慢性カドミウム中毒の実験的研究

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金沢大学十全医学会雑誌 第76巻 第2号 239−253 (1968) 239

慢性カドミウム中毒の実験的研究

一声水溶性のCd化合物による実験一

金沢大学大学院医学研究科衛生学講座(主任 石崎有信教授)

       松   田    悟

        (昭和42年12月13日受付)

 我国において慢性カドミウム中毒が注目されるよう になったのは,いわゆるイタイイタイ病の原因ではな いかと考えられるようになってからである.

 イタイイタイ病とは,太平洋戦争末期から戦後にか けて富山県の神通川に沿う一地域に限局して,更年期 後の経産婦に多発した骨軟化症様症状を呈する疾患で

ある.

 臨床症状や病理学的所見は,すでに詳細な報告1)2)

3)4)5)があるが,要約すると,多産の更年期の女性に 発病し,腹痛,下肢筋肉痛などにはじまり,股関節の 開排制限によりWatschelgangを行うようになる.

病状は徐々に進行して数年後には,挫傷,捻挫の如き 軽い外傷で歩行不能となり臥床するようになると病状 は,急速に進行し,体動,咳漱等によっても多発性の 病的骨折を起こし日夜イタイイタイを連発し,全身衰 弱により死亡するに至る.疹痛は首より上を除いて全 身にわたり,身長の短縮,皮膚の特有の黒光り,長期 間臥床していても褥瘡が現われないことも特徴とされ ている.

 骨格のX線像1)4)6)では,高度の骨萎縮(頭蓋骨を 除く)と種々な自首像,病的骨折による骨格変形,

Loosersche Umbauzoneの発生がある.

 病理所見については,梶川7)は解剖学的には骨の 軟化と萎縮が著明で,組織学的には骨の粗疎化のほか 類骨の増生が特徴的で,骨軟化症に最も近いとしてい

る.

 ビタミンDの大:量投与による効果は劇的で,症状の 著しい好転があるとされているが,一方治療の中止に より病状の再発が起る.

 本症の原因については,栄養説4)7)(ビタミンD欠 乏,戦時中の低栄養によるHungerosteopatie),性 ホルモンのアンバランス8)9)10)或いはこれらの混合説 11)などがあるが,何れも本病の特異の点である発生

の地域的限局性を説明し得るものはなく,原因不明と されてきたが,昭和37年小林12),萩野・吉岡13)によ って神通川上流の某金属鉱山の廃水に基づく重金属こ とにカドミウムによる中毒説が現われてから,本病と 重金属との関連が重視されるに至った.

 われわれの教室では,重金属の中で特にカドミウム に関係があるように思われることを,患者の尿中に異 常に高いカドミウムが排泄され,また発生地区の米,

及び豆にカドミウム濃度の高いことを主な論拠にして 先に報告14)した.

 そこで一歩進めて,動物にCdを投与することに よってイタイイタイ病と同じ意味をもつ症状を起させ ることが出来ないものかと,いろいろ試みて来た.

 イタイイタイ病は骨格のはげしい脱石灰像が主要症 状であるが,今までのカドミウム中毒の動物実験では そのような症状の報告がない.故に単にカドミウムの 体内蓄積だけではなく,他の要因としてまず第一にカ ルシウム欠乏が取り上げられてよいと考え,Ca欠乏 食で養われた動物にカドミウムを飲料水にとかして投 与する実験を行い,骨に著しい脱石灰の像の見られる

ことを先に報告15)した.

 今回の実験では,Cdを水溶性のものでなく,不溶 性のCd餌に混入した場合はどういう結果になるか 見ること,高Caと低Caの条件の差を確かめること

と,またpbの投与がCdの作用にどのように関与

するかを見ることを目的に計画した.更にビタミンD の関係を考えて,明るい室に養ったものと,暗室に養

ったものを比較しうるようにした.

 Cd投与法は,前の実験では300ppmの濃度で飲料 水にとかして与えたものであったが,今回はCd量 にして10mg/100gと20mg/100gの2段階として飼

料に混ぜて投与した.PbはPb量で10mg/100gの

割合で餌に混ぜて投与した.なおCdな酸化カドミ

 Experilnental Study of Chronic Cadmium Poisonillg by Cadmium Compound Insoluble in Water. Satoru:Matsuda Department of H:ygiene(Director:Pro£A. Ishizaki),

School of Medicine, Kanazawa University

(2)

240

ウムCdO, Pbは塩基性炭酸鉛(PbCO3)2・Pb

(OH)2を用いた.

 実験条件の要因と水準の数が,Cdは高低の2水準 Cdは無投与を加えて3水準, Pbは投与と無投与の 2水準,明るさは明室と暗室の2水準,性別は雄雌の 2水準であるから,要因配置法で考えれば,2x3×

2×2×2−48の実験条件の組合せが出来る.これでは 実験動物があまりに多数になるので,あまり意味のな い組合せは整理して,表1に示したような20だけを とりあげ,白鼠を2匹あてこれに割あてることにした が,途中で死亡した鼠もあって,実験成績の得られた ものは36匹である.

実 験 方 法 1 実験動物及び実験期間

 市販の100g前後の若い成熟ラット(雑種)を講入 して使用した.

 Cd投与を開始したのは昭和39年4月28日である.

それから約10カ月経過した昭和40年2,月10日に全部 を殺して観察した.

