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森田 紘圭

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Academic year: 2021

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漸次的な街区群の再構築によるクオリティストック化と 低炭素化の同時実現手法

A consequential reform of street blocks to dually achieve their quality stock making and low carbonization

森田 紘圭

1*

・加藤 博和

2

・杉本 賢二

3

・林 良嗣

4

・村山 顕人

5

Hiroyoshi MORITA 1*, Hirokazu KATO 2, Kenji SUGIMOTO 3, Yoshitsugu HAYASHI 4 and Akito MURAYAMA 5

1大日本コンサルタント株式会社 インフラ技術研究所

2名古屋大学 大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター

3和歌山大学 システム工学部

4中部大学 総合工学研究所

5東京大学 大学院工学系研究科

1 Research Institute of Infrastructure Engineering, Nippon Engineering Consultants Co., Ltd.

2 Education and Research Center for Sustainable Co-Development, Nagoya University

3 Faculty of Systems Engineering, Wakayama University

4 Institute of Science and Technology Research, Chubu University

5 School of Engineering, The University of Tokyo

摘  要

 土地利用が混在し権利関係が複雑な日本の既成市街地を低炭素型へ転換するために は,再開発など大規模な開発による都市更新は現実的ではなく,地区内の土地・建物 所有者が所有する建物の更新時期を活用して段階的に空間の再構築を誘導していくこ とが重要となる。本稿では,建築・エネルギー・設備・交通を統合的に扱え,かつ空 間デザインを論じるにあたって大きすぎない「街区群」を空間計画の単位として,望 ましい将来デザインに向かって漸次的に地区を低炭素化する手法を論じる。研究の手 法として,まず計画プロセス全体を通して定量的にモニタリング,進捗評価できるシ ステムを開発し,それを名古屋都市圏において異なる特性を持つ三つの地区に適用し,

その適用可能性と効果を論じた。その結果,空間デザインと環境技術を統合的に進め ることが,地域の自立的な低炭素化に必要不可欠であること,人口減少地区では地区 レベルでの土地利用方針の検討も街区群の低炭素化に重要な取組となることが明らか となった。

キーワード:持続可能性,集約型都市,生活の質,地区計画,トリプルボトムライン Key words:sustainability, intensive urban structure, quality of life,

community planning, triple bottom line

1.はじめに

1.1  集約型都市構造実現のための市街地街区群 再編成

日本では高度経済成長期以降の都市化により,面 的開発やスプロール化が進行し,古くからの中心市 街地・集落から郊外へと人口の拡散が進んできた。

その結果,既成市街地の魅力低下,インフラ・建物 維持費用の急増,環境負荷の増大が課題となってい る。さらに,今後は多くの都市で人口が減少するこ とが予想されており,低密な都市構造のままでは,

環境的にも経済的にもより一層非効率となることが

懸念される。

その打開策として,集約型都市構造への転換を掲 げる自治体が増加しつつある。その基本的な考え方 は,スプロール化が進んだ環境的にも経済的にも非 効率な地区から,利便性の高い都心・近郊部へと人 口や都市機能の集約を進めるものである。しかし,

これらの自治体においても,人口を集約する地区を どのようにデザインしそれを実現していくべきかに ついては,十分な議論がされていない。地区の将来 デザインがないまま,単に高層化や高密化によって 人口集約のための受け皿を用意しても,日照や景観 の悪化,居住スペースの狭小化などにより,居住者 受付;2017817日,受理:20171113

 〒464-0045 愛知県名古屋市西区名駅2-27-8e-mail:[email protected]

(2)

森田ほか:漸次的な街区群の再構築によるクオリティストック化と低炭素化の同時実現手法 が享受できる生活の質(QOL:Quality of Life)が悪

化するために,人口が集まらない可能性もある。集 約型都市構造への転換を着実に進めるためには,そ れぞれの地区特有の課題や性質に応じて高い生活の 質の確保,着実な環境負荷の低減を実現する空間形 成を目指すことが重要であるが,地区ごとに多様な 課題や特性を有する広域な都市空間において,建物 レベルに落とし込んだ計画を論じることは非現実的 である。一方で,都市全体の方針を定めるのみでは 不十分であり,今後はそれを支える個別地区の空間 デザインやプロセスを論じることが必要となる。

1.2  現在の低炭素まちづくりにおける個別技術 支援指向と地区空間デザイン指向

現在,日本における低炭素な都市形成のための取 組は,東日本大震災により引き起こされた電力ひっ 迫や,新たな環境市場の開拓などを背景に,Smart- CityまたはSmart-Communityなどとして進められ てきている。例えば,経済産業省は平成23年度か ら27年度にかけて横浜市,豊田市,けいはんな学 研都市,北九州市を次世代エネルギー・社会システ

