技術論文
子宮内膜細胞診における従来法と TACAS
TM
法での
細胞所見の比較検討
則松 良明
1)林 聖子
2)髙田 真未
2)中川 健司
3)中橋 徳文
4) 1) 愛媛県立医療技術大学保健科学部臨床検査学科生体情報学講座(〒 791-2101 愛媛県伊予郡砥部町高尾田 543) 2) 医学生物学研究所学術部診断薬グループ 3) 市立宇和島病院臨床検査科 4) 市立宇和島病院産婦人科 要 旨 子宮内膜細胞診における従来法標本と液状化検体細胞診法の一つである TACAS 法標本での細胞所見の比較検討を試み た。子宮内膜材料 31 例を対象とし,標本作製は最初に従来法標本を,次に TACAS 標本を作製する,スプリットサンプル 法を用いた。検討の結果,1)標本背景所見について,TACAS 法は従来法よりも有意に背景が清明であり,有意に目的細 胞へのマスキングが低値であった。2)対物 10 倍 1 視野あたりの細胞集塊数では TACAS 法は従来法よりも高値であった が,有意差を認めなかった。3)しかし,平均細胞集塊数の症例頻度において,TACAS 法が従来法と比べて,同等もしく は多かった症例頻度は少ないものよりも有意に高値であった。4)細胞集塊長径では TACAS 法は従来法よりも有意に低値 であった。5)しかし,TACAS 法の細胞集塊長径が平均 301 μm 以上の症例頻度は従来法よりも低値であるものの有意差 を認めなかった。6)核輝度では TACAS 法は従来法よりも有意に低値であった。以上のことより,TACAS 法は従来法に 比べて,核が濃染傾向にあるため,重積細胞での核の詳細な観察において注意を要すると思われるが,標本背景が清明 で,目的細胞へのマスキングの乏しい標本の作製,および,十分な量かつ適切な大きさの細胞集塊の塗抹が可能であるた め,子宮内膜細胞診での診断精度の向上につながると期待される。 キーワード 子宮内膜細胞診,従来法,液状化検体細胞診,TACAS 法,細胞所見の比較 はじめに 近年,液状化検体細胞診(liquid-based cytology; LBC)は子宮頸部細胞診検査において,擦過細胞を スライドガラスに直接塗抹する従来の標本作製法(従 来法)に代わって,欧米を中心に普及するように なった1)。従来法は採取した細胞を人力で直接スラ イドガラスに塗抹するため,細胞相互の重積や細胞 量が不均一な標本になることが多い。一方,LBC 法 は採取した細胞を保存液中に回収した後,限局した 範囲内に,細胞の重積が少なく,密度がほぼ均等に 塗抹処理をするもので,これにより作製されたもの は thin-layer(薄層)標本と呼ばれている。LBC 法で は,細胞変性や乾燥のない固定が可能で,サンプリ ングエラーによる不適正標本が減少するため細胞診 の精度・検出率の向上が期待できる2),3)。本邦でも子 宮頸部細胞診での Bethesda System の導入を契機に, LBC法が普及しつつある。一方,子宮内膜細胞診 (内膜細胞診)は子宮体癌の早期発見のスクリーニン グ検査法として,国内では最も一般的に使用されて いるが,現在の標準的標本作製法は従来法であるた め,子宮頸部細胞診の場合と同様,目的細胞(内膜 上皮細胞や腫瘍細胞)の細胞変形や過剰な細胞重積,さらに目的細胞への赤血球や炎症細胞等のマスキン グ等により,判定が困難となる場合が多々認められ る4)。そのため,LBC 法における従来法との内膜細 胞像の比較検討は重要であると共に早急に実施する 必要がある。 今回われわれは,内膜細胞診での従来法標本と LBC 法 の 中 で も 唯 一 の 国 産 で あ る TACASTM
