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熱ルミネッセンスによる土器の年代測定?

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

熱ルミネッセンスによる土器の年代測定?

著者 市川 米太

雑誌名 奈良学芸大学紀要. 自然科学

巻 11

ページ 55‑61

発行年 1963‑02‑28

その他のタイトル Dating of Ancient Ceramic Material by Thermoluminescence

URL http://hdl.handle.net/10105/3482

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熱ルミネッセンスによる土器の年代測定I

市  川  米  太 (自然科学教育教室) (昭和37年9月29日受理)

Dating of Ancient Ceramic Material by Thermoluminescence Yoneta ICHIKAWA

(Department of Science 1:ducation, Nara Gakugei Univ. )

Abstract

The thermoluminescence of the ceramic material appears to be the result of damage to the crystal lattice by the radiation coming from the radioactive elements contained in the

material. When the ceramic materia王s are heated up to the temperature of 400 or 500‑C,

trapping electrons are ejected from their traps and fall back to their ground states with emission of light. The amount of light is a function of the dose and the light efficiency of the sample.

The dose is proportional to the number of years that have elapsed since the ceramic material was treated by the last heating and to the natural rate of alpha particle radiation.

In practice, the thermoluminescence glow curve of the sample to be dated can be meas‑

ured quantitatively with a photomultiplier tube. The temperature of the ho卜plate on which the sample is spread, and the output of the tube are recorded simultaneously. The sections of the equipment is shown in the block diagram (Fig.1). Thermoluminescence glow curve of the pottery sample in its natural condition can be satisfactorily recorded by this equipm‑

ent. When the sample is subjected to an artificial radiation of γ‑ray in cobalt, its glow‑p eak heights in the series of our experiments are proportional to various dose. As the result, the relative equivalent radiation dose can be acquired by using the calibration curve.

But the glow curve of the natural ancient ceramic materials are decayed in normal tem‑

perature. If the estimate of decay can be properly done and the radioactivity of the sample be measured by an alpha counter, the thermoluminescence method, mentioned above, may be an effective method for the ancient ceramic material's dating.

1.緒     言

土器は年代を知る基準として考古学で重要な役割をはたしているものである。現在考古学で は、出土した土器は地層の層序や形式紋様などで年代が決定されているが、それはあくまで相対 的年代による編年であってこれが適当かどうかの比較検討の方法はみつかっていない。 carbon

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市 川 米 太

datingの方法は年代測定の方法としてすぐれた成果を上げているが、この測定の対象は有機物 が主であるので、土器のように含有されている有機物の量が少ないものに対しては測定が困難で ある。ここに述べる熟ルミネッセンスによる土器の年代測定法は土器自身の放射線損傷の状態か らその年代を決定しようとするもので、その点ではcarbon datingの方法より直接的であって、

土器の年代測定には適切な方法といえるであろうO

熟ルミネッセンスの現象はかなり古くから研究がされているものであるが、定量的に測定がな されるようになったのは光電子増倍管が発達してきた最近のことである。熟ルミネッセンスは固 体物理特にイオン結晶の研究ではその熟発光曲線を解析することによって大きな成果を収めてい る。叉radiation dosime'cry に応用しようとする試みはSchulman (1960)等によってかなりの 研究がなされている0年代測定法として熟ルミネッセンスを使おうとする試みはcarbonate se‑

dimentに対してはZeller, Wray, Daniels (1957)の研究があり種々のファクターの吟味まで 研究が進められている。叉ceramie materialやIavaの年代測定についても Kennedy (1960) 等の研究があり、熟ルミネッセンスによる年代測定法が有効であることが暗示されている。

2.測 定 原 理

大部分の鉱物は約500‑C以下の温度で可視嶺域の光を発輝する。このように物体を加熟すると き、白熱する以前に燐光が発輝される現象が熟ルミネッセンスである。この燐光は鉱物内の結晶 の格子欠陥にtrapされている電子が基底状態に戻るとき放射されるものである。結晶は光、電 気、放射線、機械的外力などの刺戟エネルギーの一部を格子に吸収して、熟を誘因として量子過 程に,よって、そのエネルギーを光として放射するのである。人工的にα線、 β線、 γ線などの照射 を受けた結晶が熟ルミネッセンスを示すことは勿論であるが、自然の鉱物も外部からの放射線 や、それ自身含んでいる放射性元素の放射能のために熟ルミネッセンスを示すことがある。