 実験動物数は表1に示した,実験開始より6カ月目 頃即ち寒さの始まる11月頃より餌の悪いのも手伝って 多数の死亡を見た.実験開始3カ月以上経過した死亡 例は観察に加えることにした.

表1 実験動物数

11121314【516国81911・1・・巨21・3114i・5【・61171・811gi2・陰

低鉱食

Cd

Pb

立日性別

十+

小OOT

○  1 0!○ 」

○○○○○

10

○○

○ ○

○ ○

例数111212【212121・21・11112121213121312121・【36

五 飼    料

 高Ca飼料の意味で使ったのは,オリエンタル憎憎 飼料の繁殖用NMFである. Ca欠乏食として与えた ものはSteenbockのくる病食16)からCa塩を除き 少し改変したもので,表2,2の処方のものである.

この飼料を8カ月間投与したが寒冷の時期とかさなり 死亡する鼠が相ついだので,その後は少量の動物性蛋 白及び脂肪,それにカロチン及びマグネシウムを補っ て表2,3の処方に変えて2カ月間投与した.Mgを 特に強化したのは,寒冷時にはMgの要求量が大き い17)とされているからであり, またCaに対して Mgが拮抗的に作用してCa代謝を乱すと1いう考え もあるが,それは硫酸塩や塩酸塩のときであって,

アルカリ性のMg塩ならばむしろCa代謝に好影響

を与え18),Caに対してPが不均衡に多いときMg の多い方が動物の発育が良くなる19)とされているか

らである.それでも多くの鼠が死亡したが,暖房の不 完全であったことも大いに関係していると思う.

 飼料の栄養素を分析した結果は表3の如くでCa:

Pの比は2では1:18,3では1:11となる.

 飼はその重量のほぼ1/2の水で練り固め,食い残し の出る程度に毎日与えて自由に摂取させた.

実 験 結 果 1 病理組織の所見

 最も問題になる臓器という意味で,肝臓と腎臓と骨 について病理組織学的検:索を行うことにした.骨は左 大腿骨のみを見た.

 動物をエーテル麻酔で殺して直ちに臓器を摘出して フォルマリン固定を行ない,ヘマトキシリンエオジン 染色で鏡検した.骨の脱灰には蟻酸を用いた.

1 骨

(3)

慢性カドミウム中毒 241

     表2飼料の処方

1.固型飼料(オリエンタル繁殖用NMF)

2.トウモロコシ粉

 麩

食  塩 3.トウモロコシ粉

白米粉

酵食置

母歯肉

オリーブ油 カロチン

  759   209

  19

 11409

 3009  6009   409   209  1009 60〜70g  少量

〔注〕 3は100g中にMgを288.3mg添加した.

表3 栄養素の分析値(100g中)

1蛋白質1脂肪1剰P}C・IMg

1 2 3

  928.3 14.3 14.6

  95.28 3.76 6.05

  937.1 67。1 66.7

960

mg

270 240

 mgi      mg 1585・6i265・9  15.1i  99.1  22.7i 314.1

 骨粗野症としては,骨質の菲薄さを中心として検索 し,骨軟化症としてはHavers管の拡張,石灰の脱 失,Osteoid形成, Howship s lacunae形成を中 心として検索した.

 表4に示した如く,低Ca食では骨に変化があり,

      しことにCdを多く与える程所見が強く出ている. Pb 投与の有無,飼育室の明暗の条件については何も一定

した傾向を見出すことが出来なかった.

 固型飼料のみ投与した群

 病的といえる所見は見られなかった.

 固型飼料十Cd 10mg/100g群

 1例のみ軽度のHavers管の拡張,内骨膜の鋸

歯状,骨質非薄なものがあるが,他の3例は軽度の Havers管拡張は見られるが病的といえる所見はなか

った.

 固型飼料+Cd 20m9/100g群

 8例中4例に病的所見が見られた.そのうち1例は 骨質菲薄でOsteoid形成, Havers管拡張し骨軟化 症と骨粗品症が共存していた.また1例は骨質菲薄で 内骨膜鋸歯状を呈し不規則になり骨梁が直な伽くなった 骨軟化症で,他の2例は,骨粗霧症の像で,一部内骨 膜下H:owship s lacunae形成(発達中に吸収されっ つある骨に見られる凹窩で破骨細胞の存在が見られ る),H:avers管の拡張, Osteoid形成が見られた.

 低Ca食のみ投与した群

 4例のうち3例が骨粗籟症の像を呈し,骨層波状で

葬薄化し,Havers管周囲石灰脱失している.他の1 例は,Osteoid形成,石灰脱失Howship s lacunae 形成し,骨軟化症を呈していた.

 低Ca食十Cd 10mg/100g群

 7罰すべて骨質菲薄となり骨粗壁症を呈しそのうち 4例はOsteoid形成が見られ, Havers管の周囲石 灰脱失しているものもあり,骨軟化症と共存している

といえると思う.

 低Ca食十Cd20mg/100g i群

 これは,最も悪条件の飼料で,8例すべて骨粗霧症 の像を示していた.1例のみOsteoid形成が見られ 軽度の骨軟化症の様相をあわせて示していた.

2腎   臓

 表5に示した如く尿細管の変化が強く,糸球体には あまり変化が見られなかった.