(thinlayer advanced cytology assay system; TACAS)法 (株式会社医学生物学研究所,名古屋)標本を比較検 討し,若干の知見を得たので報告する。 I 方 法 1.対象症例 2014年 2 月~2014 年 6 月に市立宇和島病院にて 採取された子宮内膜材料 31 例を対象とし,平均年齢 は 45.6 歳(28 歳~61 歳)であった。細胞診の内訳 は陰性 28 例,疑陽性 1 例,陽性 2 例であり,疑陽性 および陽性の全例において組織診断が施行された。 疑陽性例の組織診断は癌肉腫,陽性例では 2 例共に 類内膜腺癌 Grade 1 であった。 本 研 究 は 愛 媛 県 立 医 療 技 術 大 学 ( 承 認 番 号 13-004;承認日 2013 年 7 月 8 日),市立宇和島病院 (承認番号 1511-49;承認日 2012 年 9 月 19 日)およ び株式会社医学生物学研究所(承認番号 135;承認 日 2012 年 12 月 25 日)の倫理委員会の承認を得て実 施した。また,全ての対象者にインフォームドコン セントがなされ,同意書による承諾を得た上で細胞 採取を行った。 2.標本作製 本研究を進めるにあたり,スプリットサンプル法 による標本作製を行った。検体採取器具は子宮内膜 ブラシもしくはエンドサーチを使用し,子宮内膜細 胞を採取した後,最初に従来法標本を 1 枚作製した。 その後,直ちに 95%エタノールにて固定し,パパニ コロウ染色を行った。次に LBC 法標本の作製は TACAS法を用いた。従来法へ塗抹後の採取器具の先 端を保存液である TACAS GYN Vial で洗浄し,採取 器具に残った細胞を回収後,株式会社医学生物学研 究所に送付し標本作製を行った。
その手順であるが,TACAS GYN Vial 内の検体全 量を遠心管に移し替えた後,800 G で 5 分間遠心し, 上清をデカントにて廃棄し,細胞沈渣を得た。次に, 細胞沈渣に脱イオン水 10 mL を添加し,再度 800 G で 5 分間遠心しデカントした。再度得た細胞沈渣に 対し,300 μL の脱イオン水を添加し,細胞懸濁液を 作製した後,専用スライドである TACAS Slide に懸 濁液を滴下し,10 分間静置することでスライド表面 との電荷の差により細胞を吸着塗抹させた。塗抹後 の標本は直ちに 95%エタノールに浸漬し,同施設に てパパニコロウ染色を行った。 3.検討方法 対 象 31 例 よ り 作 製 さ れ た 従 来 法 標 本 お よ び TACAS法標本を用いて,下記に示す項目を顕微鏡下 で測定し比較した。細胞集塊は 50 個以上の細胞から 構成されるものと定義した。 1)標本背景所見 標本内の全視野において,赤血球や粘液および好 中球などの背景成分が認められなかった場合を清明, 認められた場合を清明でないと設定し,1 症例ごと に背景清明の有無を調べ,頻度を算出した。併せて これらの背景成分による内膜上皮細胞等,判定に必 要な目的細胞へのマスキングの有無も調べ,頻度を 算出した。 2)対物 10 倍 1 視野あたりの細胞集塊数 1症例ごと任意に対物レンズ 10 倍視野での細胞集 塊数を最大 10 視野計数し,その平均値を算出した。 それぞれの平均値をもとに,全平均±SD 値を算出 した。 3)平均細胞集塊数の症例頻度 検討 2)で計数した細胞集塊数の 10 視野の平均値 について,TACAS 法が従来法よりも「少数」・「同 数」・「多数」での症例の出現の有無を調べた。 4)細胞集塊長径 1症例ごと任意に対物レンズ 10 倍視野での細胞集 塊の長径について,最大 10 視野計測し,その平均値 を算出した。計測ソフトウェアは cellSens(オリン パス株式会社,東京)を用いた。また,集塊長径が 対物レンズ 10 倍の視野を超える場合は視野の両端 の長さを最大長径と設定した。それぞれの平均値を もとに,全平均±SD 値を算出した。 5)細胞集塊長径が平均 301 μm 以上の症例頻度 検討 4)で測定した細胞集塊の長径について,10 視野の平均値が 301 μm 以上の症例の出現の有無を
調べた。 6)核輝度 1症例ごと任意に集塊を 5 集塊選択し,1 集塊につ き対物レンズ 40 倍視野で 10 個の核を計測した。計 測ソフトウェアである ImageJ(http://imagej.nih.gov/ ij/)を用いて核のみ抽出し,輝度ヒストグラムを計 数した後,平均値を求めた。それぞれの平均値をも とに全平均±SD 値を算出した。
