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論文審査結果の要旨

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Academic year: 2021

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氏 名 大住 隆太

授 与 し た 学 位 博 士 専攻分野の名称 歯 学

学 位 授 与 番 号 博甲第5936号 学位授与の日付 平成31年3月25日

学位授与の要件 医歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

学位論文の題目 骨細胞Sclerostinの脱負荷に伴う分布域変化の解析

論 文 審 査 委 員 岡村 裕彦 教授 西田 崇 准教授 原 哲也 准教授

学位論文内容の要旨

論 文 内 容 の 要 旨 ( 2000字 程 度 )

【緒言】

寝 た き り や 宇 宙 生 活 に 伴 う 機 械 的 負 荷 の 低 下 は 骨 量 の 減 少 を 引 き 起 こ す こ と が 知 ら れ て い る 。 機 械 的 負 荷 は 骨 量 を コ ン ト ロ ー ル す る 決 定 的 な フ ァ ク タ ー の 一 つ で あ り 、 骨 細 胞 が 、 機 械 的 負 荷 の 感 受 に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た す 可 能 性 が 示 唆 さ れ て き た 。骨 量 の 低 下 を 引 き 起 こ す タ ン パ ク 質 の 一 つ と し て 骨 細 胞 特 異 的 に 分 泌 さ れ るSclerostin(Scl)が あ り 、 骨 の 代 謝 調 節 に お い て 、 骨 形 成 の 抑 制 因 子 と し て 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。 Sclは 脱 負 荷 に よ り 産 生 量 が 増 加 、負 荷 に よ り 産 生 量 が 低 下 す る こ と が 知 ら れ て い る 。ま た 、脱 負 荷 下 で はSclが 広 範 囲 に 分 布 し 、負 荷 下 で は 分 布 が 狭 い 範 囲 に 限 局 す る 。し か し 、機 械 的 負 荷 に と も な うSclの 分 布 の 変 化 に 関 す る 報 告 は 乏 し く 、 そ の メ カ ニ ズ ム は 明 ら か に さ れ て い な い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は そ の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。

【 材 料 な ら び に 方 法 】

実 験 に は 、12週 齢 の 雄 性SDラ ッ ト を10匹 用 い た 。 右 側 の 坐 骨 神 経 、 大 腿 神 経 を そ れ ぞ れ 約5.

0 mm区 域 切 除 し 、 左 側 に は シ ャ ム 手 術 を 施 し 、7日 間 飼 育 後 、 潅 流 固 定 を 行 い 大 腿 骨 を 採 取 し た 。 右 側 大 腿 骨 をCut側 、 左 側 大 腿 骨 をControl側 と 定 義 し た 。Cut側 、Control側 の 骨 量 の 定 量 に はpQCT法 を 用 い 遠 位 骨 道 端 部 及 び 骨 幹 部 の 骨 量 を 評 価 し た 。Sclの 領 域 単 位 の 分 布 の パ タ ー ン は 、 大 腿 骨 骨 幹 部 の 冠 状 断 切 片 にScl抗 体 を 用 い て 蛍 光 免 疫 組 織 染 色 を 施 し 、 前 方 部 、 後 方 部 、 外 側 部 、 内 側 部 の4領 域 に 分 け て 、Scl抗 体 を 標 識 し た 蛍 光 色 素 (Alexa Fluor488)の 蛍 光 輝 度 及 びScl陽 性 骨 細 胞 の 割 合 の 定 量 に よ り 解 析 し た 。機 械 的 負 荷 に 伴 うScl分 布 の 変 化 が 生 じ や す い 領 域 を 特 定 後 、骨 細 胞 単 位 の 分 布 の パ タ ー ン は 、Scl抗 体 を10 nm径 の 金 コ ロ イ ド で 標 識 し 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 に て 骨 細 胞 内 、骨 小 腔 内 、骨 細 管 内 のSclを 観 察 し の 単 位 面 積 当 た り の 密 度 (金 コ ロ イ ド の 個 数/μ ㎡)を 定 量 し 、 評 価 し た 。

