25
カ ル ト/セ ク ト論 争 と 宗 教 的 ナ シ ョナ リ ズ ム
一 グ ロ ー カ ル 化 過 程 に お け る ナ シ ョナ ル ・ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 追 求 一
中 野
毅
Cult/SectControversiesand
ReligiousNationalism NAKANOTsuyoshi
1問 題 の所 在 と分 析枠 組
「カ ル ト」 「セ ク ト」 問題 を とお して 、 宗 教 学 は 多 くの 課 題 に 直 面 した。 そ の ひ とつ は、 現 代 社 会 や そ こ に生 活 す る 人 々 に 直 接 的 な 危 害 や 脅 威 を も た ら す 運 動 や 集 団 が 、 宗 教 的 な主 張 と装 い を と もな っ て登 場 した こ とに 由 来 す る。
オ ウム 真 理 教 が サ リン ・ガ ス事 件 を お こ し、 ま た宗 教 と称 して 詐 欺 まが い の 行 為 を行 っ て い た 団 体 や 強 制 的 な 集 金 行 為 を重 ね て い た教 団 も存 在 し た。
「カ ル ト」 か ら精 神 的 、 身 体 的被 害 を受 け た(と 主 張 す る)人 々 も現 実 に い る。 こ の よ うな事 実 か ら、 そ れ らは 「破 壊 的 カ ル ト」 で あ り、 社 会 的 に 危 険 で有 害 な 集 団 で あ る とい う批 判 が 噴 出 し、 社 会 問 題 と して 展 開 した 。 これ ら の事 実 を正 面 か ら受 け 止 め 、 犯 罪 を犯 罪 と断 罪 して い く作 業 、 また被 害 者 を 救 済 して い く事 業 が 必 要 とな り、 こ の よ うな実 践 的 課 題 に 宗 教 学 が ど う応 え
るか が 問 わ れ て い る。
それ は ま た 、 宗 教 研 究 者 に とっ て、 宗 教 的 な 主 張 や 装 い を なす 新 しい 運 動 や 集 団 を、 や や 新 奇 で は あ るが 真 正 な 「新 」 宗 教 と して研 究 して い くだ け で は す ま な い状 況 が 出現 した こ とを意 味 す る。 従 来 の 宗 教 学 や 宗 教 社 会 学 に お け る価 値 中 立 的 な 態 度 に よ る研 究 が 批 判 さ れ た り、 不 可 能 とな る状 況 に 投 げ 出 さ れ た と もい え る。 宗教 研 究 者 は 、 い か な る価 値 判 断 や 価 値 的 立 場 に た っ
て 関 与 し、 研 究 し、 論 じて い る の か が 、 鋭 く問 わ れ る。 本 来 は 常 に 問 わ れ て い た は ず の こ の 問題 を、 日本 の 宗 教 研 究 は 批 判 的 に検 討 す る作 業 を怠 って い た 。 「カ ル ト」 「セ ク ト」 問題 に 直 面 して、 そ の 学 問 的 立 場 や 方 法 論 的 立 場 が 改 め て 問 い 直 され た とい え る(1)。 問 題 とな っ た 団 体 に 調 査 に 入 ろ う と して 、 当該 団体 の 当事 者 か ら 「敵 か 味 方 か 」 と問 わ れ 、 拒 否 され る事 態 もす で に生
じて い る(2}。 研 究 者 で あ れ、 ジ ャ ー ナ リス トで あ れ 、 関 与 す る者 の 実 存 的 立場 や 「当事 者 性 」 が 直 ち に 問 わ れ くるの で あ る。
こ の 問 題 は ま た、 研 究 方 法 の再 検 討 をわ れ わ れ に 迫 って い る。 宗 教 の 現 象 学 的 研 究 や 内在 的理 解 をめ ざす だ け で は、 利 用 され た り騙 され た りす る可 能 性 が あ る こ と をは っ き り と認 識 しな くて は な ら な い 。 宗 教 現 象 や 宗 教 運 動 に 共 感 的 な あ る い は 寛 容 な 態 度 で 、 彼 らの世 界 を彼 らの 文 脈 に お い て 内在 的 理 解 をめ ざす 方 法 の み で は、 彼 ら と同 じ地 平 に接 近 す る こ とは 可 能 で も、 学 的 理 解 と して は 十 分 で は な い 。 む しろ、 そ の 宗 教 的 世 界 に 飲 み 込 まれ て しま い 、 ス ポー クス マ ン と して 利 用 さ れ る危 険 性 が あ る。 研 究 対 象 との 適 切 な 距 離 を 保 つ こ と を忘 れ た研 究 は、 神 学 的 ま た は宗 学 的研 究 の 域 を で て い な い こ とに な る。
現 在 の 宗 教 研 究 に お け る方 法 論 的 枠 組 み と して 問 わ れ て い る課 題 の ひ とつ は 、 こ こ に あ る。個 々 の宗 教 運 動 や 宗 教 的 世 界 をそ の 固 有 性 に お い て と らえ る の み で な く、 そ れ ら を、 そ の発 生 と展 開 の文 化 的社 会 的 背 景 の 中 に位 置 づ け る、 ま た は 当該 社 会 の文 化 的 社 会 的 構 造 と個 別 運 動 との 関 係 を分 析 す るマ ク ロ な視 点 と研 究 方 法 ③ が 改 め て 必 要 とな っ て い るの で あ る。 つ ま り、 対 象 とす る宗 教 的世 界や 宗 教 運 動 そ れ 自体 へ の共 感 的 で 内在 的 な理 解 をめ ざす だ け で な く、 そ れ らが 展 開 し存 在 す る総 体 的 社 会 、 そ れ ら を取 り巻 く周 辺 社 会 との文 化 的 宗 教 的 な共 通 性 お よび 異 質 性 、 社 会 組 織 の 原 理 の 共 通 性 お よび 異 質 性 な どの 両 者 の 関 係 性 と距 離 を的 確 に把 握 す る こ とが 必 須 の課 題 とな っ た 。 そ れ は 周 辺 社 会 か らの 反 応 や 評 価 、 対 立 や 緊 張 をデ ー タ と して 把 握 し、
広 い総 体 的 な社 会 的 文 化 的文 脈 の 中 で ≡当該 運 動 を位 置づ け る こ と、 そ して 周 辺 社 会 か らの 応 答 の もつ 政 治 性 を考 慮 に 入 れ なが ら、 両 者 の相 互 作 用 の過 程 を把 握 す る こ とで あ る。 さ らに付 け加 え れ ば 、 そ の 総体 を比 較 文 化 的 視 点 か ら考 察 して い く必 要 が あ ろ う。 比 較 文 化 的視 点 とは 、 同一 の 運 動 で あ っ て も 展 開 す る社 会 が 異 な れ ば、 背 負 う意 味 や 機 能 、 帰 結 が 異 な って くる点 を明 ら
カル ト/セ ク ト論 争 と宗教 的 ナ シ ョナ リズム27
か に す る こ とに ほ か な らな い 。 こ う した 作 業 に よ っ て得 られ る利 点 は 、 単 な る学 問 的理 解 以 上 の もの が あ る。 そ の 一 つ は 、 そ の運 動 の 周 辺 社 会 との摩 擦 が どの 程 度 か 、 今 後 増 大 す るか 否 か を推 し量 り、 将 来 の トラブ ル に備 え た り、
注 意 を喚 起 す る こ と も可 能 とな るか らで あ る。
こ う した マ ク ロ な視 角 か らの 比 較 分 析 は、 あ る意 味 で ウ ェー バ.̲̲̲.以来 の 古 典 的 分 析 で あ るが 、 更 に現 代 世 界 の 特 徴 を加 味 し た検 討 を行 うに は 、 グ ロー バ ル化 との 関 連 を視 野 に 入 れ な け れ ば な らな い。 今 日ほ ど、 各 社 会 間 の 人 間 、 文 化 、 宗 教 、 情 報 、 経 済 そ の他 の分 野 で の 相 互 交 流 と相 互 依 存 が 迅 速 か っ 濃 密 に行 わ れ て い る時 代 は な く、 単 独 で孤 立 した社 会 は もはや 存 在 しな い か ら