Fig. l. Typical thermoluminescence glow‑

curve of calcite. Lewis (1959)

するので、この熱発光量を測定するための 強度を温度の画数として示すものであって、

熟ルミネッセンスによる年代測定は天然の放射線 が、土器が作られてから現在にいたるまでの問、結 晶に及ぼした効果を問題とするもので、この効果を 熟発光量として、定量的に測定しようとするもので ある。したがって、知ろうとする年代以前に資料が受 けた放射線効果は、熟発光的に零でなければならな

い。このことは、資料が測定年代の当初に500‑C以 上の熱処理を受けていることを必要条件とする。

日本の土器の場合、最古の野外焼成されたとみられ る純紋式、弥生式土器でも750‑C以上の温度で焼成 されているといわれているので、この点については 問題はない。

土器が作られてからの時間は土器の受けた放射線 量に比例し、この放射線量は又.熱発光の量に比例 gl'ow‑eurveがまず必要になる glow‑curveは燐光 熟ルミネッセンスの研究で一般的に使われるもので ある。 Fig.1にCo6'のγ線を照射したcalciteの典型的な熟ルミネッセンスのglow‑curveを示

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す。この曲線は加熱された資料から順次に燐光が発揮され、trapされていた電子が全く追い出さ れた時、燐光強度が零になることを示している。このglow‑curveは三種のpeakを示している が、これは三っの型のtrapの深さに対応している。低温側のpeakは浅いtrapを示し、高温 側は深いtrapを示している。trapの深い浅いは格子欠陥の種類に対応しているのである。

glo^の一つのpeakはtrapされた電子が温度の上昇にともなって急激に減少するため であるが,nをtrapされた電子の数とすると

告‑K/*T

‑nv。e活性化のエネルギーyo‥frequencyfactor

・‑C窓‑E/JST

‑‑cnv。e 加熱速度dT

'dt‑‑β。C/secとすると n‑noexp←^‑voe‑E'たTdT}

glow‑curveを定める式は I‑ォoCexp←>T1‑dT}voe‑EノkT

熟発光として得られるエネルギ‑はgl'ow‑curveと基線によって占められる面積である。glow‑

peakは加熱速度によって変化するがこの面積は一定である。種々の線量を試料に照射した場合、

加熱状態を各線墨の試料について一様にするならばpeakの高さはglow‑curveの占める面積に 比例する。したがって既知の人工線量を試料に照射し、そのglow‑curveを各線量に対してとり、

発光量、対線量の校正グラフを作れば未知の線量で照射された試料の被照射線量はそのglow‑cur veの面積叉はpeakの高さから求めることができる。こうして土器の年代に比例する照射線量を 求めることが出来るのである。このとき放射線に対する物質のsusceptibilityは当然異っている ので、calibration‑curveは各資料についてそれぞれとらなければならないことは勿論である。

年代を測定するにあたって必要なもう一つの条件は、土器自身が照射される放射線の強さであ る。熟発光量は放射線量に比例するから、土器の経過時間はglow‑curveから得られた線量をこ の放射線の強さで割ったものになる。土器中の捕獲電子形成にあづかる放射線は天然に起因する ものである。この天然放射線は、土器白身が持つ放射能によるものと、外部に起因するものとに 大別される。前者は土器の胎土中に含まれるウラン系列元素のα線、β線、γ線、トリウム系列元 素のα線、β線、γ線、カリウム40のβ線である。後者は周辺部の地殻、土に含まれている天然放 射性物質から発せられるα線によるものと、宇宙線によるものとから成っている。

Table1

Concentration   α ray      β ray      γ ray Cgr/str of soilVC (RAD/vear)  (RAD /year) (RAD/year) uranium series

thorium series kalium (k40) cosmic rays

3.6×10‑6 1.2×10 b i.lxlO‑6

0.86        0.156       0.050 0.91       0.094       0.075 0.50        0.071 0.03 1.77        0.75        0.203

2.52 RAD/year

* B.Hultqvist ; Kungl. Svenska Vetenskapsokademiens Handlingar, Fiarde Serien Band 6 Nr3

