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高等教育機関における日本語学習の 動機づけの変化に関する一考察

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高等教育機関における日本語学習の 動機づけの変化に関する一考察

─ インドネシア人日本語学習者の語りから ─

A Study on the Motivational Change of Japanese Learning in Higher Educational Institution:

Narratives of Indonesian Japanese Learners

Fatmawati Djafri

Abstract

This study analyzes how the motivation of Indonesian Japanese learners change over their three-year period of study in higher educational institution in Indonesia and how they made meaning of their Japanese learning. Data were gathered using semi-structured interview on five learners and their narratives were recorded and transcribed. The transcripts were coded and categorized to construct learners’ stories and to identify some emerging themes from it. Findings show two types of motivational change experienced by Indonesian Japanese learners in higher educational institution:

1) the development type (initial stage→confirmation or practical stage→development stage, and 2) the withdrawal type (initial stage→anxious stage→withdrawal stage). Two turning points in the changing process were also identified: 1) the transition phase from basic to intermediate/

advanced knowledge of Japanese, and 2) the preparation phase for societal contribution. Based on the theoretical frameworks of L2 Motivational Self System (Dörnyei, 2005, 2009) and the theory of investment in language learning (Norton, 1995, 2000), this study examines the construction of Japanese learners’ identity and the dynamics patterns of their investment in Japanese learning as reflected in the process of motivational change. Difference between the two types of motivational change is determined by how learners could link their Japanese learning experience with their future self-image. Learners’ investment in Japanese learning was likely to be affected by their image of how they would become in the future as Japanese learner and user. Learners’ participation in communities of practice related to Japanese language enables them to create imagined communities they would like to participate in the future, and experience it beforehand. This study proposes some

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key roles Japanese language department in higher educational institution plays in fostering global human resources. This study also suggests some significant points needed to be considered in Japanese language education policy and planning of higher educational institution in Indonesia.

Key words: communities of practice, higher educational institution, investment, Japanese learning, motivational change.

1.問題の所在

 本研究は、インドネシアの高等教育機関の日本語学科における学習者が日本語の学びに困難や不安 を抱えているという問題意識から出発している。授業に参加できなかったり、途中でやめてしまい他 の専攻に変わったりするという現象が筆者の周りによく見られる。国際交流基金の2006年、2009年、

および2012年度日本語教育機関調査によると、インドネシアの高等教育機関における日本語教育上の 問題点は、「学習者の不熱心」と「学習者の減少」の増加を示している。

表1 インドネシアの高等教育機関における日本語教育上の問題点

(国際交流基金の2006年、2009年、および2012年度日本語教育機関調査より)

問題点 2006年(n=115機関) 2009年(n=133機関) 2012年(n=133機関)

施設・設備不十分 48.7% 62.4% 57.1%

教材不足 43.5% 44.4% 44.4%

教材・教授法情報不足 30.4% 55.6% 51.9%

日本の文化・社会の情報不足 13.0% 33.8% 39.1%

学習者不熱心 12.2% 27.1% 33.1%

学習者減少 22.6% 27.8% 28.6%

教師の教授方法 35.7% 50.4% 36.8%

教師不足 25.2% 43.6% 39.1%

教師の日本語能力 28.7% 48.1% 33.1%

教師の待遇 6.1% 14.3% 12.8%

その他 7.8% 14.3% 11.3%

 そこで、本研究は、学習者に関わる現象を出発点として 「日本語学習の動機づけの変化」 に着目し た。その変化のプロセスにおいて 「学習者は日本語の学びをどのように意味づけているのか」 という 大きな問いがある。この問いを考えるにあたって、Dörnyei(2005, 2009)が提唱したL21 Motivational

Self SystemおよびNorton(1995, 2000)の言語学習への「投資、investment」の枠組みを活用した。こ

の理論的枠組みの中で日本語学習者の動機づけの変化とその要因を考察することにより高等教育機関 における日本語の学びの意味を考え直した。学習者は 「過去」、「現在」、「将来」 において日本語と向 き合うことで変容し(尾関、2009;山﨑、2009)、過去の経験を持っている自己と現在にいる自己、

および将来に生きる自己をつなぎながら日本語との関係性を意識する。このようなダイナミックなプ

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ロセスの中で学習者の動機づけが変化すると共に、将来の自己像も形成されていく。

 さらに、Ministry of Research, Technology and Higher Education of the Republic of Indonesia(2012)に よると、高等教育機関は「Tridharma」と呼ばれる3つの義務いわゆる「教育、研究、社会貢献」を 負っている。それに関して、インドネシアの高等教育機関の目標の一つは、知識および技術を熟練し た有能な学習者の育成である。本研究はこの文脈において日本語学科の役割を再考する。 社会貢献 につながる学習者の育成のために何が重要なのか、主体となった学習者の観点から見る必要がある。

 その問題意識に基づき、本研究の目的は2つの問題点を明らかにすることである。一つ目は、イン ドネシアの高等教育機関の日本語学科における日本語の学びの意味を明らかにすることである。二つ 目は、日本語学科における学習者の育成のために必要なものを明確にすることである。

2.先行研究

2.1.動機づけに関する研究

 近年、第二言語習得の研究は動機づけの変化に焦点を当てるようになった。動機づけは、時間がた つにつれ変化し、学習環境とその中にある相互行為という社会的文脈およびアイデンティティ構築に 影響を与えられている(Dörnyei & Ushioda, 2011)。Dörnyei (2005, 2009)が提唱したL2 Motivational

Self Systemの理論は第二言語学習の動機づけを「自己、Self」の枠組みの中で概念化する新しいアプ

ローチとして近年盛んになってきた。この理論ではL2の動機づけは学習者の自己システムの一部と して捉えられている。「将来なりたい自分の理想像、Ideal Self」と「周囲からのプレッシャーから将 来そうなるべきだと考える自分のイメージ、Ought-to Self」という二つの将来の自己像があり、かつ

「L2学習経験」を含む三つの要素の相互関係の中から動機づけが生まれる。

 また、Norton(2000)は「投資、investment」という概念から学習者の動機づけを再考した。Norton によれば、投資としての動機づけとアイデンティティは社会的に構築される。投資は学習者が複合の アイデンティティを持っていると見做し、そのアイデンティティは時間と空間を超えて変容するもの であり、社会的文脈の中で形成されるものである。

The concept of investment signals the socially and historically constructed relationship of learners to the target language and their often ambivalent desire to learn and practice it. If learners invest in a second language, they do so with the understanding that they will acquire a wider range of symbolic and material resources, which will in turn increase the value of their cultural capital. Learners expect or hope to have a good return on that investment that will give them access to hitherto unattainable resources (Norton, 2000, p. 10).

