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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 神 田 啓 臣

学 位 論 文 題 名

台木用クロダネカボチャにおける根の低温伸長性および 核酸・夕ンパク質代謝に関する研究

学位論文内容の要旨

  クロダ ネカポチャ (Cucurbi toガci fol ia  Bouche)は高い低温耐性を有し て おり 、低温 期におけ るキュウ リ栽培の 接ぎ木苗 の台木とし て広く使 用され て いる 。本研 究では、 クロダネ カボチャ の根の低 温伸長性と 根におけ る核酸 お よび タンパ ク質の代 謝との関 連につい て、低温 条件下で生 育が抑制 されや す いキ ュウリ (Cucumis sativusL.)と 比較する ことによ り検討し た。内容 は次の ように要約 される。

1.低根 温条件下に おける生 育の変化

  ク ロ ダネカポ チャの根 の低温耐 性の特徴 を明らか にするため 、養液栽 培に よ り根 温12、14、18およぴ23℃ で栽培し たときの 生育状況 について、 キュウ りと比 較して嗣べ た。植物 体全体の生育と地上部の発育はクロダネカボチャ、

キ ュウ りのい ずれにお いても、23℃で旺盛 となり、 低温になる ほど阻害 され た。一 方、根の発 育は、キ ュウりでは地上部と同様に23℃で盛んであったが、

ク ロダ ネ カポ チ ャ では14℃ で 最 も速 か っ たた め 、ク ロ ダ ネカ ポ チャのT/R 率 は14℃で低い 値となる ことがわ かった。 以上のよ うな、クロ ダネカボ チャ の 根 の 特 性 を 本 研 究 で は 低 温 伸 長 性 と 称 す る こ と に し た 。 2.低根温 条件下で発 育した根 におけるRNA濃度の変 化

  ク ロ ダ ネ カ ポ チ ャ の 低 温 伸長 性 とRNA代 謝 と の関 係 を検 討 す るた め に、

根 温12、14、18およ び23℃条件 下で発育 したクロ ダネカポ チャおよび キュウ り の 根 に お け るRNA濃 度 の変 化 を顳 べ た 。ク ロ ダネ カ ボ チャ の 根 にお け る 全RNAお よ ぴ 各 種RNAの 濃 度 は 、 根 の 低 温 伸 長 が 最 も 盛 ん な14℃ で 最 大 と な っ た 。 ま た 、 全RNAお よ ぴ 各 種RNAの 濃 度 は6日 間 の 根 郁14℃ 処 理     ―233―

(2)

期闘中に連続的に増大するが、根温を23℃に変えると2日以内に根部温度処 理開始以前のレベルに戻った。これらのことから、クロダネカボチャの根で はRNA代謝 は低温伸長性に密接に関与していると考えられる。一方、キュ ウりのRNA濃度も、根温14℃で最も高かったが、23℃での濃度に対する増 大率はクロダネカポチャに比べて低く、また根温を23℃に変えても減少しな いことが明らかになった。

3.

低 根温 条件下で 発育した根 におけるり ボヌクレア ―ゼ活性お よびRNA

    

ポリメラーゼ活性の変化

  2

,で認められたクロダネカボチャの根におけるRNA濃度増大の原因を明 らかにするために、根部14℃処理開始後のクロダネカポチャおよびキュウり の根におけ るりポヌクレアーゼ活性とRNAポリメラーゼ活性の変化を調べ た。活性測定時の温度は、酵素反応の最適温度(リボヌクレアーゼ;37℃、

RNA

ポリメ ラーゼ活性:32℃)および植物体生育時の根温と同じ温度(14

℃または23℃)としたが、いずれの結果も、クロダネカボチャおよびキュウ りにおける

RNA

濃度の変化との関連は認められなかった。そこで、リボヌ クレ ア ーゼ活性 に対するRNAポリメラ ーゼ活性の 比率(RP/RN)の変 化と

RNA

濃度の 変化との関係を調べたところ、酵素反応の最適温度で活性を測 定した場合 、RP/RNの変 化と

RNA

濃 度の変化と の関連は認められなかった が、植物体生育時の根温と同じ温度で活性を測定した場合には、RP/RNの変 化とRNA濃 度の変化との聞には密接な正の相関が認められた。以上の結果 から 、 クロ ダ ネカ ポ チャ お よぴ キ ュウ りの 根における