で あ る。 筆 者 が 、 こ こ数 年 間心 を抱 い て い る各 国 に お け る反 カ ル ト運 動 の 展 開 も、 ま さ に グ ・ロー バ ル化 の 波 に乗 って世 界 的 な 展 開 を見 せ て い る。 そ して この 過 程 そ の もの が 、 新 宗 教 運 動 をめ ぐる新 た な 問 題 を発 生 させ て い る。 た とえ ば 、 ア メ リカ合 衆 国 で カ ル トと見 な さ れ た 運 動 が 、 そ の レ ッテ ル が 逆 輸 入 さ れ て 、 カ ル ト とは 見 な され て い な か っ た社 会 で も カル ト批 判 の対 象 とな
っ て し ま う危 険性 が 生 じて い るか ら で あ る。
グmバ ル 化 との 関 連 で 、 筆 者 が特 に 注 目 して い る視 点 は 、 ロバ ー トソ ン (RolandRobertson)が 提 唱 した グ ーロー バ ル 化 論 と グ ロ ー カ ル 化(glocal‑
ization)論 で あ る(4)。 グmバ ル化 とは世 界 の 単 一 性 の 増 大 ま た は世 界 の 縮 小 、 あ るい は世 界 は 一 つ の 場 だ とい う認 識 の 増 大 と と ら え られ るが 、 資本 主 義 の拡 散 に よ っ て単 一 な 近 代 世 界 シ ス テ ム が グ ロー バ ル に 形 成 さ れ た とす る ウ ォ ー ラー ス テ イ ンの 世 界 シ ス テ ム 論 や 、 グ 「ロー バ ル化 を近 代 性 の 帰 結 と して と らえ る ギ デ ン ズの 再 帰 的近 代 化 論 が 、 宗 教 の役 割 を無 視 ま た は 二 義 的 に しか 扱 って い な い の に対 し、 ーロバ ー トソ ン は 国 民 国 家 的 諸 社 会(national societies)・ 諸 社 会 の 世 界 シ ス テ ム(worldsystemofsocieties)・ 様 々 な 自
己(selves)・ 人 類(humankind)と い う4要 素 間 の 相 互 作 用 の 場 と し て の グ ロー バ ル領 域(globalfield)を 設 定 し、 近 代 以 前 か ら進 展 した 構 造 的 に も形 式 的 に もは るか に複 雑 な複 合 的 過 程 と して グmバ ル 化 を と らえ る。 そ して 、 グ ロー バ ル化 は上 記 諸 要 素 の そ れ ぞれ の ア イデ ン テ ィ テ ィー の変 容 と 再 形 成 に深 く関 わ る過 程 で あ る と グ ロー バ ル化 の 認 識 的 主 観 的 側 面 の 重 要 性
を強 調 し、 そ こに 宗 教 が 認 知 的 準 拠 枠 の 重 要 な資 源 と して参 入 す る と と ら え る。
r
ロバ ー トソ ン の グ ロー一バ ル化 論 は 、 さ らに世 界 の 同質 化 や 諸 国 民 や 諸 民 族 の 個 別 性 の 抹 消 とい う単 純 な 立 論 を否 定 し、 普 遍 性 の個 別 主 義 化 と個 別 性 の 普 遍 主 義 化 を グmバ ル に 推 進 す る過 程 とみ なす 。 従 っ て グ ロー バ ル化 とは 他 方 で 多様 性 の 進 展 と国 民 的 、 また は 民族 的 、 地 域 的 な 固有 性 の再 構 成 、 再 主 張 を と もな っ て進 展 す るが ゆ え に 、 グ ロー バ ル な ロー カ ル化 、 グ ロー カ ル 化 とい え る と主 張 す る(5)。 か れ は グ 「ロー バ ル 化 が 進 展 し て い る現 代 に 、 宗 教 と国 家 との 緊 張 が 高 ま っ て い る事 実 、 宗 教 的 フ ァ ン ダ メ ン タ リズ ム が 勃 興 して い る事 実 か ら考 察 を進 め 、 そ れ らは 反 グ ロー バ ル 化 や 反 近 代 の 産 物 な の で は な く、 む しろ グ ロー バ ル化 に と もな う新 た な ア イ デ ン テ ィ テ ィー 形 成 の
「原 理 」(fundamentals)を 探 求 す る動 向 で あ る こ と を解 明 した 。 こ こ に グ ロー バ ル 化 とナ シ ョナ リズ ム の勃 興 、 地 域 主 義 や フ ァ ン ダ メ ン タ リズ ム の 勃 興 との相 関 関 係 に 、 新 た な光 が 当 て られ た 。
本 稿 は、 こ の よ うな指 摘 に着 目 しな が ら、 筆 者 が数 年 来 論 じて きた宗 教 と ナ シ ョナ リズ ム の 関 係 、 反 カ ル ト/セ ク ト運 動 とナ シ ョナ リズ ム の 関 係 につ い て再 考 察 した もの で あ る。
2多 様 なナ シ ョナ リズ ム の 表 出
冷 戦 構 造 崩 壊 後 の 世 界 秩 序 は 、 ア メ リカ合 衆 国 の一 極 支 配 の も とで、 世 界 の 平 準 化=ア メ リカ の 規 準 の グ ロー バ ル化 が 表 面 上 は 急 速 に進 展 して い くか に 思 わ れ た 。 しか し、 そ の 過 程 で まず 展 開 し た もの は ヨー ロ ッパ 連 合(EU) や 北 米 自 由 貿 易 圏(NAFTA)、 東 南 ア ジ ア 諸 国 連 合(ASEAN)の よ うな 政 治 経 済 的 な地 域 統 合 の 強化 で あ っ た。 こ の地 域 統 合 自体 も、 グ ロー カ ル 化 の 一 局 面 で あ る。 そ の 目標 は、 自由 貿 易 の拡 大 と経 済 統 合 を とお して近 代 的 国 民 国 家 の枠 組 み を弱 め 、 将 来 的 に は 国家 の 解 体 を指 向 して い る。 こ の過 程 は まだ始 ま っ た ば か りで あ り、 将 来 に 諸 国 民 や 諸 民族 の個 別 性 の解 消 が 実 現 す るか ど うか は不 確 定 で あ るが 、 少 な く と も現 時 点 で進 行 して い る現 象 は、
冷 戦 構造 化 で 不 完 全 な形 式 で しか 国 民 国家 を形 成 で きな か っ た 国 々や 諸 民 族 が 、 一 方 で 「一 人 前 の 近 代 国 家 」 の建 設 をめ ざす 動 きで あ り、 他 方 で は、 再 び か つ て の 民 族 的紐 帯 を 強 調 して再 団結 し よ う とす る運 動 や 、 あ る国 民 と し て の 文 化 的 再 統 一 ま た は文 化 的 純 化 を求 め る運 動 の展 開 で あ る。 これ は ま さ に 、 あ る種 の ナ シ ョナ リズ ム の 噴 出 と言 い う る現 象 で あ る。 ロバ ー トソ ンの
カル ト/セ ク ト論 争 と宗教 的 ナ シ ョナ リズム29
指 摘 す る よ うに 、 グ ロー バ ル化 の進 展 に と もな っ て展 開 して い る現 象 で あ る。
しか し、19世 紀 か ら20世 紀 前 半 に お け るナ シ ョナ リズ ム(6)が 、 「信 教 の 自 由」 と 「政 教 分 離 」 「国 家 の 宗 教 的 寛 容 」 を前 提 と した近 代 的 な 「世 俗 国 家 」 を賛 嘆 し、 国 民 と して の統 合 をめ ざ した 「政 治 的 ナ シ ョナ リズ ム 」 だ とす る と、 近 年 の そ れ は 「文 化 的 ナ シ ョナ リズ ム 」 の 勃 興 と して 区別 すべ き と考 え る。 「文 化 ナ シ ョナ リズ ム」 とは 、 吉 野 に よ れ ば 「ネ ー シ ョン の 文 化 的 ア イ デ ン テ ィテ ィー お よび 共 同体 的 連 帯 を創 造 、 促 進 す る こ とに よ っ て ネ ー シ ョ ンの 創 造 、 再 生 をめ ざす 現 象 」(7)であ る。 さ しあ た っ て は従 来 の 国 民 国 家 に よ る枠 組 み を前 提 に した概 念 で あ るが 、 理 論 的 に は、 そ の枠 組 み をは ず れ て も、 あ る種 の 政 治 的 な共 同体 的 統 合 と文 化 的統 一 を とお して 一 つ の ネ ー シ ョ ン と して の ア イ デ ン テ ィテ ィー を再 確 立 し よ う とす る動 き を、 文 化 ナ シ ョナ リズ ム と考 え るこ とが で き る。
