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第 49 回神奈川腎炎研究会 シェーグレン様症候群に伴う腎病変を主体とした HIV 腎症の 1 例 山本 慶 角田慎一郎 黒澤美穂 潘 勤雅 佐藤芳憲 若杉春枝 症 例 症例 :60 歳代男性主訴 : 多発リンパ節腫脹既往歴 :16 歳虫垂炎,60 歳代前立腺肥大症, 輸血歴なし家族歴 : 父胃癌,

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症  例

症 例:60歳代 男性 主 訴:多発リンパ節腫脹 既往歴:16歳 虫垂炎,60歳代 前立腺肥大 症,輸血歴なし 家族歴:父 胃癌,姉 大腸癌 生活歴:飲酒 なし 喫煙 なし 現病歴:約1年前より口渇,体重減少を認め ていたが,2 ヶ月で10kgの体重減少を認め,当 院を受診し,上部消化管内視鏡を施行したが異 常所見はなかった。腹部CTにて回腸末端部の 肥厚,リンパ節腫脹も認め,再度,上部・下部 消化管内視鏡を施行したが,異常所見はなかっ た。血液検査にて高γグロブリン血症,低補体 血症を認め(IgG 3963, IgA322, IgM 11.4, C3 61,

C4 8),精査目的に入院となった。 入院時現症:身長162.5cm, 体重57.5kg,BMI 21.7kg/m2,血圧108/61mmHg,脈拍86/分, 体温 36.8℃,眼:眼瞼結膜貧血なし,眼球結膜黄染 なし 頭頚部:顔面丘疹多数あり,頸部リンパ節触 知せず 胸 部:心音異常なし,呼吸音異常なし 腹 部:異常所見なし 図1 図2

シェーグレン様症候群に伴う腎病変を主体とした

HIV腎症の1例

山 本   慶  角 田 慎一郎  黒 澤 美 穂

潘   勤 雅  佐 藤 芳 憲  若 杉 春 枝

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図3 図4 尿 比重 1.022 pH 6.5 蛋白 20 糖 (-) ケトン体 (-) 潜血 (-) 尿中β2MG 15300 μg/L NAG 28.4 U/L 血算 WBC 5800 /mm3 Neut 69 % Eos 3 % Baso 1 % Lym 23 % Mono 4 % RBC 389×104 /mm3 Hb 10.4 g/dl Ht 30.4 % Plt 18.7×104 /mm3 生化学 TP 8.5 g/dl Alb 41.4 % α1 2.1 % α2 5.5 % β 6.1 % γ 44.9 % BUN 20.0 mg/dl UA 5.6 mg/dl Cr 0.8 mg/dl T.chol 114 mg/dl TG 65 mg/dl AST 25 IU/l ALT 11 IU/l LDH 171 IU/l ALP 293 IU/l γ-GTP 12 IU/l CK 55 IU/l Amy 116 IU/l Na 135 mEq/l K 4.2 mEq/l Ca 8.3 mg/dl Cl 103 mEq/l CRP <0.1 mg/dl 免疫学的検査 IgG 3476 mg/dl IgA 316 mg/dl IgM 1080 mg/dl IgE 3820 IU/l C3 66 mg/dl C4 8 mg/dl CH50 13.6 IU/ml 抗核抗体 <40 倍 抗SS-A抗体 <7.0 U/ml 抗SS-B抗体 <7.0 U/ml 抗Jo-1抗体 <7.0 U/ml KL-6 815 U/ml SP-D 35.1 U/ml リゾチーム 10.6 μg/ml IL-6 3.3 IU/l sIL-2R 3260 U/ml 甲状腺 FreeT3 2.88 pg/ml FreeT4 0.91 pg/ml TSH 1.443 mg/dl TSAb 80 mg/dl TSHレセプター抗体 <1.0 mg/dl 便培養 MRSA (+) IgGサブクラス分画 IgG1 2150 mg/dl (76.6%) IgG2 414 mg/dl (14.8%) IgG3 224 mg/dl (7.98%) IgG4 19.3 mg/dl (0.7%) CD3 86.7 % (58.0 ~ 84.0%) CD4 13.2 % (25.4 ~ 54.0 %) 176/μl CD8 77.2 % (23.0 ~ 56.0 %) CD20 12.1 % HIV定性 (+) HIV-1(Western-Blot) 陽性 HBsAg (-) HBsAb (-) HCV (-) 検査所見

