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I 本論文の構成と概要 本論文の構成は以下の通りである. 第

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Academic year: 2022

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2010 年 5 月 12 日  博士学位申請論文本審査報告書  

 

早稲田大学大学院 

経済学研究科長  永田  良  殿   

審査委員 

主査  政治経済学術院  教授  Dr. rer. pol. 中村愼一郎 

副査 京都大学 農学研究科生物資源経済学専攻 教授 博士 (農学)  栗山浩一  副査 政治経済学術院  教授  西郷浩

副査 社会科学総合学術院  教授 博士(商学) 鷲津明由   

 

学位申請者: 板明果 (東北大学  多元物質科学研究所, 経済学研究科博士後期課程 2008 年 3 月 単位取得退学,研究指導  中村愼一郎) 

 

学位申請論文:「家計のライフスタイル変化と環境への影響」 

 

審査委員は上記の学位申請論文について慎重に審査し,かつ,申請者に対する面接試験

(2010年 5 月 11 日)を実施した結果,同論文が博士学位論文に値すると判定する. 

 

記   

I 本論文の構成と概要

本論文の構成は以下の通りである. 

 

第1 章耐久財の登場によるライフスタイル変化と消費者理論 1.1 日本における耐久消費財の普及

1.2 先行研究の整理

1.3 耐久消費財と消費者行動の関連性

−冷蔵庫を事例とした統計資料による概観−

1.4 耐久消費財と通常財の関連性を考慮した新たなモデル 1.5 まとめ

第2 章消費形態の変化(サービサイジング)による環境影響評価 -グリーン・サービサイジングの対外食産業への適応事例より- 2.1 サービサイジングのビジネス形態

2.2 分析方法

2.3 データと事例店舗での節水効果 2.4 分析結果とまとめ

第3 章食スタイル(内食・中食・外食)の変化がもたらす環境影響評価

(2)

3.1 評価手法

3.2 分析結果とまとめ 本研究のまとめと今後の課題 付論A 環境影響評価の手法

付論B 外食産業への節水サービス導入がもたらす食スタイル変化の環境影響評価

本論文の内容概要  

経済活動は究極的には家計の欲求充足のために営まれているとして過言ではない.あらゆ る経済活動は直接・間接に何らかの環境負荷を生じるから,それに伴う環境負荷を適切に 理解するには家計の消費形態(ライフスタイル)を考慮する事が重要である.この認識の下,

本論文は消費者のライフスタイルが変化するメカニズムを考察しつつ,ライフスタイル変 化が及ぼす環境への影響を理論的かつ実証的に分析した.高度成長期における「3種の神器」

普及が典型的に示すように,ライフスタイル変化の極めて大きな部分が新しい耐久消費財 の導入によって実現されてきた点に着目している.第1章ではこの点について詳細を与える と共に,それを踏まえた上で冷蔵庫や電子レンジなどの耐久消費財の登場が消費者行動に 及ぼす影響を経済理論的な観点から分析している.続く2章では,詳細なデータと技術情報 を廃棄物産業連関分析(WIO, Nakamura and Kondo 2002)と組み合わせて用いた食関連 LCA(ライフサイクル影響分析)を行っている.3章が外食産業における節水機器導入影響,

4章は食生活の変化(内食,中食,外食)の影響である. 

   

本論文の内容概要を章別に示せば以下の通りである. 

 

[1] 第 1 章 

耐久財が消費者のライフスタイルを変化させる様子をミクロ経済学的視点から考察して いる.先ず,日本における耐久消費財の普及とその消費形態との関連性を,特に冷蔵庫 の大型化・高機能化とその消費支出との関連に注目して概観した.その上で,耐久消費 財と消費行動の関連を考慮した先行研究(Bernanke(1985), Conrad and Schroeder(1991), Becker

(1965), Lancaster(1966))の考え方を整理した. 

耐久消費財は,保有する事でこれまで購入できなかった財サービスを新たに消費の選択 肢に加える効果を持つ.例えば,アイスクリームの自宅消費は冷凍冷蔵庫保有により初 めて可能となり,常温長期保存可能なレトルト食品消費は電子レンジ保有により可能と なる(図 1.2).換言すれば,新たな耐久財の登場は消費形態を大きく変える事で産業構造 ひいては環境へも甚大なる影響を持ち得るのである. 