 日本語教育では、2000年代以降の動機づけに関する研究は動機づけの変化に焦点を当て、一般的 な傾向の観点から(鄭、1995;縫部他、1995;成田、1998;高岸、2000等)個人の変化の観点に転 向することになった(羅、2005;飯塚、2005;ギブソン、2009;大西、2010、2011、2014等)。さら に、動機づけの変化に関しては、今後の研究で求めることは、どのような動機が変化するのか、その

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変化は何と関連しているのかについて動機づけの変化のプロセスを明らかにすることである(大西、

2014)。

2.2.インドネシアの日本語教育

 インドネシアの日本語教育はいくつかの問題を抱えている。その一つは 「日本語学習に関心がない」

という問題点である。つまり、インドネシア人の激増する日本語学習者数の中には、単に日本語学習 に興味を持っている学習者だけでなく、日本語学習に興味を持っていない学習者も存在していると言 える。大学の入学国家試験の際に、優先順位で専攻を選び、第一希望は自分の希望に合う専攻である が、第二あるいは第三希望は主に滑り止めとして選んだ専攻である。大学における日本語学科もこの 課題に直面している。アニメ・漫画・J-Popへの関心、または日本語・日本文化への興味で日本語学科 に進学する学習者は多いが、その他に滑り止めまたは最後のオプションとして日本語学科を選択する 学習者も少なくない。

 さらに、言語の専攻の殆どは「将来が見えない」という考えが一般的である。言語を専攻している 人は経済的に良い仕事を手に入れられるのかという不安感がある。学習者はこのジレンマを抱えなが ら日本語を学び続けている。将来に関するジレンマは日本語学習の動機づけが明確になっていない学 習者だけでなく、日本語・日本文化への関心を持っている学習者にもある。その関心を将来といかに つなげられるのかは大きな課題の一つだと思われる。

 それにもかかわらず、インドネシアの日本語教育に関する先行研究の殆どは、教師養成(藤長他、

2006;松本、2015;エフィ他、2015;古川他、2015等)および教材開発(篠山、2001;エフィ、2004;

エフィ他、2006等)に重点を置いた。Kobari(2014)の研究は、インドネシアの日本語教育学科への 進学に関する動機づけを分析した。この研究の結果は、学習者の動機づけが変化してきたということ を提示している。およそ四割の学習者は日本語・日本文化などと関係なく、または周りの人の影響で 日本語学科に進学したという背景を持っている。その中で最初は日本語教育に興味がなかったが、次 第に関心が芽生え日本語教師になりたがる学習者もいる。その変化がどのようなプロセスの中で起こっ たのかが今後の研究課題として求められる。要するに、学習者の観点から前述の問題を見る研究がさ らに重要である。

3.研究方法

3.1.協力者

 本研究はインドネシアX市のZ大学職業学校(vocational school)日本語学科で行われた。3年生を 対象に、5人にインタビューを行った。3年生を対象にする理由は動機づけの変化するプロセスおよ びそれに関わる将来の自己像が語られるため、日本語学科において最も長い経験を持っている学習者 を選ぶ必要があるからである。

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表2 協力者のプロフィール

名前 性別 年齢2 日本語・日本 文化との出会い

日本語

学習歴 入学理由 日本語・日本

文化への関心 高校の専攻 習得されている言語

(日本語以外)

SLさん 19 アニメ(小学校) なし 入学国家試験に失敗 なし 理系 英語、インドネシア語、

ジャワ語

SNさん 20 アニメ(小学校) なし 入学国家試験に失敗 あり(J-pop) 理系 英語、インドネシア語、

ブタウィ語、スンダ語 IFさん 20 アニメ(小学校)必須科目

(高校1) 奨学金がある あり(日本語) 言語系

(希望は理系)英語、インドネシア語、

ジャワ語 DDさん 22 アニメ・漫画

(小学校)

必須科目

(高校2)日本語に興味ある あり(漫画) 理工専門学校 英語、インドネシア語、

ジャワ語 AUさん 20 漫画(中学校) 必須科目

(高校1)日本語に興味ある あり(漫画) 社会系 英 語、 韓 国 語( 若 干 )、

スンダ語、ジャワ語(若干)

3.2.データ収集と分析 

 研究方法は半構造化インタビューである。研究の趣旨に関して説明を行う際、研究に協力しない場 合も不利益が生じないこと、協力者の成績に影響しないこと、また研究途中および研究終了後のいず れの時点でも、データの使用に関する許諾を撤回できることを十分に説明した。協力者に研究に関す る倫理を説明し同意を得た上で、Z大学職業学校日本語学科のミーティングルームおよび筆者の下宿 で30分〜120分程度のインタビューを行いながらその内容をICリコーダーで録音した。インタビュー は全てインドネシア語で行った。主な質問項目としては、日本語を勉強するきっかけ、日本語学科に 入った理由・経緯、最も好きな授業・苦手な授業とその理由、記憶に残っている日本語の学びのエピ ソード、参加した活動とその感想、将来の夢・計画・目的、その夢・計画・目的を実現するための努 力、仲間・先生との関係という内容を含み、協力者に自由に語ってもらった。研究から収集されたイ ンタビューデータを文字化し、文字テキストデータを作成した。この文字テキストデータを読み返し ながら、コードを書き込みオープンコーディングの作業をした。次いで、これらのコードから少数の 抽象的・概念的カテゴリーを見出し焦点的なコーディングを行った。

 研究で得た個人情報やインタビューの録音、および文字化した電子データを筆者のパソコンに保存 し、パスワードをかけ保管している。協力者のプライバシー情報に関しては、データ分析の際には個 人名の匿名化を行ってから扱った。

4.研究結果

 本節は、5人の語りに焦点を当て、日本語学習者の動機づけの変化についての研究結果を述べる。

4.1.SLさんの変化

 SLさんにおける動機づけの変化に3つの段階があった。一つ目は、最初の段階(initial stage)であ る。最初の段階では、SLさんは日本語を勉強する理由や目的がなく、とにかく大学に進学するという 状況で日本語を勉強しはじめた。その時点では、SLさんはひらがな・カタカナを読むことさえできず、

また既に日本語を喋れる同級生もいたため、日本語の学びに対する不安や恐怖を感じるようになって

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しまった。さらに、日本語学科に進学することはSLさんの高校の先生や近所の人に認められない選 択肢だったため、SLさんの中に自分が選択したことを後悔したくないという気持ちもあった。「日本 語ができないと成績が悪くなる」という信念を持っているので、良い成績を取るために日本語を一生 懸命勉強しなければならない。このような状況のもとでSLさんの動機づけが徐々に高くなってきた。