【 結 果 お よ び 考 察 】

Sclの 分 布 の 変 化 を 解 析 す る に は 、 骨 細 胞 内 、 骨 小 腔 内 、 骨 細 管 内 のSclを 免 疫 電 顕 法 で 観 察 す る 必 要 が あ る が 、電 子 顕 微 鏡 で 観 察 で き る の は 狭 い 範 囲 に 限 ら れ る た め ま ず は 、広 範 囲 に 骨 組 織 を 観 察 し 、機 械 的 負 荷 に 伴 いSclの 分 布 の 変 化 が 生 じ や す い 領 域 を 特 定 す る 必 要 が あ っ た 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 ラ ッ ト の 下 肢 神 経 切 断 モ デ ル を 用 い 、 蛍 光 免 疫 染 色 を 施 し た 骨 組 織 を 共 焦 点 レ ー ザ ー 顕 微 鏡 で 観 察 し 、機 械 的 負 荷 に 伴 いSclの 分 布 の 変 化 が 生 じ や す い 領 域 を 特 定 し 、 そ の 領 域 を 免 疫 電 顕 法 に て 観 察 す る と い う 計 画 の も と 実 験 を 行 っ た 。pQCTに て 、遠 位 骨 幹 端 部 は 、Cut側 で はControl側 と 比 較 し て 皮 質 骨 及 び 海 綿 骨 の 密 度 が 低 下 し て い た 。 骨 幹 部 で は 、 皮

(2)

質 骨 及 び 海 綿 骨 の 密 度 はCut側 、Control側 間 で 有 意 差 は な か っ た 。 し か し 、 大 腿 骨 で は 成 長 板 軟 骨 に 近 接 す る 海 綿 骨 が 脱 負 荷 に よ り 減 少 し や す い こ と が 報 告 さ れ て い る た め 、実 験 で 用 い た 下 肢 神 経 切 断 モ デ ル の 妥 当 性 が 証 明 さ れ た 。蛍 光 免 疫 組 織 染 色 で は 、蛍 光 輝 度 に よ る 解 析 か ら 、 Sclの 分 布 が 機 械 的 負 荷 に よ り 変 化 し や す い 領 域 が 大 腿 骨 の 外 側 部 の 領 域 で あ る こ と が 分 か っ た 。 そ こ で 、 外 側 部 領 域 のSclの 分 布 を よ り 詳 細 に 評 価 す る た め に 、Scl陽 性 骨 細 胞 の 割 合 の 定 量 を 行 っ た 。そ の 結 果 、外 側 部 の 骨 膜 側 に 近 接 す る 領 域 がSclの 分 布 の 変 化 が 生 じ や す い こ と が 分 か っ た 。外 側 部 の 骨 膜 側 に 近 接 す る 領 域 で 免 疫 電 顕 法 に よ る 解 析 を 行 い 、Cut側 で は 、骨 細 管 内 のSclの 密 度 が 優 位 に 大 き い こ と が 分 か っ た 。一 方 、骨 細 胞 内 、骨 小 腔 内 のSclの 密 度 に2群 間 に 優 位 差 が な く 、Sclの 産 生 量 の 変 化 が 分 布 の 変 化 に 与 え る 影 響 が 少 な い 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 過 去 の 報 告 よ り 、 骨 小 腔 内 、 骨 細 管 内 に は 体 液 が 存 在 し て お り 、 そ の 溶 質 の 輸 送 様 式 の 一 つ に 液 体 の 流 動 が あ る こ と が 明 ら か と な っ て い る 。筋 活 動 や 身 体 活 動 に よ る 機 械 的 負 荷 は 骨 組 織 の 変 形 を 生 じ 、 骨 小 腔 や 骨 細 管 内 の 液 体 の 流 動 を 引 き 起 こ す こ と が 明 ら か と な っ て い る 。 ま た 、 Scl等 の 大 き な 分 子 の 溶 質 の 輸 送 に は 、 体 液 の 流 動 に よ る 輸 送 が 必 要 と な る 可 能 性 を 示 唆 す る 報 告 が あ る 。以 上 の 報 告 、本 実 験 で 得 ら れ た 結 果 か ら 脱 負 荷 下 のCut側 で は 産 生 さ れ たSclは 骨 細 管 内 に 貯 留 し 、一 方 、Control側 で は 負 荷 が 加 わ り 骨 細 管 内 のSclが 体 液 の 流 動 に よ り 骨 細 管 外 へ 輸 送 さ れ て 消 失 し て い る と い う 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