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図5 図6 図7 図8 図9

シェーグレンと鑑別が難しい疾患

ミクリッツ病 ◦ 好発年齢や性差が典型的「Sjogren症候群」と 異なる. ◦ 腺の腫脹が強い割に,乾燥症状に乏しい. ◦ 自己免疫性膵炎(AIP),自己免疫性肝炎など 自己免疫性病変やアレルギー性疾患を合併. ◦ 血清のIgG4が高く,腺組織においてIgG4産 生形質細胞浸潤を認める. ◦ Steroid剤 な ど の 治 療 反 応 性 が 良 く 典 型 的 「Sjogren症候群」と異なる.

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自己免疫性リンパ増殖性多臓器疾患

Autoimmne multi-organ lymphoproliferative syndrome(AMOLPS)

HIV (Human immunodeficiency virus)

◦ CD4陽性細胞T細胞に感染しAIDSを引き起 こす. ◦ 感染経路:性行為,HIV感染の輸血,母子感染. ◦ 感染後10年程度は無症候性. ◦ 適切な治療がなされない場合,体重減少,発熱, 下痢,全身のリンパ節腫脹等認める.(AIDS 関連症候群:ARC)   ◦ さらに進行すると1 ~ 2年後悪性腫瘍,日和見 感染症を起こす(AIDS期). ◦ B細胞系の調節障害をきたし,ポリクローナ ルな高γグロブリン血症をきたす.

◦ AIDS患 者 の 中 に はHIV関 連 腎 症(HIVAN) とよばれる難治性FGSを起こし,末期腎不全 に至る例がある.

◦ HIV感染症に続発しSjS,PM,クリオグロブ リン血症,ITPなどを発症する

◦ シェーグレン様症候群(Sjogren like syndrome) を認める例がある. シェーグレン症候群:多くはCD4T細胞によ るリンパ球浸潤 HIV 感染症: ◦ HIV感染者は感染に対しCD8T細胞を増産さ せ反応する. ◦ CD8T細胞は多臓器に浸潤する. ◦ 唾液腺炎,肺炎,間質性腎炎,肝炎,筋炎な ど起こす.

→ diffuse infiltarative lymphocytosis syndrome (DILS)

HIVAN

(HIV-associated neuropathy)

Biology of Disease ◦ アフリカ系のアメリカ人,男性,薬物乱用者 に多い. ◦ 多くの患者がCD4+Tcell<100/μgと免疫不 全状態である. ◦ Podocyteの脱分極と増殖が原因と考えられて いるが詳細な機序は不明である. ◦ 未治療では数週~数ヶ月以内に末期腎不全に 陥る. ◦ HAARTが行われるようになり減少傾向であ る. Clinical feature ◦ 通常ネフローゼ症候群を示す。 ◦ 高血圧が半数以上に起こる。 ◦ 腹部エコーにて腎サイズの腫大,high echo像 を示す。

HIVAN(Light Microscopy)

Glomeruli ◦ 糸球体硬化像(全周性がほとんど) ◦ 蛋白滴をともなうPodocyteが糸球体硬化部を 覆う Tubules ◦ 小嚢腫様に拡張 Interstitium ◦ CD8 positive T cellの浸潤. Vessels ◦ Thrombotic microangiopathy(TMA)を認めるこ ともある.