つまり、この段階では、日本語能力を獲得するための段階である。その後、良い成績が取れるように なったことで目標が到達できた。それで、SLさんは「そんなに頑張らなくてもいい」というふうに考 えながらペースが緩くなり動機づけも弱くなってきた。二つ目は、確認の段階(confirmation stage)で ある。この段階では、今までの努力で得た日本語の知識がどれくらい獲得してきたのかを確認するた め、新しい到達目標を作成した。それは日本語能力試験(N4かN3)を合格することである。そこか らまた動機づけが改めて高くなってきた。三つ目は、発展の段階(development stage)である。この段 階では、SLさんは自分の日本語能力や知識をどのように活用するか、そのために必要となることは何 かを考慮しはじめた。この段階においてSLさんは現在自分が最もできる日本語能力(文法と漢字)を 将来どのように活かしていくかを考えながら、それによっての適切な仕事(翻訳者)を想像している。

さらに、翻訳の練習をしたり翻訳者のコミュニティに関する情報を検索したりして将来を目指すため の準備をしている。また、今までは「手本」としての同級生がいたが、その後はより広い仲間のコミュ ニティから新しい手本ができた。それは、日本で出会った同じ留学プログラムのインドネシア人の友 達である。SLさんは、鏡のように彼らに映った自分の欠点(話す力)に気づいて、今後みんなと同じ レベルの日本語能力になれるように頑張らなければならないという動機づけを持つようになった。

 SLさんは一つ目の段階では、自分の日本語能力が不足していること、および良い成績が求められ ていることで不安や恐怖感を抱いていた。さらに、SLさんは同級生の日本語能力を見てやる気を無 くしてしまった。みんなは自分より上手だと思ったからである。

126SL: Mikirnya aduh ini kok anak udah pinter banget . Saya tuh dah lemes aja, pulang tuh ah males ah gini gini gini . Ya udah dijalanin aja gitu kata Ibu. Sampe waktu itu ada temen saya yang kebetulan suka Jepang, dia bisa nulis katakana hiragana. Saya diajarin tapi saya tetep ngga dong waktu itu. Maksudnya ngeluh ah susah susah susah . Tapi, Udah dijalanin aja gitu, kamu kan mo kuliah, pasti bisalah katanya ngasih semangat.

「この子はもうできるじゃん」 と思いました。オリエンテーションから帰ってきて、「もういや だ〜」 とやる気がなくなっちゃったときに 「まあ、とりあえずやってみて」 とお母さんに言われ ました。日本語が好きでカタカナとひらがなが書ける友人に一生懸命ひらがなとカタカナを教え て貰ったけど、当時私は全然分からなかったから、「あ〜難しい、難しい。もういいの」 と文句 ばかり言ってしまいました。でも友人は 「とりあえずやってみて。これから日本語を勉強するか ら、きっとできるよ。」 と励ましてくれました。

(筆者による翻訳)

 そこで、母親と友人の励まし言葉を受け、頑張る気持ちは動機づけとなり、「良い成績」という到 達目標に向かい努力した。そして、二つ目の段階は一つ目の段階で達成したものをどれくらい獲得し

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たかの確認である。それは、良い成績よりさらにハードルが高い日本語能力試験の挑戦となった。三 つ目の段階は、獲得した日本語能力を生活への活用を考えはじめた段階である。将来でやりたいこ と、そしてそれを実現するための必要なもの、あるいは自分の欠点への対策、つまり会話力という特 定の日本語能力の改良を考えることにより動機づけが高くなった。SLさんは現在、手本としての同 級生と同じレベルの日本語能力を持つようになったと感じている。そこで、ある留学プログラムを通 してインドネシア全国の日本語学習者と交流する機会を与えることにより、新しい手本ができた。さ らに、より広いコミュニティができるため将来の想像が具体化できるようになった。それは、「会話 ができる」ことである。

394SL:... Setelah ini saya mo ngapain jadi ada gambaran, jadi ngga risau. saya tuh udah punya modal, jadi tinggal nambah dikit udah dapet.

「中略」将来、何ができるのかを少しでも想像できるようになって、不安もなくなりました。私は 資本をすでに持っているから、後はもう少し他のものを付加えればきっと大丈夫だと思っています。

395F:Jadi buat SL, bahasa Jepang udah kayak skill ya? jadi modal?

じゃ、SLさんにとって日本語はスキルの一つ?資本になった?

396SL:Iya, modal gitu.

はい、資本です。

(筆者による翻訳)

 最後に、SLさんが持っている「将来の自己像」は段階ごとに変化していくものであるということ は明らかになった。一つ目の段階では良い成績をとるために、ある程度の日本語能力が必要となっ た。この時点で描いている将来の自己像は「日本語ができる自己」および「良い成績が取れる自己」

像であった。二つ目の段階は、獲得した日本語能力を確認する段階であり、そこでの自己像は「日本 語能力試験N3を合格できる自己」である。三つ目の段階では、SLさんは「仕事のために役に立つス キルを身につける自己」および「日本人との自然な会話ができる自己」像を持っている。つまり、各 段階における動機づけの変化の要因は将来の自己像を含んでいる。さらに、SLさんの到達目標の中 で将来の自己像が形成されている。

  

4.2.SNさんの変化

 SNさんはSLさんと違いアニメ・漫画・J-Popへの関心をすでに持っている。これは、理科系の受 験に不合格になった際に日本語学科を選択することにした一つの理由である。日本語学科に入り、最 初の段階では、SNさんは日本語の授業にすでに慣れてきた。入学前に、ほんの短い間に塾で日本語 を勉強したこともあるし、1期目における日本語の授業もまだ難しくないからである。この段階で は、初心者であるSNさんは日本語を学ぶのを楽しんでいたので、成績も非常によかった。最初から 日本語学科に入ることを応援している母親は大変喜んでいた。さらに、日本語の楽しみはアイドル・

ファンクラブの仲間たちとの関係に支持され、日本文化に対する関心と同時に進行していた。その仲 間と出会ったのは日本語学科に入った最初のころである。仲間は日本語を勉強していないが、SNさ

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んと同様に日本文化にたいへん興味を持っているため、よく話し合っている。しかしながら、日本語 の授業が難しくなるにつれ、日本語を勉強する気が次第になくなってきた。その結果、成績も下がっ てしまった。今後の日本語学習はどのような目的で、どのような方法で行われるのかを考えるように なった。

48SN:Semangat belajarnya juga kurang kali ya. Aku tuh pas mahasiswa waktu awal-awal tuh emang masih gampang kali ya. Pas ke sini-sini ya kelihatan makin lama makin susah. Terus aku nyari alternatif lain, ngga bisa nih gue belajar kayak gini terus.

