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騨幽門部1燭山廊1㈱薩1纏障門部隊部

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(1)

噴門部に癌,或いは潰瘍を有する症例に於け る胃粘膜,特に胃体部粘膜の病理組織学的変 化,一並びにその胃液酸度との関聯に就いて

金沢大学医学部久留外科教室(主任 久留勝教授)

中  澤  徳  三

  770勧2♪2> 乃( 窟(1㍑冠

 (昭和30年2月2日受附)

第1章 緒 言

第2章 検:査材料及び検:査方法

第3章 胃粘膜の病理組織学的変化と胃液酸度  第1節 噴門癌に就いて

  第1項 胃粘膜に於ける萎縮性病変の分布亜び      にその程度と胃液酸度との関聯   第2項 壁細胞の分布並びにその形態学的変化      と胃液酸度との関聯

  第3項腸粘膜出現と胃液酸度   第4項 小 括

  第5項 症 例

 第2節 噴門部潰瘍に就いて

  第1項胃粘膜に於ける萎縮性病変の有無並び      にその程度と胃液酸度との関係

 第2項 壁細胞の分布亜びにその形態学的変化      と胃液酸度との関係

  第3項 腸粘粘膜出現と胃液酸度   第4項 小 括

  第5項 症 例

第4章 噴門癌に於ける腫瘍の大きさと胃液酸度と    の関係

第5章 噴門癌,潰瘍に於ける胃液酸度曲線 第6章 噴門癌の組織学的分類

第7章 総括並びに考按 第8章 結 論    :文 献・

   附 図

第1章緒

 胃疾患の際の胃粘膜の変化に対しては,従来 多数の業績があり,特に胃癌無酸症と胃粘膜の 関聯,或いは胃潰瘍過酸と胃粘膜の関聯に:就い ては汗牛充棟も外ならぬ数多くの文献がある,

 胃粘膜では死後変化が強烈に現われるので,

これら研究の大部分は外科的に切除された,癌 胃或いは潰瘍胃の検索によるものであるが,従 来胃切除の範囲が幽門側の胃宇部を主体とし,

たかだか胃体部の一部に及ぶ程度であった関係 から,これら疾患に於ける胃体部粘膜の変化を

充分精密に追求した研究は極めて少ない.

 周知の如く,幽門部は「ガストリン」分泌に よって間接に塩酸分泌に関与するに対し,胃体 部は密に分布する塩酸分泌細胞によって直接塩 酸分泌を司る.従って胃体部粘膜の研究は無酸 或いは過酸に対して本質的の意義を持つもので なければならぬ.

 胃外科の発達は最近に於いて噴門部の切除を 容易ならしめたが,久留外科教室に於いて最:近 8年間に切除されたる噴門癌28例,噴門部潰瘍

【 1 】

(2)

846

9例及び胃体部癌6例の標本に就いて,胃粘膜 殊に胃体部粘膜の変化を精査する機会を得,一一 方これら疾患に於ける胃液酸度の変化を精密に 検し,他方同一症例の切除胃について胃粘膜の 病変殊に萎縮性変化の分布歌態胃底腺,就中

壁細胞の量的分布と形態学的変化,腸粘膜出現 等を精査し,胃液酸度の変化と胃粘膜の示す病 理組織学的変化とは,略ζ一定の関聯に立つこ

とを認め得たので,ここにこれを報告する.

第2章 検査材料及び検査方法  久留外科心室に於いて手術的に切除された噴門癌28

例(噴門部切除術によるもの18例,胃全摘出術による もの10例),噴門二三:瘍9例(全例噴門部切除術によ る)の標本を中心に,対照として胃体部癌6例(全例 胃全摘出術による)の胃粘膜を精査した.胃癌症例は 遊離塩酸の存在するものと欠如するものの2群に大別 し,夫々の群が示す胃粘膜の変化を追求し,潰瘍症例 では,胃液酸度と胃粘膜変化の程度とを比較検:税し

た,

 胃液検:査は早朝鼠舞時を選び,Katsch−Kalk「カフ ェイン」試飲法による分劃鳥取を行い,一部「ヒスタ

ミン」注射法を併用した.

 検査に用いた標本は手術直:後に病巣の反対側で噴門 より幽門の方向に開き,病稟の部位,大さ,形態,色 調,周囲粘膜の性朕,更に粘膜全般の肥厚乃至萎縮の 程度,粘液量等,精密な肉眼的観察をなしたる後,こ れを10%「フ方ルマリソ」液にて固定し,病環中央部 を含んで噴門明断端より幽門側断端に至る組織片,更 に前壁,後壁,川蝉,胃底部等を含む数個の組織片を 採り,厚さ5〜6! の「パラフィン」切片を作成し,こ れに「ヘマトキシリソ・エオヂソ」染色,Weigert勢 揃力線維染色,Van Gieson染色等を施し検鏡した.

第3章 胃粘膜の病理組織学的変化と胃液酸度      第1節 噴門癌に:就いて

   第1項 胃粘膜に於ける萎縮性     病変の分布並びにその程度       と胃液酸度との関聯

 噴門癌28例,胃体部癌6例を胃液遊離塩酸の 有無より2群に大別することが出来る.即ち遊 離塩酸の存在するものを有酸群,欠如するもの を無酸群とすれば,有酸群に属すべきものは噴 門癌6例(21.4%),胃体部癌1例(16.6%)で,

無酸群に属するものは噴門癌20例(71.4%),胃 休部癌5例(83.4%)である.