 置型飼料のみ投与した群

 1例のみ尿細管上皮に軽度の変化が見られるものも あったが他は所見がなかった。

 固型飼料+Cd10mg/100g群

 4例の中2例に尿細管上皮に変性と壊死の所見があ った.他の2例は所見がなかった.

 固型飼料十Cd20mg/100g群

 7例の中3例に所見なく,2例に尿細管の変性がか なり強く見られたが,他の2例は所見は軽度であっ た.強度の変性の見られた2例はいずれもPbも併せ て投与したものである.

 低Ca食のみ投与した群

 4例中2例に所見があり,その1例は,尿細管上皮 の腫張,混濁,うっ血が見られ,他の1例は,小円形 細胞の浸潤が見られた.他の2例には変化は見られな かった.

 低Ca食十Cd10丁目/100g群

 6例中1例はNephrose様変化が強く,他の3例

もかなりの変化が見られたが1例は軽度であった.

 低Ca食十Cd20mg/100g群

 2例において尿細管上皮の拡張,壊死,変性が強く 現われており,2例は中等度,他の3例は軽度の所見

であった.

3 肝    臓

 表6に示した如く,外型飼料のみ投与した群を除い た他の群は,どれにも所見であった.その所見は,肝 細胞の萎縮,核の崩壊消失,原形質の消失,或いは膨 化,穎粒状変性等の退行性変化があり,巣状壊死の見 られるものもあった.その思置細胞の配列の不規則な ものや,細胆管周囲に細胞浸潤の見られるものもあっ た,それらの所見は,あまり強いものでなく似かよっ

(4)

松 242

表4 骨の病理学的所見

口石。国

器羅諦

魯の醤§

の脱形ボ器

譲失成畿

患毫二

十症﹀して所見の程度︵骨粗骨質の葬薄さを中心と

     形成

出︒覇ωぼや︑の冨︒犀昌90

骨芽細胞の増殖

O馨oo崔形成

石灰 の 脱失

国①<o房管の拡張

内骨膜の鋸歯状化

骨質の手薄化         ︑ 所 見

     実験動物

一 一

︸ ︸ 一 ︸

一  一

一 一 一

﹁ ︻

   立日立日   日  口μ

○†Oず小○小○∩モ

二型飼料のみ 一 一 一

十  一

一  一

一  一

十±  ±

±  ±

十 一 ﹇ 一

♂♀

3♀

暗Pb

Pl)

暗Pb

Pb Cd

10mg 100g

十十十 一 一 一  一

十  一

十十  一

十  十  一

一  一

十十十

一十

十 ︸ ︸  一

ε暗Pb

♀暗Pb

♀暗Pb δPb

♀Pb

  20mg Cd   100g

一十一一

+ 十+

十  一

十  一升一

十十一十  一

+︸十+

  暗暗

∩¥QT小06

低二食のみ

十十一 一十十 十十柑十帯辮+

十十一 一十十

︸  一

十  十十

+寸土十二冊+

♀♀ε♀♀♀δ

暗Pb

Pb

暗Pb

Pb Ca低

  10mg Cd   1009

一  一十 一

十帯+鼎+冊十十

一  十

一 十 一 十一十

十  十

十  十

卦柵十柵十柵十卦

   肺  恥 暗暗暗暗暗 暗

小○小00†0†〇十〇十く00†

  a

  璽

Cd驚

(5)

243 慢性カドミウム中毒

表5 腎臓の病理学的所見

の程度尿細管を主として所見

糸球体の変化

尿細管の拡張

尿細管の脱落

尿細管の腫脹混濁

尿細管の変性

尿細管の壊死

︐つ

限局性間質炎

髄質の変化 所見\\ \・⁝

.別

一  ±  一

一  一十 ︻

一 一  十

一  ±

一  一

一 ︻ 一 一 一

﹇ 一

  暗暗 OT♀小O小OOT

二型飼料のみ 十  十

±一 一

一 一十  十±

十 一  一

一  一 ﹇

一 一 ︻ ﹇

甲  剛 ﹁

♂♀ε♀

暗Pb

Pb

暗Pb

Pb 、   軍

Cd二二

升十+ +

±+±±+﹁一

一±  一

十  一十 一

十十

﹁ ︻ ︷  一 騨 ︻

ε 暗Pb

♀ 暗Pb

♀ 暗Pb

δ Pb

♀ Pb♀

  20mg

Cd

   100g

十十 一

十  一

±  十︻ 一 一 一

﹁ 脚  一

  暗暗

○†ΩT小O小○

 のみ

低㏄二 十 十+十冊+

+ 十  ︸十

一二

+ 十++帯

一 一

向 一 ﹁ ︻

一  ﹁ ﹁ ﹁ 哨 ﹁

♀♀

3♀♀♀ε

暗Pb

Pb

暗Pb

Pb

  低

 Ca

  食   十

  10mg

Cd

  100g

掛++町回十 +

一  一 一

十 +升 + +

柵++呼笛+ +

升±﹃升+

一 ﹇ ︻  一

︻ 畔  一 鞠

﹇ ︻  ︸

δ

3♀♀$♀♀♀ 暗 暗 暗

暗Pb

暗Pb

Ca

Cd 20mg

   100g

(6)