勉強する気が足りないかもしれません。大学に入って、最初はまだ簡単だったかもしれません ね。しかし、だんだん難しくなってきました。このままの勉強方法だけでだめだなと思って、他 のやり方を探してみました。

(筆者による翻訳)

 その時点から応用の段階(practical stage)が始まった。SNさんには、日本語の学びにおいてさら に新たな意義を見出すことが必要となる。その時点までの日本語学習は、教師に教えてもらったり、

教科書を読んだり、先輩や日本人に聞いたりしていた一般的方法であった。今後は、さらに自分の ニーズや関心などに合わせながら、自分に最もふさわしい学習方法でやらなければならない。その時 点では、SNさんは趣味を越え日本語を学び続ける意義を求めるようになった。母親とファンクラブ の仲間からのサポートが最も大きく、SNさんの変化に非常に影響を与えていた。仲間に教科書だけ でなく、ドラマ、アニメ、漫画、歌、ニュースなどの様々なリソースを利用することを提案された。

さらに、その仲間たちとともに漢字、日本文化、生活などの多様な学びができた。また、SNさんは 今まで勉強してきた日本語の知識を、自分がどのぐらい獲得してきたのか、そして実際にどのぐらい 実行できるのか、を確認した。それゆえに、日本語能力試験N3に挑戦したり、塾で日本語を教えた り、観光地ガイドの研修に参加したりしていた。この多様な挑戦から自分の日本語能力に自信も深め るようになり、日本語を活かす将来もより具体化されてきた。ここから、発展の段階に入った。日本 語への自信と将来の自己像の形成ができた上で、SNさんはどのような将来の自己が可能になるかを さらに考慮しはじめた。今後は、日本への留学に挑戦し、新たな分野を学ぶことを希望している。こ れは日本に留学している友達とのネットワークから影響を与えていた。友達はSNさんの手本となり、

次の到達目標につながっている。また、これにより自分の欠点に気づくようになり、その欠点を直す ことが現在の日本語の学びの動機づけにもなる。

 以上の変化はどのような要因で起こったのだろうか。最初の段階では、日本語の学びはアニメ・漫 画・J-Popへの興味によって引き起こされた。さらに、日本語を選択することは両親に支援された。

良い成績はその趣味かつ親孝行への達成を示すものである。次に、応用の段階では、SNさんは日本 語の学びをさらに意味づけるために、自分の日本語能力を確認し応用することが必要となる。日本語 能力試験を受けることは自分の日本語能力の証拠だと認識している。日本語能力試験に合格すること は自己自信かつ動機づけの再起動と強く繋がっている。

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221SN: Kalo saya sih, IP saya cum laude itu buat orangtua, tapi kalo buat diri sendiri sih bahasa Jepangnya.

Kalo saya sih standarnya yg penting di atas 3.51 (GPA) udah balik lah ke orangtua, kan cumlaude kan itu.

Alhamdulillah Sensei sampe sekarang masih cumlaude. Tapi untuk diri sendiri sih, bahasa Jepangnya harus bagus.

私にとって、優等な成績は両親のためですが、日本語は自分のためです。基本的には3.51(GPA)

以上はもう優等で親への恩返しになりました。今まではまだ優等でよかった、先生。しかし、自 分のためには、日本語ができることにならないといけない。

222F: Itu ukurannya Ninosh?

その基準は能力試験?

223SN: iya, Ninosh sama kaiwa.

はい、能力試験と会話です。

(筆者による翻訳)

 その上、自己内だけでなく、自己外に展開し他者との関係の中で自分の日本語能力を確認する。それ故、

SNさんは教えることなど社会貢献の活動をやりはじめた。それから、発展の段階では、SNさんは将来に 関わる自己実現のニーズにより動機づけの再起動が発生した。この段階では、前段階に得られた自己自 信や意味づけをもとに日本語に関わる自己実現のニーズが出現している。日本語が媒介として日本の教育 機関で違う分野を学び新たなスキルを身につけることはSNさんの日本語の学びの意義の一つだといえる。

SNさんの事例では、各段階に描かれた将来の自己像が日本語との関係と明確になった。最初の自己像は 趣味や親との関係がほとんどであったが、様々な状況の影響で次第に自己実現に向かうようになった。

4.3.IF さんの変化

 IFさんは前述べたSLさんとSNさんの事例と違い、正式に高校で日本語を学んだ経験を持ってい る。最初の段階では、日本語学科に入る動機は奨学金のためであった。経済的にめぐまれないIFさ んは親に負担をかけないで進学することを希望している。この理由に基づき、日本語学科に入った 後、良い成績をとれる自己を描き、日本語学習に努力をしていた。最初の1年においては良い成績の 目標が達成したが、日本語が中級に入り次第に難しくなるにつれ、動機づけが下がってしまった。

347IF:Kadang itu kadang mikir bahasa Jepang ini mo ngapain gitu kan, Sensei.

日本語を勉強してどうするのかをたまに考えてしまいました。

348F:Itu pas mikir mo ngapain itu pas kapan?

どんなときにそれを考えているんですか?

349IF:Di saat kita lagi lihat kan bahasa kita jauh dibanding teman lah atau orang lain lah. jadi mikir ngapain nanti bahasa Jepang gitu kan. Kadang semangat Sensei, kadang ngga gitu.

友達や他の人に比べて自分の日本語はまだまだ足りないな、と気づいたときです。それで、こん な日本語で何ができるのかと考えてしまいました。もっと頑張りたいときもあるし、頑張りたく ないときもあります。

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「中略」

371IF:Motivasinya ya itu Sensei, misalnya punya gambaran kalo nanti abis lulus ntar ngelanjutin lagi dsbnya, jadi punya gambaran, semangat gitu Sensei. kalo down itu kadang tuh ya itu, bisa ngga mencapainya gitu lho Sensei.

動機づけになれるのは、例えば卒業したら進学できるとかなどのイメージがあったら、頑張りた くなるのです。でも落ち込んでいるときに、そのイメージが実現できるかどうかの不安を感じる こともあります。

(筆者による翻訳)

 IFさんは日本語の学びへの動機づけとなるようなより深い意義を探しはじめた。その時点から次の 段階に移った。次は応用の段階である。良い成績から展開し、日本語能力を持っていることで何がで きるのかと自分に向い問いはじめた。この段階では、IFさんは日本語の学びの意義をさらに考えるよ うになった。職業高校で日本語を教えたり、ボランティアとして日本語勉強会で教えたりしていた。

これらの活動を通して、社会とのネットワークがつなげられ、社会貢献による達成感を経験すること ができる。つまり、IFさんは、他者や社会との関係の中から日本語を学ぶ意義を見出すことができ る。そして、新たな日本語学習の動機づけにもなった。さらに、これは将来の自己像の形成にも影響 を及ぼし、次の発展の段階における変化を与えた。