 〔噴門癌2例(7.2%)は胃液霜取不能のため,

この統計より除外した〕噴門癌における有酸群 並びに無酸群に就いて,胃粘膜に見られる萎縮 性変化の分布歌態を観察するに,:有酸群に於い ては,病樂周囲粘膜及び小轡側に限局して所謂 萎縮性胃炎に該当する退行性変化を認めるも,

病集を遠ざかるに従い漸次正常粘膜に移行し,

大轡側では寧ろ肥厚性変化に類する所見を証明 するものが最も多く,粘膜全般に肥厚性変化を

認め萎縮性変化を見なかったものがこれに次 ぎ,広範囲に亘り萎縮性変化を呈した症例は1 例も確認されなかった.一方無酸群に於いて

は,広範囲に亘る胃粘膜に高度の萎縮性病変を 認めるものが最も多く過4轍を占め,…次いで国 恥周囲並びに小轡側に滑って萎縮性変化を認め るも,遠隔粘膜は正常或いは寧ろ肥厚性変化に 近い像を呈したものが約施に存在し,粘膜全般 に肥厚性変化を認めた症例は僅か1例に過ぎな かった(第1表).

 胃体部癌6例中,遽離塩酸を認めた1例では 胃粘膜全体に亘り萎縮性変化を欠き,遊離塩酸 を認め得なかった他の5例では,粘膜全般に亘

り多少なりとも萎縮性変化を確認し得た.

 次に大轡側及び小轡側に別けて,夫々に見ら れる胃粘膜の変化を観察するに,噴門癌,胃体 部癌呉に大学側に於いては萎縮性変化を欠くこ とが多く,有壁群では全例,無酸群聚でも8例 に然るを認めた.これに反し小頭側では広範囲 に亘って萎縮性変化を見る場合が遙かに多く,

【 2 】

(3)

第1表 噴門癌,胃体部癌に於ける患者の年齢,癌発生部位,遊離塩酸度並び    に胃粘膜の変化(萎縮性,萎縮」曾殖性,肥厚性)の分布並びに程度 番1

号,

患 者

発 生 部 位 縞塩

騨幽門部1燭山廊1㈱薩1纏障門部隊部

噴  門  癌  症  例

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

ユ6

17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

.高

O O

O O O

1

160

Oi55

  

O O O O O O O

56 521 63 32 50 57 40 38

5/

48 52

69 61

51 30 47 46 47 38 31 50 43 45 52 62 50

噴 門 小 轡    〃 噴 門 前 壁 高 門 小 攣    〃    〃 噴門より腹部食道 噴 門 小 痩    〃    〃    〃    〃    〃    〃 噴門より腹部食道 噴 門 小 轡 噴 門 後 野 望 門 小 攣    〃    〃    〃 噴門より腹:部食道

噴 門 小 轡

噴門より腹:部食道

噴 門 小 攣    〃    〃    〃

24

39 35 35

40

35

萎(柵)

〃(柵)

〃(什)

〃(粁)

〃(柵)

〃(柑)

Tumor

萎(柵)

〃(柵)

〃(柵)

萎  (柵)

〃  (冊)

〃 (柵)

萎・増(什)

〃  (柵)

萎・増(+)

萎  (骨)

〃  (珊)

〃  (柵)

〃  (柵)

〃  (柵)

〃  (十十)

〃  (+)

〃  (什)

肥  (+)

i萎  (什)

  / 萎  (甘)

萎  (柵)

 Tumer

萎  (甘)

〃  (甘)

〃  (冊)

〃 儲)

〃 (什)

〃  (+)

〃  (昔)

〃 (柵)

陛幣正

忌(+)

〃(柵)

肥(什)

萎(什)

肥r什)

 /

肥(+)

〃(+)

略正常  /

略正常

萎(+)

〃(+)

肥(+)

萎(+)

 / 略正常

    一品正常

(+)/

 (柵)

 (+)

 (什)

 (+)

正 常

 (+)

 (+)

正 常 正 常

 (+)

 (什)

 (+)

 (柵)

正 常

萎(+)

略正常

肥(什)

 /

萎(什)

 /  /

萎(+)

〃(+)

肥(+)

1萎・増(紆)

略 正 常 磁  (暑)

萎  (什)

  /   /   / 萎  (+)

  /

肥  (+.)

 /

肥(+)

 /

…萎(+)

〃(+)

略正常  / 略正常  / 略正常

萎(粁)

〃(什)

肥(+)

萎(+)

肥(紐)

萎(+)

〃(冊)

〃(督)

 //

 /

萎(粁)

 /  /  /

萎(紆)

〃(甘)

Tumor

 〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃

略正常

i萎(+)

 /

肥(+)

萎(什)

肥(+)

萎(+)

略正常  〃  〃  /

略:正目 i萎(+)

肥(十)

〃(什)

 /  / 略正常  /

略正常 肥(+)

i萎(+)

〃(丹)

 /  / 略正常

萎(什)

肥(+)

胃 体 部 癌 症 例 29

30 31 32 33 i34

柴 ○ 内○藏 得 ○ 申 〇 五〇里 蒲 ○

63 55 39 52 51 55

小 攣 i全 体    〃 大 攣 中 央

体部より幽門

小 攣 中 央    〃

8

TUmor

 〃 萎(+)

Tumor

萎(柵)

〃(柵)

 Tumor   〃 肥  (+)

 Tumor   〃 萎  (柵)

萎(+)

肥(+)

Tumor

 〃  /

肥(什)

萎  (什)

〃 (+)

肥  (+)

 Tumor   / 肥  (+)

萎(料)

 /

肥(+)

Tumor

萎(+)

 /

萎  (什)

〃 (H・)

肥  (粁)

i萎・壇(甘)

萎  (+)

  /

萎(+)

〃(什)

 /

萎(+)

〃(+)

 /        註: (+)は軽度,(甘)は申悉曇,(柵)は高度を示す.

無酸群の大多数にこれを確認したのみならず,  を認めることが出来た.

