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腎炎症例研究 33 巻 2017 年 Light chain proximal tubulopathy による進行性の腎障害を呈した Monoclonal gammopathy of Undetermined significance(mgus) の一例 1 柴田真希 1 朝倉慶 中島宇田 1 豊

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(1)

(1石心会 川崎幸病院 腎臓内科

(2東北大学大学院医学系研究科 病理病態学講座  (3山口病理組織研究所

Key Word:Light chain proximal tubulopathy,MGUS,腎機能 低下

Light chain proximal tubulopathy による

進行性の腎障害を呈した Monoclonal gammopathy of

Undetermined significance(MGUS) の一例

柴 田 真 希

  中 島   豊

  田 中 詩 織

朝 倉   慶

  宇 田   晋

1  病理コメンテータ  

 城   謙 輔

 山 口   裕

症  例

症 例:76歳 男性 主 訴:なし/腎機能障害 現病歴:73歳時,微熱と腰痛で他院受診時 に尿蛋白1+,潜血±を指摘され当院を紹介さ れた。血中よりIgA-κ型M蛋白が,尿中より κ型BJPが検出されたが,IgG,IgMの抑制が なく,他の症状・所見・検査異常がないため, MGUSと診断され経過観察とされた。 し か しCr値 は3年 の 間 に 悪 化 を 見 せ た (Cr0.8→1.2mg/dl)ため, 76歳時に腎生検を 施行した。 既往歴:糖尿病(74歳),前立腺肥大症,腰 部脊柱管狭窄症 身 体 所 見: 身 長164 ㎝, 体 重60 ㎏, 血 圧 120/80mmHg,脈拍60回/分 全身骨X線写真:特記すべき異常なし。骨融 解像なし。 Cast nephropathy 遠位尿細管の管腔内 過剰産生された軽鎖が Tamm-Horsfall蛋白と結合し、結晶化 する AKIパターン 多発性骨髄腫に合併 近位尿細管の細胞質内 軽鎖が近位尿細管細胞内に再 吸収されライソゾームにとりこま れたあと“消化不良”を起こす CKDパターン、Fanconi症候群 MGUS~多発性骨髄腫に合併 Light Chain Proximal Tubulopathy

Heptinstall’s Pathology of the Kidney 6th Stokes et al. JASN vol 27 2015

図1

検査所見(腎生検時)

血液学 生化学 血液ガス分析 蓄尿検査 WBC 5756 /μl TP 6.9 g/dl pH 7.38 mmol/l 尿蛋白 0.4 g/日 RBC 437 /μl Alb 4.2 g/dl PCO2 48.0 mmol/l 尿Cr 1160 mg/日

Hb 14.2 g/dl BUN 18.2 mg/dl HCO3 27.0 mmol/l 24hCcr 73 ml/分 Hct 42 % Cr 1.2 mg/dl 尿糖 0.0 g/日 Plt 18万 /μl eGFR 46 ml/分 尿定性 尿K 39 mEq/日

UA 4.6 mg/dl 尿蛋白 1+ 尿P 589 mg/日

免疫学 Na 144 mEq/l 尿潜血 ± FEK 9 % CRP 0.05 mg/dl K 4.0 mEq/l FEP 19 %

IgG 655mg/dl Cl 105 mEq/l 尿沈さ 血液IFE IgAκ型M蛋白 IgA 612mg/dl Ca 9.3 mg/dl RBC 1-4 /HPF 遊離L鎖κ 908mg/L IgM 51 mg/dl P 3.5 mg/dl WBC 1-4 /HPF 遊離L鎖λ 6.9 mg/L C3 107 mg/dl HbA1c 5.7 % 硝子円柱 1-4 /WF 遊離L鎖κλ比 132 (0.26-1.65) C4 37 mg/dl 尿中BJP陽性 図2 ― 104 ― ― 104 ―

(2)

図 5

PAS染色 ×200

図 4

蛍光免疫染色

IgG(-) IgA(-) IgM(±) C3(-) C4(-) C1q(-)

PAS染色 ×400 PAM染色 ×400 図 3 MT染色 ×40 図 8 免疫染色(λ鎖)×200 免疫染色(κ鎖)×200 図 7 MT染色 ×200 図 6 PAS染色 ×400

(3)