RNA

濃度は

RNA

ポ リメラ―ゼ活性とりボヌクレアーゼ活性の比率に関連していることが明らか となり、ク ロダネカボチャの根における根温14℃条件下でのRNA増大は、

RNA

ポリメ ラーゼ活性とりボヌクレア―ゼ活性の比率の変化によって起こ ることが明らかになった。

4‑

低根温条件下で発育した根におけるタンパク質の濃度および組成の変化

  

クロダネカポチャの低温伸長性とタンパク質代謝との関係を検討するため に、根温12、14、

18

およぴ23℃条件下で発育したクロダネカボチャおよびキ ユウりの根におけるタンパク質の濃度および組成の変化を調べた。根部温度

234

(3)

処理に よるタンパ ク質濃度の変化の様相は、RNA濃度の場合と基本的に同 じであ った。クロ ダネカボチャにおける可溶性タンパク質のSDS電気泳動 パタ―ンでは、8種類の低温集積タンパク質(根温12℃、14℃およぴ18℃に おいて量が増大したタンパク質)が見出された。低温集積タンパク質の量は、

14℃で特に増大するという傾向はみられなかった。また、これらのタンパク 質は根部低温処理開始後3日以内の早い時期に増大した。以上の結果から、

クロダネカポチャの根においては、低温集積タンパク質の量の増大は、低温 に対する初期的な反応であり、タンパク質濃度の増大が低温伸長性を実質的 に高める原因のーっになっていると考えられる。一方、キュウりの可溶性タ ンパク 質では、低 根温処理によるSDS電気泳動パターンの変化は認められ なかった。

5‑低根温条件下で発育した根における遊離アミノ酸濃度およびりボソーム     の変化

  4.で認められたクロダネカポチャの根におけるタンパク質濃度増大の原因 を検討するため、根部14℃処理開始後のクロダネカボチャおよびキュウりの 根における遊離アミノ酸濃度およびりポソ―ム濃度の変化ならびにりボソー ムのポリソーム化の程度について調べた。クロダネカボチャでは、全遊離ア ミノ酸濃度とタンパク質生成の基質となるアミノ酸の濃度は、根温14℃処理 開始後3日間で約3倍に増大した。また、全リポソーム濃度は根温14℃処理 開始後6日間で3.5倍に増大し、リボソームのポリソーム化の程度を示す指 標(ポリソーム濃度/全リポソーム濃度、5量体以上のポリソーム濃度/全 リポソーム濃度、およぴ5量体以上のポリソーム濃度/ポリソーム濃度)は この期間に1.3〜2.0倍に増大した。いずれの値も、根温を23℃に変えると速 やかに処理開始前のレベルに戻った。以上の結果から、クロダネカポチャの 根では低温遭遇によって遊離アミノ酸濃度、リポソーム濃度およびりボソー ムのポリソーム化の程度が変化した結果、タンパク質生成が高まり、タンパ ク質濃度が増大するものと考えられる。一方、キュウりの根における遊離ア ミノ酸濃度およびりボソーム濃度の変化ならびにりポソームのポリソーム化 の程度は、いずれも根温14℃処理期間中に増大する傾向がみられたが、その

‑ 235一

(4)

増 大 串 は ク ロ ダ ネ カ ポチ ャ に比 べ て非 常 に 小さ ぃ こと が わか っ た。

6.低根温条件下で発育したクロダネカボチャの根における低温集積タンパ     ク質合成の調節段階

  4.で認められたクロダネカボチャの根のタンパク質組成の変化が、転写段 階で調節されているのかどうかについて検討するため、根温14℃処理中のク ロダネカポチャの根におけるin vivo標繊タンパク質とin vitro翻訳産物と の組成を比較した。in vivo標餓タンパク質の2次元電気泳動パターンによ ると、根温14℃処理によって大きくなったスポットの数は9個であったが、

in vitro翻訳産物においては、根温14℃処理によって大きくなったスポット の数は2個であった。このようなことから、クロダネカポチャの低温集積タ ンパク質のうちの少なくとも2個は転写段階でその生成が調節されているが、

