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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士(水産科学)アメルモハメドアブドルノヾキィ

    学位論文題名

Control Mechanism of SpermatogenesislnTeleOStFiSheS:     InVOlVementofSeXSteroidHOrmoneS

  (性ステロイドホルモンによる魚類精子形成制御機構に関する研究)

学位論文内容の要旨

  生 物は 、生殖 を行 うこと により、そのたびに若返りながら生命の連 続 性 を 維 持し て い る 。 こ の 生殖 を担う 主役 が卵お よび 精子と いっ た 生 殖 細 胞 であ り 、 生 殖 細 胞 を作 る過程 が配 偶子形 成で ある。 配偶 子 形 成 の 制 御機 構 の 詳 細 を 明 らか にする こと は、有 用魚 種の種 苗生 産 技 術 を 確 立 あ る い は 改 良 す る 上 で 非 常 に 重 要 で あ る 。   雄 の 配 偶 子 : 精 子 を 作 る 精 子 形 成 過 程 は、 生 殖 腺 刺 激 ホ ル モン   (GTH)お よ びGTHに よ っ て 産 生 が 誘 導 さ れ て い る 性 ス テ ロ イ ド ホルモンによって制御されている。魚類では、二ホンウナギ(Anguilla japonica)の 精 巣 お よ び 生 殖 細 胞 の培 養 系 の 確 立 以 来、GTHお よび 性 ス テ ロ イド ホ ル モ ン に よ る制 御機構 の詳 細が、 分子 レベル で明 ら か に な り つっ あ る 。 し か し 、ウ ナギ以 外の 魚類で は、 精子形 成の 解 析 に 適 し た実 験 系 が 存 在 し ない ため、 魚類 共通の 制御 機構を 解明 す る こ と は 困難 で あ っ た 。 そ こで 本研究 は、 魚類共 通の 精子形 成の 制 御 機 構 を 解析 す る こ と を 目 的と して、 ウナ ギ以外 の魚 種とし て、 サ ケ科 魚類 のイト ウ(llucho perryi)を 用いて 精子 形成の 制御 機構解析 系 を 作 製 し、 こ れ を 用 い て 内分 泌因子 、特 に性ス テロ イドホ ルモ ン による精子形成の制御機構を解析した。

  生 体 外 精巣 器 官 培 養 系 の 確立 に先立 ち、 イトウ の精 子形成 過程 と そ れ に 伴 う血 中 性 ス テ ロ イ ドホ ルモン 量の 変化を 調べ た。イ トウ の

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精子形成の開始は他魚種と比較して遅い。3年魚の2月(受精後44 ケ月)までは、精巣中に生殖細胞として精原幹細胞であるA型ある いは初期B型精原細胞のみが存在し、それ以上に発達した生殖細胞 は全く存在しない。3月になると精子形成が開始し、増殖型の後期 B型精 原細胞 が出 現し、 さらに4年魚の6月には減数分裂を開始し た精母細胞と精細胞、8月には精子変態を終了した精子がそれぞれ 出現した。その後、精子形成は更に進行し、翌年の2月には、産卵 期(5月)とほぼ同様の精巣の状態であった。

  性成熟に関わると予想される3種類の性ステ口イドホルモン;11ー ケ ト テス トステ 口ン(11‑KT)、エス トラ ジオー ル‑17p(E2)お よ び17a,20[3‑ジヒド口キシ‑4‑プレグネン‑3‑オン(17a,20[3‑DP)の精 子形成の進行に伴う血中量の変化を、ラジオイムノアッセイ法によ り測定した。ウナギの精子形成誘起ホルモンである11‑KTは、精子 形成開始前の個体ではIng/ml前後と低い値を示していたが、精子形 成開始直前に上昇を開始し、精原細胞の増殖が認められる3月には 4.15土0.3 8ng/mlと有意に上昇した。その後、一旦その値は減少する が、精子が精巣に出現する8月から再び増加に転じ、産卵期の2週 間前にはその値はほぼ100ng/mlに達した。ウナギでは精原幹細胞の 再生分裂の制御に関わるE2は、55.5pg/mlから333pg/mlと個体差は 激しいものの、確実に雄個体血中に存在した。その血中の季節変化 は、精子形成の前半が高く、成熟が進行するにっれて減少する傾向 が認められた。ウナギおよびサケ科魚類の精子成熟誘起ステ口イド である17a,20|3‑DPは、他のサケ科魚類と同様、精原細胞増殖期で の200pg/mlの小さなピークと、産卵期の直前からの7.5ng/mlに達 する劇的な増加が認められた。これらの結果から、イトウでもウナ ギと同様、11‑KTは精子形成の開始と二次性徴、E2は精原幹細胞の 再生分裂、17a,2013‑DPは精子成熟の制御にそれぞれ関わることが考

