早稲田大学大学院 基幹理工学研究科
博
博 士 士 論 論 文 文 概 概 要 要
論
論 文 文 題 題 目 目
On the local and global well-posedness for the compressible Navier-Stokes equations 圧縮性ナビエ・ストークス方程式に対する時
間局所的・大域的適切性について
申 請 者
M iho
MURATA
村田
美帆
数学応用数理専攻 偏微分方程式研究
2014年 12月
( 受 理 申 請 す る 部 科 主 任 会 開 催 年 月 を 記 入 )
圧縮性粘性流体とは流体の運動に伴い圧縮や膨張などの密度変化が起こる流 体で代表的な例は気体である.例えば,航空機の周りを流れる高速の気流について 解析を行う航空力学や高度差によって密度変化が生じる大気の運動の解析を行う 気象学の分野では圧縮性流体の研究が不可欠である.このように圧縮性粘性流体 に対する問題は工学的に重要であるが数学的に厳密に扱った研究は少ない.一般 に流体の運動を記述する方程式系は質量保存と運動量保存を表す式の他,方程式 を閉じさせるために状態方程式が必要となる.状態方程式として圧力は密度に依 存して変化すると仮定する場合が多く,本論文においてもこれを仮定したバロト ロピック流体を考えた.この仮定の下,圧縮性流体の運動を記述した方程式は次 の双曲・放物型の非線形偏微分方程式として表され,これを圧縮性ナビエ・ストー クス方程式と呼ぶ.
{ ∂tρ+div(ρu)=0,
ρ(∂tu+u·∇u)−DivS(u)+∇P(ρ)=0. (1) ここで,u= u(x,t) =(u1(x,t),...,uN(x,t))とρ= ρ(x,t)はそれぞれ流速と 密度を表す未知関数(N ≥ 2は次元を表す),S(u) =αD(u)+(β−α)divuI, D(u)=∇u+(∇u)T,α,βはそれぞれ第一,第二粘性係数を表す正定数,P(ρ)は 圧力としC∞(R+),P′(ρ)>0∀ρ>0を満たすと仮定する.
本論文では(1)に対し二つの問題を考察した.第一にスリップ境界条件を課し た初期値境界値問題(第1章から4章),第二に圧縮性流体と剛体の連成問題(第 5章)である.スリップ境界条件を課した問題に対しては一般領域における時間 局所的適切性と初期値が十分小さいという仮定の下,有界領域における時間大域 的適切性を,連成問題に対しては時間局所的適切性をそれぞれ時間Lp空間Lq枠 で証明した.解をLp-Lq枠で構成するために重要となるのが線形化問題に対する Lp-Lq最大正則性である.これを得るために用いたのがレゾルベント問題に対す る解作用素のR有界性である.
以下,各章の概要を述る.
第1章では次で記述されるスリップ境界条件を課した問題に対し得られた結果 をまとめた.
∂tρ+div(ρu)=0 inΩ×(0,T), ρ(∂tu+u·∇u)−DivS(u)+∇P(ρ)=0 inΩ×(0,T), D(u)n−⟨D(u)n,n⟩n=0,u·n=0 onΓ×(0,T),
(ρ,u)|t=0=(ρ∗+θ0,u0) inΩ.
(2)
主な結果は(2)から得られる線形化問題に対応するレゾルベント問題に対する解作 用素のR有界性,これより得られる解析半群の生成と線形化問題に対するLp-Lq最
1
大正則性,一般領域における時間局所的適切性,初期値が十分小さいという仮定の 下,有界なWq4−1/qdomainにおける時間大域的適切性である.ここで一般領域とは uniformWq3−1/qdomainを指し,R.Farwig-H.Kozono-H.Sohr(Acta Math.,195, 2005)やJ. Heywood(Indiana Univ. Math.J.,29, No.5,1980)にあるuniform domainと同様に境界の点の取り方にらず一様な球で領域を覆うことができるとい う性質をもち,半空間や外部領域のような非有界領域も含むものとする.最大正則 性についてであるが,V.A.Solonnikov(Trudy Mat.Inst.Steklov.,83,1965)は Lp最大正則性をuniformLopatinski-Shapiroconditionを満たす放物型方程式に 対し最初に証明した.Solonnikov教授は領域を局所化することで半空間の問題に帰 着させラプラス変換と空間接方向に対するフーリエ変換を施すことにより法線方向 の常微分方程式を得て,ポテンシャルを用い解表示を行った.これを適切なノルムで 直接評価することで最大正則性を得た.またM.Burnat-W.Zaj¸aczkowski(Topol. MethodsNonlinearAnal. 10,1997)はスリップ境界条件を課した問題に対し有 界領域においてL2枠で時間局所的適切性を証明した. Burnat-Zaj¸aczkowski両 教授も半空間での問題に対する最大正則性を示すということに帰着させる点では 同様であるが,L2最大正則性であるため解表示をプランシュレルの定理を用い評 価している.どちらの結果においても半空間の問題に対する最大正則性を得た後, 有界領域に対しては時間発展問題のみ考察している.一方,本論文では半空間だけ でなく一般領域までレゾルベント問題を考察し,R有界な解作用素の存在を示す ことでLp-Lq最大正則性を得ることができた.これによりBurnat-Zaj¸aczkowski 両教授の結果やT. Kobayashi-W.Zaj¸aczkowski(Appl. Math. 26,2,1999)によ るL2枠での時間大域的適切性についての結果と比べ,初期値に対し低い正則性と 最小の整合条件の下,適切性を得ることができた.これが一般領域においてLp-Lq
最大正則性を示した利点である.