大部分の低温集積タンパク質の生成は転写後の段階で調節されているものと 考えられる。

  以上のように、本研究では、クロダネカボチャの根の低温伸長性について、

核酸およびタンパク質の代謝の面からの知見を得ることができた。この成果 は、接ぎ木苗台木用の耐冷性植物(品種)の育成や接ぎ木苗の低温下におけ る生育能カを高める栽培技術を開発するための基礎的知見として寄与しうる ものと思われる。

(5)

学位論文審査の要旨 主査    教授    原田    隆 副査   教授   喜久田嘉郎 副査    教授    千葉 誠哉

学 位 論 文 題 名

台木用クロダネカボチャにおける根の低温伸長性および      核 酸 ・ 夕 ン パ ク 質 代 謝 に 関 す る 研 究

  本 論 文 は 、 緒 言 、 本 論6章 、 摘 要 、 引 用 文 献87、 図45、 表8を 合 む 158頁 の 和 文 論 文 で 、 別 に 参 考 論 文 4編 が 添 え ら れ て い る 。   野 菜 とく に 果 菜類 の 栽培 で は 、吸 肥 性 、低 温 伸長 性 、 耐暑 性、耐湿性 の 向 上な ら びに 病 害 回避 な どの 目 的 で接 ぎ 木苗 が 用 いら れ て いるが、ク ロダ ネ カ ボ チ ャ(Cucurbiとaficifolia)は と く に 高 い 低 温 伸 長 性 が あ り 、 低 温 期 に お け る キ ュ ウ リ(Cucumis sativus)栽 培 用 の 接 ぎ 木 苗 で は ク ロ ダ ネ カボ チ ャが 台 木 とし て 用い ら れ てい る 。

  本 研 究は 、 ク 口ダ ネ カボ チ ャ の低 温 伸 長性 と 核酸 お よ びタ ンパク質代 謝 と の関 連 を、 低 温 条件 下 で生 育 が 阻害 さ れや す い キュ ウ り のそれと比 較し つ つ検 討 すこ と に より 、 低温 伸 長 性台 木 植物 ま た は品 種 の 育成ならび に低 温 条件 下 にお け る 果菜 類 の栽 培 技 術作 出 のた め の 基礎 的 知 見を得るこ とを 目 的と し て行 っ た もの で ある 。

1. 低根 温 条 件下 に お ける 生 育の 変 化

  養 液 栽 培 法 に よ り 、 根 温 を 、12、14、18お よ び23℃と し た とき の 生 育 に っい て 調べ た 。 地上 部 の発 育 は 、ク ロ ダネ カ ボ チャ お よ びキュウり とも 根 温23℃の 場 合 に最 も 旺盛 で あ った が 、 根の 発 育は 、 キ ュウ りでは地上 部 同 様23℃の と き 盛ん で あっ た の に対 し 、 ウロ ダ ネカ ボ チ ャで はそれより は る かに 低 い14℃ で最 も 速い こ と が明 ら か にな っ た。

2. 低 根 温 条 件 下 で 発 育 し た 根 に お け る RNA濃 度 の 変 化   根 温12、14‑ 18お よ び23℃ 条 件 下 で 発 育 さ せ た ク ロ ダ ネ カ ボ チ ャ お よ び キ ュ ウ り の 根 に お け るRNA濃 度 の 変 化 を 調 べ た 。 ク ロ ダ ネ カ ボ チ ャ の 根 の 全 RNA濃 度 な ら び に rRNA、 mRNAお よ び tRNAの 濃 度 は 、 根 の 伸 長 が 最 も 速 い14℃ 処 理 区 で 最 大 と な り 、ま た 、そ れ ら の濃 度 は、

237

(6)