DFS染色 ×200 図9 図 10 電子顕微鏡写真 Fibrillary inculsions 図 11 30 40 50 60 70 80 2011年2月 2011年9月 2012年4月 2012年10月 2013年5月 2013年11月 2014年6月 2014年12月 2015年7月 2016年1月 MGUSの診断 UP1+、U-OB± Cr0.8 腎生検 Cr1.2 eGFR (ml/min/1.73m2) 骨髄穿刺 形質細胞7% Cr1.5 73歳 74歳 75歳 76歳 77歳 図 12 Monoclonal gammopathies (Plasma cell dyscrasias)

MM: multiple myeloma(多発性骨髄腫)

M蛋白3g/dl以上 and/or 骨髄中の形質細胞10%以上、臓器障害(高Ca血 症、腎病変、貧血、骨病変)あり

Smoldering MM (くすぶり型MM)

M蛋白3g/dl以上 and/or 骨髄中の形質細胞10%以上、臓器障害なし

MGUS:monoclonal gammopathy of undeterminedsignificance

(意義不明の単クローン性γグロブリン血症)

M蛋白3g/dl未満 and 骨髄中の形質細胞10%未満、臓器障害なし MGRS:monoclonal gammopathy of renalsignificance

(腎障害を伴う単クローン性γグロブリン血症) MGUSの中で腎障害を持つもの

IKMG: International Kidney and Monoclonal Gamopathy Research Group

図 13

MGRS: monoclonal gammopathy of renal significance

腎障害を伴う単クローン性γグロブリン血症

糸球体病変 Organized deposits

Fibrils: amyloidosis (AL, AH, AHL), Fibrillary GN

Microtubules: Immunotactoid GN, Type1 cryoglobulinemic GN

Non-organized deposits MIDD: LCDD,LHCDD, HCDD

PGNMID

C3 glomerulopathy with monoclonal gammmopathy 尿細管病変

Proximal tubulopathy with crystals (Light chain Fanconi syndrome) Proximal tubulopathy without crystals

Crystal-storing histiocytosis

Bridoux et al. Kidney International (2015) 87, 698-711

図 14

MGRS: monoclonal gammopathy of renal significance

腎障害を伴う単クローン性γグロブリン血症

Stokes et al. J Am Soc Nephrol (2015) 27

病理診断名 N (%)

Amyloidosis (AL, AH, AHL) 451 (41%) LCCN: Light chain cast nephropathy 297(27%) MIDD: Monoclonal immunoglobulin deposition disease 209(19%)

LCCN + MIDD 55(5%)

LCPT: Light chain proximal tubulopathy 54(5%)

Total 1078

― 106 ― ― 106 ―

(4)

図 17

Light Chain Proximal Tubulopathy (Outcome and Treatment) 緩徐にESRDに至りうるが(中央値196か 月)、症例数が少なく予後は不明 ESRDへの進展率は8~40%と報告に幅あり 治療方法は確立されていない MMに合併した場合は、化学療法や末梢血 幹細胞移植にて、寛解した例が多数報告さ れている MGRSの段階から積極的に化学療法を行う ことも考慮すべきかもしれない LCPTの治療予後 Stokes et al. J Am Soc Nephrol (2015) 27

幹細胞移植+ 化学療法 N=10 化学療法 N=12 なしN=8 年齢(歳) 51 68 65 MM 6 3 1 MGRS 3 6 3 Cr mg/dl (治療前) 2.01 2.48 2.38 Cr mg/dl (治療後) 1.43 2.27 3.11 フォロー 期間(月) 65 41 59 図 16

Light Chain Proximal Tubulopathy (Diagnosis) 診断は近位尿細管細胞質内に軽鎖を証明する 光顕所見は見逃しやすい 免疫蛍光染色は、凍結標本では陽性率が35%に低下す るため、パラフィン包埋切片のプロナーゼ処理が必要1) 電子顕微鏡で近位細胞質内に異常なライソゾームや封 入体が見られれば確定できるが、ルーチンでは行われ ていない 近位細胞質内の封入体。軽鎖染色。 プロナーゼ処理後 Herlitz et al. Arch Pathol Lab Med 2012

