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イットリウム系酸化物超伝導薄膜に関する研究. 原 田 寛 治*

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Academic year: 2021

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(1)

NDC 541.62

イットリウム系酸化物超伝導薄膜に関する研究.

原 田 寛 治* 梶 山 直**

ノ、

(平成3年8月30日受付)

A Study on Oxide Superconducting Thin Film          of YBaCuO

Kanji HARADA* and Makoto KAflYAMA

(Received August 30, 1991)

       Abstract

 Superconducting thin films of Y−Ba−Cu−O on MgO(100) we re fabricated using the process of RF sputtering. The target used here was Y−Ba−Cu−O pellets. This experiment put the substrate at off−centered position for the target. Compositional

change of sputtered ・films were observed by the number of the Y−Ba−Cu−O peliets. The films were post−annealing in atmosphere at 900℃. The films have a Tc of about 30K using the cryostats with the mechanical compressor.

1.緒  言

 1911年に超伝導が発見されて以来,より高い温度で超伝 導が起こる材料の研究が多くなされてきた。1986年4月に,

ベドノルツとミューラーらによって,La−Ba−Cu−0系酸化 物セラミックスが,30[K]付近で超伝導に転移することが 発見されて以後,精力的に高温超伝導について研究がなさ れ,ついにY−Ba−Cu−O系酸化物セラミックスにおいて,

液体窒素温度よりも高い90[K】付近で,超伝導に転移する ことが発見された1)2)。臨界温度が液体窒素温度77[K]を 越えたことでエレクトロニクスの分野への応用を念頭にお いた薄膜研究が数多くなされている。超伝導エレクトロニ クス素子は従来液体ヘリウム中で利用することが前提で あったが,そのような限定条件の下でも広大な応用分野を 得るに足りる高性能な特性を有していると考えられてき た。しかし,酸化物超伝導体の出現に伴い,液体窒素中で 動作するジョセブソン素子やSQUID素子などの可能性が高 まってきた。液体窒素は液体ヘリウムに比べ使用方法も簡 便でまた安価でもあるから超伝導エレクトロニクス素子を 利用する場合は,飛躍的に増加するであろうと考えられて いる。また単結晶膜を利用した低次元化による超伝導機構 の解明,さらには新材料への期待などもあり,薄膜研究は 意義あるものである。

* 電気工学科

**電気工学科平成元年度卒業生,現在日本電装㈱勤務

 しかし,複合酸化物薄膜の製法は半導体などの他の材料 ほど進んでいない。その理由は,1)酸素のように揮発性の 高い元素を含むので真空中では酸素欠陥を生じやすくその ため結晶構造が不完全になってしまうこと,2)基板材料に 選択の自由がないことなどが酸化物薄膜作製を困難にして いる。また現在幅広く使用されいるスパッタリング法は薄 膜組成を正確に化学量論比にするには,ターゲット組成等 の調整に大変手間がかかり,実際には化学量論比にある程 度近いところで我慢することになるという問題を持ち,酸 化物超伝導薄膜は今後の課題を多く抱えている。

 本研究では以前報告した良質なY−Ba−Cu−O焼結体のペ レットをターゲットに用い3),できるだけ化学量論比に 近い酸化物超伝導薄膜をスパッタリング法により作製する ことを目的として超伝導薄膜の作製を行ない,臨界温度が 約30[K]の超伝導薄膜を作製することができたので報告

する。

2.薄膜の作製方法

 現在の薄膜作成法の主流はスパッタリング法とMBE法 があり,CVD法は金属成分ガスの開発が遅れようやく研 究が盛んになってきたところである。スパッタリング法は 従来から酸化物薄膜の作成法として実績があり,本研究の Y系超伝導薄膜などのようにセラミックスの薄膜を作成す

るような時に,1)膜厚の均一なものが作れる,2)基板との 付着力が強いなどの理由により有効である。上記のことに

より本研究では,スパッタリング法により行なうことにし

一125一

(2)

津山高専紀要第29号 (1991)

た。

 本研究で使用するスパッタリング装置は,高周波スパッ タリング装置SBR−1104E(ULVAC)である。図1にターゲッ トと基板の位置,およびスパッタリング用ターゲットを示 す。基板の位置は放電粒子による損傷を抑制するためにタ ーゲットの横へ設置した4)。ターゲットの中心から基板 までの距離は50mm,高さは約20皿mである。本実験では,

多量の10mmφペレットを作りペレットを銅板上に敷きつ め,スパッタ用ターゲットとした。

・・

i:

50m

sub6tra±e

shutter tqr et

Cu pt磁e

Fig.1 Electrode and substrate geometry of the RF    sputtering. This substrate configuration avoids the    bombardment of high−energy charged particles.