統計学的有意差の検討は Stat View system(Abacus, Berkeley, CA)を使用し,Student’s t-test もしくは Pearson’s chi-square testを用いて分析し,p 値が 0.05 未満であった場合に有意差ありと判断した。 II 結 果 1.標本背景所見の比較 標 本 背 景 が 清 明 な 頻 度 に つ い て , TACAS 法 (58.1%,18/31 例)は従来法(29.0%,9/31 例)より も有意に高値であった。また,目的細胞へのマスキ ングの頻度について,TACAS 法(3.2%,1/31 例) は従来法(19.4%,6/31 例)よりも有意に低値であっ た。 2.対物 10 倍 1 視野あたりの細胞集塊数の比較 (Figure 1) TACAS法(2.9 ± 1.1 個)は従来法(2.6 ± 1.0 個) よりも高値であったが,有意な差は認められなかっ た。 3.平均細胞集塊数の症例頻度の比較 TACAS法が従来法より少数である症例数は 11/31 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 従来法 TACAS法 例(35.5%),同等は 4/31 例(12.9%),多数は 16/31 例(51.6%)であり,同等もしくは多数例(64.5%, 20/31例)は少数例(35.5%,11/31 例)よりも有意 に高値であった。 4.細胞集塊長径の比較(Figure 2) TACAS法(434.4 ± 123.7 μm)は従来法(518.9 ± 122.8 μm)よりも有意に低値であった。 5.細胞集塊長径が平均 301 μm 以上での症例頻度の 比較 TACAS法(83.9%,26/31 例)は従来法(93.5%, 29/31例)よりも低値であったが,有意な差は認め られなかった。 6.核輝度の比較(Figure 3) 核輝度ヒストグラムの平均値において,TACAS 法 0 100 200 300 400 500 600 700 800 従来法 TACAS法 * 細胞集塊長径(μm) *;両者の間に有意差あり(p < 0.05) Figure 2 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 従来法 TACAS法 * 核輝度 Figure 3
(8.1 ± 2.6)は従来法(11.24 ± 3.1)よりも有意に低 値あり,暗調であることを示していた。 III 考 察 最近,欧米において LBC 法は子宮頸部細胞診の主 要技術となっており,国によってはほぼ 100%を占 めている。その理由として,米国では 1980 年代後半 より,子宮頸部細胞診の偽陰性の問題がクローズアッ プされ,高い精度管理のための新しい技術の導入が 期待されたからである。偽陰性の原因の多くは,サ ンプリングエラーであり,それらは偽陰性の 67~ 90%を占める5)。特に,従来法では採取細胞の 20~ 30%程度しか塗抹されず,残存する細胞は採取器具 と共に処分される6)。加えて,従来法においては血 液,粘液,細胞片や炎症細胞などと乾燥によって正 確な診断が妨げられ,スクリーニングエラーの原因 として報告された7)。子宮内膜細胞診の従来法標本 においても,子宮頸部の場合と同様,サンプリング エラーやスクリーニングエラーが起こる。本研究に おいて,われわれは従来法と比較した LBC 法の一つ である TACAS 法の有用性を検討した。 清明な背景や目的細胞へのマスキングのない標本 は正確な診断のために必要である。しかしながら, 内膜細胞診では不正性器出血が主訴であることが大 半であるため,過剰な血液成分が目的細胞への被覆 を起こし,正確な診断を損なう可能性がある4)。標 本背景所見に関して,背景清明および目的細胞への マスキングの頻度について,TACAS 法(Figure 4A,