根温14℃ 処 理期 間中 は上昇を続 け、根温を23℃に変える と下降し、2日 以・内にもとの状態に戻るなど大きく変化したのに対し、キュウルでは温度 を変えてもほとんど変化しないことがわかったことにより、クロダネカボ チャ で は、RNA濃 度の変化が 低温伸長性 に関与して いることが 明らかに

′よった。

3. 低 根温 条 件下 で発育し た根におけ るルボヌク レアーゼ活 性およびRN     Aポルメラーゼ活性の変化

  植物体生育時の根温と同じ温度で活性を測定した場合には、ク口ダネカ ボチ ャ およ び キュ ウりのいず れの根にお いても、RNA濃度の変 化と、ル ボヌ ク レア ― ゼ活 性に対するRNAポルメ ラーゼ活性 の比率の変 化との間 に正 の 相関 が 認め られ、根温14℃条件下で のRNA濃度 の増大は、 リボヌ クレ ア ーゼ 活 性とRNAポリメ ラ―ゼ活性 の比の増大 によって説 明できる ことを見出した。

4.低 根温条件下 で発育した根におけるタンパク質の濃度および組成の変     化

  根の低温伸長性とタンパク質代謝との関連を検討するため、根温12、14、 18および23℃の 条件下で発 育させたク 口ダネカボ チャおよびキュウりの 根におけるタンパク質の濃度および組成の変化にっいて調べた。この場合、

全タン′くク質濃度、可溶性タン′くク質濃度および難溶性タンパク質濃度の 変化 の 様相 は 、RNA濃度の場 合と同様で あった。ま た、ク口グ ネカボチ ヤの 根 にお け る可 溶 性タ ン パク 質 のSDS電気 泳 動パタ― ンでは、8種類 の低温集積夕ン′くク質が見出され、これらは恨部低温処理開始後3日以内 の早い時期に増加した。これに対し、キュウルでは低根温処理を行っても 可溶性夕ンパク質の電気泳動パタ―ンは変化しなかった。これらのことか ら、クロダネカボチャでは、根のタンパク質濃度の上昇が低温伸長性の増 大に関与していると考えられる。

5.低根温条件 下で発育し た根におけ る遊離アミ ノ酸およびルボソームの     変化

  ク口ダネカ ボチャでは 、低根温14℃処理開始3日後には、夕ン′くク質 生成の基質 となるアミ ノ酸の濃度 が約3倍となり、6日後には、全リボソ

―厶濃度が約3.5倍になるとともに、リボソームのポリソーム化が1.3〜 2倍に 促進された 。低根温処理を停止すると、これらの変化は元の状態に 戻った。これに対し、キュウりでは、低根温条件下ではそれらがわずかに 増大したに過ぎなかった。低根温条件下におけるこれらの変化が低温伸長 性を有するクロダネカボチャの根のタンパク質濃度の上昇に関与している ことが明らかになった。

6.低 根温条件下 で発育したクロダネカボチャの根における低温集積夕ン     パク質合成の調節段階

  1n vivo標識タ ンパク質とin vitro翻訳産物を比較することにより、根     ‑ 238ー

(7)

14

℃条件下で発育させたクロダネカボチャの根におけるタンパク質組成 の変化が転写段階あるいはその後の段階のいずれで調節されているかにつ い て検討した

02

次元電気泳動パ夕一ンによると、根温14℃処理によって 大 きくなったスポッ卜の数は、in vivo標識夕ンパク質では9個であった が、in vitro翻訳産物では2個であったことから、低温集積夕ンパク質の うち少なくとも

2

個は転写段階で調節されているが、大部分のものは転写 後の段階で調節されていることが示唆された。

  

以上のように、本研究は、クロダネカボチャの根の低温伸長性にっいて、

核酸・タンパク質代謝の面から初めて検討したもので、得られた知見は、

接ぎ木苗用の耐冷性台木の育成ならびに低温条件下における果葉類栽培技 術を作出するための基礎として寄与するものである。

  

よって、審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本 論 文の提出者神田啓臣は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格が あるものと認定した。

239一

参照

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