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道路2車線トンネルにおける早期閉合効果に関する一考察

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Academic year: 2022

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道路2車線トンネルにおける早期閉合効果に関する一考察

ハザマ  土木事業本部  技術第三部    正会員  ○古川  幸則 ハザマ  九州支店      土  木  部      大俣  敏文 ハザマ  九州支店      土  木  部    正会員    黒田  二郎 ハザマ  九州支店      土  木  部      山根    丈 ハザマ  土木事業本部  技術第三部    正会員    山口  雄大 1.はじめに 

  近年NATMでは,トンネル掘削による緩みの進行抑制,トンネルの変位抑制対策として早期閉合を採用す る事例が多くなっている.早期閉合を効果的な対策とするためには,上半切羽からの閉合距離を短くすること が重要であるが,早期閉合適用に関する明確な指標はなく,その施工方法は施工性,安全性等を考慮しながら 現場での判断に負うところが多い. 

  本報文では,実現場における計測Aおよび計測Bの結果をもとに,閉合距離の違いに着目した早期閉合の沈 下抑制効果について報告する. 

 

2.対象工事の概要 

2.1  早期閉合採用の経緯 

  今回対象としたトンネルは,一般国道の 2車線トンネルである.図−1に支保構造 図を示す. 

  本トンネルの地質は千枚岩質を呈す粘板 岩が主体となっており,鏡肌の剥離性に富 んだ地山であった.そのため,当該地山に おいては,切羽の自立性が悪く肌落ちや崩 落が発生したことから,天端,鏡面安定対 策としての補助工法を行いながらトンネル 掘削を行った. 

  掘削初期段階においては,機械掘削では標準的な施工となる上半先進ショートベンチカット工法にてトンネ ル掘削を行っていたが,天端沈下および内空変位が増大し,支保部材にもロックボルト破断等の変形が発生し た.このため,当該区間および以奥の区間において,掘削工法を補助ベンチ付全断面掘削工法に変更し,早期 閉合によるトンネルの変位抑制対策を実施した. 

2.2  調査対象区間の概要    計測調査区間の概要を 表−1に示す.対象区間の 支保パターンはDⅠおよ びDⅡとし,DⅡパターン については計測Bにより 吹付けコンクリート応力 が許容応力度を超過した

ため高強度吹付けコンクリート(45N/㎜)を部分的に採用した区間(DⅡ(高強度))も対象とした. 

  キーワード:早期閉合,閉合距離,天端沈下,脚部沈下,内空変位,支保部材力 

  連絡先:

〒105‑ 8479  東京都港区虎ノ門 2‑ 2‑ 5  ハザマ土木事業本部  技術第三部  TEL03‑ 3588‑ 5772 

図−1  支保構造図(DⅠパターン) 

表−1  計測調査区間概要 

 L = 4000 ロックボルト

 t = 150 インバート吹付け

1200 38 817 3 825 金網 L=19949

鋼アーチ支保工 H‑125

120059507600 150300

R2 = 5950

R1 = 5950 300

SL 150

吹付けコンクリート  t = 150

 t = 300 覆工コンクリート

金  網 φ5×150×150

項目 内容 支保パターン 吹付け厚 鋼アーチ

支保工 ロックボルト 地質/土被り 粘板岩/90〜110m DⅠ 150㎜ H‑125

一軸圧縮強度 10〜20N/㎜ DⅡ

掘削断面積 92〜120㎡ DⅡ(高強度)

項目 掘削方式

計測A 計測B

天端・脚部沈下、内空変位 計測間隔5〜10m 吹付けコンクリート、ロックボルト軸力、

鋼アーチ支保工応力、地中変位 DⅡ、DⅡ(高強度)の2断面で実施 機械掘削

掘削工法 ショートベンチ工法 DⅠ、DⅡ

補助ベンチ付全断面工法 DⅡ、DⅡ(高強度吹付け)

200㎜ H‑150

内容 備考

長さ:4m

周方向間隔:0.6〜1.2m 延長方向間隔:1.0m

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

‑601‑

Ⅵ‑301

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4.早期閉合の効果確認 

4.1  トンネル変位量比較(計測A) 

  図−2に最終変位量と閉合距離の関係を示す.天端・脚部沈下については,閉合距離が短いほど沈下量は小 さくなり,閉合距離 0.5D(6.5m)と1D(13m)での沈下量を比較すると,天端沈下で3割,脚部沈下で 5割程度の沈下量が低減されている.なお,高強度吹付けコンクリート採用箇所は,吹付けコンクリートの初 期強度が向上している影響もあり,閉合距離が同程度の通常の吹付けコンクリートと比較して天端・脚部沈下 量は4割以上低減されている.内空変位については変位量としては小さいが天端沈下と同様な傾向を示し,閉 合距離 0.5Dと1Dで比較すると3割程度変位量が低減している.以上より,閉合距離と最終変位量は相関関 係があり,閉合距離が短いほど最終変位量を抑制する効果が高くなると言える. 