(1956)P.19

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市 川 米 太

これらの放射線が、捕獲電子形成に寄与する割合は、それぞれの成分が土器によって吸収され る糠星に比例すると考えられるo これら各々の放射線の量をTable.1に示したO土器及び周辺 の土に含まれる放射性物質の濃度は火成岩中の濃度の平均値に等しいと仮定してある。表による と、熱発光に寄与する放射線は土器中のα線とβ線の放射能が92%を占め、宇宙線及び周辺地殻 のγ線の影響は8%以下であることが認められる。このことは土器の年代測定の上で、次の二つ の点において好都合なことである。第一に埋蔵の深さ及び埋蔵地点の位置による影響が少いこと で、ことのことは熟ルミネッセンスによる年代測定法が成立する上に、極めて本質的な意味をも っている。第二に試料が吸収する放射線の年線量率が、 α線の測定だけから得られることであ

り、年線量率決定の手続きが簡単化される。勿論上述の仮定即ち、試料中の放射性物質濃度が火 成岩中のものの平均値の程度であるとしての評価についてはー異常に小濃度の場合、このことは 成立しなくなる。したがってそのような特殊な土器試料に対しては測定は正確を欠いてくるであ ろう。

3.測  定  法

熟ルミネッセンスは一般にglow‑curveをrecordすることから始るのであるが、このための 装置のblock diagramはFig.2に示した。この装置は主要部分として、試料を加熱するための

Fig. 2. Block diagram o土

thermoluminescence equipment

電気炉、試料から発輝される燐光のエネルギーを電 流に変換するための光電子増倍管、その電流を増巾 するためのD.C amp、温度と燐光強度を同時に記 録するための two‑pen recoder から構成されてい る。

試料温度の記録は熟板の直下に入っているアルメ ル、クロメルの熟電椎によってなされる。加熱速度 はニクロム線に流す電流をトランスで調整して定め ている。

炉から光電子増倍管までのIight‑pathの様子と、熟 や光(試料のとりかえのとき)の遮断状態について はFig.3に示した。炉はhoトplateの上に銀板を置 き、その上に粉末状の資料を300mg‑400mgのせ る。炉から出る熟放射は赤外フィルターで遮断す る。叉光の効率を良くするために、試料の表面から 光電面までの距離を最少にするとともに、周囲をアルミ蒸着したIightpipeによって光を導いてい る。又光電子増倍管のgamの変化や、光学系における効率の変化を補正するためにIight source を用意している。

4.実      験 (1)資料の再現性

前述のように試料は粉末にして使うのであるが、多種多様な結晶を含んでいる上に、結晶の大 きさにも大小あるのでメノウの乳鉢でよく磨りつぶした後更にふるいにかけた。その結果同じ加

(6)

HOTO卜1UL

四!甲 /醐

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SOURCE iI

J.∴J.::= L l

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T .一S

…確 執 H

IGHT PIPE

Fig. 3. Cross section of the furnace section and the light path

熟達度のもとでglow‑eurveのずれを5%以内に収め ることができた。

(2)リニアリティiとっいて

glow‑curveから試料の吸収線量を求める場合に、

まず問題となるのほその試料が発光量対線量の間にか なりのIinearityがあるかどうかということである。

Shulman (1960)達はCaFslMnの発光を用いたDosi meterを作成し、 2mrから105rまで非常にIinearity のよいものを得ている。土器の年代測定に使われる試 料は人工的に製作された純粋の結晶でなく、既に存在 している与えられたceramic materialであるところ に問題がある。

ceramic materialは一般に粘土が材料であり、 Si02、

AlaOaを主成分とする種々多様な結晶の集合体とみ なされる。このようなものを試料とする場合沢山の結 晶の中から適当な結晶だけをとり出して実験すること が理想的であることは勿論であるが、ここではそのま ま試料として使った Fig.4はceramic materialと して互を選んだ場合の各線量に対する glow‑curveで ある。試料は粉末にした後ふるいにかけ、 Co61のγ線で 照射した。

その結果はIOOrからIOOOrにわたってかなりのIinearityのあることがわかった。 Fig.5は照 射線量に対する glow‑peak heightを示したものでsample.1はFgi.4から得たものである。

sample.2の値は他の亙について実験して得たものであるが、この二つの直線の相違は試料によっ て放射線に対する susceptibilityの異

なることを示している。これは試料に よって含まれている結晶の種類、含有 率が異なるためである。試料によって はかなりIinearityの悪いものもあり、

このような試紳こついてはその精製に ついて更に検討しなければならない。

このように各々の試料について燐光効 率が著しく異なるので、 glov から線量を求める場合には各々の資料 についてcalibration curveが必要にな ってくる。今回はγ線によって照射し たがγ線とα線とで照射エネルギーに 対する発光強度のちがいのあることに ついても検討しなければならない。