異常なライソソーム Stokes et al. JASN 2015

→LCPTは診断しにくく、見逃されやすい疾患

1) Stokes et al. J Am Soc Nephrol (2015) 27

図 15

Light Chain Proximal Tubulopathy 近位尿細管細胞質内に軽鎖からなる 封入体が蓄積する 軽鎖は糸球体でろ過され近位尿細管に再 吸収され、ライソゾーム内で消化される。 ライソゾーム内での“消化不良“により、ライ ソゾームの異常や近位尿細管機能異常、 結晶(Crystals)などの沈着物を形成する 臨床的にはCKDパターンが多く、 Fanconi症候群を呈することが多い 圧倒的にκ鎖が多い MMにも合併しうるがMGUSの段階で診断 されることが多い 近位尿細管細胞質内の好酸性物質の蓄積 Larsen Modern Pathology Vol24 2011

近位尿細管細胞質内の結晶 Bridoux et al. KI Vol87 2015

図 18

まとめ

Light chain proximal tubulopathyによる進行性の腎障害を呈した MGRSの一例を経験した LCPTはM蛋白関連腎障害の中でもかなり頻度が低いが、本症例は 結晶ではなく細線維を形成する封入体タイプであり、さらに稀な症例 と考えられた MGUSの中でも尿検査異常や進行性の腎障害を呈する場合は MGRSの可能性を疑い、腎生検の適応である LCPTは診断が難しく、見逃されやすいため、腎生検組織の注意深い 観察が必要である ESRDに至りうる疾患であるが、治療法は確立されておらず、今後の 症例の集積が待たれる

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討  論

柴田【スライド】M蛋白に関連して結晶が沈着 する病気といえば,cast nephropathyですが,こ ちらが遠位尿細管の管腔内に軽鎖からなる結晶 が沈着する疾患に対して,今回のLCPT(light chain proximal tubulopathy)は近位尿細管の細 胞質内に結晶が沈着する疾患です。  cast nephropathyがmyelomaにAKIを 起 こ す のとは対照的に,LCPTはCKDや,Fanconi症 候群を起こします。またMGUSの段階で発症 しやすいことも特徴です。今回発表する症例は LCPTの中でも,結晶を形成するタイプではな く,線維質の沈着物を伴う珍しいタイプでした ので報告します。 【スライド】症例は,76歳の男性です。73歳 時に尿検査異常を指摘され精査をしたところ, IgA-κ型M蛋白が検出されました。しかし, IgG,IgMの抑制がなく,ほかの所見もなかっ たため,骨髄検査を受けずにMGUSと診断さ れ経過観察をされていました。しかし,creati-nineは3年 の 間 に0.8mg/dLか ら1.2mg/dLと 悪 化を見せたため,腎生検を行っております。 【スライド】腎生検時の検査所見を示していま す。IgAの増加と,IgGの低下,および遊離κ 鎖の著明な増加を認めました。しかし,my-elomaを示唆するような血算の異常やカルシウ ム異常は認めませんでした。creatinineは1.2mg/ dLで腎障害を示しており,尿蛋白は0.4g/日程 度でした。acidosisや腎性糖尿,リン酸尿,尿 酸尿などは認めず,Fanconi症候群は示してい ないと思われました。 【スライド】腎生検所見を示します。所々に尿 細管が脱落して,間質は拡大し,線維に置き換 えられています。円柱は所々に散見されており ますけれども,cast nephropathyの所見は認めま せんでした。 【スライド】糸球体には特に著変を認めず,蛍 光免疫染色でも有意な所見は認められませんで した。 【スライド】尿細管はPASで見ると,一見異常 には気付きにくいのですが,拡大してみます と,近位尿細管細胞が著明に腫大して,淡明化 し,核が基底膜側に圧排されているのが分かり ます。何らかの沈着物を想像させる像が見られ ました。 【スライド】遠位尿細管は正常で,近位尿細管 でも正常な部分もありました。 【スライド】massonで見ると,より近位尿細管 の異常が鮮明になり,近位尿細管細胞質が空胞 変性している印象を受けます。 【スライド】当院の凍結切片では,軽鎖染色を 行っておりませんでしたので,パラフィンブ ロックを用いて軽鎖の免疫染色を追加しまし た。免疫染色ではκ鎖が近位尿細管のみに沈着 していることが分かります。遠位尿細管は染 まっておらず,またλ染色も陰性でした。 【スライド】DFS染色も追加しましたが,amy-loidは陰性でした。 【スライド】電子顕微鏡では,近位尿細管細胞 質内が,色調の薄い物質で充満しているのが分 かります。拡大を上げてみますと,沈着物は結 晶構造は示しておらず,細線維様構造が見られ ました。沈着物による近位尿細管細胞障害,間 質障害により腎機能低下がもたらされていると 思われ,LCPTと診断しました。 【スライド】本症例のMGUSは,臨床診断のみ であり,骨髄検査は施行していなかったので, 血液内科にお願いをして,骨髄穿刺を施行して いただきました。しかし,形質細胞はやはり7% のみで,骨髄上はMGUSの診断でした。 【スライド】MGUSではあるものの,産生され たM蛋白により腎機能低下が惹起されており, 進行性であったため化学療法も考慮されました が,ご高齢であることから経過観察の方針と なっています。  さて,今回の症例はMGUSにLCPTを合併し た症例でしたが,軽鎖の近位尿細管細胞への蓄 積により,腎障害を合併しておりました。この ように最近では,良性とされてきたMGUSの ― 108 ―