さ ら に、 こ れ らの運 動 の 多 くは、 現 実 に は 、 そ の 文 化 的 同0性 の 象徴 と し て伝 統 的 宗 教 や 伝 統 的教 会 との再 結 合 をめ ざす 運 動 と して展 開 して い る。 ユ ル ゲ ン スマ イ ヤ ー そ の 他 が 指 摘 す る よ うに(8)、 これ は 「宗 教 的 ナ シ ョナ リ
ズム 」 と もい え る現 象 で あ る。 こ う した 宗教 的 ナ シ ョナ リズ ム は イ ン ドや イ ス ラ ム 諸 国 、 旧 東 欧 諸 国や ロ シ ア に典 型 的 に 見 られ る。
他 方 、 い わ ゆ る西 側 先 進 諸 国 に お い て は、 一 見 す る と上 記 の 「宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム」 は 見 られ な い か の よ うで あ るが 、 筆 者 は 、 い わ ゆ る反 セ ク ト/
カル ト運 動 や そ の 政 治 的 キ ャ ンペ ー ン の 中 に 、 間 接 的 な形 で は あ るが 、 「疑 似 宗 教 的 な ナ シ ョナ リズ ム 」、 ま た は少 な く と も、 「文 化 ナ シ ョナ リズ ム 」 の 噴 出 を見 る こ とが で き る と考 え て い る。
そ の 第 一 の 理 由 は 、 文 化 的 で あ れ 、 政 治 的 で あ れ 、 ナ シ ョナ リズ ム は 自分 の 国民 国 家 へ の 賛 嘆 と国 民 意 識 の 高 揚 を と も な うば か りで な く、 そ れ を脅 か す 敵 対 勢 力 を外 部 に 設 定 す る と と もに、 内部 に も敵 を想 定 して排 斥 し、 社 会 内 部 を純 化 し よ う とす る傾 向 に 由来 す る。 現 代 ナ シ ョナ リズ ム に と っ て の 内 部 の敵 対 勢 力 は 、 正 統 と され る文 化 や 社 会 を 内側 か ら腐 食 させ 分 裂 させ る
「カ ル ト」 「セ ク ト」 で あ り、 新 宗 教 運 動 で あ っ た 。 そ の 意 味 で 、 反 カ ル ト運 動 は周 辺 社 会 か らの統 制 運 動 、 逸 脱 を抑 圧 す る運 動 で あ る と と もに 、社 会 内 部 の 異 質 分 子 を排 斥 して純 化 し よ う とす る0種 の ナ シ ョナ リズ ム の 噴 出 と見
なす こ とが で き るか らで あ る。
第 二 に は、 カ ル ト化 が 周 辺 社 会 との相 互 作 用 の 産 物 で あ る こ とに よ る。 残 念 な こ とに、 当初 か ら詐 欺 目的 で 宗 教 活 動 を行 っ た と思 わ れ る確 信 犯 的 な 団 体 が 最 近 も発 覚 して 訴 え られ て い るが 、 そ う し た ご く少 数 の悪 質 な例 をの ぞ け ば 、 大 半 の 宗 教 運 動 は、 世 間 か ら理 解 され るか 否 か は別 と して 、 そ れ な り の宗 教 的理 念 と 目的 を も って 活 動 を開 始 して い る。 そ う した 当初 の 運 動 が 、 周 辺 社 会 の 受 け 入 れ え な い 「逸 脱 行 為 」 を常 態 と して行 い だす こ とを 「カ ル ト化 」 と呼 ぶ とす れ ば 、 そ の 「カ ル ト化 」 の過 程 を歩 み だ す 主 要 な要 因 に は 指 導 者 の偏 狭 さや 判 断 の 誤 りな ど種 々考 え られ るが 、 い ず れ に して もカ ル ト 化 過 程 が 周 辺 社 会 との 相 互 作 用 の 中 で展 開 して い く と考 え るの が 、 宗 教 社 会
学 的 知 見 で あ る。 従 っ て 既 に 述 べ た よ うに、 周 辺 社 会 の 全 体 構 造 や 文 化 的伝 統 、 そ れ らの 変 化 や 動 向 が 検 討 対 象 と して 重 要 な意 味 を持 っ て くる。
注 目す べ き点 は 、 多様 な新 宗 教 運 動 を画 一 的 に 「カル ト」 で あ る断 定 し、
ス テ レ オ タ イ プ 化 さ れ た イ メー ジ を生 み だ した の は 、 実 は 「周 辺 社 会 の 言 説 」 で あ る とい う事 実 で あ る。 そ の 社 会 に お い て 正 統 ま た は主 流 と見 な さ れ る伝 統 文 化 と価 値 体 系 が0方 に あ り、 そ れ が 否 定 す る、 ま た は 拒 絶 す る価 値 や 文 化 の象 徴 的 表 現 が 「カ ル ト」 イ メー ジ とな る。 い わ ば正 統 文 化 の 対 抗 価 値 ・対 抗 文 化 が 投 影 され た もの とい え る。 しか も、 そ の 正 統 と見 な され る文 化 や 価 値 は 、 全 国 民 に 必 ず し もす べ て が 共 有 され て い る もの で は な く、 近 代 以 前 で あ れ ば 君 主 や 一 部 の支 配 層 の もの で あ り、 近 代 の 国 民 国家 に お い て は 国 家 に よ っ て定 め られ た支 配 的 イ デ オ ロ ギー また は公 式 の 国 家 理 念 と して の それ で あ る。 ゆ え に 、 反 カ ル ト運 動 が カ ル トを社 会 的 文 化 的 逸脱 と見 な して 弾 劾 す る行 為 は 、 潜 在 的 また 間 接 的 に ナ シ ョナ リズ ム の 表 出 と見 な し う る の で あ る。
3事 例 研 究(1)ア メ リ カ 合 衆 国 に お け る文 化 闘 争(CultureWar)
以 上 の よ うな 見解 を筆 者 は 、 ア メ リカ の 新 宗 教 運 動 、 特 に 国際 ク リシ ュ ナ 意 識 協 会(ISKCON)と サ イ エ ン ト・ロ ジ ー 教 会 に つ い て の 歴 史 的 、 社 会 学 的研 究 、 お よ び そ れ ら を カル トと断 罪 す る反 カ ル ト運 動 、 特 に カ ル ト覚 醒 ネ ッ トワ ー ク(CAN)の 活 動 の研 究 か ら得 た(9)。
ア メ リカ合 衆 国 は 「信 教 の 自由 」 と 「政 教 分 離 制 度 」 の 確 立 し た社 会 で あ る とい わ れ 、 啓 蒙 主 義 的 な世 俗 国 家 の理 念 を背 景 と して 、 民 族 ・人 種 ・宗 教
カル ト/セ ク ト論 争 と宗教 的ナ シ ョナ リズム31
を問 わ ず 、 法 の下 で の す べ て の個 人 の 自 由 と平 等 が 保 障 され 、 それ ら 自由 で 平 等 な 諸 個 人 の 自発 的 な 意 思 に よ っ て相 互 に結 合 して で き た契 約 共 同体 が ア メ リカ社 会 で あ る とい うの が 、 公 式 な 国 家 イデ オ ーロギー で あ る。 しか し他 方 で 、 ア メ リカ は神 の 意 志 に 基 づ い た理 想 的 な社 会 を荒 野 に築 くた め に 、 誤 っ た信 仰 に堕 して し ま っ た イ ギ リス を脱 出 した ピ ュ ー リタ ン に よ って つ くられ た 「神 の 国 」 で あ る とい う 「建 国神 話 」 が 存 在 す る。 それ は 「キ リス ト教 国 ア メ リカ」 「神 の 下 の 国」 「丘 の上 の 町 」 とい う ピ ュー リタ ンの 伝 統 的 な共 同 体 観 念 、 宗 教 や 教 会 の 公 共 性 を強 調 す る理 念 と して 、 今 日ま で根 強 く存 続 し て い る支 配 的 イ デ オ ロ ギー で あ る(10)。そ の イ デ オ ロ ギー が 「ア メ リ カ ・ナ シ ョナ リズ ム 」 の 根 底 に あ る文 化 的歴 史 的 原 理 と して、 しば しば登 場 して く る。
