博士(工学)丹田
学 位 論 文 題 名
銅 酸 化 物 超 伝 導 体 Nd2̲ エCe エCri04 ‑ ッ 薄膜 に おけ る 超 伝 導 ― 絶 縁 体 転 移
学 位 論 文 内 容の 要 旨
常 磁 性 体 が 強 磁 性 体 に な っ た り 金 属 が 低 温 で 超 伝 導 状 態 に な っ た り す る 種Aの 相転 移 が 、 自 然 界 に 存 在 す る 。 物 質 に 内 在 す る 乱 れ が 相 転移 現象 に どの 様に 関与 して いる か につ いて は、 最近 まで あま りよ く理 解 され てい なか った 。こ のよ う及 典型 例と して、
超 伝導 一絶 縁体 転移 が知 られ てい る。 こ れは 電気 抵抗 が無 限大 から ゼロ にな る転 移であ り 、こ の相 転移 に対 して 乱れ がど のよ う に関 わっ てい るか 、大 変興 味が もた れて いる。
特 に鋼 酸化 物高 温超 伝導 体の 場合 は、 そ の特 異詮 次元 性か ら、 新し い物 理現 象の 発現が 期 待さ れて いる 。本 研究 は銅 酸化 物超 伝 導体 を用 いて 超伝 導一 絶縁 体転 移を 調べ たもの で ある 。
電 子 系 に お け る 金 属 ― 絶 縁 体 転 移 の 問 題 は 、1980年代 から 実 験・ 理論 両側 面か ら広 く 研 究 さ れ て き た 。 電 子 ( フ ェ ル ミ 粒 子 ) は 、 乱 れ の度 合が 強 くな ると 空間 的に 局在 し 絶縁 体と なり (フ ェル ミ・ グラ ス) 、 乱れ の弱 い場 合金 属的 な伝 導を 示す 。乱 れによ る 金属 一絶 縁体 転移 に関 する 臨界 的挙 動 はス ケ― リソ グ理 論に よっ て明 らか にさ れてき た 。 特 に2次 元 電 子 系 で は 、量 子ホ ール 効果 にお いて 、電 子局 在 が次 元性 と共 に重 要な 役 割を 担っ てい るこ とが 明ら かに なっ て いる 。さ らに 弱局 在の 起源 が電 子波 の干 渉効果 で ある こと が明 らか にさ れた 。そ れに 伴 い光 波や 音波 等の 古典 的波 動の 干渉 効果 による 局 在に 関す る研 究も 活発 に行 われ てい る 。
ポー ス粒 子系 の場 合の これ に対 応す る 相転 移( 超伝 導― 絶縁 体転 移) の問 題は 、極め て 重要 であ る。 ポー ス粒 子系 は、 絶対 零 度で 乱れ がな い場 合に おい て超 流動 状態 にたる こ とは よく 知ら れて いる 。乱 れの 度合 を 強く して いく と、 ポー ス粒 子系 にお いて も絶対 零 度で 絶縁 体状 態( ポ― ス・ グラ ス相 ) が実 現さ れ、 超流 動( 超伝 導) ー絶 縁体 転移が 生 ずる 。し かし その 転移 の型 及ぴ 臨界 指 数等 はこ れま で明 らか にさ れて い社 かっ た。本 論 文で は、 膜厚 を変 える こと なく 乱れ を 制御 でき る系 とし て、 銅酸 化物 超伝 導体 を採用 し 超 伝 導 一 絶 縁 体 転 移 に 関 す る 実 験 を 行 い 、 そ の 結 果に つい て 理論 的考 察を 与え た。
銅酸化物系は2次元ド―ブ型超伝導体という新しい側面を持っており、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法で 作襲したNd2―£CezCu04単結晶薄膜を用い、ポ―ス・グラス相の 存在、臨界面抵抗、磁場中の超伝導―絶縁体転移を調べた。
本論文の構成は、以下のようにたっている。
第1章 で は 、 こ れ ま で の 研 究 の 背 景 と 本 論 文 の 目 的 が 述 べ ら れ て い る 。 第2章 で、乱れ による金 属―絶縁 体転移の スケ―リソグ理論について述べ、そのス ケーリソグ関数(p関数)の特性について述べる。また、弱局在領域に対する微視的理論 から導出されるコソダクタソスの温度依存性、負の磁気抵抗の理論式について述ぺる。