(6)

中にも腎障害を伴って,予後不良となる疾患が あることが指摘され,2012年にMGUSの「U」 を「R(renal)」に変えたMGRSという言葉が IKMGグループから提唱され,MGUSと明確に 分離されるようになりました。 【スライド】MGRSの概念には,骨髄腫に至る 前に発症するamyloidosisや,LCDDなどが含ま れますが,そのほかにもあらゆるタイプの腎障 害を引き起こすとされています。  今回のLCPTもMGUSに合併しやすくMGRS の範疇に入ります。 【スライド】次にその頻度を示しています。コ ロンビア大学の15年間の腎生検のうち,M蛋 白に関連した腎生検1078例を集計したもので す。この中でもLCPTはかなり頻度が低く,ま れな疾患であることが分かります。 【スライド】さて,LCPTは先ほどからお示し しているように近位尿細管の細胞質内に軽鎖か らなる封入体が蓄積する疾患です。  軽鎖は糸球体でろ過され,近位尿細管に再吸 収された後,lysosomeで消化されますが,これ が何らかの事情で消化不良を起こすことによ り,結晶が沈着するといわれています。  封入体はこの教科書に載っているような,結 晶の形をとることが多いですが,今回の症例は 細線維タイプでした。  文献によりますと,細線維タイプの亜型もま れに報告されており,本症例もそれに合致する と思われます。圧倒的にκ鎖であることが多く lysosome内の酵素に対する抵抗性などが原因と して考えられています。 【スライド】診断では,近位尿細管細胞質内に 軽鎖を証明し,電顕で封入体を認めれば確定 します。しかし,LCPTの光顕所見はPAS陰性 のことが多いため見逃しやすく,さらに軽鎖は 凍結切片では陽性率が格段に低下することが分 かっており,電顕も尿細管をroutineで捉える ことは少ないです。故にLCPTは診断しにくく 見逃されやすい疾患であり,報告されているn 数が極端に低いのも,それらが関係している可 能性があります。 【スライド】本症例でも,最初は当科では,尿 細管病変を見逃しており,免疫染色と電子顕微 鏡所見を追加していただくことで,ようやく診 断に至ることができました。  LCPTの予後は症例数が少なく分かっており ませんが,ESRDに至った報告も散見され,進 展率は8から40%とされています。治療法はま だ確立されてはいません。骨髄腫に合併してい る場合は,化学療法や幹細胞移植にて,fanconi 症候群や腎機能が回復したという報告が多い ですが,MGUS症例に関しては,化学療法の是 非はまだ意見が分かれています。  本症例は高齢でもあり,血液内科の先生が化 学療法に積極的ではなかったことから,経過観 察となりましたが,世界的には腎予後を考えて, 化学療法を行う傾向にあるようです。

【スライド】light chain proximal tubulopathyによ る進行性の腎障害を呈したMGRSの一例を経 験しました。LCPTはM蛋白関連腎障害の中で も,かなり頻度が低いですが,本症例は結晶で はなく細線維を形成する封入体タイプであり, さらにまれな症例と考えられました。この細線 維沈着物の意味や,lysosome,mitochondriaと の関係は,文献を見ても分からないことがとて も多かったので,先生方のご意見をお聞きした く提示させていただきました。よろしくお願い します。 座長 ありがとうございました。フロアから何 かご質問等はございますでしょうか。城先生, お願いします。 城 骨髄の7%の形質細胞ですけれども,本来 の正常値は1から2%です。10%以下をMGUS と呼んでいるのですけれども,やはり5%から 10%の形質細胞は注目すべき数値のように思う のです。MGUSであって,ボルテゾミブをやっ て,症状が良くなったという症例もあるように 思います。このボルテゾミブの適用について, 先生はどういうふうにお考えですか。 柴田 正直いいまして,私の患者さんではなく,