肝臓の病理学的所見

表6

の程度肝細胞を主として所見

肝細胞空胞変性

島細胞混濁高張

肝細胞壊死

島細胞萎縮

yつ

国学津醇氏星細胞の増殖

暗暗

○→○†小O小OQT

固型飼料

十十

Pb

Pb

Pb Pb

小○○→小OOT

Cd

10mg 100g

十 

十十十

暗Pb 暗Pb

暗Pb

Pb

Pb

小○∩V†○→∩干小○小○∩干○†

固+ 99

mOO

20

Cd P

十十 

±十

十±

暗暗

○→○†小○小O

のみ

低ca食

十 

十十十十

十±

十 

十十 

暗Pb

Pb

暗Pb

Pb

OTOT小OOTO→○→小O

低嘉+m面 99

mOO

Cd

十十十十十

十十

十十十

Pb

暗暗暗暗暗

Pb

小○︿○○†○†0†○†小QO†

Cd

Ca

20mg100g 244

(7)

慢性カドミウム中毒 245

た程度の所見でCdの多い少ないに関係はなかった.

 腎臓及び肝臓の病理所見においても,室の明暗の関 係については何も一定した傾向の差異を見つけること は出来なかった.

 以上の病理組織の所見をまとめてみると,甚だ,主 観的な段階のつけ方ではあるが,以上の各臓器の病理 組織所見から病変の進行度に段階をつけてまとめて見 たのが,図1及び表7である。

所見

(柵)

(蜥)

(軒)

(+)

0

(帯)

(嚇)

(+)

0

(+)

0

図1 実験条件と所見程度との関係

0・P O・m

δ □{ヨ・[口    (骨)♀ Oe・Φ

暗室中を黒く塗る

ob投与二重にする 疸}◎一 〈}○

畳φ

@◎◎・

督◎

Φ宙

ウ◎・

密G

◇・⑪

OO園

宦@●

8回 ◎□

(腎 臓)

o

畷◎

圃◎ ◎回◎

②○

圏 回回 ○回 ○塵 ◎回

③⑦◎

○○

寥レ

◎◎ ◎@⊂] ○圏

◎回 回◎○

(肝臓)

@○圏○ B⑱

◎回

@圏

怐怐

○○○ 回◎

E□

◎回− ◎回 ◎○ ㌧

固型飼料のみ

 墜C砂(!脇) 稟Cd多(鑑)

低Ca食のみ

低Ca食 十

bd少(!脇)

低Ca食 十

bd多(騙)

骨と腎臓では,固型飼料より低Ca食を与えた方が またCdを多く与えた方が所見が強く出ている.骨 の所見と腎臓の所見は大体並行しているようである.

それに反し,肝臓の所見は,無関係と考えてよいよう である.Pd投与の有無による差は一部に見られるの みであり,暗室と明室の差は明らかでなかったが,雌 雄の差については,雌の方が,わずかではあるが雄よ

りも病変が強いように思われた.

∬ 骨のCa及びPの含有量

 右大腿骨を摘出し,できるだけ軟組織を除去してか ら,硝酸及び過塩素酸で湿式灰火してCaとPを定量 した.分析方法はCaについては,石崎20)らが先に 発表したヂルコニウム塩で除燐する方法で行ない,

PはAUen法21)である.

 実験条件との関係を示したのが図3であって,Ca

もPも生骨1g当りのmg数で表わしてある. Caと Pは密接な相関関係を示して殆んど嗣直線にならんで いる.また飼料群別に図示したのが図3と図4であっ て固型飼料群と低Ca食群との間に著しい差が見られ る.晶晶飼料群はCaは105mg, Pは45mgの辺りを 中心に分布し,低Ca食群はCaは70mg, Pは33mg 辺りを中心に分布して明らかに相違のあることを示し ている.

 Cd投与の影響も明らかで,固型飼料群では10mg/

100g投与群よりも20mg/100g投与群の方が明らかに

脱石灰の傾向が強い,一方低Ca食群ではCdを投

与したものはいずれも著しくCa及びPが低下してい て,Caの多少による差はかえって小さくなってい る.Pb投与の有無暗室と明室の差はないように思 われた.表8は性別の平均値を示したものである・雌

(8)

246 松

表7 実験条件と所見程度との関係

固型飼料のみ

    固  蹄

  1010P 暗暗C暗暗P暗暗暗P

∩〒○→︿・○小○

㎎09b  b ㎎09      P  OO        ワ臼− d b b㏄暗 十        十 食♀♀δ♀♀♀▲δ食ε        ㏄

低      硫

小OO→OTOTOア小OO→

暗Pb

暗Pb

nnnnn 骨1腎臓 bbbbb

o.P(+)

n.b n.b n.b

o.P(+)

o.m(+)

o.m(+)

n.b n.b n.b n.b o.P(+)

o.P(+)

o.m(升)

o.P(十)

o.P(+)

o.P(升)

o.P(升)

o.P(惜)

o.P(升)

o.P(惜)

o.P(惜)

o.P(+)

o.P(+)

o.P(柵)

o.P(+)

o.P(冊)

o・P(+)

o.P(惜)

o.P(十)

o.P(十)

■D■D︑D︶■D

⁝十・ nnn︵n ︶■D︶tD 十・十・ ︵n︵n ︶︶︶tD︶b覧D 升升+・+・・ ︵︵︵n︵nn ︶︶︶︶ ﹇十十一 ︵︵︵︵ 璽

        

骨+甘帯+

︵ ︵ ︵ ︵ ︵

㈲ωω㈲㎝璽↑の

肝臓

b憎b nn

n.b

bb︶︶ ・・十十 nn︵︵

(+)

n.b n.b

(+)

n.b

(+)

n.b

(+)

(+)

n.b

(+)

n.b

(+)

n.b

(+)

(+)

(+)

(+)

(+)

(+)

(+)

(+)

(+)

n.b n.b

図2 骨中のCa,Pの含有量と骨の所見別の関係    所見 αp o.m

140

130

120

110

Ca 100

/︐︒

80

70

60

50

中を黒く塗ノ

︒金φ賛畿

一+昇榊榊

O

誘⇔

許六

二 ・◇

欝 oo

 O oo

o

40

 20     30      40      50      60      70      80

        一→P

の方が脱灰傾向が強いように思われる.

