• 検索結果がありません。

博 士 論 文 概 要

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "博 士 論 文 概 要"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Graduate School of Advanced Science and Engineering Waseda University

博 士 論 文 概 要

Doctoral Thesis Synopsis

論 文 題 目

Thesis Theme

Numerical Simulations of Core-Collapse Supernovae in Massive Binary Systems

大質量連星系内での重力崩壊型超新星爆発に関する数値シミュレーション

申 請 者 (Applicant Name)

Ryosuke HIRAI

平井 遼介

Department of Pure & Applied Physics, Research on Theoretical Astrophysics

November, 2016

(when Graduate School Steering Committee is held

(2)

る 研 究 科 運 営 委 員 会 開 催 年 月 を 記 入 )

宇宙に存在する星の約半数は2つ以上の星が互いを公転し合う、連星系と呼ばれ る系を組んでいる。連星系は観測技術や機器の発展により解像度が上がったこと、

分光観測が行われるようになったことで発見されるようになった。このように、

初期は連星系を観測すること自体が目的であったが、現代では連星系を観測する ことで星に関する情報がより詳細にわかるため、星の構造や新しい物理(相対論、

高密度核物理等)を知るための手段として利用されている。これは、単独星の観 測から得られる情報(明るさ、温度)に加え公転軌道から得られる情報(質量、

半径等)が非常に重要だからである。特に連星系の中でもコンパクト天体(中性 子星やブラックホール)を含むようなものに関しては精度の高いデータが得られ るため、活発に観測されている。2015年9月にLIGOによって世界で初めて重 力波が連星ブラックホール合体という現象から検出されたことでその注目度はさ らに増した。また、2016年にはヨーロッパの位置天文観測衛星Gaiaの最初の観 測データが公開され、今後の解析により多くの連星が新たに発見される予定であ る。今まさに、連星研究が旬を迎えているのである。

こうした時代を迎えるに際し、連星がどのように生まれ進化していくのかを知 ることが急務となっている。特に近接連星の場合、進化の過程で二つの星が相互 作用を起こすため非常に複雑な進化を辿る。また、コンパクト連星を作るような 大質量な星同士の連星系に関しては星の一生の終わりに重力崩壊・超新星爆発と いった複雑で大規模な変化をもたらすプロセスがあるためその後の連星進化の理 解は一層困難を極める。これら連星相互作用を理解して初めてその後引き起こさ れる水素欠乏型超新星爆発やガンマ線バーストなど連星由来の現象が理解できる のである。

本研究では、連星相互作用の中でも連星全体の進化にとって鍵となる「主星の 超新星爆発」の段階に注目する。大質量連星系が最終的にコンパクト連星に至る ためには系が主星と伴星の2度の超新星爆発を生き残る必要がある。特に1度目 の超新星爆発時には爆発による質量損失に加え爆風が伴星へ衝突することにより 与えられる副次的な効果(質量の剥ぎ取り、衝撃波加熱による膨張、運動量を与 える等)が影響する可能性がある。これらはIa型超新星爆発などを起こすような 小質量連星に関しては解析的・数値的な研究が多くなされてきた。本研究ではコ ンパクト連星を作るような大質量連星系に焦点を絞り、数値シミュレーションを 駆使して超新星爆発時の爆風衝突効果を調べる。また、それを実在する系に適用 し、爆風衝突効果がどのように観測されるかを調べる。これを実行していく過程 でシミュレーションの計算速度が研究の進度を律速しているという問題があった。

それを回避するため、計算時間の大半を占めていた自己重力のパートを高速化す る手法を提案した。これにより、今後爆風衝突効果のさらなる網羅的な計算を行 うための下地が整った。爆風衝突効果に限らず広く自己重力流体シミュレーショ ンに使える手法となっている。

No.1

(3)

まず、超新星爆風が当たることにより伴星からはぎとられる質量の上限値を求 めるような流体シミュレーションを行った。爆風の影響が一番大きいように、伴 星として非常に緩く束縛された赤色巨星を仮定する。また公転軌道は安定な中で 一番近くなるよう、伴星がロッシュローブをぎりぎり満たしているような距離を 設定する。このように仮定した連星系に対し、爆風衝突効果のシミュレーション を以下の2つのステップに分けて行った。第一段階として超新星爆発を再現する ため、球対称を仮定した1次元流体シミュレーションを行った。主星として 10 太陽質量の星のモデルを用意し、その中心部に超新星爆発の典型的なエネルギー である 1051erg を人工的に注入し、爆発を再現する。次に、第二段階では軸対称 を仮定した2次元グリッド上に伴星として10太陽質量の赤色巨星モデルを置く。