有酸群中でも4例に小攣側に萎縮1生変化の存在

      【 3 】

(4)

848

  第2項壁細胞の分布並びにその形態     学的変化と胃液酸度との関聯

 噴門癌の場合見られる壁細胞分布歌態の著し い特徴は,大轡側では著明な発達を示すに反

し,小割側では明らかに減少或いは潰失を認め ることである.

 即ち有超群に於いては,大御側壁細胞の著明 な減少或いは浩失を見た例はなく,これに反し 小轡側壁細胞には1例を除きすべて高度の減少 或いは溝失が認められた.

 胃体部前壁及び後壁では,病集近傍粘膜にの み限局して,壁細胞の著明な減少叉は浩失が見 られるも,遠隔部粘膜では壁細胞は充分に保存 せられている.胃底部に於ける壁細胞も殆んど 減少を証明し得ない。   、

 一方無酸群に於いては,大轡側の壁細胞に著 明な減少を見る場合と然らざる場合とが略ζ相 牛ばするが,浩失を認めた例は1例もない.こ れに反し小罪側では大多i数に高度の減少或いは 浩失を確認することが出来た.胃体部前壁及び 後壁では有酸群に比し明らかに壁細胞の減少を 認め,胃底部では約孚数に壁細胞の著しい減少 が見られた.

 胃体部癌に於いても,有声群,無酸群を通 じ,壁細胞の分布歌態に,噴門癌の場合と著明 なる差異を認め難い.

 壁細胞の形態学的変化に就いて観察するに,

有酸群,無酸群相互の闇に一一定度の差異を認め 得る如くである.即ち有酸群に於いては1,細胞 は割に大きく円形叉は楕円形を呈し,主細胞と の配置も規則正しく,酸性嗜好性穎粒の染色状 態も可良なものが多い.一・:方無酸群では,形も 梢ヒ小さく三角形或いは扇形に近く,主細胞と の配置も不規則で,酸性嗜好性穎粒の染色状態 も亦不良のものが多い.このような関係は殊に 大轡側に於いて著明にこれを認めることが出来

る.

   第3項腸粘膜出現と胃液酸度

 腸粘膜出現を噴門癌に就いて観察するに,有 酸群に於いては粘膜全体にこれを認めない場合

と,病集近傍粘膜及び小轡側に限局してこれを 認めたものとが略ヒ相田ばし,粘膜全般に及ぶ 高度の化生の出現は,1例もこれを証明し得な

かった。

 一方無酸群では,粘膜全般に及ぶ高度の化生 を見る場合が甚だ多く過牛数を占め,病集近傍 粘膜及び小轡側に限局してこれを認めるものが 母船,全くこれを証明しないものは僅か1例に 過ぎなかった(第2表).       ・  胃体部癌では,有酸群に属する1例は全く腸

粘膜出現を認めず,無導爆では噴門癌の場合と 略ぐ同軸の所見を示した.

 上述の所見で明らかな如く,有酸群では腸粘 膜への化生を全く証明しないが,或いは病集周 囲重びに小鼻側にのみこれを認め,無酸群では 広範囲に及ぶ高度の化生を見ることが多く,腸 粘膜出現が遊離塩酸欠如に対し密接な関係を有 するものの如くであるが,一方腸粘膜出現を認 めざるに拘わらず遊離塩酸を欠き,叉比較的著 明にこれを見るも遊離塩酸を認める症例も存在 し,腸粘膜出現が必ずしも胃液酸度の低下乃至 無酸と直接関係するものでないことを推定する

ことが出来た.

     第4項 小     括

 噴門癌に於ける胃液酸度と胃粘膜の病理組織 学的i変化,:就中萎縮性病変,壁細胞,腸粘膜出 現との関係に就いて観察した.

 その結果を総括すれば,

A〕有酸群に於いては

 1)胃粘膜は肥厚性変化を示すものが最も多 く,萎縮性変化は殆んど認めないか,或いは病 巣周囲粘膜及び小轡側に限局してのみこれを証

明する.

 2)壁細胞は大轡側では著明にこれを証明 し,小轡側では減少が梢ζ著明である.大聖側 壁細胞は円形或いは楕円形を呈し,配列も規則 正しく,酸性嗜好性穎粒の染色歌態も良好であ

る.

 3)腸粘膜出現は全くこれを認めないか,或 いは病集周囲粘膜並びに小網側に限局してこれ

【 4 】

(5)

第2表 噴門癌,胃体部癌に於ける患者の年齢,癌発生部位,

    遊離塩酸度並びに腸粘膜出現め分布並びに程度

  患 二

発 生 部 幌

糠   胃 壁 各 部 位

灘幽門部陣小下部大綿部前壁畑鐸噴寸寸螂

噴  門  癌  症  例

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

O O O O O O O

O一

O O O O O

O O O

56 52 63 32 50 57 40 38 57 48 52 60 69 61 55 51 30 47 46 47 38 31 50 43 45 52 62 50

噴 門 小 攣

噴 門 前 壁 噴 門 小 攣

      ド 噴門より腹部食道 噴 門 小 攣

噴門より腹部食道 噴 門 小 轡 噴 門 後 壁 噴 門 小 攣    〃    〃    〃 噴門より腹部食道 噴 門 小 攣 噴門より腹部食道 噴 門 小 攣    〃    〃    〃

24

39 35 35

40

35

 十  十

Tumor  柵

 柵  ・冊

 十

 十

、 ±

 十  十

 /

 十

Tumor

柵 冊

±

!ノ

Tumor

 〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃  〃

胃 体 部 癌 症 例 29

30 31 32 33 34

柴 0 内○藏

得 O

中 〇 五〇里 蒲,○

63 55 39 52 51 55

小 轡 全 体    〃 大 轡 中 央

体部より幽門

小 痩 中 央

    〃

8

T ・・ hT・m・・

Tumor

 十

Tumor

 〃

Tumor

 〃  /

Tumor  /

 十  / Tumor

/ノ

註:(一)は全く腸粘膜を認めない場合,(±)は極く軽度に腸粘膜を認める場合,

   (十)は軽度に腸粘膜を認める場合,(什)は中等度に腸粘膜を認める場合,

   (柵)は高度に腸粘膜を認める場合.

