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整形外科と災害外科 69 (1)145~ キーンベック病に対して有頭骨部分短縮骨切り術を行った 1 例 * 松浦充洋 * 岡崎真悟 * 吉田史郎 * 白濵正博 * 仲摩憲次郎 * 志波直人 はじめに Ulnar plus variance のキーンベック病に対して有頭骨部分短

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(1)

は じ め に

 キーンベック病に対する手術方法は様々な術式が報 告されている.Ulnar minus variance 症例に対し,し ばしば橈骨短縮骨切り術が用いられるが,Ulnar plus variance 症例に対しての適応はない.本疾患 plus variance 症例に対して有頭骨部分短縮術を行ったの で報告する. 【症例】  56 歳,男性(職業:林業,右利き) 【主訴】  左手関節の可動域制限を伴う疼痛を認めていた. 【現病歴】  4 か月ほど前から左手関節の違和感を認め,2 か月 前より疼痛を認めたため前医を受診し,単純レントゲ ン写真・MRI 検査より左手キーンベック病と診断さ れ,加療目的に当院紹介となった. 【既往歴】  特記事項なし 【理学所見】  左手関節部痛(VAS:80)Q-DASH score:40 握力:右 40kg 左 23kg(健側比の 58%) 神経学的所見は明らかな異常は認めなかった. 左手関節の可動域:掌屈 30°/ 背屈 40°,回内 80°/ 回 外 90°(図 1) 【画像所見】  月状骨は偏平化を認めているが舟状骨の回旋は認め ていなかったため Lichtman 分類:Stage Ⅲ A と診断 した(図 2).ulnar variance はプラス 2mm であり, Carpal height ratio(以下:CHR):0.57(37/65mm) であった.  MRI では T1W1 で月状骨に正常脂肪髄による高信 号領域が消失し,脂肪抑制 T2W1 では一部高信号域 を呈していた(図 3). 手 術 所 見  皮膚切開は,有頭骨直上に約 3cm 行い,長母指伸 筋腱,総指伸筋腱の間より展開,背側手根間靭帯を出 来る限り温存した.森友ら3)の報告に準じ,有頭骨を F 字型に骨切りし(図 4),舟状・有頭骨間靱帯を温 存して有頭骨の短縮を行い,DTJ screwⓇで固定した (図 5). 後  療  法  術後 4 週間はギブス固定を行い,その後リストサ

キーンベック病に対して有頭骨部分短縮骨切り術を行った 1 例

松 浦 充 洋

*  

吉 田 史 郎

*  

仲 摩 憲次郎

岡 崎 真 悟

*  

白 濵 正 博

*  

志 波 直 人

 【はじめに】Ulnar plus variance のキーンベック病に対して有頭骨部分短縮術の 1 例を経験したので報 告する.【症例】56 歳,男性.左手関節部に疼痛を認めたため前医受診,画像より左手キーンベック病 と診断され,当院紹介となった.【所見】左手関節部の疼痛(VAS:80)を認め,握力は健側比の 58%, 掌屈 30°/ 背屈 40°と可動域の低下を認めた.X 線写真では ulnar variance は+2mm,Lichtman 分類: Stage3A であった.【手術】手関節背側 3cm ほどの小切開で DTJ screw mini を用いて短縮骨切術を行った. 【後療法】術後 4 週間 short arm cast 固定を行った.【結果】術後 1 年で VAS:10,可動域は掌屈 75°/ 背

屈 80°,握力は健側比:81.7% に改善し,林業に復帰した.【考察】Plus variance 症例に対して有頭骨部 分短縮骨切り術を行い,月状骨の圧壊は認めたものの概ね良好な結果が得られた.しかし,本術式の適応 と有頭骨を短縮させることにより一般的なサルベージである近位手根列切除が選択困難な問題点も示唆さ れた.