 発展の段階では、IFさんは教師になる将来の自己像が徐々に明確になってきた。その理由は、前 段階における経験はIFさんに将来日本語で生きる可能性の具体的なイメージを持たせていたからで ある。日本語を教えることにおいて様々な人と出会ったことで日本語に関する刺激を受けた。将来、

日本語教師になるために、まずは自分の日本語能力を測定する有力な証拠が必要である。それは日本 語能力試験の認定証である。そして、日本語能力を向上するために、日本へ留学することも必要とな る。この2つの理由に基づき、IFさんは日本への留学プログラムに応募することを決定した。その留 学期間では、日本語能力試験の準備プログラムに参加しながら日本の日常生活を経験していた。これ は将来の強い基盤をなすための重要なものだとみなされている。

 以上の多様な経験から得られた学びを今後においてIFさんの自己実現につなげている。IFさんは 日本語教師になることを実現するために、今後の進路やその準備を整えはじめた。日本語教師になる ためには、長期大学かつ大学院に進学することが欠かせないものである。日本語の知識をさらに獲得 し、教師になるスキルを身につけることが今後のIFさんの目標である。

 IFさんの語りから、それぞれの段階において日本語と関わる将来の自己像が明確になっていた。最 初の段階では、「日本語の良い成績がとれる自己」および「日本語ができる自己」像が描かれた。そ れから、応用の段階では、「他者と日本語知識を共有できる自己」というイメージの実現が目標で あった。その目標を達成した結果、次は発展の段階に移し、自己実現のために「日本語教師になる自 己」像が形成されるようになった。また、さらに日本語知識を獲得する必要があると考えられたた め、日本留学かつ日本語能力試験という2つ目標を設定した。そこで、IFさんは、「N3に合格できる 自己」および「日本へ留学できる自己」像を日本語教師の自己像とともに実現するために努力し続け ている。

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4.4.DD さんの変化

 DDさんにも3つの段階において動機づけの変化が見られる。最初の段階では、DDさんは日本語 を学ぶことを非常に期待していた。日本語学科に入る前に、自動車工学科で勉強したことがあった が、日本語学科に入るため、途中で退学し日本語学科の受験の準備をしていた。このような熱意を 持っている背景となったのは、幼い頃からアニメ・漫画への興味を持っていることである。その興味 をもとに日本に行くことの希望が芽生えるようになった。高校で1年間日本語を勉強したことが最初 の段階における学びのプロセスを促進していた。

 しかしながら、日本語の授業が進むにつれ、DDさんは日本語に対する自信が徐々になくなってし まった。趣味のために、または日本に行くために日本語を学んでいるが、それらの理由はさらに日本 語の学びの動機づけを促進するものになっていない。一方では、成績のもとで日本への留学プログラ ムに参加できる人が決められ、もう一方では、DDさんの成績が次第に下がってしまった。その時点 からDDさんは不安の段階(anxious stage)に移った。不安の段階では、彼は将来日本語で何ができ るのかという疑問を持つようになった。

453DD:Sebenarnya kalo saya, bahasa itu lebih untuk komunikasi, Sensei. kalo misalnya untuk pekerjaan mungkin skill lain gitu Sensei. kalo memang bener-bener di bagian bahasa, berarti dia harus lebih jozu dan pinter itu, jadinya dia lebih ke bahasanya, Sensei. kalo untuk pekerjaan itu, harus ada skill lain sih Sensei.

言葉はコミュニケーションの道具だと思っています。でも、仕事を考えるとしたら、言葉だけ じゃなくて、他のスキルも必要となります。もしも、言葉との関係がある仕事であれば、もっと 上手で高いレベルの言語能力を持たないといけない。でもほとんどの仕事は、必ず他のスキルが 必要となります。

「中略」

475DD:Kalo kuatir kadang tuh ada orang yg masuk bahasa mau kerja di bagian apa gitu. Saya sendiri untuk masa depan, kadang saya kepikiran juga Sensei. Ke depan, kalo bahasa tuh, untuk ukuran kayak saya yang tanggung-tanggung gini mau kerja di mana? , gitu kan. Mungkin yang susah gitu Sensei.

言語を専攻にしている人は将来にどこで働けばいいのか、という不安がありますね。私も将来の ことを、このように考えてしまいました。「私みたいに言葉の能力が凡才な人の場合は、どこで 仕事を見つけるのか」。それはかなり難しいかもしれないですね。

(筆者による翻訳)

 このような状態が続いた結果、DDさんは後退の段階(withdrawal stage)に入った。この段階では、

彼は日本語が趣味と強く関係しているが、将来と関わらないものだという認識に辿り着いた。将来の ことを考えているDDさんには、日本語だけでなく他のスキルを身につけることが大事である。それ で、日本語能力試験N3認定証をとるために日本語を勉強し続けると同時に、他のスキルを学ぶため の進学を考慮している。

 DDさんは最初の段階では、明確な日本語を学ぶ目標を持っていた。アニメ・漫画への好奇心を背

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景として日本語ができる自己および日本に行ける自己像が明確に描かれていた。しかし、現在身につ けた日本語の不足と将来に生きるための持つべき力の間にあるギャップが生じたため、将来の自己像 が次第に明確さを失っていった。前段階にある日本語ができる自己像は趣味のためにある程度実現さ れたので、さらに高いレベルへの日本語を学び続けるためには、新たな目標を作ることが必要となっ た。しかしながら、DDさんの周りにある環境、あるいは他者とのつながりからその新たな目標の形 成ための刺激をあまり受けなかった。さらに、成績が下がってしまったことにより将来と現在の間に あるギャップに対する自信もなくなってしまった。この状態の中で、DDさんは現実を踏まえ将来に 対処している。将来のために、少なくとも日本語能力試験N3が必要なので、N3認定証を持っている 自己像が形成されるようになった。DDさんはこの自己像を実現するため、日本語の勉強をし続ける ことを決定した。しかし、その一方では、自分の日本語能力を考慮した上で、将来のために他のスキ ルを身につけることも重要である。つまり、将来では、日本語能力に頼らなく他のスキルを活かせる 自己像が描かれている。

4.5.AUさんの変化

 AUさんの事例では、最初は日本語学科を目指し進学することに決定した。漫画への興味および高 校での3年間日本語を学習した経験を背景に日本語学科で学び続けることを希望していた。日本語学 科における最初の段階では、まるでハネームンのように全てが楽しく順調に進んできた。興味そのも ののために日本語を学んでいた。興味の影響があまりにも大きいので、他の学科に進学する機会を 断ってしまった。しかし、2年目に入ってから日本語の授業が次第に難しくなり、壁にぶつかってし まったような不安感を抱いていた。この時点では、次の段階が始まった。

 次の段階は不安の段階であった。不安が始まったきっかけとしては、日本語の壁にぶつかっている と同時に新たなコミュニティに参加し始めた頃であった。このコミュニティにおける他者との関係に より刺激を受けた。国際イベントを行うコミュニティであるため、日本人も含め様々な国からの人々 がいたが、 AUさんは日本語と関係なく全く違う分野の仕事をしていた。

241AU:Wah bermanfaat banget Sensei buat saya, bener-bener ngebuka gitu Sensei, ke depannya gitu harusnya gimana dalam menyikapi dunia setelah kuliah ini.