【 5 】

(6)

850

を証明し,広範囲に及ぶ腸粘膜の出現は1例 も見られなかった.

:B)無山群に於いては

 1)胃粘膜には広範囲に亘る萎縮性変化を 認めることが最:も多く,遠隔粘膜に正常叉は 肥厚性変化を示すものは約橋を占め,広範囲 の肥厚性病変は僅か1例に認めたのみであっ

た.

 2)壁細胞は,大店側では減少を見る場合 と減少を見ない場合が略ζ相牟ばし,小蒲側 では著明な減少或いは潰失を証明することが 甚だ多かった.

 3)腸粘膜出現は,これを粘膜全体に認めた 場合が過門下を占め,病集周囲及び小男側に限 局してこれを認めたものが約孤,全くこれを証 明しなかったものは僅か1例のみであった      第5項 症     例

 全症例に於ける検索の結果は第1表及び第2表に表 示し,ここには代表的の症例のみ稽ぐ詳細にその所見 を記載する.

 症例i 広○つ○,50歳,女,圭婦.

 病歴:1951年8月20日入院,1951年2月頃より食 事の際心窩部に軽度の狡窄感を覚え,漸次増青して嘔 吐が加わるようになって来た.これの症駄は殊に冷い 食物を撮る場合著しく,温い食物では比較的軽度であ ったとい弓,6月頃より次第に巌痩が加わり,入院時 には固形物の編取は殆んど不可能であった,二三は無 く,既往に吐血したこともない.体格申等で栄養は梢 ζ低下している.赤血球数258万,血色素量60%,白 血球数5300.胃液には遊離塩酸を欠如し,総酸度最高 26,潜血反応陽性,「レ」線検:査では噴門部より小三 塁上部にかけて著明な陰影欠損が認められた.1951年

8月31日噴門切除術施行,術後経過良好にして9月29

日全治退院す.

 切除標本:癌発生部位は噴門部小心側,肉眼的に は:Borrmann lll型に属し,大さ5・0×5・3cmの浅い 潰瘍を形成し,潰瘍底は暗褐色苔で覆われている.潰 瘍縁には軽度の充血を認め,粘液産生は梢ミ少い.

 組織学約所見:腫瘍は圭として円柱細胞性腺癌に 属し,一部に軍純癌檬の部分も存在する.癌性浸欄は 漿膜に迄及び,潰瘍底の大きな淋巴腺中にも癌細胞の 浸潤が見られる.癌性潰瘍に接する辺縁粘膜は著明な

症  例 1

   4鍵襲鍵幽

・無難踏麟輝轡畔

  ボ難畿舗譲獅難獣

萎縮性病変の像を呈し,腸粘膜への化生が見られ,一 部に腸上皮細胞が基底膜を破って不規則に増殖する像 も認められる(第12図).粘膜筋層は著明な方向転換 を来すことなく略ζ固有筋暦と四丁してその断端を潰 瘍申に露出し,固有筋層は癌性浸潤を受けつつも,全 体としてよくその走向を追跡することが出来る.粘膜 の萎縮性変化並びに腸粘膜への化生は,病巣周囲に最 も著しく,小繋側に沿い稽ζ高度なるも,大轡側粘膜 は略ミ正常で,固有胃腺も比較的良く保たれている.

一方小難側では胃底腺領域に於ける腺細胞の配列は稽 ヒ不規則で,壁細胞は円味を失い,細胞自体萎縮に傾 くものが多い(第9図).外観上変化の見られない前 壁の粘膜に於いて,曄細胞が粘膜固有層の深部,粘膜 下の淋巴腔を通って蔓延する像が認められる.

 症例3 高○清0,63歳,農夫.

【 6 】

(7)

 病歴:1951年12,月17日入院.同年3月頃より嚥下 障碍があり,流動物は通るが固形物では通過困難で時 女嘔吐を催した.9月よりi欠第に症1伏は増悪し,癩痩 が加って来た.既往に吐血,下血等の訴えはない.体 格申等で栄養は稽ヒ低下している.赤血球数230万,

血色素量50%,白血球数10300.胃液には遊離塩酸を 欠き,維酸慶最高29芝潜血反応陽性(第3表).便申 潜血反応陽性で,十二指腸虫卵を認める.尿は著変な

し.「レ」線検査では噴門部に一致して著明な陰影欠 損を認あることが出来る.1951年12月21日噴門切除術 実施,術後経過順調で1952年1月24日退院.

 切除標本・癌発生部位は噴門部前壁,腫揚は肉眼 的には:Borrmann 1正面に属し,大さ8・0×8・Ccmの 深い潰瘍の申央は完全に胃壁を穿通し,潰瘍底は肝臓 三葉にて覆われている.潰瘍縁は堤防状に降起し,潰 瘍全体は噴火口状を呈している,

第3表 胃液所見 高○清○

110

一一一香@酸 度 遊離塩酸度 100

@90 @80

@70 @60

@50 @40

@30

ェ2。酸 10度 0

、、

時 間 10 20 30ノ 40 50 60 70 80ノ 90ノ100 色 調

蚤cc 4 10 10 10 10 10 12 10 15 15 4 乳 酸

潜血  組織学的所見:腫瘍は大部分硬性軍純癌の像を示

し,一部腺癌檬構造を示す部分も見られる.癌浸潤は 胃壁全暦を貫き,癒着せる肝実質に迄及んでいる.潰 瘍底には殆んど黒門組織を認めず,所々に竣功巣並び に小出血が見られる.癌細胞は不整形で核分裂像に富 み,Anap1弓sieの傾向が彊い.病巣に直接する胃粘膜 には著明な萎縮性変化を証明し,化生は高度で,胃腺 は殆んど消失し所々僅かに島甲状に残存するに過ぎな い.癌細胞は粘膜下に沿って瀾漫性に浸潤する傾向を 示し,粘膜の萎縮性変化は広範囲に及び,遠隔粘膜に

も著明な萎縮性変化並びにこれに俘弓腸粘膜への化生 が認められる(第1図).粘膜下層には著明な結締織の 増殖が見られる.