C)は従来法(Figure 4B, D)よりも有意に清明な状 態であるとともに,マスキングの頻度が低かった。 上記の結果の理由として,保存液である TACAS GYN Vialはアルコール濃度が約 20~30%と低濃度である ことと,標本作製過程での 2 回の遠心操作に注目し た。川西ら8)は LBC 法での保存液について,アル コール濃度が 25~30%と低濃度の保存液では浸透圧 の作用により赤血球は完全に溶血すると報告してい る。また,尾崎9)は集細胞に遠心を用いる LBC 法で は,炎症細胞などの背景物の割合を低下させて上皮 細胞を優位に出現させる効果があると述べている。 それらのことより,TACAS 法では保存液内で赤血球 を溶血し,次に,2 回の遠心操作において,上清に 含まれる蛋白成分や粘液および好中球などの背景成 分を適度に廃棄することにより,従来法よりは清明 な背景を保持しつつ,かつ目的細胞へのマスキング の乏しい標本の作製を可能にしていると考えられた。 内膜細胞診の正確な診断には,十分な細胞集塊の 塗抹量や適切な大きさの細胞集塊の塗抹が必要であ る。対物 10 倍 1 視野あたりの細胞集塊数について TACAS法(Figure 5A, C)は従来法(Figure 5B, D) よりも有意差は認められないものの,高値であった。 さらに平均細胞集塊数について TACAS 法が従来法 と比べて,同等もしくは多数であった症例の頻度は 少数のものよりも有意に高値であった。本研究での 標本作製法が,先に従来法標本を作製した後,採取 器具に残存する細胞を用いて TACAS 法標本の作製 を行う,スプリットサンプル法であることを鑑みる と,上述の結果から TACAS 法では十分量の細胞集 塊が塗抹されていると考えられた。 細胞集塊長径の比較では,TACAS 法は従来法より も有意に低値であった。上記の結果の理由として, TACAS法での標本作製工程での種々の細胞に対す る操作に注目した。まず,保存液中で採取器具の洗 浄による細胞の回収,細胞沈渣収集のための 2 回の 遠心操作,さらに,細胞懸濁液作製や専用スライド への懸濁液の滴下時でのピペットによる細胞攪拌等 での操作である。従来法では採取器具に付着した細 胞をスライドガラスに塗抹するという 1 回の工程の みであるが,TACAS 法では工程の都度,アーティ ファクトが細胞集塊へ加わることが推測される。そ の結果,細胞集塊は従来法よりも,断片化や小型化 し易い傾向となったものと考えられた。原田ら10)も 子宮内膜細胞診での従来法と TACAS 法と原理およ び標本作製工程が類似しているシュアパス法(日本 ベクトンディッキンソン社,東京)での比較検討に おいて,増殖期内膜や分泌期内膜での内膜組織構築 を保った大型集塊の出現数について,従来法に有意 に多く認められ,その理由として,種々の標本作製 工程での細胞集塊へのアーティファクトの影響のた めと述べている。しかしながら,細胞集塊長径が平 均 301 μm 以上での細胞集塊出現頻度の比較では, TACAS法(Figure 5A, C)は従来法(Figure 5B, D) よりも低値であるものの,有意な差を認めなかった。 以上のことより,TACAS 法では適切な大きさの細胞
A B C D TACAS法標本(A, C)は従来法標本(B, D)よりも背景が清明な状態であるとと もに,マスキングの頻度が低かった。(パパニコロウ染色,A,B;正常内膜, ×10,C,D;類内膜腺癌 Grade 1,×10) Figure 4 A B C D TACAS法標本(A, C)の作製が,先に従来法標本(B, D)を作製した後,採取器 具に残存する細胞を用いるスプリットサンプル法であることにも関わらず,TACAS 法では診断に十分量の細胞集塊および適切な大きさの細胞集塊が塗抹されていた。 (パパニコロウ染色,A,B;正常内膜,×2,C,D;類内膜腺癌 Grade 1,×4) Figure 5
集塊が塗抹されると考えられた。
