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博 士 論 文 概 要

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Academic year: 2022

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(1)

早稲田大学大学院国際情報通信研究科

博  士  論  文  概  要

論   文   題   目

周波数有効利用のための周波数多重化変復調技術の研究 Study on Spectral Multiplicated Modulation Technologies

for Spectral Efficiency

申  請  者

太  田 現  一  郎 Gen-ichiro OHTA

国際情報通信学専攻 情報通信網応用工学研究

2005 年   3 月

氏    名

コース・プロジェクト名 (課程内のみ)

(2)

5GHz帯U-NII無線LANシステムは,それまでの無線LANがISM帯でのみ許され,他システムとの 混在により被っていた被干渉を根本的に解決する初の専用バンドを与えられて誕生したものである.

米国,欧州,日本はこの機を捉えてそれぞれの思惑の仕様作りを目指した.しかし第3世代移動通 信システムの誕生に見られるように標準の国際統一化がもたらす効果と必然性は,今後の無線シス テムにとっても重要な要件である.著者は,日米欧各国の標準化の協調を図るべく,通信方式なら びにパラメータの最適化など根本的な研究を行った.この研究成果は寄与文書として投じ,その多 くは各国標準に共通して寄与した.(日本:MMACP

 

P(Multimedia  Mobile  Access  Communication  Systems  Promotion  Council), 米 国 : IEEE802.11WGa , 欧 州 : ETSI  EP  BRAN/HiperLAN2(European  Telecommunication Standard Institute    ETSI-Project    Broadband Radio Access Networks / High Perform-  ance LAN type 2)) 

世の中は更なるブロードバンド化を目指しており,ITU-R の指針にも盛られたように準静止環境 下で伝送速度 1Gbps,高速移動時に 100Mbps を実現する通信として第4世代移動通信システムの 誕生を 2010 年に期待している.しかし周波数資源の枯渇も明白である.これに対処するべく空間 多重など MIMO(multi-input multi-output)技術の研究開発が無線 LAN システムを先頭に行われ,

一部は標準化が進められている.(IEEE802.11WGn) 

著者は,周波数資源問題の解決を原点に立ち戻り考え,世の中が専ら MIMO 伝送に特化する 動きに警鐘と新たな視点を提起するべく,変復調方式の見直しと効率向上の研究を開始した. 

 

本論文は,究極の周波数利用効率 4bit/s/Hz を成し遂げる OFDM(orthogonal  frequency  division multiplex)変調の多重化を可能にするため OFDM を SSB(single sideband)に分解した場合 の周波数直交性を明らかにする基礎研究と,無線 LAN システムの標準国際統一化のための OFDM 変調方式の基本パラメータの最適化に関する研究を示すものである.本研究は早稲田大学 大学院国際情報通信研究センタにて情報通信網応用工学研究として行ったものである. 

OFDM を SSB 要素に分解した場合の周波数の直交性について述べる.その際にすでに発表が なされていた Mujtaba 氏の SSB-QPSK 変調方式の延長にあることから同名を冠しつつ,過去にない 変調方式として取り上げる.  直交性の証明研究は,(1).前述の Mujtaba 氏の研究を基に Hilbert 変換の基本的性質と Nyquist 残留対称原理による直交性が,実数空間でも実現可能であることを 示し,(2).Hilbert 変換により生成される虚軸成分を主とする新たな SSB を提起し,(3).実軸上に生成 した SSB 信号と虚軸側に生成した SSB 信号とを周波数軸上で多重化することにより,SSB の単側波 帯幅の上に多重化することが可能であることを述べる.復調に際しては SSB の一般的受信方法で 容易に達成できることを示す.さらにこれらの理論を検証するべく実証装置を制作し理論の正しさを 述べる. 

 

本論文は 8 章より構成される.第 1 章は研究の背景について述べる.第 2 章は,従来の学 問研究と比較しながら本研究が新しく切り開いた学問領域について述べる.第 3 章から第 5 章は,SSB 直交化変調復調方式の多重化方式研究に関して,基礎研究および発展研究および 実証研究について述べる.第 6 章および第 7 章は U-NII 5GHz 無線 LAN の国際標準化に際し て行った研究成果について述べる.各章の概要は以下の通りである. 

 

第 1 章「序論」では,無線通信分野における情報伝送量等の需要と供給技術について概観 し,本論文が対象とする第4世代移動通信システムの周波数利用効率上の課題を示す.本研 究を実施する発端となった標準化である U-NII 5GHz 帯無線 LAN システムの日米欧における 標準化委員会での標準化活動や今後の研究課題についても述べる. 