 症例4 申○勇○郎,32歳,男,商業.

 病歴:父系の伯父が45歳で胃癌で死亡している,

1950年8月,室腹時心窩部痙痛ありて約3ケ貝間の内科 的治療を受けて軽羅したという.1951年1月より繊細 が目立つようになり,3月頃より再び室腹時心窩部疹 痛を訴えるに至り,次第に塘張して7月には食後心窩 部に激痛を覚えるようになった.内科的治療を続ける も症朕は軽減せず,8月より食事に際して前胸部に狭 窄感を覚えるに至り,軽度の嚥下障碍を俘うようにな った.食慾は良好で酸噌,噌難,嘔吐等は認められな い,10月15日某病院にて試験的開腹:術を受けている.

 1951年12月3目入院.体格中等で栄養の低下が著明 である.腹部を触診するに,心窩部に軽度の抵抗を証 明するも腫瘤は認められない.赤血球数280万,血色 素量55%,白血球数6300.便中潜血反応陽性・尿には

,蛋白,「ウロビリソ」及び「ウロビリノーゲン 」陽性・

胃液には遊離塩酸を欠如し,総酸度最高25,潜血反応 陽性(第4表).「レ」線所見では食道下端は稻ζ著明 に拡張し,横隔膜下約三横指より噴門部にかけて隆影 欠損を認める.1951年12月10日噴門切除術施行・経過

【 7 ]

症  例  3

バ転 羅心魂誌臼.

      

        や

(8)

852

順調にして1952年1月22日全治退院す.

 切除標本: 癌発生部位は噴門部小三三.腫瘍は肉 眼的に:Borrmann II型に属し,潰瘍の大さ8・5x12.O cm・潰瘍周囲は堤防状に隆起するも,潰瘍は比較的

浅い.

 組織学的所見:腫瘍は髄郷軍純癌で,一部に硬癌 性の部も見られる.癌浸潤は漿膜に達し,潰瘍底は膵 組織によって覆れている.病巣周囲粘膜を見るに,小 部側にはKonjetznyの所謂萎縮増殖性胃炎に一致す る変化,即ち腺構造の部の萎縮並びに剥暦の部の壇殖 性変化が認められ(第2図),同時に高度の化生が見

第4表 胃液所見 中○勇○郎

一一一香D酸 度

力皇工 遊離塩酸度・

 110

@100

@90

@80 @70

@60 @50

@40 @30

ェ2。酸 10魔 0

時 間 10 20!30 40 50! 60 70ノ 80! 90ノ 色 調

量cc 20 5 5 4 3 3 4 4 3 3 乳酸

潜血

られるも,後壁では胃腺が比較的よく残存し,前壁噴 門側では胃粘膜は寧ろ増殖性変化に傾き,化生は金く 証明せられない.癌性潰瘍の辺縁に於いて粘膜筋層は はね上りの像を示し,癌病巣部と増殖性の胃粘膜部と は劃然と区分されている.遠隔粘膜は鐡壁に富み萎縮 性変化を欠き,化生は認められない.屑底腺に於ける 壁細胞,生細胞の配置も規則正しく,壁細胞は円味を 帯び,酸性嗜好細粒の染色状態も比較的可良である.

 症例7浅○義○郎,40歳,建築技師.

 病歴:母方の叔母が8年前,48歳で左乳癌に罹患

している.

 既往歴として20歳で胃 下垂症,25歳で外痔核,37歳 で蓄膿症,38歳で蜘虫症,39歳で虫垂炎に罹患したと

いう.

 1951年11月より封事の際胸部にi挾窄感を覚え,秋田

症  例 4

。陸封熱熱.論灘麟國

▽。蜜藤島癖轟ジ1ド1:し

県立病院で食道痙蛮の診断を受け服薬したが出鼻は軽 減せ●ず,最近巌痩が加って来た.1952年3月国立金沢 病院にて食道癌の診断を受け,同年4月28日当科に入 院.癩痩著明,腹部触診では心窩部に軽度の抵抗及び 圧痛を証明する.食道鏡検査では門歯より36cmの部       に粘膜の浮腫朕隆

第5表胃液所見

 浅○義○郎

一一一香@酸 度 一遊離塩酸度

1  110

@100

@90

@80

@70 @60

@50 @40

@30

ェ2。酸 10度 0

時 間 10ノ 20 30ノ 40 50! 60 70ノ 色 調 淡禍 淡赤 淡褐淡黄 淡鳩 赤褐

量cc 8 5 5 5 5 2.5 2.5 乳 酸 潜 血

起が認められた.

赤血球数350万,

血色素量50%,白 血球数5000.便器 潜血反応陽性,虫 卵なし.尿に異常 所見を認めず,胃 液には遊離塩酸を 認めず,総酸度最 高24,潜血反応陽 性(第5表).「レ」

線所見では食道下 部の拡張,噴門部 の陰影欠損が見ら れ,「バリウム」の 噴門部通過朕態は 不良である.1952 年5月7日腹部食

【 8 】

(9)

道を含めて噴門部切除実施.同年6月12日退院.

 切除標本:癌発生部位は噴門部小攣側より腹部食 道に亘る.肉眼的にはBorrmann I型に属し,大さ 14▽3x13・Ocmり腫瘤を形成し,その表面は凸凹不整

である..