このイベントは私にとって非常に大切です。将来、卒業したら何をどうすればいいか、という考 え方を与えてくれました。

「中略」

255AU:Saya kan sebelum ikut event ini belum ada pikiran selanjutnya mau ngapain gitu Sensei. Pas setelah ini, oh iya baru sadar gitu selanjutnya saya itu harus gini gini gini, mulai kebuka.

このイベントに参加する前の私は、これから何をするのかをまだ分からなかったのです。しかし、

参加した後、考え方が少しずつ開いて、これからこうしなければならないと気づいてきました。

(筆者による翻訳)

(13)

 つまり、AUさんはSLさん、SNさんとIFさんのような日本語能力の確認や応用する段階がなかっ た。その結果、日本語の壁にぶつかったAUさんは自分の日本語能力に対する自信が徐々になくなっ てしまった。さらに、その壁の向こう側にある将来のイメージが想像できないため、壁を乗り越える 必要があるのかということを疑問になった。

 以上の葛藤によりAUさんは後退の段階に移った。参加したコミュニティにおける他者との関係お よび経験を通して、AUさんは「日本語と関わる将来の自己」像ではなく、「他の分野に関わる自己」

像が描かれることになった。一方では、日本語を学ぶことに興味が背景となり、もう一方ではその先 にある将来が見えない。その結果、さらに日本語を学ぶ意義を持たなくなってしまい、再動機づけに 影響を与えた。

96F:Tapi AU kan udah belajar bahasa Jepang 3 tahun, terus tambah lagi 2 tahun pertama, udah 5 tahunan kurang lebih, tapi setahunan terakhir ini merasa kok salah jurusan. kenapa tiba-tiba merasa kayak gitu?

でもAUさんは今まで3年間プラスここで2年間、合計5年間日本語を勉強したでしょう。なぜ この1年間 「専攻の選択が間違っちゃったな」 と考えるようになりましたか?

97AU:Mungkin setelah saya ikut organisasi di luar kampus itu, itu kan pasti itunya lebih luas ya, komunikasinya gitu, banyak gitu. Terus sempet dapet masukan, saat ini dunia kerja kan semakin sulit, lagian pasar terbuka, ya udah jadi mikir-mikir, Oh iya ya, apakah bisa kemampuan saya bahasa Jepang ini ke depannya? gitu.

大学外の活動に参加したからかもしれません。その活動は確かにコミュニケーションも広げる し、多様だったし。意見とかも聞かせてくれました。現代は、就職もかなり厳しくなってきて、

公開市場にもなりました。それで、「私は将来、この日本語能力で生きていけるのか?」 という ふうに考えるようになりました。

「中略」

106F:Kalo bahasa Jepang, masa depannya ngga bisa ngebayangin ya?

日本語だったら、将来のことは想像できない?

107AU:iya, yang penting... ya mungkin karena pemikirannya masih kemakan sama ego, jadi Ya udahlah, asal pengen ini, ya udah ini gitu, ngga mikir ke depan panjangnya gimana gitu Sensei.

はい、今のところ。。。前はエゴが強かったかもしれません。だから、「これが欲しいだから、そ れでいいんじゃないの」とやってしまって、遠くまであんまり考えませんでした。

108F:Waktu dulu milih bahasa Jepang?

日本語を選択するときに?

109AU:Iya hehehe はい(笑)

110F:Dulu milihnya karena ini ya, karena hobi?

日本語を選択したのは、趣味だから?

111AU:Iya, emang suka banget ama tertarik banget ama Jepang kan gitu Sensei.

(14)

はい、日本のことが大好きで興味深かったからです。 

(筆者による翻訳)

 AUさんは、漫画への興味に自己満足をするために、日本語を学びはじめた。しかし、その背景は 中・上級まで日本語を学び続ける動機づけを保つことができない。そこで、中・上級の日本語を学ぶ ことに自己満足するよりもむしろさらに深い意義を持っている目的が重要となってきた。しかし、日 本語に関わる新たなコミュニティに参加する機会がなかったため、日本語を生かせる将来のイメージ が形成できなくなってしまった。このような葛藤の中で不安が起こるようになった。将来の人生に生 かせる他の能力を身につけてたいため、日本語を学び続けることを諦めようと決定した。

5.考  察

5.1.変化と転機

 前節で述べた研究結果から明らかになったのは、学習者が三つの変化の段階を経験していたとのこ とである。SLさん、SNさんとIFさんの場合は、次第に「最初の段階」から「確認・応用の段階」お よび「発展の段階」に変化し、ポシティブな方向への進歩を示している。その一方、DDさんとAU さんの場合は、「最初の段階」から「不安の段階」、それから「後退の段階」に変化し、逆方向に進ん でいることが明らかである。

 「最初の段階」から次の段階への変化は日本語学科の2年目、いわゆる3期目に入る頃から始まっ た。この時点では、日本語の授業は初級から中・上級に入る段階であるため、文型、漢字、語彙など がより複雑になっていく。ほとんどの学習者はこの段階において、日本語が難しくなってきたと語っ ていた。その結果、現在に至った学習方法を更新する必要がある。最初の段階では、学習者は成績、

親の期待、日本文化への興味などの動機で日本語を勉強することを始めたのである。初級日本語を勉 強する段階においてはこれらの動機に基づく目標がほとんど達成することができた。この段階はハ ネームンの段階であり、日本語の学びに対する興奮や期待などに溢れている時期である。

 しかし、中・上級の日本語への展開は学習者に新たな挑戦および気づきを持たせるようになった。

SLさんの場合は、この展開は自分の日本語能力を確認する挑戦となり、日本語能力試験はその測定 の一つであるため、日本語能力試験の認定証を取ることがSLさんの日本語能力の確認である。SNさ

んとIFさんの場合は、自分の日本語能力を確認することおよび他者・社会への貢献を挑戦することで

ある。その一方、DDさんとAUさんの場合は、この展開は自分の日本語能力と将来に生きるための日 本語能力の間におけるギャップに気付かされ、将来のための日本語能力に自信不足になってしまった。

 なぜ以上のような差異が生じたのだろうか。それに関して、学習者の語りから取り上げられた点 は、基礎から応用への変換があったということである。学習者は中・上級の日本語の学習へ進むにつ れ、学習方法の更新だけでなく、新たな刺激や動機づけもさらに重要となってくる。日本語学習を進 めるために、学習者は日本語を学ぶより深い意義を求めるようになる。自分の趣味や親の期待という 動機だけでなく、今後は他者・社会に貢献できる日本語の応用ということを考えはじめる。この時点 は学習者の一つ目の「転機(turning point)」だといえる。