【 結 論 】

機 械 的 負 荷 に 起 因 す る 骨 細 胞 のSclの 分 布 の 変 化 を 免 疫 電 顕 法 に よ り 解 析 す る こ と が で き た 。 脱 負 荷 に よ り 、Sclは 骨 細 管 領 域 に お い て 分 布 が 著 し く 、負 荷 に よ り 骨 細 管 領 域 の 分 布 が 減 少 す る こ と が 判 明 し た 。 そ れ は 、 転 写 ・ 翻 訳 レ ベ ル の 違 い に 加 え て 、 機 械 的 負 荷 に 伴 う 体 液 の 流 動 に よ る 輸 送 の 違 い が 関 係 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。本 研 究 に よ り 、機 械 的 負 荷 に よ るSclの 分 布 の 変 化 の 新 た な メ カ ニ ズ ム が 存 在 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

(3)

論文審査結果の要旨

機械的負荷は骨量をコントロールする重要なファクターの一つであり、骨細胞は機械的負荷の感受 において重要な役割を果たしている。骨細胞から分泌されるSclerostin(Scl)は、骨形成の抑制因子とし て機能し、骨の代謝調節において重要な役割を果たしている。 Sclは、骨組織に対する脱負荷によりそ の産生量が増加、反対に、負荷により産生量が低下する。また、機械的負荷の変化に応じて、Sclの骨 組織内の分布範囲が変化する。しかし、脱負荷に伴うScl分布の分子細胞レベルの変化に関しては明ら かになっていない。本研究は、脱負荷に伴うSclの分布変化の解析を目的とするものであった。

実験では、12週齢の雄性SDラットの右脚側のみ坐骨神経および大腿神経の区域切除を行い、7日間 飼育した。神経切断(Cut)側、対照(Control)側の骨量の定量にはpQCT法を用い遠位骨端部および骨幹部 の骨量を評価した。Sclの領域単位の分布のパターンは、大腿骨骨幹部の冠状断切片に抗Scl抗体を用 いて蛍光免疫組織染色を施し、前方部、後方部、外側部、内側部の4領域に分けて、蛍光色素の蛍光輝 度及びScl陽性骨細胞の割合を定量解析した。脱負荷に伴いSclの分布の変化が生じやすい領域を判定 後、骨細胞単位の分布パターンを調べるため、金コロイド標識した抗Scl抗体を用いて免疫電顕を行っ た。透過型電子顕微鏡にて骨細胞・骨小腔・骨細管内の金コロイド数を計測し、単位面積当たりの密 度 (金コロイドの個数 /μ ㎡)を定量して、評価した。

pQCT法による骨量解析の結果、骨幹部の骨密度は両群間で差はなかったが、遠位骨端部は、Cut側 で有意に骨量低下が認められたことから、本研究の下肢神経切断モデルの妥当性が証明された。

蛍光免疫組織染色では、蛍光輝度による解析から、 Sclの分布が脱負荷により変化しやすい領域が大 腿骨の外側部の領域であることを明らかにした。次に、外側部領域のSclの分布をより詳細に評価する ために、Scl陽性骨細胞の割合の定量を行い、外側部の骨膜側に近接する領域がSclの分布の変化が生 じやすいことを明らかにした。

骨幹部外側の骨膜側に近接する領域で免疫電顕法による解析を行い、Cut側で、骨細管内のSclの分 布密度が大きいことを見出した。一方、骨細胞・骨小腔内のSclの密度は両群間に有意差がなく、 Sclの 産生量の変化が分布の変化に与える影響が少ない可能性が示唆された。以前の報告より、骨小腔・骨 細管内には体液が存在しており、その溶質の輸送に液体の流動が関与することが知られている。筋活 動や身体活動による機械的負荷は骨組織の変形を生じ、骨小腔や骨細管内の液体の流動を引き起こす。

よって、 Sclの輸送には、体液の流動による輸送が重要となることを示唆する報告もなされている。以

上の知見と本研究で得られた結果から、Cut側で生じる脱負荷下の条件では産生されたSclは骨細管内 に貯留する一方、Control側では負荷が加わり骨細管内のSclが体液の流動により骨細管外へ輸送され て消失しているという可能性が示唆された。

今回得られた新たな知見は、脱負荷に伴う Scl の分布の変化の違いを示すものであり、今後寝たき

りや宇宙空間滞在に伴う骨量の減少に対する Scl を標的とした新たな治療法の発展につながることが

期待される。よって、審査委員会は本論文に博士(歯学)の学位論文としての価値を認める。

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