 

第2章では,周波数利用効率向上への道筋を述べる.はじめに周波数利用効率向上に果た す変復調技術の役割を明らかにする.その上で,Shannon-Hartley の法則における帯域幅 当りの伝送速度の限界に変復調技術が余地を残していることを示す.さらに同法則には周波 数多重化に関する評価指標を含まれていない点を明らかにし,OFDM などの周波数多重化

(3)

技術は同法則にとらわれずに利用できることを述べる.かくして変復調技術による究極の周 波数利用効率が4bit/s/Hzであることを演繹し,OFDM変調の2重化により達成されるべき ことを述べる. 

 

  第3章では,第2章で唱えたOFDM変調の2 重化を実現する上で,OFDM自体を構成 しているSSB周波数多重部の理論的証明が必要であることを述べる.この証明を行う上で,

この部分が SSB 多重化変調と呼べるものであり,すでに発表がされていた Mujtaba 氏の

SSB-QPSK 変調方式の延長上にあることから同名を冠しつつ,過去にない変調方式として

取り上げる.本SSB-QPSK変調方式はSSB化された狭帯域化変調を位相軸,周波数軸上で 直交多重するというコンセプトを持つSSB 研究上の新たな変調方式であることを述べる.

過去のSSB多重化研究には,1973年S.Singh氏らのWeaver型SSBによるLSB-USB縦 続配置方式や1998年S.A.Mujtaba氏によるSSB-QPSK方式による縦続配置方式がある.

これらの方式は,USB(上側帯波:upper sideband)に変調した信号とLSB(下側帯波:lower

sideband)に変調した第2の信号を周波数上に並べるもので,周波数上の多重化を図ったも

のではないことを示す.その上で本方式の変調系と復調系の理論を述べる.変調は位相実軸 上のSSBと位相虚軸上のSSBとを,それぞれの持つ帯域が重なるように周波数移動させて 多重化することを述べる.2信号の多重化ならびに復調には,ナイキスト残留対称原理が根 本にあることを述べる.すなわち2つの SSBの搬送波周波数間隔はナイキスト周波数に等 しく置かれることを述べる.受信側では各SSB の持つ搬送波周波数に合わせて復調するこ とを示す. 2bit 信号の伝送に必要な周波数帯域幅は直交変調に比して半減するので,周波 数利用効率すなわちbit/s/Hzの値は多値化しない基底状態で2となることを述べる.本方式 がロールオフ率の値に左右されることはないことも述べる.計算機シミュレーションにより 本方式のスペクトル特性,受信コンスタレーション特性,受信アイパターン特性,AWGN 環境下(additive white gaussian noise)の誤り率特性,フェージング環境下の誤り率特性を 求める. 

 

第 4 章「直交 SSB 型-QPSK 変調方式の実証実験」では,第 3 章に示した方式を実証するべ くシステム設計を行う.実際にハードウェア化する上での課題と対処について述べ,システ ムを評価する.システム設計に先立ちハードウェアの実装負荷の軽減のために Hilbert 変換 器のステップサイズの適正化を図る.Hilbert 変換のステップ数は 40 段以上(タップ数で は 20 以上)であれば,Eb/No に対するビット誤り率特性の理想値からの劣化は 0.5dB 以内 となることを計算機シミュレーションにより明らかにする.さらに受信方式として従来の SSB に用いられていたダブルブランチと呼ばれる方式から Hilbert 変換器を用いないシング ルブランチ方式を検証し,実証システムに用いる.  以上の結果からハードウェア 600 万ゲ ートの FPGA により変調系および復調系を収容することの可能性を述べる.AWGN 環境下のビ ット誤り率特性は,理論値から 0.5dB 以内の劣化と,同じくフェージング環境下のビット誤 り率特性は理論値から 1dB 以内の劣化であることの結論を述べる. 

以上から,OFDM における周波数スペクトル上の重畳部分の SSB 要素としての直交性の証明,

ならびに周波数多重された SSB-QPSK 変調方式の成立の証明が成し遂げられることを述べる. 

 

第5章「2重化OFDMの研究」では,OFDM方式を多重化する方法について述べる.こ の研究の目的は第2 章で述べたように変調方式による周波数利用効率の限界が,OFDM の 2重化であると捉え,現行のOFDMの持つ2bit/s/Hzの周波数利用効率を2倍の4bit/s/Hz に近づけることである.現在のところではOFDMの2重化はまだ達成されていないことを 示し,この限界に挑戦するためのアプローチが,OFDM 変調を2次変調と捉えて1次変調 である直交変調と2次変調である OFDM の両面からなされるべきであることを述べる.

OFDM 多重化にはシンボル信号のナイキスト成型が有効であることを述べる.さらに2重 化したOFDMを復調可能にする一つの手段として,2重FFTで復調が可能となるような変

(4)

調方法が有効であることを示し,そのための一次変調における直交信号の在り方を述べる.