 スパッタリング用ターゲットとして用いたペレットの作 製方法を以下に示す。原材料はY203, BaCO 3, CuO(フ ルウチ化学,純度99.9%)を用いた。組成比は,Y:Ba:

Cu =・ 1:2:3.6にした。まず特定の量比(Y:Ba:Cu・1:2:3.6)

にするため,その量を天秤で測り,乳鉢で灰色の小さな粉 になるまで,約1時間混合した。混合した粉を磁性皿に移 し,電気炉(ヤナコ製,YFM−103)に入れ,大気中約900

[℃]で5時間墨焼成した。その後,2[℃/min]の割合で降 温した。降温後,仮焼成した粉を乳鉢で混合した。上記の 操作を繰り返し仮焼成を3回行なった。

 次に仮焼成した粉に,少量のエチルアルコールを加え,

ハンドプレスにより重量約53mm 9,厚さ2mrn,直径10mm のペレット状に成型し,再び電気炉に入れ,大気中940[℃]

で5時間本焼成した。その後1[℃/min]の割合で降職した。

 ペレットの臨界温度は約80[K]で超伝導へ転移すること

を.m認した。またEPMA(電子線プローブ分析)による測定

結果はY:Ba:Cu=1:2.0:2.8であり,目標の組成比Y

:Ba:Cu:=1:2:3に近い物質が得られていることを確 認した。さらにX線による結晶解析の結果,ペレットは斜 方晶のペロブスカイト構造であることも確認した5)。

 これらの測定結果より,ターゲットは酸化物超伝導体で あることを確認し,スパッタリング用ターゲットとして十 分なものであることを評価した。

 次に薄膜作成に用いられる基板については,1)酸化物薄 膜の成長,2)デバイス化への配慮,などの観点から選択さ れるべきである。膜成長は,スパッタリング法では高温低 酸素雰囲気中で行なわれるので,そのための損傷を受けな い基板材料が好ましく,酸化物または非酸化性金属が使用 される。さらに基板の結晶,格子定数が酸化物超伝導体に 近い場合,薄膜は結晶軸が基板に対して配向したものにな る傾向が有り,結晶形,格子定数やその膨張係数の整合性 がよければエピタキシャル膜も作成することができる6)。

本研究では,Y系酸化物の熱膨張係数に一番近い,融点が 2800℃熱膨張係数が13.5×10−6[℃一1]のMgO単結晶板

(100面)を使用した。

3.薄膜の成膜条件

 表1に薄膜の成膜条件を示す。出力は150[W],圧力、は Arガス50[mTorr],ガス流量は5[SCCM]として行なった。

また,窒素トラップを使い排圧を高め,スパッタリングを 行なう前にターゲット表面に付着している不純物を取り除 くためにターゲット上ヘシャッターを閉め,逆スパッタリ ングを10分間行ない,その後,本スパッタリングを行ない,

約1μm堆積させた。

Table.1 Sputtering conditions of the     films.

Y−Ba−Cu−O thin

Target

Target dia皿eter Substrate

Substrate temperature Sputtering gas Gas pressure RF input power Growth rate

YBaCuO pellets

75mm

Mgo (loo)

Room temperature

Ar

4 Pa

150W

1 Onm /min

 スパッタ時にはCuが減少する傾向があることが知られ ている4)。そこで,ターゲットを薄い銅板上にペレット

一 126 一

(3)

イットリウム系酸化物超伝導薄膜に関する研究  原田・梶山

隙間が最小になるように置き銅板に対するペレットの占領 面積によって,Cu比がどの程度変化するのかをEPMAによ

り調べた。銅板に対するペレットの占領面積を,42%,65%,

90%の3種類設定した。図2へペレットの占領面積に対す るCu比を示す。図2よりペレットの占領面積を小さくす るとCu比は大きくなることがわかる。スパッタ時に減少 する傾向があるCuをペレットの下へ薄い銅板を敷くこと により増大することがわかった。このことを利用して本実 験には,3種類の銅板に対するペレットの占領面積を設定

し,酸化物超伝導薄膜を成卸した。

 次に薄膜中に酸素を取り入れるために,スパッタ終了後 電気炉(ヤナコ製YMF−103)で大気中920℃,2時間の アニールを行なった。

5

Ns  N

NN  N o so rx)  Target crea ct the pettetsCete)

Fig.2 Target area of the pellets vs Cu composition.