HIVAN

(Immunofluorescene &

Electron Microscopy)

Immunofluorescene Microscopy ◦ まれに免疫複合体が観察される. Electron Microscopy ◦ 内皮細胞に封入体 ◦ 糸球体基底膜やメサンギウムに電子高密度免 疫沈着物が見えることもある

Differential Diagnosis

◦ Idiopathic Focal Segmental Glomerular  Sclerosis(FSGN)

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◦ Heroin-Associated Nephropathy ◦ Idiopathic Collapsing Glomerulopathy ◦ Lupus Nephritis

◦ Immuno-complex Glomerulonephritis ◦ Acute Interstitial Nephritis

◦ Thrombotic Microangiopathy

HIVAN

(HIV-associated neuropathy)

Treatment

◦ Anti-viral therapy (HAART) ◦ ACE Inhibitor

◦ Steroid

DILS

(diffuse infiltrative lymphocytosis

syndrome)

“a disorder in patients with human immunodefi-ciency virus type 1 (HIV-1) that is characterized by salivary and lacrimal glandular swelling and sicca symptoms of varying intensity, frequently accom-panied by persistent circulating and visceral CD8-positive lymphocytic infiltration”

Clnical and biological features of DILS

(diffuse infiltrative lymphocytosis

syndrome)

Clinical sicca symptom + Lympadenopathy + Arthralgia -Myalgia + Interstital pneumonitis ++ Hepatitis + Interstitial nephritis +

Distal tubular acidosis +

Central nervous sysytem involvement +

Peripheal neuropathy ++

Biological

ANA

-Anti SSA/SSB

-IgM rheumatoid factor

-Hypregammaglobulinea ++

HIV +

Characteristic of renal syndrome

associated with DILS

Biological finding High HIV viral load

CD8+ hyperlymphocytossis(±monoclonal com-ponent)

Polyclonal hypergammaglobulinemia Acute renal failure

Leucocyteuria, hematuria Ultrasonography findings

Enlarged kidney Renal Biopsy findings

Interstitial infiltrates (mostly CD8+ T lym-phocytes; absence of CD4+ lymphocytes) Tubulitis

Tubular atrophy and intersitial fibrosis

Negative findings: glomeruli are spared; absence of granuloma

Treatment

Stroid sensitive flare

Antiviral therapy(HAART)

結 語

◦ シェーグレン症候群様の症状を示すHIV感染 症の1例を報告した ◦ 本症例はDILSが病態の主体であり,腎機能 障害を認めなかった. ◦ 抗SS-A抗体,抗SS-B抗体が陰性のシェーグ レン症候群が疑われる場合,稀ではあるが HIV感染症を考慮する事も必要である.