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えられた。

  次に、精原幹細胞のみを持っイトウ精巣を用いて、精巣器官培養 系を構築しそれを用いて、性ステ口イドホルモンの精子形成への作 用を直接的に調べた。培養は、二ト口セル口ース膜で覆ったニワト コの髄上に細切し たイトウ精巣片を置き、それをL‑15を基本とし た培 養液に浮かせ る方法を採用した。 培養は12℃、100% 空気条 件下で行われた。この培養系に11‑KT、E2または17a,20[3‑DPを添 加し、これらのステ口イドホルモンがイトウ精子形成に与える影響 を形態学的に調べた。その結果、各ステ口イドとも精原細胞の増殖 を有意に誘導した。しかし、E2によって増殖した精原幹細胞は、増 殖後も精原幹細胞のままであったのに対し、11‑KTおよび17a,20[3‑

DPの 刺激によって増殖 した精原細胞は、その後減数分裂へ向かう 増殖 型の 後 期B型精 原 細胞 であ っ た。 この 結果は、11‑KTおよ び 17a,2013‑DPは減数分裂ヘ向かう精原細胞の増殖分裂を誘導し、E2 は精原幹細胞の再生分裂を誘導したことを示しており、11‑KTおよ びE2に関しては、ウナ ギで示された仮説、 すなわち11‑KTが精 子 形成開始因子であり、E2が精原幹細胞の再生分裂誘起因子であるこ とをウナギ以外の魚種で始めて生体外で追認した。しかしイトウで は、長期間の培養を行っても、減数分裂以降の精子形成過程は誘導 されなかったことから、減数分裂以降の制御機構を解析するために は 、 今 後 さ ら に 培 養 系 の 改 良 を 重 ね る 必 要 が あ る 。   イトウの精巣器官培養実験では、11‑KTのみならず、17a,2013‑DP によっても精原細胞の増殖分裂が誘導された。魚類では、17a,2013‑

DPは 精子成熟の誘導に 関わるホルモンと考えられているが、初期 の精子形成の制御に関しては、いずれの種でも明らかとなっていな い。そこで、初期精子形成過程の内分泌制御機構が明らかとなって いるウナギの精巣器官培養系を用いて、17a,20[3‑DPの精子形成への

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作用を確かめた。17a,20t3‑DPを添加してウナギ精巣を培養したとこ ろ、100 pg/mlという低濃度で、10 ng/mlの11‑KTを添加した場合と 同様、精原細胞の増殖から精子変態にいたる全精子形成過程が誘導 された。しかし、11‑KTは、精子形成開始時に培養液中に存在して いれば、その後培養液から11‑KTを取り除いても精子形成は停止す ることなく進行するのに対し、17a,20[3‑DPは精子形成のすべての過 程で常に培養液中に存在していなければ、精子形成は進行しなかっ た。この結果より、17a,,20[3‑DPは11‑KTと同様、精子形成の全過 程を誘導する能カはあるが、その制御機構は明らかに異なることが 判明した。このように、ウナギでもイトウと同様、17a,20f3‑DPが精 子形成を誘導する、ことが明らかとなったが、11‑KTと17a,20{3‑DP の役割の違いな.ど、新たな疑問が生じた。魚類の精子形成制御機構 の全貌を解 明するためには、今後、11‑KTと17a,20[3‑DPの作用メ カ こズ ムの 違 いを 分子 レ ベル で解 明すること が必要となろう。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助教授 助教授

山内晧平 原   彰彦 荒井克俊 足立伸次 三浦   猛

    学位論文題名

Control IVIechanism of Spermatogenesis in Teleost Fishes:

    Involvement of Sex Steroid Hormones

( 性 ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン に よ る 魚 類 精 子 形 成 制 御 機 構 に 関 す る 研 究 )

  精 子 形 成 過 程 は 、 生 殖 腺 刺 激 ホ ル モ ン (GTH)お よ び GTHに よ っ て 産 生 が 誘 導 さ れ て い る 性 ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン に よ っ て 制 御 さ れ て い る 。 魚 類 で は ニ ホ ン ウ ナ ギ(AngumaJapoca) の 精 巣 お よ び 生 殖 細 胞 の 培 養 系 の 確 立 以 来 、 ( 珊H お よ び 性 ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン に よ る 制 御 機 構 の 詳 細 が 分 子 レ ベ ル で 明 ら か に な り つ っ あ る 。 し か し ウ ナ ギ 以 外 の 魚 類 で は 、 精 子 形 成 の 解 析 に 適 し た 実 験 系 が 存 在 し な い た め 、 魚 類 共 通 の 制 御 機 構 を 解 明 す る こ と は 困 難 で あ っ た 。 そ こ で 本 研 究 は 、 魚 類 共 通 の 精 子 形 成 の 制 御 機 構 を 解 析 す る こ と を 目 的 と し て 、 サ ケ 科 魚 の イ ト ウ (Huchopj) を 用 い て 精 子 形 成 の 制 御 機 構 解 析 系 を 作 製 し 、 こ れ を 用 い て 内 分 泌 因 子 、 特 に 性 ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン に よ る 精 子 形 成 の 制 御 機 構 を 解 析 し た 。