次に核輝度ヒストグラムの比較では TACAS 法 (Figure 6A, C)は従来法(Figure 6B, D)よりも有意 に低値であったことは,TACAS 法では核の染色性が 従来法よりも暗調であり,言い換えれば濃染傾向に ある。 土田ら11)は尿細胞診での腫瘍細胞の核所見につい て,TACAS 法では従来法よりも,核が濃染傾向で あったと述べている。この理由について,細胞塗抹 原理の違いが考えられた。白波瀬12)は沈降法と電荷 吸着を原理とするシュアパス法では液体中に浮遊す る細胞がそのまま自然沈降し,スライドガラスに電 荷吸着される。そのため,細胞や細胞集塊は従来法 よりもさらに立体的に塗抹され,球状が保たれたま まの核はヘマトキシリン染色性が濃く見える。一方, 同じ LBC でもフィルター転写法を原理とするシンプ レップ法(ホロジックジャパン社,東京)ではスラ イドガラスに細胞を圧着転写させるため,細胞およ び細胞集塊の平坦化が起こり,その結果,核のヘマ トキシリン染色性は淡くなると指摘している。従来 法では採取した細胞を人力で直接スライドガラスに 塗抹するため,細胞へ圧力がかかることに加え乾燥 が起こり,その結果,シンプレップ法と同様,細胞 および細胞集塊の平坦化のため,核ヘマトキシリン の淡染化が起こると推測される。TACAS 法は上述の シュアパス法と同じ塗抹原理のため,従来法よりも, 核が濃染傾向であったと考えられた。 土田ら11)は尿細胞診での腫瘍細胞の核面積につい て,従来法(67.4 ± 12.8 μm)は TACAS 法(40.3 ± 6.9 μm),則松ら4)は類内膜腺癌 grade 1 での核面積 で,従来法(56.6 ± 7.5 μm)はシュアパス法(37.3 ± 6.5 μm)と,TACAS 法やシュアパス法は従来法より も有意に小型であったと報告している。また,深津 ら13)は口腔領域における従来法と TACAS 法の比較 において,TACAS 法は従来法よりも円形度が高く, 細胞の収縮が見られ,LBC 法の固定液中の細胞は表 面張力により,丸みを帯びる傾向があると指摘して いる。これらのことより,TACAS 法では従来法より も細胞の球状化が保たれているため,小型化するこ とが推測され,その結果,核ヘマトキシリンの濃染 傾向を示したと考えられた。 内膜細胞診では細胞集塊の出現が通常であり, TACAS法は重積した細胞の核の詳細な観察が従来 法よりも困難な場合もあり,注意を要すると思われ るが,土田ら11)は細胞重積した尿の腫瘍細胞での核 の詳細な観察は,辺縁部分では可能であったと述べ A B C D TACAS法標本(A, C)は従来法標本(B, D)よりも核が濃染傾向にあった。(パ パニコロウ染色,A,B;正常内膜,×60,C,D;類内膜腺癌 Grade 1,×60) Figure 6
ている。それらのことより,細胞重積した内膜細胞 集塊でも同様に辺縁部分の核の観察は可能であると 考えられた。 IV 結 語 子宮内膜検体の標本作製において,われわれは従 来法と比較した TACAS 法の有用性を検討した。そ の結果,従来法よりも標本背景が清明で,目的細胞 へのマスキングの乏しい標本の作製,および,十分 な量かつ大きさの細胞集塊の塗抹が可能であるため, 診断精度の向上に繋がると期待される。しかしなが ら,今回の検討では正常例がほとんどであったため, 今後は本検討の結果をもとに,悪性例での比較検討 を行う必要があると思われた。 ■文献
1) Strander B et al.: “ Liquid-based cytology versus conventional Papanicolaou smear in an organized screening program: A prospective randomized study,” Cancer, 2007; 111: 285–291. 2) Monsonego J et al.: “Liquid-based cytology for primary cervical
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5) Gay JD et al.: “False negative results in cervical cytologic studies,” Acta Cytil, 1985; 29: 1043–1046.