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患者さまとその辺りはお話ができていないので す。患者様、血液内科の先生、総じて乗り気で ないというのが結論です。すみません。 城 血液内科の先生でないと,あの薬は使えな いのですね。 柴田 だと思われます。 座長 ほかに何かございますでしょうか。  1つだけ。経過観察をして,その後の腎機能 の推移や尿所見等はどうでしょうか。 柴田 腎機能低下はまだ進行しております。腎 生検をしたときから,さらにまた進行して,今 はcreatinineが1.5mg/dLです。 座長 1.5mg/dLですか。はい。分かりました。  では,あとないようでしたら,コメンテーター の先生,病理所見の解説をお願いいたします。 山口先生,お願いします。 山口 後で,城先生が恐らくまとめた話をして くれると思います。

【 ス ラ イ ド01】light chain proximal tubulopathy について,去年,城先生と一緒にフランスで, monoclonal gammopathyのKidney internationalの 研究会に出て,臨床の方が提示されたように, with crystal depositとwith no-crystal depositとの

2種類に分けて,整理していました。crystalで 菱形とか,四角とか,結晶構造になっているの ですが,non-crystal depositの場合は,細線維状 です。 【スライド02】近位尿細管が淡明に膨れ上がっ ているのです。straight portionまで進展してい く例を見たことがあります。convolutedな近位 尿細管のsegmentに限局している感じです。糸 球体はやや虚脱して,間質は問題はないです。 【スライド03】PASで淡明な腫大が特徴であり ます。臨床の先生がいわれたように,核が圧排 されて扁平化している感じです。近位だけに限 局して,遠位系にはっきりしたものはないです。 【スライド04】髄質側のstraight portionのとこ ろにきています。 【スライド05】massonで,こういう感じの淡明 です。普通はmitochondria-richで,赤く顆粒状 に出ないといけないです。 【スライド06】mitochondriaがはっきりしなく なってしまっているのです。これはstraight portionの近くです。mitochondriaがなくなって しまったのか。減っていると思うのです。 【スライド07,08】HEですと,こんな淡明な感 じです。 【スライド09】PAMで見ると,secondary lyso-someだと,PAMの陽性顆粒を示すがはっきり しないです。 【スライド10】同じ感じです。1回見れば,も う忘れないとは思うのです。  軽い場合は,部分的にしか来ない場合で,見 逃してしまう場合があります。びまん性に来て いれば,気が付き易いです。 【スライド11】κが優位に出て,遠位系はほぼ (-)です。近位が主体で出ていると思います。 【スライド12】λはほぼ(-)です。 【スライド13】近位尿細管では,黒いのは,mi-tochondriaで,その間に何か変な構造物が見ら れ細線維状の構造になっています。 【スライド14】何か線維状のものです。lyso-someだと周りに膜がありますけれども,はっ きりしません。癒合して大きくなって,細線維 状に見えている。

【 ス ラ イ ド15】light chain proximal tubulopathy with non-crystal depositになります。

【スライド16】ダガティたちがまとめたもので す。40例 がcrystallineで,non-crystallineが6例 ということです。多くはκですが,non crystal-lin eはλもある。fanconi症候群は圧倒的にcrys-tallineが多いです。 【スライド17】non crystallineのdepositsで,細 線維状です。さっきの線維状のものとは,ちょっ と構造が違います。 【スライド18】それに対して,crystalの場合, massonで硝子滴よりも大きく顆粒状に出てき ま す。 こ れ はcast nephropathyも あ り ま す が, 赤染した顆粒状に出てきて,菱形やいろいろな 形態をとってくる。多くはκだとこのタイプ ― 110 ― ― 110 ―

