• 検索結果がありません。

「新幹線の分岐器レール削正における一考察」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "「新幹線の分岐器レール削正における一考察」"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)IV‑145. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). 「新幹線の分岐器レール削正における一考察」 西日本旅客鉄道(株)正会員 ○山根 寛史 正会員 亦野 和宏 1. はじめに 新幹線の高速走行時においてレール頭頂面における微小な凹凸は、高速で回転する車輪との接触により転動音と 呼ばれる振動を発生させることで知られる 1)。また同時に頭頂面凹凸量が著大な箇所では、車輪が上下方向に加振 されることで輪重変動が発生し軌道材料の損傷や軌道狂いを引き起こしている 2)。そこで山陽新幹線においても、 レールの疲労寿命延伸と環境対策(騒音・振動対策)の二つの側面から、レール波状摩耗削正車の投入による一様 な削正を実施している。しかし、分岐器区間においては欠線部分を多く含むなど軌道構造上の問題ならびに、信号 設備等の支障物が数多く配置されているという理由から計画的な削正を実施していない。しかし分岐器はその延長 の短い範囲内に溶接やレール継目部を多く含んでいるために転動音や輪重変動が発生しやすい構造となっており、 そうした転動音および輪重変動の除去および頭頂面凹凸量の改善を目的として、6 頭式レール削正車による分岐器 削正を実施したので、以下に報告する。 2. 分岐器削正作業 分岐器内には、一般区間に比べてポイント部のトングレールと基本レールの接触部分やクロッシング部の可動レ ールと翼レールの接触部分など車輪の乗り移りを生じる箇所が、連続している。このため、砥石の動作に柔軟性が 求められることから、今回の分岐器削正には 6 頭式レール削正車を使用することとした。以下に削正作業の概要を 述べる。 2−1.事前調整 ポイント部乗り移り部分を含めて、分岐器内では分岐線側レールと基準線側レールが接近している箇所が多く存 在するため、事前に砥石の当たり面の設定を図 1 のように調整した。ゲージコーナー(G.C.)側とフィールドコー ナー(F.C.)側 10 ㎝は以下の理由から削正禁止箇所として砥石当たり面を調整し、保守基地での当たり面の確認を 実施した。 1. F.C.側…トングレール頭頂面に砥石が接触する可能性がある 2. G.C.側…基本レールとリードレールとの間に削正による段差 が生じる可能性がある また、削正対象となる分岐器は、営業列車の 275 ㎞/h 超の通過を受 ける高速分岐器であり、乗り移り部分を削正することは列車動揺に与 図1 える影響等を考慮して望ましくないと判断し、乗り移り部分では削正 を実施しないこととした。 2−2.準備作業 分岐器内の溶接部の凹凸量を施工前後で 2m ストレッチ継目落測定器(原田式) (以下 2m ストレッチと呼ぶ)に より計測し、溶接部落ち込みの状態の把握を行った。同時に分岐器内の信号設備(ケーブル、モーター等)や可動 レール部分の床板に対しては削正クズによる焼損の防護処置として、軌間の内外を濡れウェスで覆うこととした。 さらに削正車のダストボックスについては分岐器設備に支障するためあらかじめ撤去した。 2−3.削正作業 前後 10m ずつを含めて分岐器区間 91m の削正を実施した。先端部と後端部は削正禁止箇所に近く分岐器区間側 に十分な取りつけ延長が確保できないため、前後 10m は分岐器先端溶接と後端溶接の取り付けとした。また、準 備作業における溶接部での 2m ストレッチの計測結果より砥石の押し付け圧力を調整した。そして作業間合いが 3 時間弱であること、また 6 頭式レール削正車の施工能力が 600m/h(10m/min)であること、さらに準備作業を考 慮して、1 分岐器あたり 14 パスを基本として削正作業を実施した。 2−4.後作業 準備作業で測定をおこなった溶接部で再度測定し、集中削正の要否を判断した。仕上り基準値に照らし合わせ、 追加削正が必要な箇所についてさらに削正を行った。ケーブル等を焼損していないことを確認し、さらに分岐器の キーワード:レール削正、騒音レベル、分岐器、6 頭式レール削正車 連絡先:西日本旅客鉄道株式会社 岡山支社 福山新幹線保線区 〒720-0066 広島県福山市三之丸町 30-2 ℡ 084-921-2374. ‑289‑.