ア メ リカ に お け るい わ ゆ る 「カ ル ト」 教 団 の 多 くは、1960年 代 か ら70年 代 に お い て 公 民権 運 動 や ベ トナ ム 反 戦 運 動 な どの 政 治 的 社 会 的 改 革 の 波 と と も に 、 伝 統 的 な ア メ リカ的 価 値 へ の 批 判 を掲 げ た様 々 な対 抗 文 化 運 動 と して 展 開 した もの で あ る。R・ ベ ラー が 「新 し い宗 教 意 識 」 と と らえ た様 々 な新 宗 教 運 動 で あ る。 ア メ リカ に お け る 「カ ル ト」 は 、 伝 統 的 な イデ オ ロ ギー や 正 統 文 化 に 真 っ 向 か ら対 峙 す る対 抗 文 化 だ っ た の で あ り、 そ の 異 質 性 ゆ え に 、 伝 統 に 幻 滅 して 反 抗 す る若 者 に受 容 さ れ た の で あ る。
こ の 時 代 以 降 、 ア メ リカ は 「人種 の 」 神 話 に 代 表 さ れ る、 「自由 ・平 等 ・個 人 主 義 」 の 共 通 価 値 に基 づ く 「多様 な移 民 が 融 合 し た新 しい ア メ リカ 人 」 とい うナ シ ョナ ル ・ア イ デ ン テ ィ テ ィー 、 ま さ に 「創 造 され た伝 統 」 が 崩 れ は じめ 、 少 数 派 の 平 等 な権 利 を実 現 す る 多元 文 化 社 会 をめ ざす 方 向 と、
レー ガ ン大 統 領 の 登 場 が 象 徴 す る 「古 き良 きア メ リカ」 を再 興 し よ う とす る 方 向 の 間 を揺 れ動 き なが ら、 今 日に至 って い る こ とは周 知 の 通 りで あ る。 ア
メ リカ は 「文 化 闘 争 」 の た だ 中 に あ るの で あ る。
こ う した保 守 再 興 の 潮 流 の 中 で、 新 宗 教 運 動 を伝 統 的 な信 仰 、 家 族 、 倫 理 を破 壊 す る もの と して 批 判 し、 そ れ らに ま さ に再 「対 抗 す る」 た め 発 展 した 運 動 の0つ が 「反 カ ル ト運 動 」 で あ る。 従 っ て 、 「反 カ ル ト」 運 動 は 一 種 の 伝 統 回 帰 運 動 と して の 側 面 を有 して お り、 保 守 的 文 化 を代 表 す る ア メ リカの 文 化 ナ シ ョナ リズ ム の 表 出 な の で あ る。 文 化 的 で あ れ 、 政 治 的 で あ れ ナ シ ョ
ナ リズ ム は 、 そ れ を脅 か す 敵 対 勢 力 を外 部 に 想 定 す る と と もに 、 内部 に も敵
を設 定 す る。 この 運 動 に と って 内部 の 敵 対 勢 力 は伝 統 文 化 を 内側 か ら腐 食 さ せ る 「カ ル ト」 で あ り、 新 宗 教 運 動 で あ っ た 。
「カ ル ト」 とラベ リ ン グ され た運 動 の 多 くが、 程 度 や 様 相 の 差 は あ れ 、 疎 外 され た個 人 を抱 擁 す る共 同体 生 活 、 超 越 的 な絶 対 神 とは 異 な る 「内 在 す る 神 」 や 「霊 性 の 世 界 」、 富 の 追 求 で は な く愛 を、 そ して 菜 食 主 義 な どの 実 践 に 見 られ る 自然 との共 生 な ど、新 しい家 族 観 や 人生 観 、 宗 教 観、 世 界観 を主 張 した 。 そ れ は ピュ ー リタ ン的信 仰 、 自律 した個 人 主 義 、 自由 競 争 的倫 理 を 理 想 とす る世 界 、 そ して何 よ りも 「理 想 とす る家 族 像 」 な どの ア メ リカ の伝 統 的 価 値 の世 界 と対 照 的 な世 界 で あ る。 反 カル ト運 動 の 底 流 に は 、 この よ う な 非 ア メ リカ的 な価 値 の 流行 に 対 す る敵 対 心 が 潜 ん で い る。 リチ ャー ドソ ン は 「カル ト」 に よ る被 害 者 や 運 動 家 な どの 証 言 を分 析 し、 そ こに は逆 説 的 に 理 想 化 され た 「伝 統 的 に正 常 な ア メ リカの 家 族 像 」 や 「ア メ リカ の 十 代 の若 者 は どの よ うな もの か 、 あ るい は ど うあ るべ きか」 とい う理 想 型 が 明 白に描 か れ 、 カ ル ト批 判 の 前 提 と な っ て い る こ と を指 摘 した(11)。両 親 と一 人 か 二 人 の 子 ど もに よ る家 族 。 自由 意 志 を持 ち、 個 人 主 義 的 な価 値 観 を共 有 し、 親 の 意 見 を尊 重 す る従 順 な 子供 た ち。 ア メ リカ 国 家 に 誇 りを持 ち、 そ の社 会 的 価 値 に も順 応 し、 親 の 理 解 し う る人 生 コー ス を 歩 む は ず の彼 ら。 この よ うな 理 想 型 以 外 の 青 年 像 は あ っ て は な ら な い の で あ り、 子 供 た ちが 自 らの 意 志 で 選 択 す る は ず が な か っ た。 「カ ル ト」 へ の 入 信 は 、 従 っ て 、 巧 妙 な 罠 とマ イ ン ド ・コ ン トmル に よ っ て騙 され た結 果 で あ るに 違 い な い とい う予 断 と言 説 が 生 まれ て い っ た の で あ る。 そ の 意 味 で、 反 カ ル ト運 動 は 表 面 的 に は周 辺 社 会 か らの 統 制 運 動 、 逸 脱 を抑 制 す る運 動 で あ るが 、 潜 在 的 に は ア メ リカ ・ ナ シ ョナ リズ ム の 表 現 と い う性 格 を有 して い た の で あ る。
4事 例 研 究(2)フ ラ ン ス とEU統 合
同 様 の プ ロ セ ス や 特 徴 を 、EU諸 国 で 展 開 す る 反 セ ク ト ・キ ャ ン ペ ー ン 、 特 に 通 称 「反 セ ク ト法 」 を 成 立 さ せ た フ ラ ン ス に も見 る こ とが で き る 。2001 年6月 、 フ ラ ン ス の 国 民 議 会 は 、 上 下 両 院 で の 二 年 に わ た る 審 議 の 後 、 「人 権 及 び 基 本 的 自 由 を侵 害 す る セ ク ト的 運 動 の 防 止 及 び 取 り締 ま り を強 化 す る 2001年6月12日 の 法 律 」(2001年 法 律504号 、 通 称 「反 セ ク ト法 」)(12)を 成 立
させ た 。
カル ト/セ ク ト論争 と宗教 的 ナ シ ョナ リズム33 この 法 律 の 目的 は 、 表 題 及 び以 下 の 第1条 に 明 記 され て い る。
第1条:法 的 形 態 ま た は 目的 の 如 何 を問 わ ず 、 活 動 に参 加 す る者 の心 理 的 ま た は 身体 的依 存 状 態 を作 り出 し、 維 持 し、 利 用 しよ う とす る 目的 また は効 果 を有 す る活 動 を続 け るす べ て の 法 人 は 、 以 下 に 述 べ る犯 罪 の いず れ か につ い て の刑 事 上 の確 定 した有 罪 が 、 法 人 そ の もの 、 あ る い は法 人 の 法 律 上 ま た は事 実 上 の 幹 部 に 対 し宣 告 され た と きは、 本 条 の 定 め る手 続 きに従 い 、解 散 が 宣 告 され う る。
つ ま り、 第 一・に 、 こ の 法 律 で さ す 「セ ク ト」 ま た は 「カ ル ト」 とは 、 「法 的 形 態 また は 目的 の如 何 を問 わ ず 、 活 動 に参 加 す る者 の 心 理 的 ま た は 身 体 的 依 存 状 態 を作 り出 し、 維 持 し、 利 用 し よ う とす る 目的 ま た は効 果 を有 す る活 動 を続 け る団体 」 で あ る こ と。
第 二 に、 こ の 法 人 、 あ る い は 幹 部 が 刑 法 に 定 め る犯 罪 や 不 法 医 療 行 為 、 虚 偽 広 告 罪 を犯 して 有 罪 の判 決 が な され た場 合 、 直 ち に 当 該 団体 を解 散 で き る
こ と、 が 定 め られ た。