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が多いのですが,non crystallineもあることで, 貴重な例だろうと思います。以上です。 座長 ありがとうございました。  それでは城先生,よろしくお願いします。 城 【スライド01】この症例の特徴はlight chain proximal tubulopathy でありながら,まずファン コーニ症例群を呈していなかったということで す。血清学的にκ鎖のmonoclonal gammopathy があったけれども,骨髄には7%のplasma cell しかなかった。そして,病理的には進行性の腎 障害がある症例です。 【スライド02】1本の組織で,皮質対髄質が6対 4ぐらいです。 【スライド03】これを見ますと,糸球体にはほ ぼ異常がないようですけれども,尿細管に萎縮 があって,残った近位尿細管は淡明な胞体を呈 しhypertrophicに見えます。 【スライド04】近位尿細管のマーカーはbrush

borderですので,brush borderのある近位尿細管

が淡明化しております。 【スライド05】しかし,そうでない場所も,淡 明化はheterogeneousに見られると思います。 【スライド06】血管系には異常はありません。 amyloidなんかのときに,動脈系にも沈着があ りますけれども,そういう変化はないようです。 【スライド07】masson染色が,近位尿細管の mitochondriaを赤く染めますので,異常がよく 分かる。細空胞化を起こして,しかも尿細管上 皮の丈が高くなっている所見だと思います。 【スライド08】一方,遠位系には異常がありま せん。 【スライド09】動脈は,年齢相応のfibroelastosis があり,特に動脈硬化以外の異常はないと思い ます。 【スライド10】これが,髄質の外層の外帯だと 思います。近位尿細管のP3 portionが髄質のこ の場所に入ってきております。その領域にも泡 沫化の所見があるようです。 【スライド11】それより内側になりますと,ほ とんどが遠位系と集合管ですので,そこには変 化がないと思います。 【スライド12】Masson染色と同じ連続切片を PAS染色で見ますと,本来lysosomeが顆粒とし て出てこなければいけませんけれども,ここで はほとんどPAS陽性顆粒はないです。HEもほ とんど空胞化そのものです。それから,PAM 染色においても,本来はlysosomeが細顆粒と して出なければいけません。これだけ周囲の PAM陽性の細線維が強く染まっているにもか かわらず,近位尿細管のlysosomeにほとんど PAM陽性の顆粒が出ていないのも特徴です。 【スライド13】免疫染色で見ますと,パラフィ ン切片ですが非常にきれいな染色だと思いま す。プロナーゼで消化をすると出やすいという 演者の報告どおりに,結晶になったときに,ど う見てもこれはκ鎖の結晶だと思うのがfrozen の切片で染色されてこないことがあります。パ ラフィン切片で,プロナーゼ処理をすると,先 ほどのrhomboidの結晶構造のところにκ鎖が きれいに出てくることがありますので,これは, 恐らく消化をしているのだろうと思います。 【スライド14】これは弱拡ですけれども,κ鎖 に restrictionがある,しかも近位尿細管に陽性 の所見だと思います。 【スライド15】糸球体は特に異常がありません。 【スライド16】全節性硬化が1個。糸球体がや や腫大しておりますけれども,特に異常はあり ません。尿細管間質においては,先ほどの所見 のとおりです。 【スライド17】細空胞化というのを,isometric vacuolizationといっていいのか分かりませんけ れども,所見としてはisometric vacuolizationに 非常に似ております。急性尿細管壊死がそこ に加わっております。遠位系には異常がない。 monoclonal gammopathyのときに,遠位尿細管 にcast nephropathyを合併することがあります けれども,さらにはproximal tubulopathyのと きにも遠位尿細管にcast nephropathyを合併し たタイプもありますけれども,この症例はcast nephropathyは全くありませんでした。

(9)

【スライド18】髄質の尿細管には,先ほどの近 位尿細管の外帯を除いては異常がなかったと思 います。 【スライド19】糸球体には特に異常がない。 【スライド20】電顕もほぼノーマルです。 【スライド21】尿細管では,先ほどの空胞化の 部分が,全てmitochondriaです。brush borderが あって,この尿細管は近位尿細管ですけれども, 先ほどの細空胞化のところは,こういった光顕 の白い領域に一致する所見です。 【スライド22】一方,遠位系には特にこういっ た変化はないです。 【スライド23】強拡大像ですけれども,これは, みんなmitochondriaです。  では,lysosomeがどこにあるのか。lysosome はmembrane boundですけれども,これを見ま す と, 特 にlysosomeのmembraneは こ こ に は ないのです。しかし,ほかにlysosomeを示す organellaはないので,この領域はlysosomeも含 む領域だと思います。  D’Agatiの 講 演 を 聞 く と, や は りlysosomal storage diseasesの範囲でこの疾患群を表現して い ま す。crystalloidも,non