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 一つ目の転機では、学習者はさらに日本語の学びの意義を欲することになり、基礎から応用への変換 を求めるようになる。そのため、学習者は日本語能力試験への参加で自分の日本語能力を測定すること が重要となる。日本語能力試験に合格することにより、自分の日本語能力を公式に認めることになり自 己自信の向上とつながっている。日本語能力試験の他に、他者・社会との関係の中で日本語の応用も 重要となる。そのため、学習者は大学内における他者との関係をより広いコミュニティにおいて展開し ている。SLさんの場合は、日本留学プログラムに参加する仲間たちである。彼/彼女らとのつながり を通して、SLさんは自分の日本語能力に関する短所に気づくようになり、その短所を補うための方法 を考えさせられるようになった。SNさんの場合は、アイドルのファンクラブや他の日本語学科の仲間 たちのコミュニティが展開されている。また、IFさんの場合は、日本語を勉強する様々なコミュニティ が展開されている。彼女らが参加している様々なコミュニティは一つの共通点がある。それは、媒介物 や手段としての日本語である。彼女らはそれぞれのコミュニティにおいて、日本語を媒介として実践し ながら、他者との関係を深めたり自分の日本語能力を改めて意識したり新たな学びを実現したりするこ とができる。これは、 Wenger (1998)が提唱した「communities of practice,実践コミュニティ」と言える。

Communities of practice are groups of people who share a concern, a set of problems, or a passion about a topic, and who deepen their knowledge and expertise in this area by interacting on an ongoing basis.

(Wenger, McDermott, and Snyder, 2002: p. 4)

 このように日本語を媒介や手段とする実践コミュニティ(以下「日本語の実践コミュニティ」)に おける関係により、SNさんとIFさんはより深い日本語を学ぶ意義を見つけるようになった。その実 践コミュニティにおける経験を通して、彼女らは日本語を応用することで他者との関係を深めるこ と、または社会に貢献することができるという2点に気づいてきた。その結果、将来日本語人生の可 能性がより具体的に把握できるようになった。本稿で使用する「日本語人生」は鄭(2010)が述べた

「日本語人生」の観点と少し異った。鄭による「日本語人生」は日本語を学び始めた「あの時」から

「いま−ここ」に至るまで学習者が日本語を使用して実際に生活を営んできたことである(鄭、2010:

p.1)。本稿では、「日本語人生」を「いま−ここ」から「将来」に至るまで学習者が実際の生活の中 で日本語を活用することと定義する。つまり、本稿で使用する「日本語人生」とは学習者の将来の人 生「future life」における日本語使用を指している。

 また、日本語の実践コミュニティの参加によりさらに重要になったのは、中・上級の日本語に対す る自信を回復することができることである。難しくなってきた日本語に対する自信が次第になくなっ た学習者は、その実践コミュニティにおける日本語知識の共有により自分の日本語能力を再認識する 機会が与えられた。これは新たな観点から日本語の学びを再考し意味づけることができる。

 以上のプロセスは学習者を二つ目の転機へ導いた。実践コミュニティにおける様々な経験を経て、

今後は自己実現のニーズを満たす必要となる。SLさん、SNさんとIFさんの事例では、社会貢献にお ける日本語の応用は自己実現の道具としてみなされている。前の段階で確認・応用された自分の日本 語能力は将来の選択に対する権力をより強めてきた。学習者は自分の将来を考える際に、日本語がど のような位置付けを持っているかを把握することができる。それから、生きる力を育てるために、日

(16)

本語がいかに活かされるのか、またどのようなスキルが必要となるのかを想像することができる。具 体的な変化のプロセスを以下の図にまとめる。

 DDさんとAUさんの事例では、日本語の実践コミュニティの不足によりやる気や自信をなくし、次第 に日本語の学びに失望してしまった。AUさんの場合は、参加した実践コミュニティにおける他者との 関係に将来に関する刺激を受け、新たな観点から日本語の学びを再考させるようになった。さらに、そ の実践コミュニティは日本語人生以外の将来の可能性を認識させるようになった。DDさんの場合は、

日本語の実践コミュニティの不足により自分の日本語能力を確認する、または応用する機会が与えられ なかった。このような環境の中でDDさんとAUさんは不安を抱いたまま日本語を学び続けていた。さ らに、将来のことを考えるにあたって、日常生活で日本語を活用できる将来の自己像が描かれていない。

 DDさんとAUさんは現在自分の日本語能力、および将来社会貢献できる自分の日本語能力に関す る2つの不安を抱いている。日本語の実践コミュニティに参加しなかったため、日本語を応用できる 機会があまりなくて現在の自分の日本語能力への自信を支持するものがなかった。さらに、その実践 コミュニティの不参加により、社会貢献のために日本語をどのように活かすことができるのか想像が つかなかった。そのため、将来いかに日本語人生を送るのかに関しては非常に不安である。

 このような状態の中でDDさんとAUさんは日本語に関する選択肢をあまり持っていないといえる。

一方では、SLさん、SNさん、IFさんと同様に社会貢献における自己実現のニーズを満たすことが必 要である。その結果、次の転機では、日本語から離れ将来の選択としては日本語ではなく別の進路を 決定することになった。

日本語人生:

自己実現→社会貢献 将来の選択→進路 日本語:

初級→中・上級

基礎→応用 実践コミュニティへの参加 日本語の学びの意義の認識

最初の段階 転機 確認・応用の段階 転機 発展の段階

日本語:

初級→中・上級

基礎→応用 実践コミュニティの不足 日本語の学びへの失望

日本語の学び→後退 将来の選択→別進路

最初の段階 転機 不安の段階 転機 後退の段階

図1 SLさん、SNさんとIFさんの変化

図2 DDさんとAUさんの変化

(17)

5.2.将来の自己像の形成

 Dörnyei (2005, 2009)が提唱したL2 Motivational Self Systemの理論に基づいてSLさんの事例を考察 してみると、最初の段階では、母親の期待に従う、および「日本語ができないと成績が悪くなる」と いう悪い成果の可能性を避けることで「そうなるべきだと考える自己」が現れた。その一方、発展の 段階では、「そうなるべきだと考える自己」は完全に「なりたい理想的な自己」に変化し、L13社会へ の参加(就職のための日本語能力)およびL2社会への参加(日本人と自然な会話のための日本語能 力)の文脈の中で「なりたい理想的な自己」が形成された。さらに、本研究で明らかになったことは、