1) 実証地域に選定し,積極的に支援を行ってき

た。内閣官房地域活性化総合事務局2)は,環境モデ ル都市に続く環境未来都市構想を掲げ,被災地域で 6件,その他の地域で5件を選定した。国土交通省 は,まち・住まい・交通の創蓄省エネルギー化モデ ル構築支援事業3)を選定し支援を行っている。民間 事業者においては,環境技術を積極導入した大都市 再開発や新規住宅地開発を進めている。しかし,こ れらの取組は,太陽光発電や電気自動車,あるいは スマートハウスやICTを活用したエネルギー管理 システムなど,新たな技術の導入が中心である。土 地利用や住宅・インフラストックの管理など,市街 地の空間デザインに着目した事業や計画は,東日本 大震災における被災地域を除けばほとんど見られな い。また,事業が面的な取組である場合であって も,大都市における再開発や新市街地開発がほとん どであり,既成市街地を対象とした事業は実施され ていない。

一方,国は低炭素な集約地区形成支援のため,

2012年に「都市の低炭素化に関する法律(通称:エ コまち法)」を制定,施行4)しており,それに基づき 愛知県長久手市や長野県小諸市などいくつかの自治 体が計画策定を行っている。施設や区画整理を対象 とした取組に偏ってはいるものの,既成市街地を対 象として地区の空間デザインを含めた試みである。

海外に目を向けると,欧州や米国など先進国にお いても,すでに既成市街地を対象として地区の空間 デザインも包括した取組が始まっている。米国オレ ゴン州ポートランドを中心に取り組まれている Ecodistrict5)では,既存市街地を対象として,建物 やインフラストラクチュアにかかわるハードウェア と人々や生活行動にかかわるソフトウェアに対して

総合的に取り組むプログラムが実施されている。ま た,オランダのアムステルダムにおいても6),既存 市街地を対象に参加型のまちづくりを展開してお り,中には,古くからの商店街に対して,その地区 の風土を壊さぬよう技術的な導入を進めている地区 もある。英国では,個別技術のみではなく,住宅躯 体,地区の空間デザインを含めた総合的なデザイン をZED(Zero Energy Development)7)として目標と する市街地において,住宅密度別に計画を検討し,

その一部が既存市街地で導入されているほか,個別 更新を利用して熱導管ネットワークを既成市街地に 展開しようという事業も存在している。

1.3  パリ協定実現のための低炭素まちづくり

2015年にCOP21において合意されたパリ協定に

おいては,我が国は2030年のGHG排出削減目標

を2013年度比25.0%削減と約束しており,中でも

家庭及び業務その他部門は30%以上の削減目標を 掲げている8)。しかし,省エネや再生可能エネルギ ーなどの技術性能はそれが適用される状況に伴って 大きく変化し,現在のように単にそれぞれの技術導 入のみを推し進めても,全ての技術が効率的に機能 する保証はない。建物やインフラの老朽化が進む中 で,低炭素な都市を実現するためには,単に個別技 術の普及だけでなく,交通やより広範な面的環境も 含めた「街区群」の空間スケールで横断的な低炭素 化を推進する必要がある。

さらに,既成市街地型の街区群を低炭素型へ転換 するための手法としては,行政や企業・組合等が事 業として一斉再開発を行う場合と,地区全体で合意 されたルール(地区計画等)に従い,地区内の土地・

建物所有者が各建物を更新していく場合とが考えら れる。しかし,現在の日本の経済状況や土地制度で は,一部の大都市圏における都心部を除き一斉再開 発を進めることは困難であり,地区内の土地・建物 所有者が所有する建物の更新時期を活用して段階的 に空間の再構築を誘導していくほかない。その場 合,将来デザインの実現には多大な時間がかかり,

その途中段階で環境性能が低下する可能性もある。

目指す将来像が実現された将来の一時点のみなら ず,それに至るまでの計画プロセス全体を通して評 価するとともに,実際にどのようなステップでまち づくりへの取組を進めていくべきか,定量的な根拠 をもとにしながら検討することが必要である。

2.研究の方法

2.1 研究の目的と評価方法

上述の都市の課題解決に向けて,本研究では定量 的な評価・分析を可能とする地区統合環境性能評価 モデルを開発し,それを用いて特性の異なる三つの 街区群について時系列的な評価を行った。開発した システムには,都市の持続可能性をバランスよく評

参照

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