最も低いとされる植物で確認されたのは 初めてである。

  また、グリシンベタインの施用濃度に上限があること:すなわち塩分ストレス環境下で 生育す るイン ゲンにた いして は10 mM濃 度の溶 液を施用 すると体内水分状態の改善をも たらす が、30 mMでは10 mMほど 効果が期 待でき なぃこと が明ら かとなっ た。さら に、

グリシンベタイン施用が効果をもたらす塩分ストレスには下限もあり、30 mM塩分ストレ ス(電 気伝導 度EC‑4 mS cm‑1相当)の塩分ストレスで生育するインゲンには効果が認め られな かった が50 mM (EC=6.6 mS cm‑1相当) の塩分ス トレスでは効果が明らかに認め られた 。塩分 ストレス が高す ぎても施用の効果は減少し100 mM塩分ストレスで生育した インゲンでは施用の効果はほとんど認められなかった。原因としては細胞質内のイオン濃 度が高すぎるかあるいは原形質分離を起こしていてグリシンベタインの浸透圧調節機能が 作用する余地がなかったためと考えられる。

  グリシンベタイン施用の効果は気孔コンダクタンスの増加、光合成速度の上昇、葉内水 分の増加、葉面積の増大、蒸散量の増加としてあらわれた。気孔コンダクタンスすなわち 気孔の開閉は孔辺細胞の膨圧によって制御されているが、その孔辺細胞の膨圧は葉内の金 属イオ ン濃度 に影響を 受ける 。NaCl処理により葉内の乾物重あたりのNa十濃度は増加の 傾向をしめしたが、その濃度はグリシンベタイン施用によって変化はしなかった。しかし、

葉内水 分がグ リシンベ タイン 施用により増加するため、葉内のNa十濃度は減少すること になり、気孔コンダクタンスの増加をもたらした。すなわち、グリシンベタイン施用が塩 ストレス下で生育するインゲンの気孔コンダクタンス増加に寄与するプロセスには根によ る水分吸収の増加が孔辺細胞の膨圧を増大させることと、葉内のNa+濃度が薄くなること により気孔コンダクタンスが増加すると言う少なくともニつのメカニズムがあることが示 唆された。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授    小野有五 副査   教授    甲山隆司 副査   助教授   高橋英紀

副査   教授    山崎素直(長崎大学環境学部)

     学 位 論 文 題 名      ●

    Water status of plants growlng

inSalineSOilSunderf01iarappliCationofglyCinebetaine

(グリシンベタイン葉面散布と塩類土壌に生育する植物の水分挙動)

土壌への塩類集積は世界の半乾燥地で共通して見られる現象である。この塩類土壌地帯は 農地や草地として利用されている場合が多く、砂漠化現象とともに半乾燥地における地域 環境劣化の主な原因となっている。このような塩類土壌地帯には土壌中の高い塩濃度に適 応するための生理特性を獲得した植物が生育している。

  植物の耐塩生理特性には塩分が植物体内に吸収されるのを防ぐ、あるいは吸収された物 質の濃度を薄めるために水分を多く吸収するなど多様なメカニズムが存在する。耐塩性植 物が浸透圧調節物質を自らの体内に生成し体内水分の移動と利用を容易にすることも耐塩 生理特性のーっである。

  本研究で取り上げたグリシンベタインは浸透圧調節物質のーっで、ビートや棉などに多 く含まれているベタインの一種である。ヒユやコンギクの仲間など塩類土壌地帯に生育す る塩生植物内に多く蓄積する。glycinebetaineは環境的に全くの無害で合成も可能のため、

農業分野では葉面施用により作物の増収をはかる試みがなされている。しかし、グリシン ベタインの施用により植物の水分生理がどのように変化するかを体系的に研究した例は極 めて少なく、Makelaら(1998)によるトマトを供試値物とした研究が見られるにすぎない。

  そこで本研究では耐塩性がほとんどないイングン(Phaseolus vulga′jみを供試植物と してグリシンベタインの葉面施用がインゲンの生長・光合成・蒸散量・気孔コンダクタン ス・植物水分含量・葉内金属イオン含量などインゲンの水分生理にかかわる諸要因におよ ばす影響を明らかにするとともに浸透圧調節物質が植物の耐塩性を増大させるメカニズム を明らかにすることを目的とする。

  実験は中国河北省南皮県にある中国科学院石家荘農業現代化研究所南皮生態実験站所属 試験圃場 内の土 壌塩類集 積レベ ルが異なる2圃場を使った野外実験(1998年、1999年の4 月〜5月)と北大農学部附属農場内のビニール温室内における土壌塩分をコントロールした

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精密実験(2000年6月〜9月)を組み合わせて行なっ た。

  野外実験および温室 内精密実験の結果、耐塩性が極めて低いとされるインゲンにおいて もグリシンベタイン溶 液の葉面施用がインゲン体内水分状態の改善をもたらし、光合成速 度を増加させることが 明らかとなった。この様な結果は耐塩性が比較的高いトマトやコム ギでは得られていたが 、インゲンの様に耐塩性が最も低いとされる植物で確認されたのは 初めてである。

  また、グリシンベタ インの施用濃度に上限があること、すなわち塩分ストレス環境下で 生育するインゲンにた いしては10 mM濃度の溶液を 施用すると体内水分状態の改善をもた らすが、30 mMでは10 mMほど効果が期待できないことが明らかとなった。さらに、グリシ ンベタイン施用が効果をもたらす塩分ストレスには下限もあり、30 mM塩分ストレス(電気 伝導度EC‑4 ruS cm‑l相当)の塩分ストレスで生育するインゲンには効果が認められなかっ たが50 mM (EC=6.6 mS cm‑l相当)の塩分ストレスでは効果が明らかに認められた。塩分ス トレスが高すぎても施 用の効果は減少し100 mM塩分ストレスで生育したインゲンでは施用 の効果はほとんど認め られなかった。原因としては細胞質内のイオン濃度が高すぎるかあ るいは原形質分離を起 こしていてグリシンベタインの浸透圧調節機能が作用する余地がな かったためと考えられ る。これらの結果よルグリシンベタイン施用量には適正量があり、

その適正量は生育する 土壌の塩濃度により変動することなどの新しい知見がえられた。

  グリシンベタイン施 用の効果は気孔コンダクタンスの増加、光合成速度の上昇、葉内水 分の増加、葉面積の増 大、蒸散量の増加としてあらわれた。気孔コンダクタンスすなわち 気孔の開閉は孔辺細胞 の膨圧によって制御されているが、その孔辺細胞の膨圧は葉内の金 属イオン濃度に影響を 受ける。NaCl処理により葉内の乾物重あたりのNa十濃度は増加の傾 向をしめしたが、その 濃度はグリシンベタイン施用によって変化はしなかった。しかし、

葉内水分がグリシンベ タイン施用により増加するため、葉内のNa十濃度は減少することに なり、気孔コンダクタ ンスの増加をもたらした。すなわち、グリシンベタイン施用が塩ス トレス下で生育するイ ンゲンの気孔コンダクタンス増加に寄与するプロセスには根による 水分吸収の増加が孔辺細胞の膨圧を増大させることと、葉内のNa+濃度が薄くなることによ り気孔コンダクタンス が増加すると言う少なくともニつのメカニズムがあることが示唆さ れた。これらの新しい 知見は塩類土壌地帯の土地利用を進める上で極めて有効な情報を提 供するものである。

審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また大学院課程における研鑽や取得単位など も併せ、申請者が研究者として誠実かつ熱心であり、博士(地球環境科学)の学位を受け るに十分な資格を有するものと判定した 。

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