これに対し第一段階で得られた爆風のデータを外挿することで爆風が伴星に衝突 する様子を再現した。爆風が通り過ぎ、伴星が再び落ち着いた後に最終的に伴星 からはぎ取れた質量及び与えられた運動量を計算した。

結果として最大で伴星質量の 25%の質量がはぎ取れることがわかった。また、

連星軌道を変えていくと軌道半径の約4.2 乗に反比例してはぎ取れる質量が減少 していくことがわかった。これはIa型超新星に関する先行研究とも概ね一致して いる。また、爆風のプロファイルを変えて実験的なシミュレーションを行い、は ぎ取れる質量が伴星に当たる瞬間の爆風密度と強い相関を持つことを明らかにし た。また、はぎ取りのプロセスを簡単にモデル化した。

次に、より具体的な適用先として実在する系に対して同様のシミュレーション を行った。注目したのはiPTF13bvnというIb型超新星爆発である。この超新星 は爆発前の様子が観測されている唯一のIb型超新星として有名で、そのおかげで 親星のモデルに対して非常に強い制限がかけられている。Bersten et al. 2014と いう先行研究では連星進化・流体シミュレーションを用いて爆発前の観測と超新 星の光度曲線を統一的に再現できるような進化モデルを調べた。そして、爆発か ら3年後に超新星残骸の中で、大きな質量を持つ青く明るい伴星が現れると予言 した。本研究ではその伴星に爆風衝突効果が働いているとすれば伴星の見え方が 予想と異なるだろうという考えのもと、この系に対しても爆風衝突効果のシミュ レーションを行うことにした。まずオープンソースである連星進化コードMESA を用いて先行研究の連星進化モデルを再現し、それによって得られた親星連星系 に対し上記と同様の爆風衝突シミュレーションを行った。その結果、連星軌道が 大きいため質量はほとんどはぎ取れないものの、外層部が加熱されその熱により 伴星が大きく膨らむ可能性があることがわかった。膨張のタイムスケールが長す ぎて流体シミュレーションでは追いきれないため、エネルギー注入後の準静的な 発展をもう一度MESAを用いて計算し、最大膨張半径を見積もった。これにより、

超新星残骸中に伴星が見えてくる際には従来予想より赤く明るい状態で発見され ると予言した。

No.2

(4)

2016 年に入り、iPTF13bvn の追観測の結果が公開された。結果として、赤く 明るい伴星も青く明るい伴星も発見されなかった。これは、爆風衝突効果シミュ レーション以前の連星進化モデルが間違っていたことを意味している。本研究で は観測の制限を改めて精査し、全ての制限を満たす連星進化モデルを再考したと ころ「共通外層状態」というプロセスを経ている可能性が高いことを明らかにし た。共通外層状態はその複雑さゆえ提唱されて以来理解がほとんど進んでいない。

ここではさらにもう一歩進んだ視点として、この超新星親星への強い制限を利用 して逆に共通外層状態の物理を明らかにすることを試みた。

共通外層状態は片方の星が膨張して伴星を飲み込み、伴星が主星の外層を吹き 飛ばしながら一気に軌道を縮める現象である。このとき、外層を吹き飛ばしきれ るだけのエネルギーが存在するのかが焦点となる。一般的にこのエネルギーを軌 道エネルギーで規格化したαというパラメータを用いて共通外層状態後の結果を 推測する。このαの値は不定性が高いために、共通外層状態を経ないと作れない と言われるあらゆる連星系の形成シナリオもよくわかっていない。本研究では進 化計算で共通外層を疑似的に再現することで iPTF13bvn の親星となりうる星を 作り、観測から得られている制限との比較からαの値の下限を求めた。これによ り、共通外層状態の物理へ何かしらの示唆が与えられるはずである。