第3、4章では、 本研究の主題である超伝導一絶縁体転移の臨界点近傍の電気伝導度 の振舞いについて、スケ―リング理論の立場から、実験解析に用いるスケーリング形式 の導出について言及する。さらに臨界点普遍面抵抗に関して、その背景とたる単一ジョ セフソソ結合における巨視的量子トソネリングと散逸の効果について述ペ、渦糸が重要 を役翻を果たしていることを述ぺる。
第5車で は 、 分子 線エ ピタキシ 一法によ るNd2̲=CezCu04高温超 伝導薄膜 の作製、
そしてフラックス法によるNd2Cu04一£ー5Fオ単結晶の作製について述べる。さらに、電 気伝導度、磁気抵抗の測定方法について述ぺる。
第6章 では.、Nd2̲rCetCu04薄膜の電 気伝導度の温度依存性、負の磁気抵抗、磁気 抵抗の異方性の凋定結果について述べる。超伝導一絶縁体転移近傍で、この転移を分け る境目の臨界面抵抗が8‑9kf2の値を示し、量子抵抗(h/4e2)の値に極めて近いことを明 らかにする。転移点直上(絶縁体側)での抵抗の温度依存性から、この伝導が可変領域 ホッ ピング(VRH)型 であるこ とを示し 、フェル ミオンの弱局在では説明でき詮いこと を明らかにする。
第7章では、超伝導体側からのアプローチとして、磁場変調型の超伝導ー絶縁体転移 を調べた結果について述べる。第4章で議論したスケーリソグ理論を用いてデ―タ解析 を行った結果、スケーリング形式に全て一致することを示す。求められたその動的臨界 指数の値が理論から予想される値と矛盾が詮いことから、本研究の主題である超伝導一 絶 縁 体 転 移 が ポ ー ス グ ラ ス ― 超 伝 導 転 移 で あ る こ と を 証 明 す る 。 第8章 では、Nd2Cu04−¢̲8Fz単結晶の場合において、超伝導一絶縁体転移から離れ た絶縁体側における弱局在及び強局在に関する実験結果について述ぺる。第2章で述べ たスケ―リソグ理論を適用した結果、ベ―タ関数に全てスケールされることがわかり、
この系が正規対称性を有していることを示す。
第9章 では、本 論文で得 られた結 果を総括 し、今後の課題について言及している。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査・教授 中山恒義 副査 教授 丸川健三郎 副査 教授 阿部 寛
副査 教授 三本木 孝(理学研究科)
学位論文題名
鋼酸化物超伝導体Nd2― ‑CeTCu04̲y薄膜における超伝導一絶縁体転移
本研究は高温超伝導体のーっであるNd2̲TCeTCu04̲y単結晶薄膜を用いて、超伝導一絶縁体(電 気抵 抗が 無限 大か らゼ ロに な る) 転移 の臨 界的 振舞 いを 実験 的に 明か にし たも のである。
物質に内在する乱れが相転移現象にどの様に関与しているかについては、最近まであまりよく 理解されていなかった。このよう,な典型例として、超伝導一絶縁体転移が知られており、この相転 移に対して乱れがどのように関わっているか、大変興味がもたれている。特に銅酸化物高温超伝 導体の場合は、その特異な次元性から、新しい物理現象の発現が期待されてい石。本研究は銅酸 化物超伝導体を用いて超伝導ー絶縁体転移を調べたものである。
本論文では、膜厚を変えること詮く乱れを制御できる系として、銅酸化物超伝導体を採用し超 伝導―絶縁体転移に関する実験を行い、そ の結果について理論的考察を与えた。銅酸化物系は2 次元ドープ型超伝導体という新しい側面を 持っており、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法で作製 したNd2一lCezCu04̲y単結晶薄膜を用い、ポ―ス・グラス相の存在、臨界面抵抗、磁場中の超伝 導一ニ絶縁体転移を調ぺた。