4.実験結果および考察 4一一1.EPMAによる定量分析

 作製した薄膜をEPMAにより微細構造,元素濃度につい て調べた。表2に,スパッタ後とアニール後のY:Ba:Cuの 組成比を示す。アニール前後で,Y:Ba:Cuの組成比が変化

しているのがわかる。これは,アニールによって膜中へ酸 素が取り込まれて膜の成長が促進されたためと考えられ る。また,図3に薄膜のSEM写真を示す。白く浮き出てい るのは,Cuが積出化したものであり, Cu比が小さくなる ごとに積出化したCuが減り,それに伴い大きな楕円状の 結晶粒も増加して空隙が減り,YBCO膜が成長していると 考えられ,目標の組成比に近づいていることがわかった。

Table.2 Chemical composition of the Y−Ba−Cu−O thin     films by EPMA

Sample

mumber Y:Ba:Cu

≠?狽?秩@sputtering

Y:Ba:Cu

≠?狽?秩@annealing

2−01 1.0:1.4:11.8 1.0:0.6:9.2

2−02 1.0:1.6:8.9 LO:1.1:7.8

2−04 1,0:1.5:4.4 1.0:1.1:2.8

Fig.3 SEM photograph of the Y−Ba Cu−O thin fiim.

4−2.X線による結晶解析

 作製した薄膜の結晶解析をX線回折測定で行なった。図 4にX線回折の測定結果を示す。試料は,アニールをして いない2−03とアニールをした2−04の2種類について測定し

た。

 図4よりアニールしたものとしないものでは,ピークの でかたが違う。これは,アニールをすることによって膜中 に酸素が取り入れられYBCO化合物が成長するからであ る。また470のピークはMgOのピークである。

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Fig.4 X−ray diffraction pattern of the Y−Ba Cu O thin    film.

4−3.臨界温度Tcの測定

 臨界温度Tcの測定は,4端子法により測定した。図5に 測定結果を示す。

一127一

(4)

津山高専紀要 第29号  (1991)

 図5より2−01と2−02は,Cu比が目標の組成比3よりも かなり多く含まれているため半導体的な特性を示した。』ま た,2−04は液体窒素温度(77K)で超伝導へ転移する傾向を 見せたが,抵抗は零までは落ちなかった。77kで残留抵抗 が出たのは,Ba比が目標の組成比2よりもかなり小さい ためである。尚,この超伝導転移の傾向を見せた2つの試 料を詫間電波高専のクライオミニを用いて12[K]まで温度 を:下げ抵抗を測定した結果を図6に示す。約30[K]で抵 抗が零となり,超伝導となることを確認した。今後,Ba 比を正確な比にできれば77K以上で超伝導へ転移すると考 えられる。

︵著コ.﹄b左書≧魎田匡

2−or

2−02

2−04

o 50    質〕0    旧0    2α〕    烈)    300         TetTpa ature T(K)

Fig.5 Resistance vs temperature of the Y−Ba−Cu 一〇 t・hin    film.

リング法により作製することを目的として行なった。作製 した薄膜における特性評価を行ない以下のことを得た。

  (1)銅板上にペレットを敷いたターゲットにおいて,

    薄膜中の化学量論比の調整ができることがわかっ     た。

  (2)薄膜をアニールすることによりYBCO膜を結晶化     させることができた。

  (3)YBa 2 Cu 30xに近い薄膜は超伝導へ転移し,大き     くずれているものは半導体的な特性を示すことが     わかった。

今後,酸化物超伝導薄膜を作製するにあたっては,以下 に示すことが課題である。

  (1)ターゲット組成比の適正化。

  (2)デバイス応用を配慮した薄膜化。

  (3)再現性のある薄膜作製方法の確立。

 本研究にあたり,本校情報工学科技官の西彰矩氏には,

試料の測定をはじめ,多大の御協力を頂き深謝致します。

6. 参 考 文 献

︵揖§.﹄﹂o︶¢ 盈≧﹄蓋

1) J.G.Bednorz and K.A.Muller;Z.Phys.,B64(1986),

 189

2) C.W.Chu,P.H.Hor,R.L.Meng,L.Gao,Z.J.Huang,

 Y.Q.Wang,J.Bechtold,D.Campbe11,M.K.Wu,

 J. Ashburm and C.Y.Huang,Phys.Rev.Lett.,58(1987),

 405

3)原田 寛治;津山工業高専紀要,27(1989),77 4) H.Myoren,Y.Nishiyama,H.Nasu,T.lmura,Y.Osaka,

 S.Yamanaka and M.Hattori;Jpn.J,App 1.Phys.,27  (1988) LIO68

5)山香,太刀川,一ノ瀬;高温超伝導入門,(1989),97,オー

 ム社

6)長谷川,岡村,小野;超伝導セラミックス,(1987),69,

 工業調査会

D

Ternper・αture  T(K)

1co

Fig.6 Resistance vs temperature of the Y−Ba−Cu−O thin    film using the cryostats with the mecanical    compressor.

5.結  論

 本研究では,Y−Ba−Cu−0酸化物超伝導体を粉末冶金法 で作製したものをスパッタリング用ターゲットに用い,で きるだけ化学量論比に近い酸化物超伝導薄膜を,スパッタ

ー128一

参照

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