他 の 条 項 で は 、 上 記 の有 罪 判 決 を受 け た と き、 そ の 法 人 を宣 伝 す る行 為 を 青 年 に 向 け て行 っ た場 合 は 、5万 フ ラ ンの 罰 金 を科 せ られ る こ と。 ま た、 議 会 及 び 政 府 は 「精 神 操 作 」 「洗 脳 」 とい う用 語 の使 用 に 対 す る 国 際 的 世 論 か らの批 判 に鑑 み 、 そ う し た用 語 と関連 す る罪 の 項 目 を削 除 した と主 張 して い るが 、 形 を変 え た 罰 則 規 定 が 以 下 の よ うに未 だ に残 って い る。
第20条:無 知 ・脆 弱 状 態 不 当濫 用 罪
未 成 年 者 、 も し くは年 齢 、 病 気 、 身体 障 害 、 身体 的 欠 陥 、 精 神 的 欠 陥 、 ま た は妊 娠 状 態 の ため 著 し く脆 弱 な状 態 で あ る こ とが 明 白 な者 ま た は犯 人 に そ れ が 認 識 され る者 、 も し くは 重 大 ま た は 反復 した圧 力 行 為 また は 判 断 を歪 め う る技 術 の 結 果 、 心 理 的 また は 身体 的依 存状 態 に あ る者 に 対 して、 重 大 な損 害 を与 え う る作 為 ま た は不 作 為 を義 務 づ け る ため に、 そ の もの の 無 知 また は脆 弱 状 態 を不 当 に濫 用 す る こ とは、3年 の 拘 禁 刑 お よ び250 万 フ ラ ンの 罰 金 に処 せ られ る。
こ の 法 律 それ 自体 の 問 題 点 の指 摘 を して い る時 間 は な いが 、 この 法 が 「セ ク ト」 「カ ル ト」 と認 定 さ れ る宗 教 団 体 を集 中 的 に 取 り締 ま り、 解 散 に 追 い
込 む もの で あ る こ とは い うま で もな い 。 法 律 の 表 題 は、 「セ ク ト 「カ ル ト」
へ の 差 別 的 態 度 が 現 れ て い て 、 問題 で あ る。 「セ ク ト」 「カ ル ト」 と認 定 され た 集 団 は 、 す べ て 基 本 的 人権 を躁 踊 す る集 団 で あ る と断 定 さ れ て し ま う結 果
を生 む表 現 で あ る。
どの 団 体 が 「セ ク ト」 「カ ル ト」 で あ るか 、 誰 が どの 様 に 決 め るか が 問 題 で あ る。 厳 密 な 司 法 手 続 きの み に お い て 決 定 され るば か りで な く、 政 治 的 に 決 定 され る危 険 性 もあ る。 ま た、 法 的規 制 の 直 接 の対 象 とな ら な く と も、 マ ス コ ミや 世 論 に お い て セ ク トと断 罪 され る こ とに よ っ て、 社 会 か ら排 斥 され 、 抑 圧 され る結 果 を誘 導 して し ま う可 能 性 もあ る。
こ の法 案 の 形 成 過 程 で、 既 に そ う した 危 険 な影 響 が 生 じて い た こ とが さ ま ざ ま に指 摘 され て い る。 この 法 案 制 定 へ の動 きが で て きた 背 景 に は、1994年 の ス イ ス 及 び カナ ダ で 太 陽 寺 院 の信 者53名 が 集 団 自殺 を行 い、 翌95年 に は 日 本 の オ ウ ム真 理 教 に よ るサ リン事 件 が勃 発 した。 こ う した事 件 に驚 愕 した フ ラ ン ス で は 同95年6月29日 、 フ ラ ン ス議 会 が 「セ ク ト調 査 委 員 会 」 の 設 置 を 承 認 し、 公 式 に調 査 ・対 応 の検 討 を開始 した 。 この 委 員 会 は ア ラ ン ・ジェ ス
ト(AlainGest)議 員 を 委 員 長 と し、 ジ ャ ッ ク ・ ギ ヤ ル ド(Jaques Guyard)、 ジ ャ ンーピエ ー ル ・ブ ラ ト(ean‑TerreBrad)議 員 が 主 た る構
成 員 とな り、20人 の 証 人 喚、問 、21時 間 に 及 ぶ 密 室 審査 が 行 わ れ た 。 宗 教 研 究 の専 門研 究 者 は呼 ば れ なか っ た。
翌96年 年1月10日 に は、 『フ ラ ンス の セ ク ト』(LessectsenFrance)と
題 す る議 会 報 告 書 が 公 表 され た が 、 そ こ に は172の セ ク ト名 が 列 挙 され 、 犯 罪者 組 織 と同様 に 有 害 で危 険 な集 団 と して 断 罪 され て い た 。 そ の 一 部 をあ げ
る と、
エ ホ バ の 証 人 、 サ イ エ ン トロ ジー 教 会 、 国 際 ク リ シ ュ ナ 意 識 協 会 (ISKCON)、 超 越 瞑 想(TM)、 統 一 教 会 、 霊 友 会 、 崇 敬 真 光 、 幸 福 の科 学 、 神 慈 秀 明 会 、 創 価 学 会 イ ン ター ナ シ ョナ ル
な どで あ っ た 。
こ の報 告 書 は、 公 表 され る前 に マ ス コ ミに リー ク され 、 一 大 キ ャ ンペ ー ン が 社 会 的 に展 開 され 、 その 過 程 で セ ク トへ の 不 寛 容 で 差 別 的 な世 論 が 形 成 さ れ た。 列 挙 され た宗 教 は 、 い ず れ もが 何 らか の 被 害 を受 け る こ とに な っ た。
一 例 を挙 げ れ ば 、 従 来 、 慣 行 的 に使 用 が 認 め られ て い た公 会 堂 な どの施 設 の
カ ル ト/セ ク ト論 争 と宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム35
利 用 を突 然 拒 否 さ れ た り、 料 金 を 吊 り上 げ ら れ た 。 子 供 が 学 校 で 、 大 人 も近 隣 か ら セ ク ト ・メ ン バ ー と し て 忌 避 さ れ た 。 メ ン バ ー の 学 校 教 員 が 、 校 長 な
どか ら詰 問 や 嫌 が らせ を さ れ た 、 な どの 事 例 が 指 摘 さ れ て い る 。
他 方 、 一 部 の 宗 教 団 体 に 対 す る 財 政 当 局 に よ る 厳 し い 財 務 調 査 や 税 法 改 正 が 行 わ れ 、 税 制 面 で の 締 め 付 け が 始 ま っ た 。1996年1月 か ら、 フ ラ ン ス 税 務 当 局 は 「エ ホ バ の 証 人 」 に 対 し一 年 半 に 及 ぶ 税 務 調 査 を実 施 し た が1そ の 背 景 に は 、 「エ ホ バ の 証 人 」 は 免 税 を受 け う る礼 拝 団 体(associationcultulle)
で は な く、 上 記 報 告 で 指 摘 さ れ た 「セ ク ト」 で あ る と の 認 定 が あ っ た 。 こ の 団 体 の 多 くの 地 方 教 会 の 内 、 二 つ の み が 免 税 団 体 と認 め ら れ た に す ぎ な い 。 1998年5月 に は 税 法 が 改 正 さ れ 、 「 個 人 寄 付 」(handdonation,dons
manuels)へ の 課 税 規 定 が 強 化 さ れ て 、 「エ ホ バ の 証 人 」(Jehova'sWitnes‑
ses)に 適 用 さ れ た 。 宗 教 団 体 へ の 初 め て の 適 用 で あ っ た 。 そ の 結 果 、 彼 ら は 過 去5年 間(1992‑96年)の20万 人 以 上 の 会 貝 に よ る寄 付 金 に 、60%の 課 税 が な さ れ 、 そ の 税 額 は5000万 ドル に の ぼ っ た 。 こ の 費 用 を ま か な う た め の 寄 付 に も 、 さ ら に60%の 課 税 が な さ れ る こ と に な り、 明 らか に 税 務 面 で の 締 め 付 け で あ っ た 。 「エ ホ バ の 証 人 」 は そ の 不 当 性 を裁 判 所 に 訴 え た が 、 裁 判 所 は 逆 に 彼 ら の 教 会 基 本 財 産 の 差 し 押 さ えや 抵 当 設 定 を命 令 し た の で あ る。