  図−3に閉合時から収束までの天端・脚部沈下量と閉合距離との関係を示す.閉合後の天端・脚部沈下量は 閉合距離が短いほど小さくなる傾向があり,閉合距離 0.5Dと1Dの比較では沈下量は2〜3割程度低減され ている.閉合直前の変位速度は閉合距離が短いほど大きいことと,今回の計測結果を併せて考えると,閉合距 離が短いほど変位速度を抑制する効果も高くなると言える. 

                   

4.2  支保部材力比較(計測B) 

  閉合距離の相違による支保部材 力比較について,吹付けコンクリー ト応力と鋼アーチ支保工軸力の計 測結果を表−2に示す.なお,表中

の比率は閉合距離1D程度(12m)を基準として算出した.一般に弾性変形の範囲内では,閉合距離が短いほ ど変位量は少なくなり,支保部材力は大きくなると考えられる.しかし,今回の計測では閉合距離の短い 0.3 D程度(4m)の方が,支保部材力は小さくなっている(吹付けコンクリート応力で最大5割,鋼アーチ支保工 軸力で最大8割程度低減).これは,閉合距離の長い1Dのトンネル変位量が大きくなり緩み領域が増大した 結果,地山が不連続体としての挙動を示し支保部材の作用する緩み荷重が増大したためだと考えられる. 

5.おわりに 

  本報文では,閉合距離が短いほどトンネルの最終変位量は抑制でき,閉合時から収束までの沈下量も抑制で きることや,早期閉合を行う際の閉合距離は 0.5D以内とすることで,トンネル掘削による緩みの増大を抑制 し支保部材力の低減が図れることが,実現場における計測結果として実証することができた. 

  これにより,早期閉合は変位抑制効果だけでなく,地質状況にもよるが支保部材力が小さくなることで,支 保構造のランクダウンの可能性もあることが分かった.しかし,早期閉合を行うためには補助ベンチ付全断面 工法による掘削となるため,切羽安定対策としての補助工法が必要になり工費の増加に繋がることも考えられ る.今後は,類似の施工事例を収集し補助工法を含めた経済性についても検証し,早期閉合の適用条件や採用 フロー等の検討を行っていきたい. 

0 40 80 120 160 200 240 280

0 5 10 15 20

閉合距離 (m) (mm)

内空変位(DⅠ,DⅡ) 内空変位(DⅡ(高強度)) 高強度吹付

1D

0 20 40 60 80 100 120 140

0 5 10 15 20

閉合距離 (m)

(mm)

天端沈下(DⅠ,DⅡ) 天端沈下(DⅡ(高強度)) 脚部沈下(DⅠ,DⅡ) 脚部沈下(DⅡ(高強度)) 高強度吹付

1D

脚部沈下

天端沈下

0.5D 0.5D

a)天端沈下・脚部沈下      b)内空変位  図−2  最終変位量と閉合距離 

表−2  支保工部材力比較 

図−3  早期閉合後の沈下量と閉合距離 

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0

0 5 10 15 20

閉合距離 (m)

(mm)

天端沈下(DⅠ, DⅡ) 天端沈下(DⅡ(高強度)) 脚部沈下(DⅠ, DⅡ) 脚部沈下(DⅡ(高強度))

1D

高強度吹付

天端沈下 脚部沈下 0.5D

左肩 比率 天端 比率 右肩 比率 左肩 比率 天端 比率 右肩 比率 閉合距離

0.3D程度(4m)

9.8 0.51 9.8 0.65 30.2 1.10 490 0.21 868 0.45 541 0.27

閉合距離

1D程度(12m)

19.1 1.00 15.1 1.00 27.5 1.00 2298 1.00 1950 1.00 1996 1.00

項目 吹付けコンクリート応力(N/㎜2) 鋼アーチ支保工軸力(kN)

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

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