  生 体 外 精 巣 器 官 培 養 系 の 確 立 に 先 立 ち 、 イ ト ウ の 精 子 形 成 過 程 と そ れ に 伴 う 血 中 性 ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン 量 の 変 化 を 調 べ た 。3年 魚 の2月 ま で は 、 精 巣 中 に 生 殖 細 胞 と し て 精 原 幹 細 胞 の み が 存 在 し 、 そ れ 以 上 に 発 達 し た 生 殖 細 胞 は 全 く 存 在 し な い 。3月 に な る と 精 子 形 成 が 開 始 し 、 増 殖 型 の 精 原 細 胞 が 出 現 し 、 さ ら 4年 魚 の6月 に は 精 母 細 胞 と 精 細 胞 、8月 に は 精 子 が そ れ ぞ れ 出 現 し た 。 そ の 後 、 精 子 形 成 は 進 行 し 、 翌 年 の2月 に は 、 産 卵 期 (5月 ) と ほ ぼ 同 様 の 精 巣 の 状 態 で あ っ た 。

  性 成 熟 に 関 わ る と 予 想 さ れ る3種 類 の 性 ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン ;n− ケ ト テ ス ト

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ステロン(11‑KT)、エストラ ジオール‑17(E2)および17a,20p‑ジヒドロキ シ‑4‑プレグネン‑3‑オン(17a,20[3‑DP)の精子形成の進行に伴う血中量の変化 を測定した。ウナギの精子形成誘起ホルモンである11ーKTは、精子形成開始前 の個体では比較的低い値を示していたが、精子形成開始直前に上昇を開始し、

精原細胞の増殖が認められる3月には有意に上昇した。その後、一旦その値は 減少するが、精子が精巣に出現する8月から再び著しい増加に転じ、産卵期の2 週間前にはピークに達した。ウナギでは精原幹細胞の再生分裂の制御に関わる E2は、個体差は激しいものの精子形成の期間中常に雄個体血中に存在した。魚 類の黄体ホルモンである17cx,20p‑DPは、他のサケ科魚類と同様、精原細胞増 殖期での小 さなピーク と、産卵期 の直前から の劇的な増加が認められた。

  次に、精原幹細胞のみを持っイトウ精巣を用いて、精巣器官培養系を構築し、

性ステロイドの精子形成への作用を直接的に調べた。培養系に11‑KT、E2また は17a,2013‑DPを添加し、これらのステロイドホルモンがイトウ精子形成に与 える影響を形態学的に調べところ、各ステロイドとも精原細胞の増殖を有意に 誘導した。しかし、E2によって誘導された増殖は精原幹細胞の再生分裂であっ たのに対し、11‑KTおよび17cx,20[3‑DPによって誘導された増殖は減数分裂ヘ 向かう精原細胞の増殖分裂であった。この様に、11‑KTおよびE2に関しては、

ウナギで示 された仮説、すなわち11‑KTが精子形成開始因子であり、E2が精 原幹細胞の再生分裂誘起因子であることをウナギ以外の魚種で始めて生体外で 追認した。しかしイトウでは、長期間の培養を行っても、減数分裂以降の精子 形成過程は誘導されなかった。

  イトウの精巣器官培養実験では、11‑KTのみならず、17cc,20p‑DPによっても 精原細胞の増殖分裂が誘導された。魚類では、170c,20p‑DPは精子成熟の誘導に 関わるホルモンと考えられているが、初期の精子形成の制御に関しては、いず れの種でも明らかとなっていない。そこで、初期精子形成過程の内分泌制御機 構が明らかとなっているウナギの精巣器官培養系を用いて、17a,20p‑DPの精子 形成への作用を確かめた。170c,20p‑DPを添加してウナギ精巣を培養したとこ ろ、11‑KTを添加した場合と同様、精原細胞の増殖から精子変態にいたる全精 子形成過程が誘導された。しかし、11‑KTは、精子形成開始時に培養液中に存 在していれば、その後培養液から11‑KTを取り除いても精子形成は停止するこ となく進行するのに対し、17cx,20[3‑DPは精子形成のすべての過程で常に培養液 中に 存 在し て いな け れば 、 精子 形 成は進行 しなかった 。この結果 より、

17a,20{3‑DP11‑KTと同様、精子形成の全過程を誘導する能カはあるが、そ の制御機構は明らかに異なることが判明した。

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  以上のように、本研究は、E2および11‑KTの精子形成への作用をウナギ以 外で初めて追認するとともに、黄体ホルモンの精子形成への作用を初めて明ら かにした。これらの結果は、難種苗生産魚の精子作出技術の確立に大きな影響 を与えるものと高く評価される。

  よって審査員一同は、著者が北海道大学博士(水産科学)の学位を授与され る資格を有すると認める。

参照

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