以下,第2章から4章では第1章で述べた結果の証明を行った.
第2章では次のレゾルベント問題を一般領域で考察し,解作用素のR有界性 を証明した.
λρ+γ2divu=f inΩ,
γ0λu−DivS(u)+∇(γ1ρ)=g inΩ, α[D(u)n−⟨D(u)n,n⟩n]=h−⟨h,n⟩n, u·n=˜h onΓ.
(3)
全空間と半空間においてはフーリエ変換を用い解表示を行い,R有界な解作用 素の存在を示す.一般領域においては境界近傍を半空間からの摂動,境界から離れ た部分を全空間として捉え,半空間と全空間における解をcut-off関数でつなぎ合 わせることにより結果を得る.一様領域の性質により非有界領域においてもこの ような手法により解を得ることができる.R有界性の定義からR有界ならば一様
有界であるので,(3)の解に対するレゾルベント評価を得ることができる.これよ り解析半群の生成を証明した.またR有界な解作用素の存在によりWeisの作用 素値Fourier multipliertheoremを用いることがでるので,Lp-Lq最大正則性が得 られた.
第3章では一般領域における時間局所的適切性をLp-Lq枠で証明した.その ためにまず,オイラー座標からラグランジュ座標への変数変換を行う.このような 変換を行う理由は(2)の第一式に現れる質量保存を表す方程式は双曲型の方程式 でありLp-Lq最大正則性では扱えないので,座標変換により密度の時間微分のみ に変えるためである.この変換が全単射であることからラグランジュ座標上で記 述される非線形問題に対し縮小写像の原理を用い時間局所的適切性の証明を行う. 第2章で証明した最大正則性をから時間局所的な最大正則性の評価を得ることが 証明の本質となる.そのために時間非局所的作用素を時間局所的作用素に置き換 えることを考えた.
第4章では初期値が十分小さい場合に有界領域において時間大域的適切性を Lp-Lq枠で証明した.そのために線形化問題に対する解の指数減衰評価を示し,第 3章で得た時間局所解を時間について延長した.半群に対する指数減衰評価を得 るためにはhomotopicargumentを用いるが,領域が球のような回転対称の場合 には初期値が十分小さいという仮定と整合条件の他,rigid空間と直交するという 条件が必要となる.
第5章では3次元全空間上に広がる圧縮性流体中に回転や平行移動する剛体が ある場合の流体と剛体の運動について記述した以下の連成問題に対し時間局所的 適切性をLp-Lq枠で証明した.剛体は有界領域B(t)で表すものとし,流体が占め る領域は外部領域D(t):=R3\B(t),その境界をΓ(t)とする.
∂tϱ+div(ϱu)=0 inD(t)×(0,T) ϱ(∂tu+u·∇u)−DivT(u,P)=0 inD(t)×(0,T),
u(t,x)=η(t)+ω(t)×(x−xc(t)) on Γ(t)×(0,T), mη′(t)−∫
Γ(t)T(u,P)n(t,x)dσ=F(t) t∈(0,T), (Jω)′(t)−∫
Γ(t)(x−xc)×T(u,P)n(t,x)dσ=M(t) t∈(0,T), (ρ,u)|t=0=(ρ0,u0) inD(0), (η,ω)|t=0=(η0,ω0).
u=(u1,u2,u3),ρ,Pは第1章で定義したものと同様,η,ωはそれぞれ重心xc(t) の速度,角速度を表す未知関数,mは剛体の質量を表す正定数,J(t)は慣性モーメ ント,F,Mはそれぞれ既知の外力とトルクを表す.この問題に対しても線形化問 題に対しLp-Lq最大正則性を得ることが本質となる.