Key words : partial capitate shortening(有頭骨部分短縮骨切り術),Kienböck disease(キーンベック病), salvage operation(救済手術)

 * 久留米大学病院整形外科学教室

整 形 外 科 と 災 害 外 科

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図 1 術前の左手関節の可動域:掌屈 30°/ 背屈 40°,回内 80°/ 回外 90° 図 2 術前の単純レントゲン写真 月状骨は偏平化を認めているが舟状骨の回旋は認めていなかったため Lichtman 分類:Stage Ⅲ A と診断した. T1W1 脂肪脂肪抑制 T2W1 図 3 MRI では T1W1 で月状骨に正常脂肪髄による高信号領域が消失し,脂肪抑制 T2W1 では一部高信号域を呈していた. キーンベック病に対して有頭骨部分短縮骨切り術を行った1例 ― 146 ― 146

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ポートを併用した. 経     過  術後 3 か月に手関節部痛を認め,単純レントゲン写 真および CT で分節化が顕著になり,月状骨掌側の部 分的な圧潰の進行を認めていた(図 6).手関節サポー ターでの固定と安静を行い,術後 1 年で除痛が得られ た.術後 1 年で CHR の著変は認めなかった(-0.01). VAS は 80→10,Q-DASH score:40→6 は 低 下 し, 握力は右 43.1kg,左 35.2kg(健側比:81.7%)であっ た.可動域は掌屈 30→75°背屈 40→80°回外 90°回内 90°(図 7)と改善傾向を認めた. 考     察  中等症のキーンベック病に対しては一般的に橈骨 短縮術が行われ,成績が安定しているが,ulnar plus variance の症例ではさらに plus variance を増加させ るため橈骨短縮術は一般的には行われていない.そこ で岡本ら4)は ulnar plus variance の症例に対して有頭 骨短縮術の治療成績を報告した.除痛効果は全例消失 または軽減を認めたが,6 例中 3 例に月状骨の分節化 や圧壊の進行を認めたと報告している.  その後,森友ら3)は簡便かつ低侵襲で効果的な手術 を目指した有頭骨部分短縮骨切り術の術後成績を報告 し,全例手関節痛が軽減し,carpal collapse も認めず, Nakamura の評価基準では stage Ⅲ B までの 15 例中 図 4 森友ら3)の報告に準じ,有頭骨を F 字型に骨切りし,骨部分短縮を行った. 図 5 術中イメージ / 術後単純レントゲン写真 上記線が骨切り線となる.術後 CHR:0.53(36/68mm) 147

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12 例が優,3 例が良であったとしている.  矢野ら8)も森友らの報告に準じて臨床成績を報告し, 8 例中 1 例を除いては概ね良好で除痛効果は優れてい たとしている.また ulnar variance に関係なく施行で きると報告している.  森友らは舟状大菱形・小菱形骨間関節,有頭舟状骨 関節,有鈎三角骨関節が残存していれば有頭月状骨関 節が接触しなくても正常な手根運動,手根配列が保持 しうると考察し,平均 27 か月を追跡した 15 例も手根 配列が悪化した症例はなかったと報告している.しか し,術後に橈骨-舟状骨間や橈骨-有頭骨間に関節 症性変化が生じている症例も認めたため,適応は患 側手を過度に使用しない患者で有頭骨近位および橈 骨月状骨窩に関節症性変化を認めない症例に限るべ きとされている.また手術適応に対して Hegazy ら1) の modified した有頭骨短縮術では,Lichtman 分類: Stage3A に対しては月状骨の圧壊は止めれず,推奨 できないと報告している.  本症例では症状が術後 2 か月で改善し,林業に復職 した.しかし画像上は月状骨に部分的に骨折線を認め た.本症例は林業でチェーンソーを使用するという手 関節に非常に負荷のかかる仕事を継続されており,こ 図 6 経過の画像 上:単純レントゲン写真,下:CT 半年後の CHR は 0.53(35/65mm)で,最終観察時の CHR は 0.52(34/65mm) であったが,画像上は月状骨掌側の部分的な圧潰の進行を認めた. キーンベック病に対して有頭骨部分短縮骨切り術を行った1例 ― 148 ― 148

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のことが症状は改善したものの,術後の月状骨の部分 的圧壊の進行を止められず,また ulnar plus variance にキーンベック病を発症した原因そのものであった可 能性が考えられる.  本術式の問題点として有頭骨に骨切りを行うため症 状,進行の改善が得られなかった場合,キーンベック 病の一般的なサルベージである近位手根列切除が選択 できないという問題点も示唆された.