TIME (‑, LTl)

Fig.4. Glow‑Curve recordings of ceramics for various doses

(3)土器の発光曲線と減衰について

土器について実験する場合もその試料の処理は互と同じ方法で行った。 Fig.6に弥生式土器と

(7)

rJfr

縄文式土器のglow‑curveを示す。こ の弥生式土器は年代も比較的新しく、

叉αのcontamination も少く現在ある 試料の中では最も熟発光量の少いもの である(4)の曲線は弥生式土器を粉 末にした後に500‑Cまで熟し今まで蓄 積されていたものを全部発光させた後 にCo60のγ線を照射し、再び装置によ って熟発光させて得られたものであ る.土師の土器の中にはαのcontain‑

inationの度合が強く非常に熱発光量 の多いものがあった。 CDと(4)の曲線

IW

"

VU II SN l N m

Ttr mi 七 七

Fig. 5. Glow‑peak height for rooトtiles

の相違が示しているように人工的に 現在照射して得られるglow‑curve に対して数千年の問照射が経続して いる試料のglow‑curveは低温側に おいて時間その他の原因のために decayが起っている。(4)の曲線にみ 200℃ られる200。Cのpeakは(1)の曲線で は消失している。このdecayの問題 に関してはnaturalのIimestoneに

Fig. 6. Glow‑curve of Pottery

ついて300。C以下にある peakがde cay しているという Zeller (1954) の報告があるが300‑C以上の部分に ついても decayがあるかないか、あるとすればそれをどのように評価したらよいかという問題 については更に検討の必要がある。

5.結      音

熟ルミネッセンスによって土器の年代測定をするに当って、土器の熟発光量はこの装置で充分 測定できることが確められた。電子捕獲中心の減衰評価に関しては、人工的にα線やγ線で照射し た試料について、時間、温度の因子を詳細に調べる必要がある。更に試料の履歴については、土 器が地下に埋っていた時、ウラニウム、トリウム等を吸着しているかどうか、土器のガラス質が 地下水のために再結晶が起っていないか、又土器の焼成時に放射平衡が破れていないかなどの吟 味しなければならない問題があるっ終りに本研究の勧指導をいただいた京大理学部四手井教授、

初田教授、文学部有光教授、京大工研東村助教授に深謝する。なおこの研究は文部省科学研究費 によるものであるO

(8)

文     献

( 1 ) Zeller. E.J. (1954) Thermoluminescence as a Radiation Damage Method of Geologic Age Determination. Congrfiologique International , Alger, 365,

( 2 ) Zeller. E.J. (1954) Thermoluminescence of Carbonate Sediments, Nuclear Geology, 180.

(3) Lewis. D.R. (1956) The Thermoluminescence of Dolomite and Calcite, Jour. Phys.

Chem, Vol.C

(4) Lewis. D.R. (1959) Thermoluminescence of Rocks and Minerals, Amer. Mine. Vol44 ( 5 ) Zeller.E.J. (1957) Factors in Age Determination of Carbonate Sediments by Thermolum‑

et al.

inescence, Bull. Amer. Assoc. of petroleum Geol. Vol. 41, 121 ( 6) Kennedy. G. (1961) Dating by Thermoluminescence, Archaeology. Vol. 13,147

( 7 ) Halperin. A. (1960) Symmetry of the Green phosrhorescence of Heat Pretreated Colored kcl Lewis.N.

Crystals, phys. Rev. Vol. 119, 510

( 8) Arbell. H. (1960) Thermoluminescence of Zns single Crystals, phys. Rev Vol.117, 45 Halperin. A.

( 9 ) Halperin. A. (1960) Evaluation of Thermal Activation Energies from Glow Curves, phys.

Braner.A.A.

Rev. Vol.117,

(10) Halperin. A (1960) Thermal Activation Energies in Nacl and KcユCrystals, phys. Rev.

et al,

Vol.117416

(ll) Schulman. J.H. (1953) Radiophotoluminescence Dosimetny System of 、the V.S. Navy,

et al.

Nucleonics, Vol. 1ユ,52

(12) Schulman. J.H. (1960) Thermoluminescence Dosimeter has Storage stability, Lineality,

et al.

Nucleonics Vol.18, 92

参照

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