一組織学繭所見・腫瘍は股子状細胞性腺癌亜びに髄 三軍純一の像を示し,、一部に扁李上皮癌に類似の形態

症  例 7

聯繋譲纒灘瞬轡

嘱縫麹継継猛鎌i銚

い.栄養は強度に障碍1さ:れている.赤血球数278万,

血色素量56%♪白血球数6300.便申潜血反応陽性,虫 卵なし.尿に著変なし.胃液では遊離塩酸最高24,.総 酸度最高53,潜血反応陽性(第6表).「レ」線検査で は小藩側上部より噴門部に亘る陰影欠損並びに中心性 壁寵を認め,その部に一致して圧痛ある抵抗を触れ る.1952年4月25日噴門切除術施行.術後経過良好に

して1%2年5月24日全治退院す.

第6表 胃液所見 羽○け○子

・一一一 酸 度 V離塩酸度

里童

50,

 80

@70

@60

@40

@30

ェ2。酸 10度 0

4

時 間 10! 20ノ30ノ 40 50 60 70! 80 90!

色 調 麿 淡F 量cc 35 10 10 10 10 10 109 10 8 4

乳酸

義 血

症 例 8

を示す部分も認められる.癌浸潤は胃壁全層に亘り,

病藁周囲粘膜には萎縮性変化が著明で軽度の化生も見 られる.そこでは上皮細胞が基底膜を破って漫潤性発 育を営み,粘膜筋層の一部断裂している像も見られ

る.腫瘍の辺縁では,粘膜筋層ははね上りの態度を示 している.固有筋層は癌浸潤を受けつつも著明な欠損 を見ることなく比較的良くその走向を追求し得る.遠 隔粘膜に於ける萎縮性変化並びに化生は著明である.,

胃底腺領域に於ける主細胞,壁細胞の配列稽ヒ乱れ,

壁細胞の減少が目立っている.

 症例8 羽0け○子,38歳,女赴員..

 病歴:1952年4月22日入院.約4年前心窩部州県 を訴えて胃潰瘍の診断を受けたことがあるという.そ の後時々心窩部疹痛を覚えたが服薬によって軽減する を常とした.1951年12月より症朕が増強し,悪心,嘔 吐が加わり,最近巖痩が目立つようになったとい弓.

腹部触診では上腹部に圧痛を証明するも腫瘤は触れな

潔  土

、\ジ糊・響

鎌麟鑑嬢三三 .

 鑓 .認懇熱闘備吊・ 燃…〃ゆ}  嘉、

  嘱 かつ  糀

      {v一刀讐〆

φ

ぎ㍉

     華癬

網織幽幽出職一一・.

   驚納品

    出職乳

【9】

(10)

854

 切除標本=癌発生部位は噴門国軍轡側.肉眼的に は:Borrmann I【型に属し,大さ3・0×4・Ocmの潰瘍 を形成し,潰瘍底は汚臓褐色の苔で覆われている.潰 瘍縁には軽度の充血を認める.粘膜は全体として肥厚 を示し織嚢が著明で,表面には多量の粘液が附着して

いる.

 組織学的所見:腫瘍は硬性勢子朕細胞性腺癌の像 を示し,癌浸潤は漿膜に達している.潰瘍の中央部で は固有筋層は完全に欠損し,潰瘍底には勝豚形成が著 明で一部膵組織によって被覆せられている.病巣に接 する胃粘膜を見るに,幽門側では萎縮性変化が著明で 化生も高度である.これに反し噴門側に於ては全然萎 縮性変化を欠き,化生も全く証明し得ない.病巣辺縁 で粘膜筋層は下方旋回の像を示し,固有筋層は潰瘍底 に向ってその断端を露出する.しかも癌浸潤は潰瘍縁 を平心として周囲に拡っているカミ,潰瘍底には未だこ れを見ない.遠隔粘膜は織壁に富み,萎縮性変化を欠 き,大町側では寧ろ増殖に傾き化生は全くこれを固め ることが出来ない.即ち本例は如何なる点から見ても 穿通性潰瘍の辺縁粘膜の癌化した症例と考えられる.

胃底腺に於ける壁細胞,圭細胞共によく発達し,壁細 胞は円味を帯びて輪廓も明瞭,酸性嗜好性二二の染色 駄態を野良である.

 症例10 南○浅0郎,48歳,鉄道員.

 病歴:1951年3月より時々下腹:時に上腹:部落痛を 訴え,野冊を受けるも軽減せず,ユ952年10月初旬より 嚥i下困難を来し食物が胸部につかえるよ5になったと いう.悪心は存在するが嘔吐はない.最近に至って胸 骨の深部に鈍痛を覚えるようになったという.1952年 11月15目入院.体格中等,栄養稽ミ衰えた申年の男 子.腹部触診では左季肋部に軽度の抵抗を触れるも腫 瘤は認められない.赤血球数356方,血色素量60%,

白血球数4800.便には潜血陽性,尿に変化なし.胃液 所見では遊離塩酸を欠如し,総酸度最高22,潜血反応 陽性(第7表).「レ」線検査では食道下部の拡張,噴 門部の陰影欠損が著明である.1952年11,月21日噴門切 除実施,経過良好にして同年12月13日退院す.

 切除標本:癌発生部位は噴門部小割側.肉眼的に は:Borrmann m型に属する.潰瘍は大さ4.0×5.O cm,浅く,潰瘍底は三尊である.

