NDC 541.66
酸化物超伝導体に関する研究
原 田 寛 治* 森 田 治**
(昭和63年8月31日受付)
A study on oxide sttperconductor
Kanji HARADA and Osamu MORITA
(Received August 31,/988)
Abstract
Y−Ba−Cu−O oxide, one of the materials of superconductivity, was made and examined the electrical characteris−
tics and the cystallization.
MeasuTment of resistivity was done by using four−terminal method and trandition temperature above 90K was
obtained.Meissner effect was certified by floating up of a magnet over the sample of the oxide at liquid nitrogen tempera−
ture.
Perovskite structure Qf the crystallization of the sample was recognized by X−ray diffraction analysis and Elec−
tron Probe Micro Analysis (EPMA).
1.緒
言1911年に超伝導が発見されて以来,より高い温度で超伝 導が起こる材料の研究が多くなされてきた。1986年4月に,
ベドノルツとミューラーらによって,La−Ba℃u−0系の酸
化物セラミックスが,30K付近で超伝導に転移することが発見されて以後,精力的に高温超伝導についての研究がな
され,ついにY−Ba−Cu−0系酸化物セラミックスにおいて,
液体窒素温度よりも高い90K付近で,超伝導に転移するこ
とが発見された1)2)。この材料は熱力学的に安定で,再現
性のある結果が得られ,物質としても確立してきている3)『5)。
本研究は,上記のY・Ba−Cu−0系酸化物超伝導体を作製 し,温度による抵抗の変化を四端子法で測定した。さらに
結晶構造をX線解析,EPMA分析を用いて調べた。* 電気工学科
** 京セラ㈱
2。試料の作成方法
原材料はY203, BaCO3, CuO(フルウチ化学,純度 99.9%)を用いた。まず特定の量比(Y:Ba:Cu=1:
2:3)にするため,その量を化学天秤で正確に計り,乳 鉢を使用して灰色の小さな粉になるまで,約1時間程度混
合した。混合した原材料を取り皿に移し,電気炉に入れ,
空気中で900−950℃で5時間仮焼成した。その後150〜
200℃/hの割合で,約400℃まで温度を下げ,後は電気炉
内で自然冷却した。
次に仮焼成した材料を乳鉢で粉砕した後,少量のエタ ノール(エチルアルコール99.5%含有)を加え,5分間 29MPaでプレス機により厚さ2−5mm,直径30mmのペレッ
トに成型し,再び電気炉に入れ,空気中900一一950℃で5時 間本焼成した。このとき,試料内の水分等が急に膨張し,
試料をこわすのを防ぐため,温度を上昇させる前に試料を
電気炉内に入れ,徐々に温度を上昇させた。所定時間後150〜200℃/hの割合で,約400℃まで温度を下げ,後は電
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津山高専紀要第26号(1988)
気炉内で自然冷却した。Fig,1に本焼成の加熱温度変化線 図を示す。
1000
g
睾800
YL 600
含
8 400 200
o
900℃ 一950℃ 5h
T
Qゾ・−m
5e 0h5
85 5 7 5
96
95
01 1
05
Fig. 1 Temperature profile at annealing,
3.実験結果および考察
3.1 EPMAによる定性分析および定量分析
作製した試料の微細構造,元素濃度を微小部走査X線分
析装置(EPMA)により調べた。Fig.2, Fig.3は試料表面のsEM写真である。微小片
の大きさは3〜5μmで,微小片のまわりには多くの空話が見られる。
Fig,4は微小片を定性分析した結果である。微小片には
Y,Ba, Cuのピークがそれぞれ約2keV,4.5keV,8.5keV付近に見られる。これより微小片の一つ一つが酸 化物超伝導体Y−Ba・Cu−0を形成していることがわかる。
実用超伝導材料としては,臨界電流密度や臨界磁場が高 い必要があり,高ければ高いほど超伝導の利用価値が高い。
またそれらの向上には,材料中のセミミクロな組織に強く 依存している。すなわちFig.2,3のように焼結体では非 常に空孔が多い。このため微小片問の接触面積は小さく微 小片を横切って流れるマクロな電流のパスが空孔の分だけ 減るので,臨界電流が低くなると考えられる。これらのこ とより,臨界電流密度や臨界磁場の向上のためには,微小 片の大きさをさらに小さくするか,微小片を大きな単結晶 にしなければならないことが推察される。
微小片を定量分析した結果をTable 1に示す。 Table 1
より当初の量比(Y:Ba:Cu=1:2:3)に対しY : Ba: Cu = 1 :1.86 :1.60
という結果になった。これは仮焼成温度が少し高かったた
めに,Cuが溶け, Cuが少なくなったのと,反応時間が5時間と少なかったために,まだ完全に反応しきっていな いためと推察される。
Table 1 Chemical composition of the Y−Ba−Cu−O
wt(%) at(%)
Y
19.94 22.41Ba
57.22 41.65Cu
22.85 35.94 Fig. 3 SEM photograph of the Y−Ba−Cu−O,Fig. 2 SEM photograph of the Y−Ba−Cu−O, Fig. 4 Results of EPMA of the Y−Ba−Cu−O.