こ の 課 税 措 置 は 、 小 さ な プ ロ テ ス タ ン ト系 教 会(TheEvangelicalProtes‑
tantChurchofBesancon)に も適 用 さ れ 、1994‑97年 の 寄 付 金 収 入 に 対 し、
50万 ドル の 課 税 が な さ れ た(13)。
こ の よ う に 「反 セ ク ト法 」 の 制 定 に い た る過 程 で 、 議 会 報 告 書 の 発 表 や 国 民 議 会 で の 鳴 り物 入 りの 審 議 、 マ ス コ ミに よ る キ ャ ン ペ ー ン な ど を とお し て 、 セ ク トへ の 警 戒 感 、 嫌 悪 感 、 忌 避 感 情 が 深 く国 民 の あ い だ に 浸 透 し た 。 そ う
し た 反 セ ク ト感 情 の 定 着 を 背 景 に 、 そ の 「 被 害 」 か ら 国 民 を遠 ざ け る た め の
「反 セ ク ト法 」 が 制 定 さ れ た の で あ る 。 注 目す べ き諸 事 実 は 、 第 一 に 、 こ の 0連 の 政 治 的 キ ャ ン ペ ー ン で 「セ ク ト」 と断 定 さ れ た 団 体 は 、 い ず れ もが 正 統 派 キ リ ス ト教 会 と異 な る 新 宗 教 で あ る こ と。 第 二 に 、 こ の 法 案 制 定 や 反 セ ク ト ・キ ャ ン ペ ー ン を 積 極 的 に 推 進 し た の は 、 主 と し て 左 派 系 議 院 で あ り、
警 察 ・公 安 当 局 、 カ ト リ ッ ク教 会 で あ り、 さ ら に 反 聖 職 主 義 ・反 カ ト リ ッ ク で あ っ た フ リー メ ー ソ ン も共 同 戦 線 を 担 っ て い る と も い わ れ て い る 。
以 上 の こ とか ら、 次 の よ う に い え よ う。 第 一 に 、 フ ラ ン ス に お け る 反 セ ク
ト運 動 や 反 セ ク ト法 の 制 定 は、 フ ラ ン ス革 命 に よ っ て成 立 した反 聖 職 主 義 に 基 づ くラ イ シ テ 国 家 と して の フ ラ ン ス、 啓 蒙 主 義 的理 想 に 基 づ く近 代 国 民 国 家 で あ るフ ラ ンス を守 ろ う とい うナ シ ョナ リズ ム が 背 景 に あ る。
第 二 に、 世 俗 主 義 の 強 い フ ラ ン ス に お い て は 、 一 見 す る と世 俗 的 ナ シ ョナ リズ ム と見 え るが 、 そ こに は フ ラ ン スが 容 認 す る伝 統 宗 教 と異 な る宗 教 、 従 って 、 非 フ ラ ン ス 的 な 東 洋 系 の新 宗 教 や 少 数 派 宗教 を 「セ ク ト」 と断 罪 して 排 斥 しよ う と して い る、 少 な く と も、 そ の よ うな結 果 を生 み だ す 政 治 的行 動 が 行 わ れ て い る。 これ は 間接 的 な、 ま た は 潜 在 的 な宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム の 表 現 と言 え る。 換 言 す れ ば 、 非 フ ラ ン ス 的 な文 化 を極 力 排 除 しよ う とす る文 化 ナ シ ョナ リズ ム の 一 変 形 と言 え る。
第 三 に 、 この よ うな動 向 が 生 じて きた背 景 に は 、 移 民 に よ るム ス リム の 増 大 、 グ ロー バ ル 化 の 進 展 に よ っ て 異 文 化 の社 会 で 生 まれ た新 宗 教 が フ ラ ン ス に も多数 展 開 しだ した こ と な どに よ って 、 非 フ ラ ン ス 的 な 宗教 文 化 が 国 内 に 増 大 しつ つ あ る こ とへ の 危 機 感 が 強 ま っ て い る と考 え られ る。
第 四 に 、 こ の 現 象 はEU統 合 の 過 程 と深 く関 わ っ て い る と考 え ら れ る。
EU統 合 が進 展 す る過 程 は、 冷 戦 構 造 崩 壊 後 の グ ロ ー バ ル化 に 伴 う地 域 主 義 の 勃 興 の0局 面 で あ るが 、 そ れ は まず 加 盟 各 国 の 経 済 的 統 合 を進 め 、 次 に は 旧来 の 国 民 国 家 の境 界 を弱 め て 全 体 と して の政 治 的 統 合 が め ざ され て い る。
そ の過 程 が 進 展 す る につ れ て 、従 来 の 国 民 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィー の再 確 認 と 再強 化 へ の 要 求 、 国 民 国 家 の枠 が は ず れ た後 の 文 化 的 結 合 へ の模 索 が 始 ま っ て い る と考 え られ る。 も し将 来 、 政 治 的 境 界 がEU域 内 で完 全 に撤 廃 され た 暁 きに は 、 単 一 で 同 質 の ヨー ロ ッパ 人 が 誕 生 す る で あ ろ うか 。 現 時 点 で言 え る こ とは 、 そ の 可 能 性 よ りも、 旧 国 民 、 ま た は 近 代 国 民 国家 に吸 収 され る以 前 の 古 い 民 族 的 結 合 の 必 要 性 が再 び 叫 ば れ 、 様 々 な民 族 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ ー の模 索 と、 新 しい ナ シ ョナ リズ ム の 勃 興 を引 き起 こ して い く可 能 性 の 方 が
強 い よ うに 思 わ れ る。
5結 び
本 稿 に お け る考 察 は 、 「カ ル ト」 「セ ク ト」 と呼 ば れ た宗 教 運 動 に 対 す る周 辺 社 会 や 政 府 の 応 答 に 焦 点 をあ て 、 そ う した動 きの 背 景 に あ る現 代 の グ ロー バ ル 化 とナ シ ョナ リズム の勃 興 との 関 連 をマ ク ロ な視 角 か ら検 討 しよ う と し
カ ル ト/セ ク ト論 争 と宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム37 ナ シ ョナ リズ ム の 諸 相
世俗 的
政治的
近代 国民 国家の 啓蒙主義的
ナ シ ョナ リ ズ ム
日本人論
\ ア メ リ カ の 反 カ ル ノ
ラ ン ス の 反 セ ク ト法
\ ン ド の ヒ ン ド・ウ
ナ シ ョナ リ ズ ム
文化的
宗教的
た もの で あ る。 そ して 、 近 代 の初 期 に お い て は 「世 俗 的 」 で 「政 治 的 」 な性 格 を も っ た 「ナ シ ョナ リズ ム」 が 、 当時 の 予 想 に 反 して 、 現 代 に お い て 「宗 教 性 」 を再 び 強 く持 ち始 め 、 そ の傾 向 は 旧東 欧 圏 や ロ シ ア、 イ ン ドや ス リラ
ン カ な ど の い わ ゆ る発 展 途 上 国 の み で な く、 ア メ リカ合 衆 国や フ ラ ンス な ど の西 洋 先 進 国 に も間 接 的 ・潜 在 的 な形 態 で 展 開 して い る こ と を、 「反 カ ル ト/
セ ク ト ・キ ャ ンペ ー ン」 の分 析 を通 して 明 らか に しよ う と した。 それ は と り もな お さず 、 宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム の 台 頭 が 反 近 代 や 反 グ ロー バ ル化 の産 物 で は な く、 グ ロー バ ル 化 の 過 程 その もの に 関 連 して 生起 す る こ と を明 らか に す る こ とで も あ っ た。 ロバ ー トソ ン の グmカ ル 化 論 の確 認 で もあ る。
