肺癌他臓器合併切除の検討
山梨県県立中央病院 外科
鈴木州美 小島淳夫 林真木子
千葉敦 千葉成宏
はじめに
近年、肺癌の外科治療において、そ
の根治をめざしてT3、 T4肺癌に対す
る他臓器合併切除が積極的に行われる
ようになってきた。しかし、その切除
成績はなお満足すべきものとは言いが
たい。我々の施設における他臓器合併
切除例につき、臨床的検討を行ったの
で報告する。
対象
1979年1月から1989年12月までの11
年間に行われた他臓器合併切除例は19
例であり、これは同期間に行われた原
発性肺癌手術例170例のll.2%に相当
する。
男性15例、女性4例、年齢は39才か
ら76.0才で、平均年齢62.0才であった。
結果
表1は手術例を病理病期別に分類し
たものである。皿A期61例中14例、m
B期8例中5例であり、ln期全69例の2
7.5%に相当する。
組織型別(表2)にみると、扁平上
皮癌8例、腺癌9例、小細胞癌及び腺
様のう胞癌が各々1例であった。
T3, T4例をN因子で分けてみると(
表3)、半数はNO、半数はN1又はN2
であった。T4例はN24例、 N3例は
対側肺内転移N3aの1例であった。
合併切除された臓器をのべ数で示す
表1
I
H
皿A
皿B
IV
表2
全例
78
12
61
8
11
全例
扁平上皮癌 75
腺 癌 80
小細胞癌 8
大細胞癌 3
そ の 他 4
表3
T3 NO 7
Nl l
N2 6
表4
胸壁
心膜
横隔膜
胸膜
食道外膜
8
6
3
2
2
合併切除例
0
0
14
5
0
合併切除例
8
9
1
0
1
T4 N2 4
N3 1
気管分岐部
左心房
上大静脈
大動脈
(重複あり)
1
1
1
1
(表4)と、胸壁8、心膜6、横隔膜3、
胸膜及び食道外膜2、気管分岐部、右
心房、上大静脈及び大動脈がそれぞれ
一22一
表5
右
1側肺摘除 5
1肺葉切除 2
肺葉+部分 1
左
4
4
3
表6
合併切除
手術時間 4°33’
出血量(N)1160
在院日数 53.8
全例
3°43’
550
46.5
合併切除 1臓器 15
多臓器 4
再建 胸壁 2
SVC 1
1例となっている。
行われた手術は一側肺摘除9例、肺葉
切除10例とPnumonectomyの割合が多くな
っている(表5)。複数臓器が合併切除さ
れたものは4例あり、このうち2例では
3臓器が合併切除されている。また右心
房及び食道外膜を切除した1例では人工
心肺を使用した。胸膜切除6例中2例に
マ レックスメッシュを補てんし、1例
では更に広背筋皮弁を使用した。SVC
切除の1例ではHeterogra f tにより再建
した。手術根治度は、相対治癒11例、相
対非治癒5例、絶対非治癒3例であった。
表6は、手術侵襲の大きさを手術時間、
出血量、在院日数でみたものである。合
併切除手術では、全例手術例の平均と比
較して手術時間では50分長く、出血量で
2倍多く、在院日数は約1週間長くなっ
ている。
術前合併疾患(表7)のうち重複癌が
2例あったが、これは全肺癌手術例の重
複癌合併率10%とほぼ同率である。術後
主要合併症は6例にみられた。このうち
肺炎の3例、気管支痩の1例は致命的で
あった。心臓脱及び出血の計2例に再開
胸が行われた。
合併療法は13例に行われた。化学療法
のみが6例、放射線療法のみが1例、
化学療法と放射線療法の合併療法が
1例、合併療法の行われなかったも
のが6例であった。いずれも術後に
施行された。
術後の死亡は12例あり、その内訳
を表7に示した。手術死は2例、在
院死は2例、癌死は7例あり、術後
11カ月から33カ月の間に死亡した。
他に多病死が1例あった。
表9は、術後の生存率をKaplan
Meier法による曲線で示したもので
ある。合併切除例の3年生存率33.3
%、5年生存率22.6%で、皿期全例
の生存率と有意差を認めなかった。
この理由はNO、 N1の症例が19例中
8例と多く、約58%に相対治療手術
を行うことができたためと思われる
o
考察
今回の検討では、術中胸膜浸潤を
疑って壁側あるいは縦隔胸膜合併切
除を行ったが、病理学的にP2と診
断されたものが数例あり、このよう
なものは検討から除外した。
T3症例の切除については、肺尖
一23一
表7
術前合併疾患 術後合併症
複癌 2
l決ウ 3
恃A病 2
b 息 1
醐
肺炎 2
C管支痩 1
S臓脱 1
k声 1
醐
肺炎 1
表8
手術死
在院死
癌死
多病死
2:ARDS、出血、DIC
2:肺炎
7:局所3、遠隔 5
1:肺炎
生存7:(11・67カ月)
生存率
100
8・
P
60
40
20
表9
5年生存率
(Kaplan Meyer法による)
合併切除例 22.6%
皿1期全例 19.4%
合併切除Nロ19
皿期 N・・,69
0
12 24 36 48 60
部に発生し、胸壁に浸潤するSuper i or
Sulcus Tumorを除けば、手技上の問
題も少なく、その治療成績も横隔膜を
除けば良好で、5年生存率は胸壁で30
−40%、心膜では20・40%と報告されて
いる。
一方、T4症例においては手術死亡
率か高いこと、術後遠隔成績が不良で
あることなどの問題があり、その中で
は左房合併切除において5年生存率25
%という報告もあり、比較的良好な予
後が期待できそうである。
我々の経験例においてはT4症例5
例中3例が、術後3カ月以内に死亡し、
他の1例は術後17カ月で癌死した。
縞
術後成績向上のためには、相対治癒
手術率を高めるための努力と、術後合
併症の予防か最も重要であると思われ
る。このためには術後合併療法を行う
際にも、全身状態の低下を来さないよ
うな配慮が必要であると思われた。
一24一