 また,neutral or positive ulnar variance の症例で, 劉ら5)は橈骨楔状骨切り術で月状骨の圧壊はなく成績 は良好と報告し,渡辺ら7)の剛体バネモデルによる キーンベック病月状骨に対する橈骨楔状骨切り術の除 圧効果の解析も証明されている.さらには進行期の 症例でも成績は良好との報告も散見される2)6)ことか らも橈骨楔状骨切り術も一つのオプションと考えられ る.しかし,橈骨楔状骨切り術は骨癒合の問題や手関 節の variance の変化などの問題点もあるためそれぞ れの術式の比較検討が今後の検討課題と考える. 結     語

• キーンベック病,Ulnar plus variance 症例に対し て有頭骨部分短縮骨切り術を行い,症状の改善は得 られたものの月状骨掌側の部分的な圧潰は進行し た.進行例に対する本術式の適応は,より慎重に行 うべきであると考える. • 本術式は有頭骨骨切りを行うため,圧壊進行に対す るサルベージは今後検討の余地がある. 参 考 文 献

1) Hegazy, G., et al. : Treatment of Kienböckʼs disease with neutral ulnar variance by distal capitate shortening and arthrodesis to the base of the Third metacarpal bone. J. Hand Surg. Am., 44(6): 518.e1―518.e9, 2019. 2) 小嶺 俊ら:進行期キーンベック病に対する橈骨楔状 骨切り術の治療成績と X 線解析の検討,整外と災外,48 (4):997―1000,1999. 3) 森友寿夫ら:Kienböck 病に対する有頭骨部分短縮骨 切り術.日手会誌,22(2):149―154,2005. 4) 岡本雅雄ら:キーンベック病に対する有頭骨短縮術の 治療成績.日手会誌,15(5):674―676,1999. 5) 劉 遠禄ら:橈骨楔状骨切り術によるキーンベック病 の治療経験.中四整会誌,11(1):141―145,1999. 6) 千馬誠悦,成田裕一郎:進行期 Kienböck 病に対する 橈骨楔状骨切り術の手術成績.日手会誌,32(5):735― 738,2016. 7) 渡辺健太郎,中村蓼吾,三浦隆行:剛体バネモデルに よるキーンベック病月状骨に対する橈骨楔状骨切り術の 除圧効果の解析.整形外科バイオメカニクス,13:47― 50,1992. 8) 矢野公一,恵木 丈,川端 確:Kienböck 病に対す る有頭骨部分短縮骨切り術の臨床成績 予後因子の検 討.日手会誌,29(4):401―404,2013.   図 7 最終観察時の左手関節の可動域:掌屈 75°/ 背屈 80°,回内 90°/ 回外 90° 12 例が優,3 例が良であったとしている.  矢野ら8)も森友らの報告に準じて臨床成績を報告し, 8 例中 1 例を除いては概ね良好で除痛効果は優れてい たとしている.また ulnar variance に関係なく施行で きると報告している.  森友らは舟状大菱形・小菱形骨間関節,有頭舟状骨 関節,有鈎三角骨関節が残存していれば有頭月状骨関 節が接触しなくても正常な手根運動,手根配列が保持 しうると考察し,平均 27 か月を追跡した 15 例も手根 配列が悪化した症例はなかったと報告している.しか し,術後に橈骨-舟状骨間や橈骨-有頭骨間に関節 症性変化が生じている症例も認めたため,適応は患 側手を過度に使用しない患者で有頭骨近位および橈 骨月状骨窩に関節症性変化を認めない症例に限るべ きとされている.また手術適応に対して Hegazy ら1) の modified した有頭骨短縮術では,Lichtman 分類: Stage3A に対しては月状骨の圧壊は止めれず,推奨 できないと報告している.  本症例では症状が術後 2 か月で改善し,林業に復職 した.しかし画像上は月状骨に部分的に骨折線を認め た.本症例は林業でチェーンソーを使用するという手 関節に非常に負荷のかかる仕事を継続されており,こ 図 6 経過の画像 上:単純レントゲン写真,下:CT 半年後の CHR は 0.53(35/65mm)で,最終観察時の CHR は 0.52(34/65mm) であったが,画像上は月状骨掌側の部分的な圧潰の進行を認めた. キーンベック病に対して有頭骨部分短縮骨切り術を行った1例 149

図 1 術前の左手関節の可動域:掌屈 30°/ 背屈 40°,回内 80°/ 回外 90° 図 2 術前の単純レントゲン写真 月状骨は偏平化を認めているが舟状骨の回旋は認めていなかったため Lichtman 分類:Stage Ⅲ A と診断した. T1W1 脂肪脂肪抑制 T2W1 図 3 MRI では T1W1 で月状骨に正常脂肪髄による高信号領域が消失し,脂肪抑制 T2W1 では一部高信号域を呈していた.キーンベック病に対して有頭骨部分短縮骨切り術を行った1例 ― 146 ―146

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