以 上 の検 討 か ら、 さ ら に現 代 に お け るナ シ ョナ リズ ム の 諸 相 を上 図 の よ う に 区分 す る こ とが で き よ う。 世 俗 的一 宗 教 的 の 軸 は 、 ナ シ ョナ リズ ム の 表 出 が 宗 教 的 色 彩 や 要 素 を と も な っ て い るか 、 否 か とい う区分 で あ る。 政 治 的一 文 化 的 の軸 は、 国 民 国 家 の 形 成 の よ うな政 治 的 統 治 権 力 の 形 成 と結 び つ い た ナ シ ョナ リズ ム の 表 出 で あ るか 、 必 ず し も国 家 的 結 合 を標 榜 しな い文 化 的 ナ
シ ョナ リズ ム で あ るか の 区 分 で あ る。 外 側 ほ ど、 そ れ ぞ れ の要 素 が 強 くな る。
こ の マ ト リッ クス の 中 に 、 本 稿 で 論 議 した種 々 の ナ シ ョナ リズ ム を位 置づ け る と、 そ の 多様 な諸 相 の位 置 と特 徴 が 見 え て くる。
こ こ に、 こ れ ま で の 検 討 で論 じた事 実 、 つ ま り宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム が 途 上 国 ・先 進 国 を問 わ ず 強 ま っ て い る事 実 を重 ね合 わせ る と、 こ こ四 半 世 紀 に 世 界 的 に 見 られ る傾 向 は、 図 で い え ば右 回 りの 方 向 に、 つ ま り文 化 的 宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム か ら政 治 的 宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム が 強 く噴 出 す る傾 向 が 読 み とれ る。 この傾 向 が 強 ま る こ とは、 各 国 間 の対 立 に 宗 教 的 な性 格 が 強 ま り、
急 進 化 す る危 険 性が あ る こ とに な る。
反 カ ル ト/セ グ ト ・キ ャ ンペ ー ン の分 析 を通 して、 そ の 方 向 に 世 界 が 動 い て い くこ とが 明 らか に な り、 個 人 的 に は 強 い懸 念 を抱 い て い た。 そ の 矢 先 の 2001年9月11日 、 イ ス ラ ム過 激 派 に よ る もの と考 え られ て い る未 曾 有 の テ ロ 事 件 が ア メ リカ合 衆 国 で 勃 発 し た。 こ の事 件 は ま こ とに悲 しむべ き、 か つ 驚 愕 的 な事 件 で あ り、 決 して許 す こ との で き な い 蛮 行 で あ る。 多 くの ア メ リカ 国 民 だ け で な く、 日本 人 を含 む 多 くの 無 関係 な 人 々 が 犠 牲 と な っ た 。
わ れ わ れ の 身 近 な とこ ろ に も犠 牲 者 を生 ん だ この 出 来 事 に、 筆 者 は グ ロー バ ル化 時 代 の危 険性 を強 く感 じ る と と もに 、 ア メ リカ合 衆 国 に お い て 「宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム」 が 政 治 的 に 強 烈 に 形 成 さ れ て い く過 程 を 目の 当 た りに し、
さ ら に憂 慮 の念 を深 め て い る。 宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム が 国 家 や 軍 事 力 な どの 強 制 権 力 、 い わ ゆ る広 い 意 味 で の暴 力 装 置 と結 び つ い た と き、 そ の攻 撃 力 は 強 大 とな るか らで あ る。 ア メ リカ政 府 は、 イ ス ラ ム教 との 戦 い で は な い と強 調 して い るが 、 ア メ リカ社 会 に住 む イ ス ラム教 徒 と見 な され た 人 々 が 敵 と し て 攻 撃 さ れ 始 め 、 ア メ リカ は キ リス ト教 国 で あ る とい う 自覚 が 一 気 に 高 ま っ た。 他 方 、 オ サ マ ・ビ ン ラ デ ィ ン ひ き い るア ル カー イ ダや ア フガ ニ ス タ ン の タ リバ ン政 権 は 「十 字 軍 に 対 す る聖 戦(ジ ハ ー ド)」 だ と強 調 し始 め 、 政 治 的 な宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム の拡 大 をね らっ て い る(2001年10月)。
こ の テ ロ攻 撃 は 自爆 テ ロ とい う ス タ イル か ら言 っ て 、 明 らか に 宗 教 的 「殉 教 」 行 為 で あ る と と もに 、他 者 の 死 や 犠 牲 を宗 教 理 念 で 正 当化 して し ま う最 も狭 隆 で エ ゴ イ ス テ ィ ッ ク な行 動 パ ター ン とな っ て い る。 この 目的 の ため に は手 段 を選 ば ず 、 他 者 の 死 も当 然 とす る主 張 と運 動 を、 原 理 主 義 一 般 と区別 して 「過 激 派 」 と と らえ る必 要 が あ る こ とは い う ま で もな い 。 そ の 上 で、 こ う した テ ロ行 為 を発 生 せ しめ た歴 史 的 政 治 的 さ らに 宗教 的 背 景 を改 め て 深 く 考 え る と、 過 激 派 に 限 らず 、 イ ス ラム世 界 の 多 くの 人 々 が 反 米 ・反 西 欧 とい
う政 治 的 宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム に 共 鳴 し、 ます ます 強 く主 張 しだ して い る事
カ ル ト/セ ク ト論 争 と宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム39
実 を直視 しな け れ ば な ら な い。 そ して、 そ の イ ス ラ ム ・ナ シ ョナ リズム を刺 激 した要 因 は、 中東 和 平 の 行 き詰 ま りや 先 の 湾 岸 戦 争 で の 聖 地 冒漬 とい う宗 教 的 批 判 が個 別 具 体 的 に は 主 張 さ れ て い るが 、 遠 因 と して は 、 中 東 を いつ ま
で も支 配 し続 け よ う とす る欧 米 の植 民 地 主 義 に あ り、 さ らに 冷 戦 崩 壊 後 の ア メ リカ合 衆 国 主 導 に よ る 「グ ロー バ ル 化 」 へ の 批 判 が あ る こ と を、 自省 の 念 を持 って 認 識 し な け れ ば な らな い。
こ の よ う な宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム 同 士 の 対 立 や 対 決 が 進 展 す れ ば 、 ハ ン チ ン トン が 主 張 し た 「文 明 の 衝 突 」(14)が現 実 の もの と な る 危 険 性 が あ る。 こ の 危 険 な罠 に 西 洋 世 界 もイ ス ラム世 界 も陥 る こ とな く、 両 者 の伝 統 の 一 角 に 流 れ る宗 教 的 寛 容 の精 神 と慈 愛 の精 神 を思 い起 こ して 共 生 の世 界 を構 築 す る た め に行 動 す る こ と を祈 っ て や ま な い。 同 時 に 、 わ れ わ れ の 日本 国 家 は 、 そ して わ れ わ れ 日本 人 は 、 どの よ うな立 場 で何 を主 張 し、 ど う行 動 す るか とい う 「当事 者 性 」 が 、 ま た もや 鋭 く問 わ れ て い る問 題 で あ る こ と を忘 れ て は な らな い だ ろ う。
補 注:本 稿 は 国 際 宗 教 社 会 学 会 メ キ シ コ大 会(2001年8月23日)、 お よ び 日 本 宗 教 学 会 第60回 大 会(2001年9月16日)に お け る報 告』に加 筆 修 正 した もの
で あ る。
注
(1)「 カ ル ト」 運 動 を め ぐ る 立 場 や 学 問 的 方 法 の 問 題 に つ い て は 、 中 野 毅 「文 化 闘 争 と し て の ア メ リ カ ・ カ ル ト 論 争 」 『宗 教 法 』 第20号 、 宗 教 法 学 会 、 2001年11月 、 に お い て 若 干 考 察 し た 。 参 照 し て い た だ け れ ば 幸 い で あ る 。 (2>弓 山 達 夫 「カ ル ト を め ぐ る 『当 事 者 性 』」(「 宗 教 と 社 会 」 学 会 第9回 学 術