その中でHilbert変換関係にある直交信号系が有効であることを述べる.最後に残った直交

性の要件として隣接シンボルとの符号間干渉の対策について述べる.その対策にはパーシャ ルレスポンス技術やOFDM-OQAM(offset QAM)技術の利用が有効であることを述べる. 

 

第 6 章「無線 LAN における OFDM 変復調方式の研究」では,  世界初の無線 LAN 専用周波数帯 である 5GHz 帯での国際統一規格の確立を目指し,無線 LAN システムの標準国際統一化のため の OFDM 変復調方式の基本パラメータの最適化に関する研究について述べる.主な内容を以下 に示す. 

 

・OFDM 受信における検波方式の同期検波と遅延検波の比較 

・Pilot キャリア本数の最適化 

・一次変調多値化における 8PSK と 16QAM の比較 

・ガードインターバル長の最適化 

・チャネル推定用のプリアンブルの構造の改善 

・プリアンブルにおける tail bit の構造改善 

・プリアンブル部の符号改善 

・5GHz 帯 OFDM 方式無線 LAN における Ad Hoc 機能(無線中継)の付加に関する研究   

また,総務省情報通信審議会の諮問による 5GHz 無線 LAN 拡張についての調査研究に,著者が 関わった内容を同章 Appendix に付す. 

 

第7章「OFDM 方式 5GHz 帯無線 LAN の屋外利用研究」では,標準化が完了した屋内用無線 LAN システムの標準の機能性能を確認すると共に,世の中から要請されている屋外使用が許される新 たな無線 LAN としての性能確認のための実証実験を行う.  具体的には総務省各総合通信局の 委託のもとに行い,屋外利用が許可された 5.03GHz 帯で高速移動時の伝送品質や,急速に高まる 高精細度動画の伝送について行った以下の実証実験について述べる. 

・5GHz 帯無線アクセスの屋内における通信性能に関する研究 

・5GHz 帯無線アクセスを用いた高速移動体通信研究 

(高速鉄道への無線インターネット配信実験) 

・5GHz 帯無線アクセスを用いた高画質移動体通信研究 

(救急医療における医療情報の低遅延リアルタイム配信実験) 

これらの実験を通じて得た結果から,標準に定めた OFDM 型無線 LAN の屋内通信手段としての評 価と,屋外無線 LAN に展開した場合の必要機能性能について述べる. 

 

第 8 章は結論であり,本研究の成果を総合して述べる. 

(5)

研 究 業 績        

(○印は本論文関連の主論文)

種 別

題名 発表・

発行年

発表・発行掲載誌名 連名者 1.論文

1-1 学会論文誌 1)

Study of Orthogonal SSB Modulation Method

2004年 10月

IEICE transactions.

Fundamentals,

Vol.E87-A, No.10 Oct., 2004

上杉  充,

佐藤拓朗,

富永英義

1-2 国際学会発表論文 1)

<Invited Lecture> What is 4G? People’s living culture in 2010 can not be same as presence.

2004年 6月

NETS Technology Programme in Finland

2)

<Invited Lecture> Outdoor Trials for Broadband Wireless LAN/Access looking forward to 4th generation cellular systems.

2004年 6月

IWWAN04, Finland

3)

A Planar Loop Sector Antenna for WLAN Card Terminal

2004年 6月

IEEE Antennas and Propagation Society pp.1971−1974, Monterey, CA. U.S.A.

Hiroyuki Uno, Yutaka Saito, YoshioKoyanagi, Kiyoshi Egawa 4)

5GHz W-LAN Verification for Public Mobile

Applications

2004年 1月

IEEE CCNC2004, A6-01, Las Vegas, U.S.A.

Kamada, Teramura, Hojo 5)

A Consideration on Digital Modulation on SSB for High Spectral Efficiency

2003年 11月

IEEE/IEICE APSITT2003 Conference, pp.397-402, New Caledonia

M.Uesugi, T. Sato, H. Tominaga

6)

<Invited Lecture> A YRP Trial for mobile newspaper systems adopting the broadband WLAN;

MMAC/HiSWAN based on ETSI BRAN/HiperLAN2.