(2) IV‑145. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). 床下騒音レベル(dB). 度数. 転換試験を行い、削正クズが分岐器可動レールや信号設備に支障をおよぼしていないことを確認した。 3. 削正効果の検証 3−1.床下騒音の低減 50 施工前 削正を実施した分岐器における、施工前後で電気軌 40 施工後 道総合試験車の床下騒音レベル(1M 代表値)の頻度 30 20 分布を図 2 に示す。これより床下騒音レベルが 110dB 10 を下回った箇所が施工後では施工前に比べ約 50%以 0 上増加し、全体の約 79%となった。床下騒音レベルピ 105 110 115 120 ークも 112dB から 107dB まで低下している。 騒音レベル(dB) 3−2.削正位置による効果の相違 図2 削正区間床下騒音分布 分岐器削正で最も良好な結果が得られた分岐器の騒 118 施工直前 116 施工直後 音レベルの施工前後での変化を図 3 に示す。1 が分岐器 114 112 後端の溶接、4 が分岐器先端の溶接の位置にあたる。ま 110 108 た、 2、 3 はリード部、 クロッシング部の溶接位置である。 106 104 これより溶接位置特にリード部については約 10dB 床下 102 100 騒音レベルの低減が見られる。しかし、未削正の可動レ 2 3 4 1 98 96 ール周辺については、騒音レベルが低減しなかった。 734226 734246 734266 734286 734306 ㌔程 3−3.溶接部頭頂面凹凸量の改善 図3 床下騒音レベルの施工前後の変化 分岐器内溶接部の頭頂面凹凸量を2m ストレッチの データから評価した。14 パスを基準とした削正前後の溶 接部凹凸量の変化を表 1 に示す。最大で 0.220 ㎜/m、平均で 表1 削正前後の溶接部凹凸量変化 0.162 ㎜/m 程度の削正実績を得た。これを 1 パス当たりの削 床下騒音 凹凸量 正量に換算すると 0.012 ㎜/m となる。また、溶接部での削正 (dB) (㎜/m) 効果の維持に関して、図 4 からわかるように床下騒音レベル 削正前 0.278 112.4 平均値 について平均 6.6dB 低減し、施工後 3 ヶ月間で床下騒音レベ 削正後 0.116 105.8 ルの悪化量は約 2dB の範囲に収まっている。 最大値. 削正前. 0.400. 114.5. 床下騒音レベル(dB). 削正後 0.280 105.8 4. 考察 115 今回の分岐器削正により、床下騒音レベルとレール頭頂面 各溶接平均 113 凹凸量の改善に関して以下の 3 点が明らかになった。 111 (1) 削正区間については沿線騒音への寄与を示す指標 109 である床下騒音レベルを110dB 以下 3)に抑える効果 107 が得られた。 105 (2) 溶接部については相対的な低減効果とその持続効 施工直前 施工直後 1ヶ月後 2ヵ月後 3ヶ月後 果について良好な結果を示すことができた。 経過日時 図4 溶接部分床下騒音変化 (3) 溶接部については、平均削正量 0.162 ㎜/m に対し て、リード部のみでは 0.114 ㎜/m と削正量が伸びな かった。これは可動レールを削正しない手法を採用したため可動レール近傍の溶接部で、取り付けが確保 できなかったためであると考えられる。 5. おわりに 今回の 6 頭式レール削正車による分岐器削正では、 床下騒音レベルの低減とその維持で 110dB を下回る結果が示 せたことから、環境に対する一定の効果を得ることができたと考えられる。しかし、床下騒音レベルに関しては削 正対象から除外した可動レールの乗り移り部分について高い騒音レベルを残す結果となった。乗り移り部分前後の 削正だけでは効果が限定されてしまうため、今後は乗り移り部分において列車動揺に対する安全を確保しつつ削正 可能な範囲について再検討が必要であると考えられる。 1)千代誠: 「新幹線レール短波長管理とレール削正」,鉄道現業社,新線路,平成 8 年 7 月 2)井手寅三郎 須永陽一: 「短波長軌道狂いの効率的な管理手法」,鉄道現業社,新線路,平成 8 年 7 月 3)須永陽一 小井土八十一 北沢忠: 「レール溶接部の効率的な削正手法」,鉄道現業社,新線路,平成4年2月. ‑290‑.

(3)

参照

関連したドキュメント

鉄道総合技術研究所 正会員 ○清水 紗希 鉄道総合技術研究所 正会員 及川 祐也 鉄道総合技術研究所 正会員 西宮 裕騎

東京地下鉄株式会社 正会員 ○星子 遼 東京地下鉄株式会社 正会員 大澤 純一郎 東京地下鉄株式会社 河野 陽介 鉄道総合技術研究所 正会員

(公財)鉄道総合技術研究所 正会員 ○窪田 勇輝 正会員 篠田 昌弘 正会員 中島 進 正会員 阿部 慶太 正会員 江原 季映 西日本旅客鉄道株式会社 正会員 坂本

3-2.開発品の性能試験及び結果 底部腐食傷を有するテストレールを用いて開発品の性能試験を行った.精度を比較する為に当社の底部腐食傷

広いため,削正車と同様に最後に頭頂面を削った場合 は偏平なレール断面となり,レール頭頂面曲率半径 300mm

東日本旅客鉄道㈱ 東北工事事務所 正会員 ○浅川 邦明 東日本旅客鉄道㈱ 東北工事事務所 正会員 鈴木 慎一 東日本旅客鉄道㈱ 東北工事事務所

株式会社日本線路技術 正会員 〇島津 健 東日本旅客鉄道株式会社 正会員 佐々 博明 東鉄工業株式会社 阿部

新潟大学大学院自然科学研究科 学生員 阿久津 友宏 新潟大学工学部建設学科 正会員 阿部 和久 新潟大学大学院自然科学研究科 正会員