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討  論

座長 皆さん,お疲れだと思いますけれども, いちばん最後の演題になりました。「シェーグ レン様症候群に伴う腎病変を主体としたHIV 腎症と思われる1例」横浜栄共済病院,山本先 生,よろしくお願い致します。 山本 横浜栄共済病院の山本と申します。よろ しくお願いします。「シェーグレン様症候群に 伴う腎病変を主体としたHIV腎症の1例」を発 表したいと思います。  症例です。60歳,男性です。主訴,多発性 リンパ節腫脹。既往歴です。16歳,虫垂炎, 60歳代,前立腺肥大症,輸血歴はありません。 家族歴です。父,胃がん。姉,大腸がんの家族 歴があります。生活歴ですが,飲酒,喫煙とも にありません。  現病歴です。約1年前より口渇,体重減少を 認めておりましたが,2カ月で10kgの体重減少 を認めまして,当院を受診されました。そのと き,上部消化管内内視鏡を施行しましたが異常 所見は特に見当たりませんでした。腹部CTに て回腸末端部の肥厚,リンパ節の腫脹を認め, 再度,上部,また下部の消化管内内視鏡を施 行しましたところ,異常所見は特にありません でした。血液検査にて高γグロブリン血症,低 補体血症を認め,このときの値ですけれども, IgG,3963。IgA,322。IgM,11.4。C3,61。 C4,8となっており,精査目的に入院となりま した。  入院時現症ですが,顔面に丘疹が多数あり, また頸部リンパ節はこのときは触知いたしませ んでした。その他特記すべきことはありません。  続いて検査所見です。尿所見ですが,尿中 のβ2-ミクログロブリンが1万5300とNAG が28.4と高値を認めております。血算は特に 異常はありません。生化学ですが,アルブミ ン41.4%と低下しており,γグロブリンですが 44.9%と上昇しております。その他腎機能,肝 機能,また電解質は特に異常ありません。  続いて検査所見です。免疫学的検査ですが, IgG,3476。IgM,1080。IgE,3820と 高 値 を 認めております。C4,8,CH50と低補体血症 も認めております。その他KL-6,リゾチーム, IL-6も高値を認めており,潰瘍性IL-2レセプ ターも3260と高値を認めております。その他, 甲状腺機能も問題なく,便培養にてMRSAが 検出されております。  胸部レントゲン,入院時のものですが,特に 異常所見は見当たりませんでした。続いて胸部 から腹部の全身CTを撮りましたところ,全身 のリンパ節腫脹がありましたが,特に腫瘍状の massは認めませんでした。シェーグレン症候 群や骨髄腫,また悪性リンパ腫なども疑われま して,入院時に検査をいたしましたところ,唾 液腺シンチでは特に集積などは認めずほぼ正 常。Schirmer testにて右5mm,左3mmと涙液の 分泌低下いたしております。唾液腺の生検所見 ですが,著明なリンパ球浸潤を認めるという所 見がありました。ガリウムシンチですが,異常 集積は認めておりません。  次いで腎臓の病理所見です。PAS染色ですが, 丸で囲ったところに間質へのリンパ球浸潤を認 めております。また糸球体の53個中6個に硬化 像を認めておりまして,残りの糸球体ですが, mesangiumの拡大,細胞増殖,ボーマン嚢,上 皮細胞の増殖など,そういった所見は見られま せんでした。この矢印のところが糸球体の硬化 したところです。そのほか尿細管にcastも認め ております。  続いて蛍光染色ですが,明らかな染色は認め ませんでした。入院したときはシェーグレン症 候群かと思いましたけれども,シェーグレン症 候群と鑑別は難しい疾患としてミクリッツ病 と,先ほど発表がありましたけれども,こういっ た病気がありますが,IgG4が血清が高く,全 身性のリンパ増殖性多臓器疾患としての概念が ありまして,IgG4を取りましたところ,IgGサ ブクラス分画を取りましたところ,特にIgG4 の高値は見られませんでした。その他腎臓の病