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No.
1早稲田大学
早稲田大学 博士( 博士(理 理学) 学) 学位申請 学位申請 研究業績書 研究業績書
氏 名 村田 美帆 印
(2015年 2月 現在)
種 類 別 題名、 発表・発行掲載誌名、 発表・発行年月、 連名者(申請者含む)
【論文】
単著論文
共著論文
【講演】
国際会議
国内学会
○Miho Murata, On a maximal Lp-Lq approach to the compressible viscous fluid flow with slip boundary condition, Nonlinear Analysis 106, 2014年 4月
○ Matthias Hieber and Miho Murata, The Lp-Approach to the Fluid-Rigid Body Interaction Problem for Compressible Fluids, Evolution Equations and Control Theory, Vol.4, No.1, to appear
Yoshihiro Shibata and Miho Murata, On the sectorial R-boundedness of the Stokes operator for the compressible viscous fluid flow in the half-space with slip boundary condition, 第 5回日独流体国際研究集会,東京,2012年 6月
Yoshihiro Shibata and Miho Murata, On the sectorial R-boundedness of the Stokes operator for the compressible viscous fluid flow with slip boundary condition,
Conference on Complex Fluids,ドイツ,2012年 7月
Yoshihiro Shibata and Miho Murata,On the sectorial R-boundedness of the Stokes operator for the compressible viscous fluid flow in a general domain, 第 7回日 独流体国際研究集会, 東京,2012年 11月
Yoshihiro Shibata and Miho Murata,R-boundedness of the Stokes operator for the compressible viscous fluid flow in a general domain,International Conference on the Mathematical Fluid Dynamics,奈良,2013年 3月
Yoshihiro Shibata and Miho Murata,On the sectorial R-boundedness of the Stokes operator for the compressible viscous fluid flow and its application, 第 8回日 独流体国際研究集会, 東京,2013年 6月
Yoshihiro Shibata and Miho Murata,Local in time unique existence theorem for the compressible fluid flow,Winter Seminar and Klausurtagung "Fluid and Snow",フ ランス,2014年 1月
柴田良弘,村田美帆,圧縮性粘性流体に対する Stokes作用素の R-有界性,日本数学会 2012年度秋季総合分科会,福岡,2012年 9月
柴田良弘,村田美帆,圧縮性粘性流体に対する Stokes作用素の R-有界性とその応用,日 本数学会 2013年度秋季総合分科会,愛媛,2013年 9月
柴田良弘,村田美帆,圧縮性粘性流体に対する時間局所解の一意存在性,日本数学会 2014 年度年会,東京,2014年 3月
柴田良弘,村田美帆,圧縮性粘性流体に対する時間大域解の一意存在性,日本数学会 2014 年度秋季総合分科会,広島,2014年 9月
No.
2早稲田大学
早稲田大学 博士( 博士(理 理学) 学) 学位申請 学位申請 研究業績書 研究業績書
種 類 別 題名、 発表・発行掲載誌名、 発表・発行年月、 連名者(申請者含む)
そ の 他 講
演 村田美帆,圧縮性粘性流体に対する Stokes作用素の R-有界性について,第 34回発展方 程式若手セミナー,神奈川,2013年 9月
村田美帆,On the sectorial R-boundedness of the Stokes operator for the compressible viscous fluid flow in a general domain,若手のための偏微分方程式と数学解析,福 岡,2013年 2月
村田美帆,圧縮性粘性流体に対する Stokes作用素の R-有界性について,芝浦工業大学「談 話会」,埼玉,2013年 5月
村田美帆,圧縮性粘性流体に対する Stokes作用素の R-有界性とその応用,第 35回発展 方程式若手セミナー,山形,2013年 8月
Yoshihiro Shibata and Miho Murata,Lp-Lq maximal regularity and its application, RIMS研究集会「非圧縮性粘性流体の数理解析」,京都,2013年 11月
村田美帆,圧縮性粘性流体に対する最大正則性とその応用,若手による流体力学の基礎 方程式の研究集会,名古屋,2014年 1月
村田美帆,圧縮性粘性流体と剛体の連成問題に対する時間局所解の一意存在性,第 36回 発展方程式若手セミナー,熊本,2014年 8月