 組織学的所見:腫瘍は一一部硬性,一部髄檬の軍純 癌で,浸潤は漿膜を貫いて周囲の小網に及び,潰瘍底 の日野並びにその申の淋巴腺も悉く癌細胞の浸潤を受 けているが,胃内腔に面した組織には一部に未だ浸潤

第7表 胃液所見 南○浅○郎

一一一香@酸 度

@遊離窟酸度

7工

イン1

 110

@100

@90 @80

@70

@60 @50

@40 @30

ェ2b酸 10度 0

時 間 10ノ 20, 30! 40 50ノ 60, 70 80 色 調 一団 白田淡赤白赤 智慧

量cc 5 4 6 3 4 3 3 2 乳 酸 ± 潜 血

を蒙むらない肉芽組織の存在を謁める.癌細胞は粘膜 下層に沿って三門性に側方に浸潤している.病巣辺縁 胃粘膜は幽門側では著明な著明な萎縮を示し,化生も 証明せられるに反し,噴門側は食道笹野上皮であって 略ぐ正常の所見を呈する.粘膜筋暦は著明な方向転換 を示すことなく,潰蕩面に露出し,潰瘍申央部では固 有呼野の断裂が見られる.粘膜下暦には結締織の増殖 が著明である.遠隔粘膜は略ヒ正常で,化生は全く認 められない.

 症例15 中○李○,55歳,農夫.

 病歴:29歳で「アンギーナ」,50歳で「パラチフス」

に罹患したという●

 1952年10月頃より何ら誘因なく嚥下障碍を訴え,時 六食後に食物残渣と粘液を嘔吐することがあったとい う.この症状は1953年1月頃より次第に増強し,最近 に至って臓痩が目立って来た.便秘,腹部膨満感を訴 えるも自発痛はない.1953年2月27日入院.体格申等,

栄養の低下が著明である.赤血球数:248万,血色素 量40%,白血球数8200.便中潜血反応陽性.尿に著変 なし.胃液では遊離塩酸最高38,総酸度最高66,潜血 反応陽性(第8表).食道鏡検査では門歯より39cm の部に一致して粘膜の発赤,腫脹が認められる.「レ」

線所見では噴門部より腹部食道に亘る陰影欠損が見ら れた.1953年3月4日腹:部食道白びに噴門切除術施 行.術後経過良好にして1953年4月2日退院す.

 切除標本:腫瘍は噴門部より腹部食道に亘る.肉

【10】

(11)

眼的には.:Borrmann I1型に属し,層潰瘍の大さ6・0×

7.Ocln,潰蕩は幽門側に向って深く穿通し(第3図),

噴門側は比較的李坦である.

 潰瘍縁には軽度の充血が見られ,粘膜は全般に著明 な二二iを示している.

症  例  10

ゼ、撫粛鞭轍轟轟職服一興乱

症  例 15

 組織学的所見:腫瘍は円柱細胞性腺癌で,癌浸潤 は粘膜下層より固有筋暦に及ぶも,未だ漿膜に達して いない.粘膜下組織は著明に肥厚し,所々に膿瘍形成 が認められる.癌の発育は層expansivで,粘膜を下方1 より押上げる如き態度を示し,総懸辺縁粘膜は著明に 隆起し,粘膜筋層に下方旋回の像が認められる.

 病巣辺縁粘膜は鐡襲に富み,全然萎縮性変化を欠 き,腸粘膜への化生も殆んど証明されない.遠隔粘膜 は寧ろ肥厚性変化を示し,固有胃腺もよく発達し,細 胞の配列も規則正しく,腺頸部に於ける壁細胞の発達 が目立つ.壁細胞酸性嗜好性穎粒の染色朕態は可良で

ある.

 症例17若O弘,30歳,農夫.

 病歴: 1952年7月9日入院.約5年前より食事と 関係なく心窩部門痛,呑酸,噌嚇があり,1951年11月 頃から食直後に嘔吐を繰返すようになり,医治を受け

るも症状は軽快せず.

 1952年2月丁丁病院にて胃潰瘍の診断ゐ許に胃切除

、罐霧鐘難難・

遜謡幽幽…墾轡難 4一癖 月l十仕舞

第8表 胃液所見 中○干○

一一香@酸 度 一一V離塩酸度

A

 110

@100

@90

@80

@70

@60

@50 @40

@30

ェ2。酸 10度 0

1

時 間 10 20, 30! 40ノ 5Gノ 60ノ 70! 80 90 色 調 黄白 青 牝白

量cc 50 20 18 10 5 14 15 ユ0 12 、4 乳 酸 潜 血

術(Billo魚II)を受けた(1952年3月2日)・術後 症状に著明な軽減を見ず,嘔吐,心窩部饗痛等の症朕 を残した儘退院したとい弓.同年6月離離より症朕が 増悪し,蔽痩が著明となり,更に軽度の嚥下困難を覚 えるよ弓になったという.

 入院時の栄養朕態著しく不良.腹:部触診では左季肋 部に抵抗を証明する,赤血球数380万,血色素量65%,

【11コ

(12)

856

白血球数8400.便申潜血疑陽性.尿に変化を認めず.

胃液所見では遊離塩酸最高35,総酸度最高70.潜血反 応陽性(第9表).「レ」線所見では手術による胃壁腸 吻合部の「バリウム」通過状態は不良で,「バリウム」

は細い線状を呈して少しずつ通過するのが見られる.

陰影欠損,壁龍は認められない.

 1952年7月14日噴門切除実施.同年8月20日退院.

 切除標奉:癌発生部位は噴門部後壁.腫瘍は肉眼 的に:Borrmann m型に属し,7・0×7・Ocmの浅い潰 瘍を作り,粘膜は全般に鍼襲に富んでいる.