皿 骨申のCa., Pの含有量と骨の所見との関係  図2は,骨中のCa. Pの量と病理組織学的所見の 関係を示したものであるが,当然のことであるが,脱

石灰の病理像のはげしいものほどCa及びPの含有

量が低く,明らかに並行関係があらわれている.

W骨のCa及びMgの含有量

 前述の骨の灰化液についてキシルジルブルー]1を用 いる比色法22)によってMgを定量した. CaとMg

の関係を示したのが図5である.Mg量は生骨1g中

約1.0〜0.24mgであった.骨中のCa量の多いほど Mgも多いという関係は見られるがPに対するときの ように密接ではない.固型飼料ではCa:Mgの比は 1:0.2であり,低Ca食群では1:7であるが,この 両三の間に回帰傾向にあきらかな差が見られた.

V Cdの体内貯溜について

 Cdが体内に入った時,注射した時23)でも経気道

の時24)25)も経口的に与えた時26)27)28)29)も主として肝 臓と腎臓に貯溜するとされているので,この2つ.の臓 器についてCdを分析した.分析方法はCholak and Hubbard 30)のDithizon法である.

 Cdを投与しなかった群の肝臓腎臓も念のため全

(9)

1一15 1 1

34 り0り白 1

00 00

0 0 i

0﹂ 8

  7ρQ54 a−

C

・{

・α・{

甑。竃

毒中

ぐ︑

性慢 幻︐

m

り当

骨19 生

量 有 含P C

8

鞍△▲△

嘱㏄轟

   低  δ皇お  一 ︷    ︵  吊  

♀◎ 回 △   1

   ㊥磁

甲◎

薙亀

昼恒ト

.247

髪舎

〈〉

8

●・甲

骨中Ca.P含有量(三三1g当りmg)

固のみ   Cd 固+10m9   100g   Cd 固+20mg

  「而が 低Ca食のみ

低Ca食

Cd+

ヒ量

低Ca食  十20mg Cdヨ画『

小QOT

小OOア小○OT

30T 小OQT

δ∩干

P

41.7 55.0 49.1 47.2 44.8 49.5 34.8 35.3 32.9 28.1 44.8 31.6

Ca

88.7 121.8 102.8 97.7 94.8 101.4 69.9 67.0 67.9 54.8 81.7 62.5

Ca/P 2.13 2.09 2.09 2.06 2.12 2.05 2.01 1.89 2.07 1.96 1.83 1.97

20     30      40      50      60      70      80

      一→P

         図4 飼料別丁中のCa, P含有量(生骨1g当りmg)

        固のみ       固十Cd       固+Cd

     l::講:::艶1帯

      80

      80       80       60

      60       60一

      鰯ω,。 2。4。6。1∠畜rl一

    掛一一 89  ・・

        け

      60  。        60       60

      ロ

      20     40     60         20     40     60        20     40     60

         一一一一ウP

(10)

248 松

120

110

100

Ca 90

/︑︒

70

60

50

図5 骨中MgとCaの含有量(生骨1g当りmg)

曾△

6

△▲

る}

4◎  ⑨.

串庫

1.0    1.2    1.4 1.6   L8

一→Mg

2.0    2.2    2,4

部Cdを分析してみたが,生の臓器1g当り,肝臓で は0。08〜2.16ア平均0.74γ,腎臓では0.17r〜2,84γ 平均1.12rで,腎臓の方が多い.このような値になっ たのは周囲にCdが取扱われているための汚染の故か も知れない.しかし人類31)や馬32)で特にCdが与え られなくとも,腎臓にCdが貯溜しゃすいことが観察 されているが,鼠にもこのような傾向があると考られ

える.

 Cdを投与した群の貯溜量は図6の如くである.肝 臓と腎臓との貯溜量は並行する傾向はあるが著しいも のではない.肝臓腎臓ともに雌の方が雄より大き

い値を示しておる.暗室と明室との差,Pb投与の有 無の差はないようである.図6は生臓器1g当りの値 で示されているが,表9に示してあるように雌は肝臓 腎臓とも臓器が小さいにもかかわらず,Cd総量は多 い.故にCd貯溜は雄に少ないことは確かであるが,

このような差が雌雄に現われる理由は説明しがたい.

 図7は睡中のCa量と肝,腎のCd量の関係を示

したものである.ばらつきは強いがCd貯溜の多い ほどCaが少ない。即ち脱灰が強い傾向が見られる.