2002年 9月

2PndP Workshop on Asia-Pacific Next Generation Mobile Communication ’02, in Vietnam

Kamada, Teramura, Hojo

その他7件 1-3 機関誌論文 1)

“第4世代移動通信:高速無線 LANの高速移動通信性能の 検証,-高速鉄道ならびに救急 医療現場における5GHz無線

2004年 4月

松下電器技術広報 Matsushita Technical Journal (National Technical Report)

今井友裕,

岩田綾子,

池田  光,

斉藤  昭,

(6)

LANの実証実験- Vol.50 No.2 (Dec. 1998) 中村  徹 その他2件

1-4 標準規格 1)

5GHz帯無線LAN:広帯域移 動アクセスシステム

<HiSWANa> ARIB STD -T70v3(屋外利用可能周波数 と追加ならびに仕様の追加)

2004年 5月

社団法人電波産業会 運営主査 太田現一郎 システム主査 加々見修 2)

5GHz帯無線LAN:広帯域移 動アクセスシステム

<HiSWANa> ARIB STD -T70v2(欧州無線LAN方式 とのローミング規格収容)

2002年 11月

社団法人電波産業会 運営主査 太田現一郎 システム主査 加々見修 3)

25GHz帯無線LAN:広帯域 無線アクセスシステム

<HiSWANb>ARIB STD -T83>

2002年 11月

社団法人電波産業会 運営主査 太田現一郎 システム主査 加々見修 その他2件

1-5 公的研究報告書

報告書名および担当章節 年月 報告元 組織構成 1)

地域における広帯域移動通 信に関する調査研究会報告 書

2003年 3月

2002年度総務省関東総 合通信局研究会報告

座長 竹内良平 委員20名 2)

列車インターネットに関す る調査研究報告書

2003年 3月

2002年度総務省四国総 合通信局研究会報告

座長 生越重章

委員8名(編集)

3)

マイクロ波帯構内通信等に おける周波数共用技術に関 する調査検討報告書,

2000年 3月

電波産業会

(総務省電気通信技術 審議会委託調査)

主査 濱井龍明 委員14名 その他1件

2. 講演

2-1 日本学術会議URSI電波研連C分科会 1)

<招待講演>周波数利用効 率向上に向けた新たな変復 調方式の研究

2004年 11月

第19期 第4回公開研 究会

2-2学会研究会報告 1)

OFDMの多重化における一 検討

2004年 8月

IEICE RCS研究会 RCS2004-136(2004-08), pp.1-6.

上杉  充 佐藤拓朗 富永英義 2)

周波数利用効率のための新 たな変調方式の検討

2003年 11月

IEICE RCS研究会  RCS2003-35(2003-11), pp.

上杉  充 佐藤拓朗 富永英義 3)

<招待論文>5GHz帯屋外無 線LANの高速移動アプリケ ーションの実証実験

2003年 7月

IEICE NS研究会 NS2003-66(2003-07)

鎌田史隆 寺村允安 北條博史

(7)

その他2件 2-3 学会支部講演 1)

<招待講演>無線LAN技術 の標準化動向と公衆系アプ リケーションのアプローチ

2002年 11月

電気四学会関西支部 専 門講習会

鎌田史隆,

寺村允安 北條博史 2)

<招待講演>無線LAN技 術の標準化動向と公衆系ア プリケーションのアプロー チ

2000年 2月

通信学会北陸支部主催

2-4 公的講演 1)

<招待講演>第3世代移動 通信 過去から未来へ 第4 世代への橋渡し

2004年 6月

総務省関東総合通信局 セミナ

2)

<招待講演>無線LAN技術 の標準化動向と公衆系アプ リケーションのアプローチ

2001年 5月

総務省主催電波の日新 世代モバイル/モバイル ITフォーラム

その他2件 2-5 学会全国大会 1)

SSB-QPSK変調方式の実用

化検証

2004年 9月

信学ソ大 B-5-129 上杉  充 佐藤拓朗 富永英義 2)

SSB化QPSK変調方式の一 検討(その2)

2004年 3月

信学全大 A-5-22 上杉  充

佐藤拓朗 富永英義 3)

SSB化QPSK変調方式の一 検討

2003年 9月

信学ソ大 B-5-206 上杉  充

佐藤拓朗 富永英義 その他48件

3. その他   

3-1 学会活動/全国大会一般セッション座長

セッション名 年月 大会名

1)

B-5無線通信システムB(5-118

〜126)

2004年9 月

2004年信学ソ大 その他7回 ○

すべてB-5無線通信システムB

2004年3月,2003年9月,2003年3月 2002年9月,2002年3月,2001年9月 1999年3月

3-2 出願特許

出願日等 名称 内容 連名者

1)

特願2003-2487 特開2004-215182

変調方法及び変調 装置

ナイキストロールオフ特性SSB 変調信号を周波数軸上で多重化 2)

特願平10-316700 特開2000-151547

OFDM送受信装 置及びその方法

チャネルバンドリングを可能に するためのOFDMシステム 3)

特願平8-185300 特許第3506562

ダイレクトコンバ ージョン受信機

デジタル信号処理によるダイレ クトコンバージョン受信の基本 その他65

参照

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