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理所見と先ほど示したβ2-ミクログロブリン の非常に高値なのが合わないなということで, 末梢のリンパ球の解析として検査をいたしまし たところ,CD4が13.2%と正常値に比べて著明 に低下しておりまして,HIVを測定したところ 陽性と出ました。その他,B型,C型は陰性です。  これからHIVの解説になるんですけれども, 本症例で認めたように赤字のところを注目して いただきたいんですけれども,体重減少,発 熱,下痢,全身のリンパ節腫脹などを認めてお ります。その後,1年もするとエイズ期といっ たところになります。高γグロブリン血症を 認めたり,エイズ患者の中にはHIV関連腎症, HIVANと申しますが,難治性のFGSを起こし, 末期腎不全に至る例があるということです。そ の他,シェーグレン様の症候群,Sjogren like syndromeを認める例があります。  シェーグレン症候群との違いといいますの は,シェーグレン症候群のリンパ球の浸潤とい うのは,多くはCD4の陽性のT細胞です。ただ HIV感染症に関してはCD4が減ることによっ てCD8細胞(★1:13:02 /一語不明)反応します。 ということでCD8陽性のT細胞が多臓器に浸潤 いたしまして,これが唾液腺,また肺,間質性 腎炎,肝臓,筋炎など起こし,これをDiffuse infiltrative lymphocytosis syndrome,DILSと言わ れております。  それについて。まずHIVAN,HIV-associated nephropathyに関してですが,アフリカ系のア メリカ人,また男性,薬物乱用者に多く,また CD4,T cellが低い,免疫不全状態の患者さん に多いといった特徴があります。詳細な機序は 不明で,HAART therapyが行われるようになっ て,現在は減少傾向ということです。  クリニカルの面ですが,通常,ネフローゼ症 候群を起こすことや,また高血圧が非常に多く 見られるということです。  続いて顕微鏡的所見ですが,まず光顕的所見 です。糸球体硬化像,FGSというのが非常に特 徴的な所見です。さらに尿細管が著明に拡張し たり,ここも大事なところで,CD8-positive T 細胞の浸潤を間質に認めております。免疫学的 な所見ですが,まれに免疫複合体が観察される こともあるということです。あと,電顕的所見 には内皮細胞に(★1:14:43 /一語不明),基底 膜,メサンギウムに高密度の免疫沈着物が見る こともあるといったことです。  鑑別診断には以下のようなものが挙げられ ます。  HIVANに関しての治療なんですけれども, HAART therapyが基本となります。また血圧が 高い患者さんに対してACEインヒビターを使 いコントロールすることがあるということで す。ステロイドに関してですけれども,ここに 列挙されせいただいたんですが,ステロイドに 関してはまだ議論中ということだそうです。  続いて先ほど全身性のリンパ球浸潤を述べた DILSなんですけれども,ここに論文から引っ 張ってきたDILSは何かということを英語で列 挙させていただいたんです。重要なことはHIV 感染患者に起こるということと,多くの臓器 にCD8陽性リンパ球の浸潤を認めるというこ とです。クリニカル,バイオロジカルのDILS の特徴ですが,この赤字で示したところが本 症例に認めた兆候です。シェーグレン症候群, lymphadenopathyも 認 め ま す。 ま た 間 質 性 の nephrotisを認めております。  さらに検査,バイオロジカルのところですが, ANA,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体は陰性でして, hyperγ globulinemiaは陽性,HIVは陽性といっ たことが合致するところだったと思います。  先ほどのHIVANのところと重複してしまう んですけれども,腎臓に関しての特徴です。 CD8が高値になるということと,急性腎不全の 経過をたどる。大事なことはCD4リンパ球がな く,CD8が主に間質に浸潤するということです。  本症例の唾液腺,このあとお見せしますけ れど,腎臓の病理所見の免疫をしましたとこ ろ,先ほど述べた特徴のようにCD4は染まら ず,CD8が免疫で染色されていることが分かり

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ます。  続いても腎臓の免疫染色ですけれども,やは りCD8が間質に浸潤しているといった所見が 認められます。  最後に結語です。今回,シェーグレン様症 候群の症状を示すHIV感染症の1例を報告いた しました。本症例はDILSが病態の主体であり, 腎機能障害を認めませんでした。抗SS-A抗体, 抗SS-B抗体が陰性のシェーグレン症候群が疑 われる場合,まれではありますが,HIV感染症 を考慮することも必要であるといった結論で す。以上です。 座長 どうもありがとうございました。それで は臨床の経過に対してご質問,コメントをお願 い致します。 守矢 湘南厚木病院腎臓内科の守矢です。貴重 な発表をありがとうございました。2点確認し たいんですが,1点は数字の問題かもしれませ んが,当初,IgMの値が十一点いくつと,2回 目が1080とだいぶその経過で変わっているの かなと思うんですが,これは間違いではなくて, 実際にこの数値なのかということが1点なんで すが。 山本 確かにおっしゃるとおりなんですが, ちょっと間違えた可能性もあるので,ただ外来 中でのやつと入院時のやつということで,すみ ません,間違えた可能性もあるのであとでまた 検討しておきます。 守矢 あと2点目は主訴が多発性リンパ節腫脹 ということで画像にもあったんですが,リン パ節生検等をされていないかどうかということ と,リンパ増殖性疾患でキャッスルマン病と いったところの鑑別で,よくHHV感染との関 連等も言われていますし,今回これがHIV感染 ということもあるので,そういったことと何か リンパ増殖性疾患,キャッスルマン病というこ とも関連があるかなと思ったので,リンパ節生 検での形質細胞の浸潤,もしくは腎組織上での 形質細胞があったかどうかをお聞きしたいんで すけれども。 角田 共同演者ですけれども,IgMはたぶん 114の間違いだと思います。この方はHIVと 思っていなかったので,HIVが出た瞬間,KL-6 が高かったので大学の先生と相談して,すぐに HAART therapyを始めたほうがいいということ で転院されたのでリンパ節生検は行っておりま せん。 守矢 ありがとうございます。 座長 先生お願い致します。 山田 社会保険横浜中央病院の山田と申しま す。貴重なご症例,ありがとうございました。 この方は同時にHIVの治療もされていると思 うのですが,RNA量と尿細管異常との間に, 相関性はありましたか。 山本 申し訳ないですが,それも検索はやって おりません。感染してから,かなり発症が早期 ではないかという意見でしたので,おそらく RN量は少ないと考えます。 座長 他はよろしいでしょうか。 安田 聖マリアンナ医大の安田です。最初に 口渇を訴えていらしているんですけれども, NAGやβ2MG以外に尿細管障害を疑わせるよ うな所見,また,その他の濃縮力障害やアシドー シスなどの所見は認められなかったのですか。 山本 血液ガスとかは取っていないんですけれ ども,そういった疑わせる所見は特に認めな かったと思いますけれども。 座長 よろしいでしょうか。では病理の先生か らのコメントをお願いします。重松先生お願い 致します。 重松 最後になかなか難しい症例が出てきたん ですけれども,シェーグレン症候群の腎病変が HIVで起こっているかどうかということです ね。そこらへんが問題になると思うんですが, それに対する明白な答えはわたしは下せなかっ たということです。 【スライド01】画にお示しますように,こうい うふうに層状にリンパ球の浸潤があって,そし て中央あたりに壊れた尿細管から出てきた蛋白 漏出がある。そういうものが出ているところが