新たな耐久財を導入するか否かの選択が家計消費行動に影響するのであるが,これは耐 久財選択と消費財選択が家計の効用関数において分離可能(separable)ではない事を意 味する.すなわち,耐久消費財の機種選択と消費財構成の選択は独立ではなく,分離可 能性の弱定理(Leontief-Sono)が満たされない.関連する先行研究がこの点を明示的に考 慮していない事,すなわち暗黙の内に分離可能性を仮定している事に着目し,これを考

(3)

慮した効用関数モデルを開発した((1.1)-(1.5)). 

   

   

(1.1)は家計iの 2 財効用関数であるが,生鮮食品を 1 財,冷凍保存を必要とする財を 2 財とし,数量をq, 価格を p で表す.Zは人口学的変数である.又,冷凍機能付き冷蔵庫 の保有をKB,この機能を持たない冷蔵庫の保有をKAで表す.両者を同時保有する事はない とする(1.3)(1.4).それぞれの冷蔵庫の資本サービス価格をpA, pB とする.(1.1)は,

冷凍保存必要財からの効用が冷凍機能付き冷蔵庫の保有に依存する事を表す. 

 

冷凍機能付き冷蔵庫が機能無し冷蔵庫よりも相対的に高価である場合,予算制約(1.2)か ら冷凍機能付き冷蔵庫が購入されないので財 2 も購入されない(財 2 は冷凍庫非保有家計 に効用を与えない).それに対し,冷凍機能付き冷蔵庫の相対価格が低下すると,これが 選択され,同時に家計は冷凍財から効用を得るのでこれを消費する.この図式は容易に 3 財以上の場合にも拡張可能であるが,耐久財価格の低下が消費形態を変えていくメカニ ズムを簡単かつ明瞭に示している. 

 

なお,この章は Sayaka ITA,"The Influence of Durable Goods on Japanese Consumersʼ  Behaviours,” Advances in Life Cycle Engineering for Sustainable Manufacturing  Businesses (in S. Takada and Y. Umeda eds.),Springer,London,pp. 401-405,2007 を加筆した物である. 

 

(4)

[2] 第 2 章 

外食産業における節水サービスの環境影響についてWIOを用いたLCA分析を行っている.

節水を可能にするのは,タイマーやセンサー制御により蛇口開閉を自動制御する節水(水量 調整)機器である.これが「サービス」であるのは,機器販売ではなく,それが提供する節 水サービスが販売目的となっている事による.この種のビジネスをサービサイジング・ビ ジネスと呼び,製造・修理・廃棄の全工程のスリム化を通じる環境負荷低減(省エネ・省 資源)への貢献が期待されている.実際に試験的導入実績のある節水機器・サービスにつ いての詳細なミクロ・技術情報(節水効果,給湯用エネルギー消費,機器稼働用電力消費等) を踏まえ,我が国外食産業にこれが導入された場合の環境効果(CO2排出量)についてトップ ダウン型のWIOを用いてLCAを行った野心的研究である.又,店舗の事業規模や混雑時の 厨房内人員の充足度合いなどによりその削減効果が異なる可能性がある事から,事業規模 による効果の違いを考慮するなど,分析の現実有効性を高めるためのきめ細かい配慮を行 っている(図2.1).

(5)

 

事例店舗から得られた上下水・エネルギーの削減効果が全ての外食店舗でも当てはまり,

また日本の全外食店舗に節水サービスが導入されるとき,我が国のCO2 排出量は年間105 万t-CO2(2000 年総排出量の0.08%) 程度削減される事が示された.また,CO2 排出削減 量の半分以上は水使用量の削減にともなう給湯用エネルギーの削減に起因するとの結果を 得た.こうした上下水道・エネルギー使用量の削減にともなう環境負荷低減効果は非常に 高く,機器の製造・廃棄段階でのCO2 排出総量を,節水機器導入後 1 年間で上回ると見 込める事が示された.

なお,本章は板明果 , 藤川清史, 任文, 外食産業への節水機器導入のライフサイクルCO2 評価,日本LCA学会誌,6,pp. 33-41, 2010,を加筆した物である.