120

100

/80

 60

40

20

愈雪

図6 肝,腎中のCd貯溜(生臓器1g当りのγ)

企    企

△▲

△−向

母冊

奉毎

40   50   60 70      80      90     100     110     120     130     140     150

 一腎

(11)

慢性カドミウム中毒 249

表9 肝臓,腎臓のCd貯溜(平均値)

固+Cd」

    20mg

固+Cd

     100g

低Ca食のみ

      Cd

低C・食+10mg

100g       Cd

低C・食+20mg

      100g

小○○丁

小OQT

小○  OT小OQ†

小OQT

小OQ→

肝 臓

9当りCd

  (γ)

0.27 0.14 26.9 32.2 54.1 55.4 1.06 1.80 37.3 89.0 54,8 84.5

量り公心︵

C

d

量ω ︵

9.32 8.13 10.74 8.0 8.16 9.53 7.94 7.36 9.46 4.48 5.13 4.55

2.5 11.4 289.0 257.6 441.5 528.0 8,4 13.2 352.9 398.7 281.1 384.5

腎 臓

9当り

苡d(劃Cd糖

0.76 0.35 56.9 75.4 82.0 90.8 1.08 2.69 60.1 90.3 79.7 97.5

0.99 0.95 1.22 1.00 1.07 1.08 0.80 0.67 0.94 0.74 0.67 0.64

0.75 0.33 69.4 75.4 87.7 98.1 0.86 1.80 57.7 66.8 53.4 62.4

  9000000000000

  r 1 1 1 1▲

→/321098765432 君企

雪曇

卓 △.

   申

0 40   60

図7 Cd貯溜量と骨中Ca量の関係        l!△

 ヨ

讐▲李︑

100

80

60

40

20

80   100   120一→Ca mg/g

奉命

  日量

曾 申

 卓

 申

4

 ▲ 申

 カドミウムは合金に広く用いられていろので,粉塵 や蒸気の吸引による急性中毒があり,Legge(1923)

33),Schwarz (1930)34), Bulmer, Rothwell and Frankisch(1938)35), Spolyer, KepPler and Por・

ther(1944)36), Ross (1944)37), Lufkin and Ho・

dges(1944)38)等種々の報告がある.経口的急性中

60 80   100   120   →Ca mg/g

毒では消化器系症状が主要症状であるが,Cdの催吐 作用のため嘔吐するので強い中毒は起きないとされて いる.吸入による場合は呼吸器系の症状が強く予後は 悪く死亡率は15%でCd曝露後1週闇位で死亡する

といわれている.

 慢性カドミウム中毒に関する報告は古くは1888年 Tracinski 39)1920年Stepheus 40)の記述がある.

1942年フランスのNicaud, Lafitte, gross 41)は慢

(12)

250 松

性Cd中毒で四肢のリウマチ様疹痛を訴えるものがあ

り,Cd工場の労務者のうち6名にMilkmannの帯

状影をX線上認めたとしている.

 Friberg 42)は1948年にはじあてスエーデンにおい てCd蓄電池工場の労働者を調査した結果,蛋白尿 を確認し,これが慢性Cd中毒の特異な症状であるこ とを明らかにした. 独のBaader(1951)43),;英の Bonnell(1955)44)もこの蛋白尿を確i認している.

また蛋白尿とならんで肺気腫もFriberg, Baader,

Bonne11らによって慢性中毒において起きることが 認められた.Fribergは蛋白尿,肺気腫と共に腎臓 機能障害の3つを慢性Cd中毒に共通する症状とい

っている.

 このようにヨーロッパにおいては慢性Cd中毒の存 在が確認されているが,Princi 45)Hardy, Skinner 46)らアメリカの研究者は否定的であった.また日本 では富田47)らが18名のCd精練従業者を検診した結 果, 1例のカドミウム輪を認めた以外慢性Cd中毒 の症状は認められなかったとしている.

 このように国によって相違があるのは,用いられた Cdの水溶性に違いのあることや曝露条件の違い,従 業年数の違いがあるためと思われるが,また栄養状態 の差も原因ではないかと考えられる.Wilson 48)らは 餌の種類でCd中毒の現われる方が大いに違い,低 蛋白質と灰分の少ない餌を与えた動物の方が,良質の 餌を与えた動物よりもCd中毒の症状が早く現われた

と報告している.

 今回の実験の低Ca食の蛋白質は14%で豊富とは いえず,また質も悪い.とうもろこしと小麦の蛋白が 主体であるから,リジンが最も不足し,トリプトファ ン,メチオニン等の島民アミノ酸も充分でない,

 肝臓では,低Ca食のみ投与した群にも,また低 Ca食に多少にかかわらずCdを投与した群にも変化 が見られたのはこの低蛋白質が主因ではなかろうかと 思われる.高Ca食として,固型飼料を与えた群に は肝臓に変化は見られなかった. しかし固型飼料に Cdを加えた群には変化が見られている. Anwar 49)

らは犬の動物実験で肝細胞に脂肪が増加してglyco・

genも多くなると報告している.またProdan 25)は 小葉中心に細胞浸潤あり,細胞が粒状を呈しているな

どCd中毒における肝臓の変化を記載している.