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示されています。 【スライド02】いまのところを大きくしたもの です。尿細管の構造はごく一部にしか残ってい ません。 【スライド03】ここまでは尿細管の一部と分か りますが,あとははっきりしません。 【スライド04】それからもう1つのかたちは, こういうリンパろ胞みたいなのをつくって,そ してリンパ球が浸潤しているということです。 そういうところにtubulitisなんかがあるんです けれども,tubulusの病変というのは別にこの 細胞浸潤がものすごいところだけに限局してい るようには見えない。 【スライド05】例えばこういうところですね。 かなり激しい尿細管の上皮の剥離,そして細胞 内への浸潤という尿細管炎が起こっています。 【スライド06】これもPAM染色で染めた別のと ころですけれども,尿細管の構造がここで壊れ てしまって,ここにいろいろな種類の細胞,リ ンパ球だけではないと思いますけれども,マク ロファージ,単核の細胞が浸潤している。 【スライド07】ここでも中に尿細管を置き換え てしまうぐらいの細胞浸潤があります。 【スライド08】ここでも断続的に尿細管が壊さ れている。この症例では唾液腺のほうにはあま りtubulusの破壊性の病変があったかどうかを 書いてありません。普通シェーグレン症候群と いうのは,上皮細胞がターゲットになりますの で,tubulusが壊されるというのが唾液腺でも尿 細管でも特徴的なもので,いままで見てきた変 化は,これは普通のシェーグレン症候群で見ら れる変化とそう変わりはないということです。 【スライド09】一部では細胞がむしろ増生して いるところもある。 【スライド10】そして糸球体病変なんですけれ ども,HIV腎症のときにはFGSの病変が出ると いうことが記載されていて,この症例でも1カ 所こういうふうなcollaps型のFGS病変があり ました。それからもう1つの病変はpodocyteに 異常な増殖が見られる場合があるという記載が あるんですけれども。 【スライド11】この症例で見たpodocyteの病変 というのはこの程度で,どうもHIVを積極的に 後押しするような病変としては,どうも思えな かったということです。ということで,わたし の結論としては,病理学的にこれはHIV腎症で あるということを,積極的に言えないというこ とです。 座長 では山口先生,お願い致します。 山口 私も経験がないので,結論はよく分かり ません。CD4とCD8を染めて,うまい具合に 分かれたのでその可能性もあると思います。 【スライド01】細胞浸潤がそんなに多くない。 動静脈の周囲とか,非特異的なところに集まり やすい。 【スライド02】リンパ球系の細胞が主体でつぶ れた糸球体の周りです。細胞の密度がやや多い 印象はあります。二次的に出てきたにしては細 胞浸潤の程度が強い。medullary rayに一致して 尿細管を巻き込む単核球の細胞浸潤が見られて いる。皮質で,髄放線部に一致して出てきてい る部分もある。ここは静脈があり,リンパ球系 が集まりやすい場所であると思います。 【スライド03】massiveな集まりで間質炎にして も集まりすぎなんです。細胞密度が通常の間質 炎にして多いので,あまり多いとlymphomaで はないですが,そのへんのものを考えなくては いけない細胞密度であると思います。単なるリ ンパろ胞をつくっているわけでもなさそうで す。この症例の特徴かもしれない。 【スライド04】髄放線部は尿細管が壊れて,少 し好中球が混ざってきて尿細管炎を起こしてい る。違った病変も混在しているという印象です。 【スライド05】massiveなところはplasma,好 中球も混ざっている。尿細管が壊れてTamm-Horsfall蛋白が外に漏れている。リンパ増殖性 ですと,monotonousなわけで,好中球なんか が混ざっている。Tamm-Horsfall蛋白が尿細管 が壊れて外へ漏れていますから,修飾されてい る。そのへんの区別が難しい。