第 1章 で は 、 こ れ ま で の 研 究 の 背 景 と 本 論 文 の 目 的 が 述 べ ら れ て い る 。 第2章で、乱 れによる金属一絶縁体転移のスケ―リソグ理論について述ぺられ、そのスケーリ ング関数(p関数)の特性について述べられている。また、弱局在領域に対する微視的理論から導 出さ れる コソ ダク タソ スの 温度依存性、負 の磁気抵抗の理論式について述べられている。、
第3、4章では、本研究の主題である超伝 導一絶縁体転移の臨界点近傍の電気伝導度の振舞い について、スケーリング理論の立場から、実験解析に用いるスケーリソグ形式の導出について言 及されている。さらに臨界点普遍面抵抗に関して、その背景となる単一ジョセフソン結合におけ る巨視的量子トンネリングと散逸の効果について述ぺられ、渦糸が重要な役割を果たしているこ
とが述べられている。
第5章 では 、 分子 線エ ピタ キシ一法によるNd2̲オCeTCu04̲y高温超伝導薄膜の作製、そして フラックス法によるNd2 Cu04̲T̲6Ft単結晶の作製 について述ぺられている。さらに、電気伝導 度、磁気抵抗の測定方法について述ぺられている。
第6章では、Nd2一£CetCu04一ッ薄膜の電気伝導度の温度依存性、負の磁気抵抗、磁気抵抗の異 方性の測定結果について述べられている。超伝導一絶縁体転移近傍で、この転移を分ける境目の 臨界面抵抗が8‑9kf2の値を示し、量子抵抗(んノ4e2)の値に極めて近いことが明らかにされている。
転移点直上(絶縁体側)での抵抗の温度依存性から、この伝導が可変領域ホッピング(VRH)型で あ る こ と を 示 し 、 フ ェ ル ミ オ ソ の 弱 局 在 で は 説明 でき ない こと が明 らか にさ れて いる 。 第7章では、超伝導 体側からのアブローチとして、磁場変調型の超伝導一絶縁体転移を調べた 結果について述ぺられている。第4章で議論したスケ―リング理論を用いてデータ解析を行った 結果、スケーリング形式に全て一致することが示されている。求められたその動的臨界指数の値 が理論から予想される値と矛盾が詮いことから、本研究の主題である超伝導ー絶縁体転移がボー スグラスーポーテックスグラス転移であることが証明されている。
第8章では、Ncl2Cu04−£−5Fz単結晶の場合において、超伝導―絶縁体転移から離れた絶縁体 側における弱局在及ぴ強局在に関する実験結果について述ぺられている。第2章で述ぺたスケー リソグ理論を適用した結果、ベータ関数に全てスケールされることがわかり、この系が正規対称 性を有していることが示されている。
第9章では、本論文 で得られた結果が総括されており、今後の課題について言及されている。
主要な成果は以下の点に要約される。
(1) MBE法 に よ り 、 良 質 のNd2̲よCe=Cu04̲y高 温 超 伝 導 薄 膜 の 作 製 を 行 っ た 。 (2)超伝導―絶縁体転移近傍で、この転移を分ける境目の臨界面抵抗が8‑9kflであることを示し、
量子抵抗(んノ4e2)の値に極めて近いことを明らかにした。
(3)転移点直上(絶縁体側 )での抵抗の温度依存性から、この伝導が可変領域ホッピング(VRH) 型で ある こと を示 し、 フェ ルミ オソの弱 局在では説明できないことを明らかにした。
(4)超伝導体側から、磁場 変調型の超伝導―絶縁体転移を調ぺた。スケーリソグ理論を用いて データ解析を行った結果、スケーリング形式に全て一致することを明らかにした。求められ たその動的臨界指数の値が、理論から予想される値と矛盾がないことから、本研究の主題で ある超伝導一絶縁体転移がポースグラスーポーテックスグラス転移であることを実証した。
以上のように本論文は、銅酸化物超伝導体Nd2ーエCeオCri04̲ を用いて、超伝導一絶縁体転移 についての詳細な 実験を行い、多くの新知見を得ており、応用物理学の発展に貫献するところが 大きい。よって著 者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。