最初の段階と発展の段階の間にある確認の段階では、これらの2つの将来の自己像が「日本語能力試 験N3に合格できる自己」に現れ、お互いに交渉している。日本語を勉強している学習者は必ず日本 語能力試験の合格認定証を持たざるを得ない。さらに、たとえばSLさんにとっては、その認定証は 自分の到達度を測定するためのものであり、自分の日本語能力を確認するための測定ツールである。

 将来の自己像の形成は、日本語が学習者にとって自分のものになったプロセスを提示する。Wertsch

(1998)によると、このプロセスは「appropriation 」という。「Appropriation 」とは、「a process of taking something that belongs to others and making it one s own」のことである(Wertsch, 1998: p. 53)。つまり、

自分のものでないものを自分のものにするプロセスである。日本語を学習する最初のときに、日本語 は興味などのある状況が背景として獲得しようとするものであったが、自分のものではなかった。日 本語の実践コミュニティにおける他者との関係を通じて、次第に日本語を内面化し学習者のアイデン ティティの一部となる。実践コミュニティにおける日本語は自己と他者との間の媒介物または媒介の 手段(intermediary)という役割を持っている。学習者はこれにより文化的資本としての日本語を価値 づけ、日本語学習への投資を決定することになる。

 Wenger(2010)によれば、学びはスキルや情報の獲得だけではなく、ある一人の人間すなわち「a certain person [or] a knower in a context where what it means to know is to negotiated with respect to the regime of competence of a community」になるプロセスである(Wenger, 2010: p.181)。ここで言う「コ ミュニティのコンピテンス」とは、各コミュニティにおいて社会的に定義された能力のことである。日 本語の実践コミュニティの場合では、そのコンピテンスは媒介物・手段としての日本語である。日本 語の実践コミュニティへの参加により、学習者はある一人の人間になるプロセスを経ていく。そこでコ ミュニティのコンピテンスと個人的経験の間の再調整が行われる(Ibid., p.181)。そのプロセスを通し て、日本語のコンピテンスを持っている将来の自己像を形成していく。

5.3.象徴的資本 (symbolic capital)としての日本語

 学習者がL2に投資する理由としては、より広い範囲の象徴的および物的リソースが取得できると 考え、文化的資本の価値を増加することにつながるからである(Norton & Toohey, 2011)。SLさんの 事例からみると、日本語能力はSLさんにとって経済的な資本として認められる。数少ない日本語能 力を持っている人材は価値が非常に高いと思われ、就職のためにプラスになる。インドネシア進出企 業の実態調査(帝国データバンク(TDB)、2014)によると、インドネシアに進出している日本企業 は1763社と判明し、2年で39.3%増加した。これに関しては、古川他(2015)によれば、大学におけ る日本語学習は「日本企業・日系企業・外国企業で働くため」という意味づけを持っている。さら

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に、SLさんにとって日本語能力、特に会話力は経済的な資本だけでなく、社会的な資本として意味 づけられている。「滑らかに日本人とのコミュニケーションができるため」の日本語能力を身につけ ることはSLさんにとってL2の社会への参加を支える資本だと考えられる。また、日本語能力はさら に高いレベルの教育へのアクセスを提供することという価値も持っている。この価値は将来の想像さ れる共同体への参加の可能性がより高くなるといえる。SNさんは日本語を学び続けることによって 日本へ留学することが可能になる。留学で学んだことを将来において希望する職場で応用することを 期待している。IFさんはさらに日本語教育専門課程へ進学し、将来学校や大学で日本語の教師として 教えることが望ましいと考えている。

 Norton(2010, p. 353)によれば、言語学習への投資は文化的資本の価値を高めるためのものである。

その資本の一つはL2の社会の特権へのアクセス権である(Norton, 2001: p.166)。本稿で述べた事例か ら見ると、 L2の社会(日本社会)だけでなく、L1の社会(インドネシア社会)の特権(ステータス、

財産等)へのアクセスも含めている。日本語学習への投資は想像される共同体および理想的将来の自 己像を実現するためだということを明らかになった。学習者は言語学習に投資する際に、自分がどの ように社会と繋げられるのかを考え続けている。要するに、言語学習への投資は自分のアイデンティ ティへの投資とも言える(Norton, 2000: p.11)。

6.まとめと結論:今後の課題

 本研究は、学習者が他者・コミュニティ・社会との関係の中から日本語を学ぶ意義を見つけること を明らかにした。また、その関係の中で学習者は将来の自己を確認し形成するということも明確にし た。これに基づき、本研究は、学習者が生きるためのことばの力を育むために、高等教育機関の日本 語学科が果たすべき主導的な役割を次のように提案する。

⑴ 日本語の学びを将来につなげることである。学習者は日本語の学びに投資するため、将来に ついて想像できることが重要である。

⑵ 将来の多様なオプションが選択できる学習者を育てることである。日本語人生を送る学習者 と日本語人生から離れる学習者の間にある重大な差異としては、日本語に関する将来のオプ ションが選択できないということである。なぜなら、日本語学習への投資が少ないからであ る。これは日本語学習に対する無力感(helplessness)に導くことになる。

⑶ 日本語の実践コミュニティとのつながりを提供することである。日本語学科は学習者が様々 な実践コミュニティとの関係を作り、実践コミュニティに参加できるように促進することが 必要である。

 本研究では、日本語学科3年生の学習者の語りから動機づけの変化を考察することによって、学習 者の学びを支える重要なものを見出し、将来の自己像とどう関わるかを捉えようとした。研究対象と して3年生の学習者に特定し、学習者が経験してきた日本語学習の振り返りを考察した。しかし、縦 断的な研究が行われなかったため、学習者の変化をより詳しく捉えることはできなかった。さらに、

時間が限られたため、学習者が参加している様々な実践コミュニティにおける学びのプロセスをより 詳しく調べることもできなかった。この2つは本研究に残された課題である。次の研究に向かい、以

(19)

下の4点を今後の課題として焦点を当てることが必要である。

⑴ 学習者はいかに実践コミュニティとのつながりを展開するかということ

⑵ 学習者の学びが促進できる実践コミュニティの特質

⑶ 実践コミュニティとのつながりへの必要な支援

⑷ 日本語学習および学習者の学びへの支援に対する教師の意識

 さらに、今後の課題として最も重要なのは、日本語教室をどのように外の世界とつなげネットワー クを形成するのかということである。これは具体的に言うと、学習者と様々なネットワークが繋げら れる授業をどのようにデザインし、自己実現に関する学習者の要求を満たすことができるのかという ことを考える必要がある。日本語学科におけることばの学びのあり方を改めて見つめ直すことが課題 として残されている。

1 L2は「第二言語」の略である。 

2 当時のインタビューの年齢である。

3 L1は「母語であるインドネシア語」を示している。

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