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酸化物超伝導体に関する研究 原田・森田
︵莞づ.£・ご︶倉旨Φ三
45 40 35 30
20(degree)
Fig. 5 X−ray diffractoin pattern of the Y−Ba−Cu−O.
25
3.2 X線回析
作製した試料の結晶解析をX線回析測定で行なった。使
用した装置はX線回析装置ADG401型である。なお,加 速電圧は30kV,回析角2θは20〜70。とした。
測定結果をFig.5に示す。測定結果より指数付けをし,
各ピークの反射角の値から格子定数を求めると
a == 3.89Ab= 3.82A c =:11.67A
と計算される。これらのことより,本試料は斜方晶系のペ ロブスカイト構造7)であることがわかる。
3.3 超伝導転移温度Tcの測定
臨界温度Tcの測定は,四端子法により測定した。 Fig.
6に測定棒を,Fig.7に測定回路を示す。なお,温度測定
はIC温度センサー・一(AD590JH)を用いた。 Fig.8は測 定結果である。
試料が超伝導に転移する前の抵抗値における90%,50%,
10%に低下する温度をそれぞれTon, Tmid, Toffと定義す ると,Ton=102[K:], Tmid=100[K], Toff=94[Klとな
る。また転移幅△Tc=Ton−Toffとすると△Tc=8[K:】と比較的シャープな転移が観測された。ただ今回の測定は
IC温度センサーを用いたため,試料近くの温度しか測定されておらず,正確な試料表面の転移温度は測定できてい ない。今後より精度の高い方法で測定する必要がある。
また,液体窒素で冷却した試料の上に磁石を浮かせるこ とによってマイスナー効果を確認した。
●G闘9●
冒
−占
ホルマル銅線
ハンダ
インジウム圧着
試料
電圧端子 IC温度センサー
電流端子
Fig.6 Measurement probe.
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津山高専紀要第26号(1988)
電圧9.OVロー十 X−Yレコーダ
電流0.5〜2,0
□
x Y
ロ 一十
抵 抗 P0KΩ
o+
キ度センサー
Fig. 7 Measurement curcuit.
電圧端子
電流端子 試料
15
1
&日着意さの唄・・彪
Ton
Tmid
4.結.
5
o
Toff
o 50
100 150 200
Temperature T(K)
Fig. 8 The temperature dependence of resistivity.
言
Y−Ba・Cu−0酸化物超伝導体を作製し,その電気的特性,
結晶構造について調べた。その結果
1.作製した試料は3〜5μmの微小片が多く集まっ たY−Ba−Cu−0酸化物超伝導体であり,斜方晶系のペロブ スカイト構造であることがわかった。
2.臨界温度(抵抗が零)が約90Kであり,液体窒素で
冷却した試料の上に磁石を浮かせることによって,マイス ナー効果を確認した。
上記のことより,本実験で作製した試料が高温超伝導体 であることがわかった。
今後の課題としては,
1.組成比の均一化
2.微小片の微細化,あるいは単結晶化 3.超伝導薄膜の作製
などが考えられる。
本研究にあたり,本校機械工学科助教授の柴田政勝氏に は試料作成に必要な装置を,また本校金属工学科技官の西 彰矩氏には試料の測定をはじめ多大のご協力を頂き深謝い
たします。
5.参考文献
1) J. G. Bednorz and K. A. Mitller; Z, Phys., B64 (1986), 189
2) C. W, Chu, P. H. Hor, R. L. Meng, L. Meng, L.
Gao, Z. J. Huang, Y. 9, Wang, J. Bechtold, D.
Campbell, M. K. Wu, J. Ashburm and C. Y. Huang;
Phys, Rev, Lett., 58 (1987), 405
3) S. Hosoya, S. Shamoto, M. Onoda and M. Sato;
Jpn. J. Appl, Phys., 26 (1987), L325
4) K. Kitazawa, K. Kishio, H. Takagi, T. Hasegawa, S.
Kanbe, S. Uchida, S. Tanaka and K, Fueki; Jpn. J.
Appl. Phys,, 26 (1987), L339
5) S. Hikami, S. Kagoshima, S. Kamiyama, T. Hirai, H.
Minami and T, Masumi; Jpn. J, Appl. Phys,, 26 (1987), L347
6 ) K. Matsuzaki, A. lnoue, H. Kimura, K. Moroishi and T. Masumoto; Jpn, J. Appl. Phys., 26 (1987), L624 7) T. Hatano, A, Matsushita, K. Nakamura, Y. Saka, T,
Matsumoto and K, Ogawa; Jpn, J, Appl. Phys., 26