 骨の変化については,低Ca食の影響は著しく現わ れている.今回の実験では,低Ca食のみ投与した群 の4例のうち3例は骨粗髪症を呈し,1例は骨軟化症 を呈していた.骨中のP,Caも固型食群と低Ca食 群とでは明らかに差がある.これは・Ca:Pの不均衡

からきたものである.補乳動物はCa不足に対して 大いに順応力があるらしく,単なるCa不足のみでは

症状を現わし難く,いつでもVitamin D不足やP

との比と関連して考えねばならない.今回の餌のCa

:Pの割合は,最初の8カ月間は1:18,その後は

1:11と非常にPの割合が多い.Ca:Pの平衡が保た れず,その上に適当量のVitamin Dを摂取しない と,くる病,骨脆弱症,骨軟化症を来たすことは既に 知られているところである.

 Cd投与の影響も骨に見られた.高Ca食のみで

Cdを投与しないものには変化は見られなかった.高 Ca食止でも, Cdを多く投与した群には軽度の所見 ながら約半数に骨の病変が見られた.飼料の栄養素が 充分であり,Caが豊富であっても今回の実験の程度 にCdが体内に入ると,骨に病変が見られるようにな

るといえる.

 低Ca食を投与した群では低CaとCdの作用と が重なって,強度の変化が骨に現われている.骨の Ca含有量はCd投与の有無で明らかに差があり,ま た同じくCdを与えたときでも多く与えた方が少量与 えたものよりCa含有量が低い傾向がある.病理組織 学的にもCdを多く投与した方が病変が強い. Cdを 10mg/100g与えた群では7例全部に骨粗漏症が認め られ,そのうち4例骨軟化症と思われる像が骨粗籟症 と共存していた.Cd 20mg/100g投与した群では7例 全例に骨粗霧症的な変化がこの群に最も強く現われて いたが,骨軟化症の像をともなっているものは1例の みであった.

 慢性Cd中毒では最も主要な変化は腎臓にあるとい

えるようである.Fribergが肺気腫をもCd中毒の

主要症状の1つとしているのは主としてCdの塵埃を 吸入するために起った工場における症例のみの観察で あって,経口的にのみCdが体内に入ったときはこの 症状は起らない.ともあれどの経路で入ったときでも 慢性中毒ではまず第一に,腎臓に病変を起すようであ る.中毒患者のほとんどすべてに蛋白尿が見られる 50)51)52)53)ことがその証拠であり,入間の症例におい ては剖検や生検でも腎臓の病変が確かめられており,

42)43)54)55)またどの動物実験でも腎臓の変化が記載さ れている.しかしその変化は尿細管が主であって糸球 体は侵されないのが特徴である25)26)49)56)57).今回の

実験でもCdを投与した動物には,低Ca群では全

例に,高Ca食品でも半数以上に腎臓に尿細管を主 とした病変を見ている.尿細管に障害のあるとき再呼 吸機転が妨げられることは当然で,CaやPの再呼吸 の低下が骨を脱石灰に導き,Cd投与群と非投与群の

(13)

慢性カドミウム中毒 251

間のCa.Pの含有量に差が現われ組織学的にも差異を 示す結果となったのであろう.このように腎障害に骨 変化を伴う疾患が野性クル病,或いは腎性骨軟化症と 呼ばれるものである.1952年Dent 58)は腎性クル病 を主として糸球体障害によるものと尿細管障害による ものとに二大別し前者を Glomeruler rickets 後 者を tubular rickets と名づけた.そしてtubular ricketsにはphosphate diabetes, Dehr6 de Toni Fanconi syndrome, nephrocalcinosis (renal tubu・

1ar acidosis)等を上げた, Dehr6 de Toni Fanconi

syndromeが一般にFanconi Syndromeと呼ばれ

ているものである.本症は蛋白尿,糖尿,アミノ酸尿 低燐血症にクル病を伴ったものをいい,腎臓の近位尿 細管の欠陥に基づき,糖,リン酸塩,アミノ二等の再 吸収が障害されるために発生すると考えられている59)

.Clay 60)らもFanconi症候群の2例の剖検におい て近位尿細管が正常に比して短かく,また糸球体と結 合する部位が狭くかつ屈曲していたと報告してい

る.

 この症候群は,重金属ことに鉛によって発生するこ とは知られており,Cd中毒でもアミノ酸及びCaの 排泄の増加することはKazantzis54)らが英国の工業 労働者の例についても報告しており,Fanconi症候 群をおこしはじめている症例もあると報告している.

我々もイタイイタイ病患者は尿中のアミノ酸量が異常

に高く,尿中のPに対するCaの比が健康者に比し

て高いことを見ている67).

 要するにイタイイタイ病をCd中毒による二丁骨軟 化症と考えると諸症状がよく説明できるのであって,

第一の要因はCdによってひきおこされた腎障害で,

それによって骨が二次的に侵されたものであるが,そ れに多発した当時を考えると敗戦後の食糧難がこれを 促進したと思われる.

 今回の実験では,Vitamin Dの関係を見るために 明るい室と暗室に分けて養ったがその差は見られなか った.明室といっても直射日光の入らない室であるか ら,Vitamin Dは充分ではないから,もしVitamin D が豊富に与えられば,Caの吸収がよくなり腎臓にお ける再吸収が妨げられても骨に病変を現わさなかった かも知れない.