第9表 胃液所見 若○弘

一一一香@酸 膜

@遊離i猛酸度

ノ、

110 P00

@90

@80

@70

@60

@50

@如 @30

ェ20酸 10度 o

L

時 間 10ノ 20ノ 39 40ノ 50 60! 70 80 90ノ

:色調 乳白 孔自淡黄 盤禍

量cc 8 7 5 5 3 2 3 1 2 1

乳 酸

潜 血 一 十

 組織学的所見:腫瘍は膠様変性を俘う硬性軍純癌 の像を示し,浸潤は胃壁全暦にわたり,殊に固有筋層 に著しい,辺縁粘膜は,深部に癌細胞の浸潤をうけて いるに拘わらず萎縮性変化を欠いている.粘膜下暦に は結締織の増殖が著明である.粘膜筋暦は略ヒ固有筋 層と否行しつつ大部分その形を保ち,固有筋層また強 く癌浸潤を受けつつも断裂を示すことなく,よくその 走向を窺うことが出来る.遠隔粘膜は肥厚性変化を示

し,化生は全く認められない(第4図).固有胃腺に於 ける腺構造は,一部不規則な部分も存在するが,全体 として主細胞,壁細胞の配列も略ヒ正常に近い.

 症例20三〇金○郎,47歳,農夫.

 病歴 :  1948年より食後上封夏:部膨満感ヵ:あり, 1949 年12月頃より室腹時に上腹部疹痛を訴え,その瘍痛は 擶食によって消失す,るを常とした.1951年10月中旬に 至ρて疹痛は食事と関係なく起るよ弓になった.噌

1維,呑酸の訴えはなく,既荏に吐血,下血等も見られ ない.最近巌痩が目立つようになったという.

症  例  17

ツミ

  鞭・、・礁

   へも       ヨ  セ

ー鞭願籔、.

1ミ・∬鐵     磯麟

     鐡1

        ゆモご

譲!警1輩…

       モ     ザ  かびみ ニづ 

雌螺欝欝響

4

 195ユ年10月26日入院.体格中等,栄養iは梢ζ衰えて いる.上腹部に抵抗を証明するも腫瘤は触れない.赤 血球数410万,血色素量80%,白血球数5800.便中潜 血反応疑陽性。尿に変化なし.胃液所見では遊離:塩数 を欠き,総酸度最高32,潜血反応陽性(第10表) .「レ」

線検査では噴門部より略ヒ小雛全般に亘る陽影欠損を 認められる.195工年11月2日胃全揺出術施行.術後経 過良好にして同年11月30日全治退院す.

 切除標本:癌発生部位は噴門部小攣側.肉眼的に は130rrmann I【型に属し,大さ8・0×7・Ocmの深い 潰瘍を形成しているが,粘膜の一部にポリープ様の隆 起が見られる.

 組織学的所見:腫瘍は大部分般子賦細胞性腺癌の 像を示すが,一部円柱細胞性腺癌並びに軍純癌の像も 見られる.浸潤は可成欝欝性で漿膜にまで及んでい る.幽門側辺縁粘膜には著明な萎縮性変化が見られ,

胃腺が消失して腸粘膜これに代り,バーネット氏細胞 が可成著明に現れている.粘膜には強い出血が詔めら れる(第5図).固有筋暦は病藁の中央部でi完全に断裂

{ 12】

(13)

第10表 胃液所見 三〇金○郎

一一一香@酸 度

力老 一遊離塩酸度  110

@100

@90

@80 @70

@60 @50

@40

@30

ェ2。酸 10康 0 \、

時 間 10 20 30ノ40 50ノ 60 70ノ 80

量cc 40 10 10 10 10 12 8 8 6 乳 酸 F_

潜 並

7

症  例  20

ビ    己、一  ・隷 癖戯興

        1織$q       鰹  ・    。泌畠認      ・       旨         愈・

・三一鍮 聯  国宣懸錘鰍・

し,潰瘍底は一部腓砥で構成されているが,そこには 癌浸潤の及んでいない部が存する.潰瘍の噴門側辺縁 粘膜では胃腺の浦失は軽度であるが,その嚢腫朕拡張 が見られる.化生は認められない.粘膜筋層の一部を 通じて,胃腺が異所的発育を営んでいる像が証明され

.る..三一粘膜では,小割に沿い萎縮性変化亜びに腸粘

膜ぺの化生は高度なるも,大難側は略ヒ正常に近く,

化生も殆んど認められない.胃底腺に見られる壁細 胞,主細胞の配列は規則正しいが,壁細胞の酸性嗜好 性穎粒の染色欝欝は稽ヒ不良である.

 症例28 松Oi完○,50歳,男,機i業.

 病歴:入院工951年ユ0月23日.昨年8且感冒に罹患 し,服薬によって感冒は治療したが,その後心窩部1蓼 痛を訴えるようになった.疹痛は空腹時に激しく刺す ような痛みで,掃食によって直ちに軽快するを常とし た.症朕は一・進一退するも,次第に増悪するようであ るという.軽斐の瀟痩を認めるも,既往に吐血,嘔吐 等はない.上腹部に圧痛著明なるも,腫瘤は認められ ない.赤血球数489万,血色素量92%,白血球7800数.

便申潜血反応陽性,虫卵なし,尿に著変を認めず.胃 液では遊離塩酸最高35,総酸度最高60,潜血反応陽性

(第11表). 「レ」線所見では著明な陰影欠損は見られ ないが,小雛側は全体に硬い感じを与え,この部に一 致して圧痛著明.1951年11年5日胃全摘出術施行.術 後経過順調で,同年11月30日退院す.

 切除標本: 癌発生部位は噴門三三三三.肉眼的に

:Borrmann III型に属し,5・5x5・Ocmの浅い潰瘍を形 成し,潰瘍面は暗褐色苔で覆われ,潰瘍縁には軽度の 充血が見られる.粘液産生或いは比較的旺盛である.

症  例  28

、℃

・丹

    媛蜜反∫

    ・ポー・

ズ         ・  泌

       、聡織 ・.    鴎

      じジィπ   

    ゼ翻轡多

、毒旨、

【13】

参照

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