crystalloidも,lyso-somal storage diseasesとしてまとめて表現して

おります。これらをlysosomal storage diseases と一応考えていると思うのですけれども,lyso-someという証拠はここにはないと思います。  しかし,典型的なlysosomeがないということ は,一部がlysosomeである可能性もあるという ことです。  当然,この沈着物は,細線維構造があります ので,まずamyloidを疑わなければいけない。 amyloid染色はやっておりますが,陰性だった。 免疫染色においては糸球体には異常がない。  尿細管上皮には,少なくとも重鎖の沈着性は なかった。これは蛍光染色です。免疫染色では, κ軽鎖だけの沈着であった。 【スライド24】糸球体に関しては,ほぼ正常で す。 【スライド25】まとめです。血清中にはIgA-κ の単クローン性γグロブリン血症があり,尿 中にはIgAがはずれてκ鎖だけのBence Jones proteinが見られていた。  それから,免疫染色でκにrestrictionを示す 近位尿細管上皮への沈着があったということ で,light chain proximal tubulopathyは間違いな いと思います。臨床的にはFanconi症候群が見 られなかった。どうして結晶構造でなく線維構 造かということが問題として残ります。 【スライド26】 臨床的にはFanconi症候群が陰

性であって,尿中にはκ型 Bence Jones protein があり,骨髄ではMGUSを示し,血清中では

IgA-κのmonoclonal gammopathy,腎組織では

κ型のlight chain proximal tubulopathyというこ とでまとめられると思います。  文献的には,これにそっくりなものが出てま いりました,イギリスのTerence Cookからの論 文で,これだけの論文です。原因はただ分から ないと4行書いてあるだけです。もうちょっと 勉強して論文を出してもらうといいのですけれ ども,文献欄にも大した論文を引いておりませ ん。ただ,症例はこれと全くそっくりです。 【スライド27】この論文は,Oxford University

Pressか ら 出 て い る『CKJ(Clinical Kidney

Journal)』という雑誌に掲載されています。

【スライド28】これが,先ほどのMichael B.Stokes の論文です。40例の中で,圧倒的にcrystallin が 多 く て,non crystallinが6例 で し た。frozen

sectionでは,非常に検出率が少ないですけれど も,pronase digestionをやったパラフィン切片 で検出率が上がるということが書いておりま す。  κ型がほとんどなので,κ・λとcrystallin, non crystallinの関連性は,統計的にほとんど処 理ができないので,κ型の中で,crystallinと non crystallinがあるという捉え方でいいと思い ます。 【スライド29】Fanconi症候群の有無を見ますと, やはりnon crystallinの症例ではFanconi症候群 は出てこない,本症例のようです。crystallinで ― 112 ― ― 112 ―

(10)

あってFanconiの発生率が大体43%という値が 出ております。  症例報告は当然意味があると思いますが,先 ほどのイギリスの論文を超して,何か1つ付加 価値を加えて論文化されるといいと思います。 僕もどういう付加価値を付けて,論文化をした らいいのか,よく分かりません。以上です。 座長 ありがとうございました。では,フロア の先生方,何かご意見等はございますでしょう か。 田中 横須賀共済病院の腎臓内科の田中といい ます。  血液内科の先生で,MGUSの患者さんの経過 を見ているというパターンが多いのですが,今 回はcreatinineが上がったということで,たぶ ん生検になったと思います。creatinineが上がっ ていないときの3年前の尿蛋白1(+)ぐらい のときでも,もし生検をしていたら,このよう な病変を検出できる可能性はあるのかのご意見 をお願いいたします。 城 この症例も,おっしゃるように,Fanconi 症候群がなくて,腎機能が悪いということで, 生検をしてきているわけです。この症例はどん どん腎機能が悪くなってきた。質問は,どこで 腎生検をするか。早く腎生検をしたときに診断 がつくかどうかということかと思います。  monoclonal gammopathyがあれば,当然,腎 臓に何らかの沈着があることを予想してbiopsy をするということですから,monoclonal

gam-mopathy,あるいはBence Jones proteinが出た時

点で,やはりbiopsyをすれば,同じような所見 が出ることが予想されると思います。 田中 ありがとうございます。 座長 はい。どうぞ。 柴田 ありがとうございました。では,MGUS の人は全員,腎生検をしたほうがいいというこ とですか。 城 monoclonal gammopathyがあり腎機能が低 下すればですね。 柴田 はい。 城 MGUSで は な く て,MGRS(monoclonal