これまでの研究で爆風衝突効果や共通外層状態など、大質量連星系の進化を解 き明かす際に欠かせない現象を恒星進化・流体シミュレーション等を駆使して研 究してきた。しかし、上限値や特定の系について調べたのみで、一般の場合にど うなるかを知るために今後さらなる系統的調査が必要になる。そのためには現在 の計算機や計算手法では時間がかかりすぎてしまう。そこで、今後行うさらなる 系統的研究を行うための前段階として計算速度を向上させる研究を行った。特に、

流体シミュレーションを行う際にボトルネックとなっていた自己重力を効率的に 計算する手法を開発した。具体的には、自己重力を含める際に解くポアッソン方 程式が楕円型偏微分方程式であることが効率を下げていたため、これを双曲型偏 微分方程式である波動方程式に書き換え、近似的にポアッソン方程式の解を求め るということを行った。実際にこれを2次元シミュレーションに適用し、誤差を 評価したところ計算条件次第では 0.1%以下の誤差に抑えられることがわかった。

さらに全体の計算時間が100倍以上縮まった。これは、今後行う予定の様々な大 規模シミュレーションへ向けて大きな前進で、連星進化に関する理解が加速する であろう画期的な成果であった。

No.3

(5)

No.1

早稲田大学 博士(理学) 学位申請 研究業績書

氏 名 平井 遼介 印

(2017 年 1 月 現在)

種 類 別 題名、 発表・発行掲載誌名、 発表・発行年月、 連名者(申請者含む)

論文

講演 (口頭)

〇“Formation scenario of the progenitor of iPTF13bvn revisited”、

Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Volume 466, Issue 4, p.3775、

2017年5月、Ryosuke Hirai

“Hyperbolic self-gravity solver for large scale hydrodynamical simulations”、

Physical Review D, Volume 93, Issue 8, id.083006、 2016年4月、Ryosuke Hirai, Hiroki Nagakura, Hirotada Okawa & Kotaro Fujisawa

〇“Possible Signatures of Ejecta-Companion Interaction in iPTF 13bvn”、

The Astrophysical Journal, Volume 805, article id. 170, 7 pp.、2015年6月、Ryosuke Hirai & Shoichi Yamada

〇“The Outcome of Supernovae in Massive Binaries; Removed Mass, and its Separation Dependence”、The Astrophysical Journal, Volume 792, article id. 66, 15 pp.、2014年9月、Ryosuke Hirai, Hidetomo Sawai & Shoichi Yamada

"iPTF13bvnの連星親星モデル"、第29回理論懇シンポジウム、2016年12月、平井遼介

"超新星iPTF13bvnの連星親星モデル"、連星系・変光星・低温度星研究会 2016、

2016年10月、平井遼介

"流体力学シミュレーションにおける高速自己重力計算手法の提案"、日本天文学会

秋季年会2016、2016年9月、平井遼介・長倉洋樹・大川博督・藤澤幸太郎

"Lessons on binary star evolution from iPTF13bvn"、2nd NAOJ-ECT* Workshop on

"Many Riddles About Core-Collapse Supernovae: 1 Bethe and Beyond"、

2016年6-7月、Ryosuke Hirai

"Towards the Formation of Binary Neutron Stars"、Numazu Workshop 2015:

Challenges of modeling supernovae with nuclear data、2015年9月、Ryosuke Hirai

"Ejecta-Companion interaction in iPTF 13bvn"、F.O.E. Fifty-One Erg、2015年6月、

Ryosuke Hirai & Shoichi Yamada

"超新星爆発前後での連星系の生存可能性"、日本天文学会春季年会2015、2015年3月、

平井遼介・澤井秀朋・山田章一

(6)

No.2

早稲田大学 博士(理学) 学位申請 研究業績書

種 類 別 題名、 発表・発行掲載誌名、 発表・発行年月、 連名者(申請者含む)

講演 (ポスター)