[3] 第 3 章 

第 1 章で示した如く,冷蔵庫など調理関連耐久消費財の登場により,人々の調理パター ンのみならず,食材を含めた食のライフスタイル全体が変化したと考えられる.近年に おいて日本で進展している食の中食化(惣菜などの調理済み食品による自宅調理の代替)

や外食化は,こうした耐久消費財の登場・普及無しには実現しなかったであろう.第 3 章 は,極端な 3 種類の食生活パターン(完全内食(自宅調理),完全中食,完全外食)別 に,環境への影響を評価し,どのような食生活パターンが環境配慮的なライフスタイル であるかをWIOに基づく消費LCA手法(高瀬・近藤・鷲津,日本LCA学会誌,2006)を用いて 分析した.特に,産業連関表における中食と外食についてその素材構成を自動車などの 金属素材構成を推定する目的で本来開発されたWIO-MFA(Nakamura et al, Journal of  Industrial Ecology, 2005)を用いて推定し,分析の精度を高める工夫をしている.又,

CO2のみならず,食形態に伴う廃棄物構成・量についても詳細な検討を行った. 

各種設定条件を異にしても,内食が最も環境配慮的な食生活であるとの結果が共通的に得

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られた.近年進展した食生活の変化(中食化・外食化,とくに中食化)は環境負荷を増大 させる傾向を持つといえる.内食型が持続可能な食生活である(表3.6)とする結果が示され た.  

 

なお,本章の内容は,板明果, 高瀬浩二, 近藤康之, 鷲津明由, 「食に関するライフス タイル変化の環境影響評価:廃棄物産業連関(WIO)分析の応用」『廃棄物資源循環学会 論文誌』,20, pp. 119-132, 2009,を加筆した物である. 

 

 

II 論文の評価・学術的貢献

各章とも先行研究に対して適切にレビューを行っており,その上で本論文の位置づけが行 われている.論文で用いられているモデルの記述,および分析方法の記述は,概ね適切に 行われている.また各章はすでに論文として査読付き学術誌などに刊行されている物であ り,各章の完成度は高い.とりわけ,第3章が基づく原著論文が(社)廃棄物資源循環学 会から2010年度論文賞を受賞した事は特筆に値する.

(7)

貢献としては特に以下の3点が列挙できる:

 

1. 高度成長期における「3 種の神器」普及が典型的に示すように,ライフスタイル変化 の極めて大きな部分は新しい耐久消費財の導入によって実現されてきた.冷凍冷蔵庫 を保有しない家計が冷凍食品の購入に関心がない事から自明なように,家計が選択す る消費財集合は保有する耐久消費財によって少なからず規定される.消費に関する従 来の関連研究は効用関数における消費財と耐久財の分離可能性を仮定しているた め,耐久機器の導入による消費形態の変化を考慮するには不都合である.そこで,

これを仮定しない基本的なモデルを独自に提案し,単純な場合について若干の基本 的考察を行った. 

2. 節水効果の分析においては,事業所水準の詳細なデータと共に詳細な技術情報を用 い,さらにそれを廃棄物産業連関分析に導入するという,極めてバランスの取れた 精緻かつ包括的な分析を行っている. 

3. 食の LCA 研究は近年盛んに行われているが(日本 LCA 学会食品研究会),積み上げ法 による物が殆どで,本論のようなトップダウン型の産業連関分析を用いた物は極め て少ない.特に,WIO-MFA を併用して物理的食材組成を推定したのは本論が内外共に 初めてである.又,感度分析を的確に行っている点は LCA 研究としても高く評価で きる.今後の類似研究に対し,先導的役割を果たしている. 

 

予備審査においては,主な修正要求事項として,1) 副題をより内容に即した物に変更する 事,2)表現・字句・定義の修正・補足をする事,検討が望ましい事項として,1) 第 1 章 4 節で登場する理論モデルについて,その実証可能性について言及する事,2) 第 2 章の検討 内容についてライフサイクル費用についても言及する事,が挙げられた.本論文は,これ ら修正要求・検討要望事項の全てについて十二分な対応を行っている.特に,ライフ サイクル費用については,検討したサービス事業においてそれが制度的に保証されている 事が新たに記されている.その結果,本論文は全体として極めて完成度の高い物となって いる.  

今後の課題としては,申請者が本論文中で述べている事ではあるが,第1章で提示した分 離可能性を仮定しない効用モデルの実証化,食関連 LCA におけるより精緻なデータを用 いた分析などが求められるであろう.本論文で開発された分析手法・知見を基礎とした今 後の発展に期待したい.

  以上 

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