gammopathy of renal significance)があったとき

に,腎生検をするということで,それでMGRS という概念が出てきたのではないかと思うの です。当然,MGUSのときには,血液内科は monoclonal gammopathyをどう扱うか。MGUS をどう治療をするかという問題が課せられてい ると思うのです。  去年のフランスの学会で,隣にちょうどフラ ンスの血液内科の先生が座って,よくしゃべる 先生だったのですが,このような患者を血液内 科がひきうけるかどうかについて,嫌がる先生 もいるのではないかといったら,まさに「そう だ」と。血液疾患の患者さんとは,コンタクト が非常に密となり,1人抱えると,相当な負担 になるので,優先順位からいうと,MGUSがあ るからといって,そのような症例まで血液内科 の先生が抱え込むと,仕事上パンクしてしまう。 その先生のキャパシティーによるのだという返 事をしていました。 柴田 ありがとうございます。  あと,今回の症例は,with no crystalsという か,without crystalsなのですけれども,文献を 当たっていくと,まだcrystalの定義が,文献ご とにまちまちです。今回みたいな症例の画像 を出している文献も幾つかあったのですけれ ども,これがno crystalsに入っている文献もあ れば,crystalsとして出している文献もあって, それで,どういうふうに表現をしようか悩んで いるのです。やはりcrystalというからには結晶 構造があるべきですか? 城 ほとんどがrhomboidですね。 柴田 ええ。

城  僕 は,non rhomboidで, し か もnon

fibril-laryな中間型の結晶というのが,どういうもの かイメージができないけれども,論文にあるの ですか,そういうのが。 柴田 はい。総説的な論文にたまにポンと同じ ような写真があるのです。 城 Stokesの論文の写真は,どっちもcrystallin

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でしたよね。 柴田 『JASN』のほうは,そうでした。そうい うふうに書いてありました。全く別のパターン もあって,やはりcrystalは一辺が直線でなけれ ばいけないという定義をつくっていて,今回の 場合は,そうではないので,no crystalsに分類 される。そういうこともあって,まだ定義が安 定しないので,どうすればいいのか悩んでいる のです。 城 crystalというのは,日本でいう結晶とほぼ 同じように捉えていいと思います。 柴田 分かりました。 座長 そのほかはございますでしょうか。お願 いします。 上野 虎の門病院の上野と申します。大変貴重 な症例の発表をありがとうございました。  なぜ同じMGUSなのに,crystalになる人と crystalにならない人が出てくるのか,これにつ いては基礎系の論文で,出てくるM蛋白の種 類によって,それが変わってくることを検討さ れていた論文がありました。その論文の中では 近位尿細管が持っている蛋白を溶かすprotease という酵素はおそらく一律だと思うのですが, それに対する反応性が,蛋白の構造によって 異なり,溶けやすいもの,溶けにくいものが あって,その結果,crystalになったり,solidな ものになったり,先生がお示しになったような fibrillaryな構造になるのではないかというふう に説明されていました。   私 ど も も1例,MGUSの 症 例 で,fanconi症 候群になった患者さんがいたのです。やはり, crystalではなく,ラグビーボールのような,し かしsolidではない,非典型的な封入物があり ました。免疫染色で見ると,κが取り込まれて いるように見えるのですが,κにimmunogold をくっつけて,免疫電顕をすると,やはりその よく分からない不正な形をしたinclusionにκが 取り込まれているところを確認できました。恐 らく,M蛋白由来の蛋白の凝集体がproteaseに 対する溶解性の違いで,ああいういろいろな形 を生み出してくるのではないかと思いました。  質問ではなくコメントでした。 座長 ありがとうございました。そのほかは何 かございますでしょうか。  ないようでしたら,これにて終わりにしたい と思います。ありがとうございました。 司会 ありがとうございました。 ― 114 ― ― 114 ―

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山口先生 _01 山口先生 _02 山口先生 _03 山口先生 _04 山口先生 _05 山口先生 _06

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山口先生 _07 山口先生 _08 山口先生 _09 山口先生 _10 山口先生 _11 山口先生 _12 ― 116 ― ― 116 ―

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山口先生 _13 山口先生 _14 山口先生 _15 山口先生 _16 山口先生 _17 山口先生 _18

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城先生 _01 城先生 _02 城先生 _03 城先生 _04 城先生 _05 城先生 _06 ― 118 ― ― 118 ―

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城先生 _31

城先生 _32

図 4蛍光免疫染色

参照

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