 イタイイタイ病発生地帯はCdとともににPbよ

っても汚染されていると考えられるので,Pb投与も 1つの条件として実験に組み入れたわけである.Pb

中毒によってFanconi症候群の発生することは既

に知られていることであり,またWachstein 61)と Blackman 62)は剖検において,腎臓と肝臓にnuclear

inclusion bodiesが見られたと報告している.太田 63)は動物実験でPb慢性中毒の場合肝臓より腎臓に 著しい変化を示し,糸球体,尿細管いずれにも変化が 見られたと報告している.今回の実験ではPbについ て一部の要因配置を省略したため完全な比較は出来な くて,Cdの作用がPbを加えることにより増強され るか否かが一部の動物について比較ができただけであ

る.

 腎所見(表5)について見ると,固型飼料とCdの 20mg/100g投与の組合わせにおいて,例数は少ない ので明白は結論は下せないが,Pbも与えた鼠には Pbを与えない鼠より病変の見られることは高いとい

える.一方低Ca食を与えた群ではPb投与による

差は見出し難い. また骨及び肝の所見ではPbによ

る差があるとはいい難い.

 要するに,CdにPbを併せて投与すれば,当 然症状を悪化する傾向があるのであろうが,今回の 10mg/100g程度のPbの経ロ投与では明らかな差を 現わすほどの影響はないものと推論される.

 性別の関係についてであるが,Cd中毒の症例報告 では男子が女子よりはるかに多い.しかしこれはCd を取り扱う従事者は男子がほとんどであるためであろ う.動物実験では生存日数から見ると雄の方が抵抗力 が弱いようである64)65)66).しかしイタイイタイ病は経 産婦に多く見られ男子では極めて僅かである.これは 男女のCa代謝の様相に差異があるためと考えられ,

また男性ホルモンが骨格の強化の方向にはたらくたあ でもあろう.

 今回の実験でも骨に変化のあるものは雌の方が雄よ りも多く見られ,Cdの体内蓄積も雌の方が多かった.

これは雌の方がCd代謝の乱れをおこしやすいことを 表わしていて,何らかの条件が揃えばCd中毒にと ものう骨症状に男女差が強く現われ得る可能性をしめ しているものと考える.

 若成熟ラ・ットを高Ca食と低Ca食の2種類の餌

にそれぞれ飼料100gに対して10mgと20mgの2段

階に非水溶性の酸化Cdを混入して与え約10カ月後に 観察した.Cdを与えたものには骨には骨門門症と骨 軟化症が共存しているものもあり,Cdを多く与えた 方が強く所見が出ていた.このことは低Ca食群に明 らかに見られたが,高Ca食群でも軽度ながら骨の変 化の現われているものがあった.また雄より雌の方が 所見が強いようであった.腎臓には尿細管を主にした

病変があり,高Ca食より低Ca食群の方が強い病

(14)

252 松

変があった.肝臓では高Ca食群,低Ca食群, Cd の多い少ないに関係なく軽度の所見が見られた.Pb 投与の有無による差,明室と暗室の差は特にとり上げ

るほどのものは見られなかった.

 要するに非水溶性のCd化合物によってもイタイイ タイ病に似た腎性骨軟化症を動物におこすことがで き,それが低Ca食の状態によって増強されることが 確かめられた.このことは同病の病因の説明に役立つ

と思う.

稿を終るに当り,御指導.御陵閲いただいた石崎有信教援に深謝 いたします.病理学的検索について御指導を賜った渡辺四郎教授に 深甚なる謝意を表します.

文 献

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      A

   Some albino rats weighing about 100

 were fed with two kind of diet$, one

 these groups was given 10mg. cadmium  per 100gm.

   Thus after ten months they were

 the result we found that some rats

 and cadmium had on their Lones

   The finding was als) apparent but '

 which was given sufficient calcium  which were given cadmium, in the  finding was observed as the

 which had been given insufficient

 finding was marked without regard

 calcium and doses of cadmium.

   The effect of lead was also  for the changes in the bone and the  of female rats. After all, it was  Itai‑Itai disease could be caused by  could be increased by the state of

   These findings may be helpful for  disease.

v A rp SveE 253

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 Finks, A. J., Alsberg, C. L.: J. Pharm.

 Exp. Therap., 21, 59 (1923).

 65) Schroeder, H. A., Vinton, W, H., &

 Balassa, J. J. : J. Nutr. 80, 39 (1963),   66) Schroeder, H. A., Vinton, W. H., &

 Balassa, J. J. : J, Nutr. 80, 48 (1963).

  67) EvaigG・gthvers ・ ptft2S ・ ssit rc・

  iNN XcJi!t ・ zi< 2I: iX ・ esmattSIZ ・ ANrk‑ ・ zaJll   en‑fits・SIZth va ftll3 Zi : HAgthIiR, 25, 2, 200   (1967).

     bstract

       grams were divided into two groups and

        rich and the other poor in calcinm. One of        oxide mixed in the feed and the other 20mg.

     observed pathologically and histologically. As

    which were given an insufficient calcium diet

 osteomalacia as well as osteonorose. ・

       ̀

      m the slight degree in the case of the group       and high degree of cadmium. On the animals         kidney the mcst significant microscopical  degeneration of tubules, especially in the group

   calcium. As to the c,hanges in the liver a slight       to the sufficient or insufficient quantity of

examined, but no clear difference was observed. As     kidney, the finding was more apparent in case

confirmed that the renal osteomalacia similar to the

     the water insolube cadmium oxide and that it    insufficiency of calcium,

        the expl{mation of the s3‑cilled "Itai‑Itai"

Figure

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