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8) 川西 なみ紀,他:「BD 液状化検体細胞診用保存液における 血液の影響に関する基礎的検討」,医学検査,2015; 64: 475– 481. 9) 尾崎 聡:「細胞診の精度向上を目指して―直接塗抹法・LBC 法の基本と要点を整理する―症例から学ぶ 細胞診のポイン ト 婦人科(子宮頸部)」,Medical Technology, 2014; 42: 674– 679. 10) 原田 美香,他:「子宮内膜細胞診における従来法標本と LBC 法標本の比較検討」,愛媛臨検技会誌,2013; 32: 55–61. 11) 土田 秀,他:「液状化細胞診を用いた尿細胞診の検体処理法 の検討」,日臨細胞誌,2013; 52: 406–410. 12) 白波瀬 浩幸:「細胞診の精度向上を目指して―直接塗抹法・ LBC法の基本と要点を整理する―症例から学ぶ 細胞診のポ イント 呼吸器」,Medical Technology, 2014; 42: 680–685. 13) 深津 晶,他:「スプリット・サンプル法の口腔領域への応用」, 検査と技術,2013; 41: 1172–1176. 本論文に関連し,開示すべき COI 状態にある企業等はありません。
Technical Article
Comparison of cytological findings between thinlayer advanced
cytology assay system (TACAS
TM) methods and conventional methods
in endometrial cytology
Yoshiaki NORIMATSU1) Seiko HAYASHI2) Mami TAKADA2) Kenji NAKAGAWA3)
Norifumi NAKAHASHI4)
1)Medical Technology, Faculty of Health Sciences, Ehime Prefectural University of Health Sciences (543, Takooda, Tobe-cho, Iyo-gun, Ehime 791-2101, Japan)
2)Marketing & Technical Support Department, IVD Group, Medical & Biological Laboratories Co., Ltd. 3)Clinical Laboratory Department, Uwajima City Hospital
4)Obstetrics and Gynecology, Uwajima City Hospital
Summary
The endometrial cytological findings of TACAS methods and conventional methods are compared. A split sample method was used. Thirty-one endometrial material samples each were prepared by the conventional and TACAS methods. The results are as follows: (1) In terms of preparation background, the TACAS method showed a significantly cleaner background than the conventional preparation method, and the masking of endometrial cells was significantly minimal. (2) In terms of the number of cells, the TACAS method showed a larger number than the conventional preparation method, but the difference was not statistically significant. (3) In comparison with the conventional preparation method, the TACAS method showed a significantly higher or the same frequency of average cell clumps. (4) In terms of the number of cell clumps with long axes, the TACAS method showed a significantly smaller number than the conventional preparation method. (5) The frequency of cell clumps with axes longer than 301 μm is lower in the TACAS method than in the conventional preparation method, but this difference was not statistically significant. (6) The nuclear brightness in the TACAS method is significantly lower than that in the conventional preparation method. From the above-mentioned results, the following became obvious. (1) The detailed observation of nuclei in overlapping cells is necessary because the TACAS method results in deeply stained nuclei compared with the conventional preparation method. (2) However, the preparation with a clean background and without the masking of endometrial cells can be carried out. (3) The preparation of sufficient number and size of cell clumps that are smeared can also be carried out. (4) Therefore, it is expected that the application of the TACAS method in endometrial cytological diagnosis leads to the improvement of diagnostic precision.
Key words: endometrial cytology, conventional methods, liquid based cytology, TACAS method, comparison of
cytologic findings