"中性子星連星の形成に向けた超新星爆発後の連星系の生存可能性"、

新学術領域A04/05班合同合宿、2015年1月、平井遼介・山田章一

"大質量連星系内での超新星爆発"、第2回DTAシンポジウム、2014年10月、平井遼介

"大質量連星系内での超新星爆発が伴星に与える影響とそのパラメータ依存性"、

日本天文学会秋季年会2014、2014年9月、平井遼介・澤井秀朋・山田章一

"大質量連星系における超新星爆発とその伴星への影響"、第 44 回 天文・天体物理若手

夏の学校、2014年7月、平井遼介

"連星系中の超新星爆発が伴星に与える影響"、連星天文学研究会、2014年2月、

平井遼介・澤井秀朋・山田章一

"大質量連星系における超新星爆発が伴星に与える影響"、日本天文学会秋季年会 2013、

2013年9月、平井遼介・澤井秀朋・山田章一

"大質量連星系における超新星爆発が伴星に与える影響"、第 43 回 天文・天体物理若手

夏の学校、2013年7月、平井遼介・澤井秀朋・山田章一

"連星系中の超新星爆発"、第42回 天文・天体物理若手 夏の学校、2012年8月、

平井遼介・澤井秀朋・山田章一

"自己重力流体シミュレーションにおける高速自己重力計算手法"、

第46回 天文・天体物理若手 夏の学校、2016年7月、平井遼介・長倉洋樹・大川博督・

藤澤幸太郎

"超新星爆発によって共通外層状態が誘発される可能性について"、

第28回理論懇シンポジウム、2015年12月、平井遼介・衣川智弥・山田章一

"iPTF 13bvnにおける伴星の観測的特徴"、第27回理論懇シンポジウム、2014年12月、

平井遼介・山田章一

"Supernovae in Massive Binaries and their Impact on the Companion"、

Binary systems, their evolution and environments、2014 年9 月、Ryosuke Hirai, Hidetomo Sawai & Shoichi Yamada

"Supernovae in Massive Binaries and its Impact on the Companion" 、 Multi-Messengers from Core-Collapse Supernovae(MMCOCOS)、2013 年 12 月、

Ryosuke Hirai, Hidetomo Sawai & Shoichi Yamada

(7)

No.3

早稲田大学 博士(理学) 学位申請 研究業績書

種 類 別 題名、 発表・発行掲載誌名、 発表・発行年月、 連名者(申請者含む)

その他 (セミナー)

その他 (講演)

"Hyperbolic Self-Gravity Solver and Beyond"、京都大学宇宙物理学教室セミナー、

2016年7月、Ryosuke Hirai

"大質量連星系内の超新星爆発が伴星へ与える影響とその観測可能性"、

東京大学茂山研究室セミナー、2016年1月、平井遼介

"Ejecta-Companion Interaction in Massive Star Binaries"、

KEK Theory Seminar、2015年7月、Ryosuke Hirai

"大質量連星系内の超新星爆発が伴星へ与える影響とその観測可能性"、

京都大学天体核物理学教室コロキウム、2015年6月、平井遼介

"大質量連星系内の超新星爆発が伴星へ与える影響とその観測可能性"、

京都大学宇宙物理学教室セミナー、2015年6月、平井遼介

"Supernovae in Massive Binaries and its Impact on the Companion"、

理化学研究所天体ビッグバン研究室セミナー、2014年4月、Ryosuke Hirai

"大質量連星系内での超新星爆発によって熱された伴星が引き起こす様々な現象"、

2015年度 若手研究者研究成果報告会 理工研シンポジウム、2016年3月、平井遼介

"宇宙物理学とその応用 ~他分野との共同研究に向けて~"、

理工学術院総合研究所アーリーバードプログラム2015年度第一回バードミーティング、

2015年6月、平井遼介

"連星系と超新星爆発"、早稲田大学系属早稲田実業学校 課外特別授業 第一回早実OB・OG大学院生講義、2015年6月、平井遼介

参照

関連したドキュメント

 この論文の構成は次のようになっている。第2章では銅酸化物超伝導体に対する今までの研

  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

に文化庁が策定した「文化財活用・理解促進戦略プログラム 2020 」では、文化財を貴重 な地域・観光資源として活用するための取組みとして、平成 32

① 小惑星の観測・発見・登録・命名 (月光天文台において今日までに発見登録された 162 個の小惑星のうち 14 個に命名されています)

小学校学習指導要領より 第4学年 B 生命・地球 (4)月と星

本事業を進める中で、

それに対して現行民法では︑要素の錯誤が発生した場合には錯誤による無効を承認している︒ここでいう要素の錯