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【スライド06】糸球体はほとんど所見がないの で,HIVANははっきりしたものはないように 思います。 【スライド】動脈はこんな程度の線維化なので, 経年的な線維化の程度と思います。 【スライド07】電顕で細動脈の軽度硬化があり ます。間質に主に出てきているのはリンパ球系 の細胞で,plasmacytoid細胞が混ざっている。 【スライド08】私は結論は出ないです。focalな tubulointerstitial nephritisにしては,細胞密度が 高いですが,medullary rayに多い傾向があるの で,尿路の異常とかものも考えなくてはいけな い。先生方が言っている可能性も否定はできな いように思います。以上です。 座長 どうもありがとうございました。では病 的な診断を踏まえまして,ご質問,コメントを お願いいたします。 高市 この患者さんの腎生検をするきっかけ になった腎障害というのは何だったんでしょ うか。 山本 シェーグレン症候群と,以前,他院で診 断されて,こちらへ来られたもので。 高市 例えば蛋白尿があったとか何か,tubular damageが強く疑われたとかいうことがあった のでしょうか。 角田 尿中のβ2MGが1万5300とかなり高値 で,NAGも高かったということで。 高市 血中のβ2MGは高くなかったのですか。 角田 測り損ねてしまいました。 高市 分かりました。 座長 他はいかがでしょうか。先生,どうぞ。 角田 いまの追加ですけれども,一応HIVの感 染をするとCD4に細胞が壊れて,それで血中 のβ2MGが上がって尿中のβ2MGが上がると いうふうに一応言われていますので,だから今 回,我々は,やはりさっきのリンパ球浸潤の程 度があまりにも軽く,尿中のβ2MGが高かっ たわりにはおかしいということで煮詰めて一応 HIVにたどりつたということです。 座長 ありがとうございます。他にいかがで しょうか。 平和 横浜市大の平和です。HIV以外の感染は みんなマイナスだったような気がするんですけ れど,感染元は分かったんでしょうか。海外へ 行かれたりというのがあったんですか,あるい は何か汚物を扱っていたとか,そんなのがあっ たのでしょうか? 山本 私が直接聞いたというわけではないんで すけれども,カルテのほうに,本人に身に覚え があるというふうな記載だけはあったんですけ れども,それが10年前と言われていて,ちょっ と詳しいところは,それ以上は分からない状況 です。 平和 HCV,あるいは結核なども心配になって くるのですけれど,そういうのは全く,いまの ところはないということですね。いまのところ は合併症は起こしてきていなくて,免疫はそれ ほど落ちていないうちに見つけることができた 症例と理解しました。ありがとうございました。 座長 それでは山本先生,どうもありがとうご ざいました。大変お疲れさまでした。これにて 後半のセッションを終わらせていただきます。

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