大 会 に お け る ワ ー ク シ ョ ッ プ で の 報 告 、2001年6月17日)。
{3)こ の 点 に つ い て の 論 議 は 、 ユ ル ゲ ン ・ コ ッ カ 『社 会 史 と は 何 か 一 そ の 方 法 と 軌 跡 一 』(仲 内 ・土 井 訳)日 本 経 済 評 論 社 、2000年11月 、 が 有 益 で あ る 。 (4)グ ー ロ ー一バ ル 化 お よ び 宗 教 と の 関 連 に つ い て の 議 論 に つ い て は 、Roland
Robertson,Globalization;SocialTheoryandGlobalCulture,London
SagePublications,1992(阿 部 美 哉 訳 『グmバ リ ゼ ー シ ョ ン ー 地 球 文 化 の 社 会 理 論 』 東 京 大 学 出 版 会 、1997年)。R.Robertson&W.R.Garrett
(eds.),RelgionandGlobalOrder,N.Y.=ParagonHouse,1991.阿 部 美 哉
は ロ バ ー ト ソ ン の 理 論 の 特 徴 と 宗 教 の 扱 い 方 に つ い て 、 ウ ォ ー ラ ー ス テ イ ン や ギ デ ン ズ と 対 照 し な が ら 整 理 し て い る 。 本 稿 も 阿 部 論 文 を 参 考 に し た 。 阿 部 美 哉 「グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン と 宗 教 」 『宗 教 研 究 』 第75巻 第2号 、2001年
9月 所 収 。 筆 者 自 身 の グ ロ ー バ ル 化 に つ い て の 詳 細 な 検 討 は 今 後 の 課 題 で あ る 。
(5)Robertson(1992),砂.C2t.,chap、11:TheSearchforFundamentals,特 にpp.172‑178.本 章 は 阿 部 訳 で は 省 略 さ れ て い る 。
(6)ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 定 義 と し て は 、 さ し あ た り ハ ン ス ・ コ ー ン が50年 代 に
「ナ シ ョ ナ リ ズ と は
、 個 人 の 最 高 の 忠 誠 心 が 国 民 国 家 に 帰 さ な け れ ば な ら な い と 感 じ ら れ る よ う な 認 識 の あ り 方 」 と し 、 こ れ を 近 代 西 洋 に お け る 世 俗 的 で 政 治 的 な ナ シ ョ ナ リ ズ ム と す る 。HansKohn,Nationarisrn;ItsMeaning
andHistory,D.vanNostrand,1955.中 野 毅 「宗 教 ・民 族 ・ナ シ ョ ナ リ ズ ム 」、 中 野 ・飯 田 ・山 中 編 『宗 教 と ナ シ ョ ナ リ ズ ム 』 世 界 思 想 社 、1997年 、 序 章 。
(7)吉 野 耕 作 「現 代 日 本 の 文 化 ナ シ ョ ナ リ ズ ム 」、 前 掲 『宗 教 と ナ シ ョ ナ リ ズ ム 』 所 収 。 ま たKosakuYoshino,CuturalNationalisminContemporary
加 魏,Routeledge,1992.吉 野 耕 作 『文 化 ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 社 会 学 』 名 古 屋 大 学 出 版 会 、1997年 。HarumiBefu(ed.),CulturalNationalisminEast
Asia,Researchpapersandpolicystudies39,InsitituteofEastAsian Studies,UniversityofCalifornia,Berkeley,1993.
{8)MarkJuergensmeyer,TheNewColdWar?;ReligiousNationalism
ConfrontstheSecularState,UniversityofCaliforniaPress,1994(阿 部 美 哉 訳 『ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 世 俗 性 と 宗 教 性 』 玉 川 大 学 出 版 会 、1995年)。Peter vanderVeer,・religiousNationalism;Hindusand〃1%s1伽8in」lndia,
UniversityofCaliforniaPress,1994.
(9)中 野 毅 「反 カ ル ト運 動 と ア メ リ カ ・ナ シ ョ ナ リ ズ ム 」、 前 掲 『宗 教 と ナ シ ョ ナ リ ズ ム 』 所 収 。 中 野 毅 「バ ク テ ィ ヴ ェ ー ダ ー ン タ ・ス ワ ー ミー と ク リ シ ュ ナ 意 識 運 動 」、 島 ・坂 田 編 『聖 者 た ち の イ ン ド』 春 秋 社 、2000年 、 等 を 参 照 の こ と 。
(10)ア メ リ カ の 社 会 と 国 家 の こ う し た 性 格 に つ い て は 、 中 野 毅 「政 教 分 離 社 会 と プ ロ テ ス タ ン テ ィ ズ ム 」、 井 門 富 二 夫 編 『ア メ リ カ の 宗 教 伝 統 と 文 化 』 大 明 堂 、1992年 、 第2章 。 井 門 富 二 夫 編 『ア メ リ カ の 宗 教 』 弘 文 堂 、1992年 。 森 孝 一 『宗 教 か ら 読 む 「ア メ リ カ 」』 講 談 社 選 書 、1996年 。 同 編 『ア メ リ カ
と 宗 教 』 日 本 国 際 問 題 研 究 所 、1997年 。
(11)J.T.Richardson,"Cult/BrainwashingCasesandFreedomofReli一
カ ル ト/セ ク ト論 争 と宗 教 的 ナ シ ョナ リズ ム41
gion",JournalofChurchandState,vol.33,no.1,Winter1991.
(12)本 法 の 成 立 過 程 と 問 題 点 に つ い て は 、 小 泉 洋 一 「仏 の 『反 セ ク ト 法 』 と そ の 問 題 点 」 『中 外 日 報 』 第26211号 、2001年7月12日 、 に 詳 し い 。 条 文 の 日 本 語 も 小 泉 訳 に よ る 。
(13)こ れ ら の フ ラ ン ス で の 動 向 に つ い て は 、NewsletterofHumanRights withoutFrontiers(HRWF}Brussel,1998.9.AnualReportonInterna‑
tionalReligiousFreedomforI999,U.S.DepartmentofState,1999.9.
ReligiousIntoleranceinFrance,ReligiousTolerance.org,2000.10,そ の 他 の ソ ー ス に よ る 。 小 泉 洋 一 「フ ラ ン ス の セ ク ト 対 策 」 『中 外 日 報 』 第26149号 、 2001年2月6日 。 同 「フ ラ ン ス に お け る セ ク ト と 公 法 」 『甲 南 法 学 』 第40巻
3・4号 。 中 野 毅 「フ ラ ン ス 国 民 議 会 の 理 性 」 『潮 』1996年6月 号 等 を 参 照 の こ と 。
(14}SamuelP.Huntington,TheClashofCivilizationsandtheRemakingof
WorldOrder,Simon&Schneider,1996(邦 訳 『文 明 の 衝 突 』 集 英 社 、 1998年)。
本 稿 は 、 「創 価 大 学 平 成13年 度 文 系 教 員 等 研 究 助 成 金 」 に よ る成 果 の 一 部 で あ る。