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不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法の検討

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‒ 1 ‒

不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法の検討

─第4学年「回路を流れる電流」の学習を事例にして─

柿 沼 宏 充  羽生市立須影小学校 清 水   誠  埼玉大学名誉教授

キーワード:概念構成、教授学習方法、電流概念、小学校理科

1 問題の所在

 学習後の児童が、学校文脈の問題では学習した科学概念を適用することができるが、生活文脈 の問題になると、先行概念を適用させてしまうことが多くの研究者により報告されてきた(例えば Gilbert et al;1982、中島;1995、湯澤;1998、稲垣・波多野;2005、田島・茂呂;2006)。中 島(1995)は、子どもは必ずしも新知識を既存知識に整合的に関連づけて概念を生成していない こと、科学的知識が日常的知識と関連づけられることなく、ばらばらに保持されている時期が長く 続くと述べている。児童が学習を通して形成される概念は1つではなく、様々な概念を取り入れ、

それぞれに重みづけをしながら、課題状況の違いに応じて、臨機応変に自身の中にある概念を使 い分けながら問題解決を行っていると考えることができる。田島(2010)は、概念を併存させた 状態は、それぞれの場面で問題解決ができるため、児童は矛盾を認識できず「分かったつもり」

になりやすいと述べている。このような、学習後であってもいくつかの概念を併存した不十分な科 学概念を構築している状態を解消し科学概念への再構成を促す教授学習方法は、これまでの「理 科教育学研究(SJST)」や「科学教育研究(JSSE)」にはみられない。

 回路を流れる電流についても、R. Osborne & P. Freyberg (1985)は、子どもたちは乾電池か ら流れる電流は+側と-側の両方から豆電球に向かって流れる(衝突モデル)といった考え方や 電流は循環するが電流の大きさは帰りの導線の中では少なくなっている(減衰モデル)といった 多様な考え方を保有することや先行概念が強固であることを指摘している。我が国においても、畔・

井村(2010)は学習後1年を経過すると科学概念は再び先行概念(衝突モデル)へと逆戻りして しまうことを明らかにしている。また、永井・河北(1999)は、電気回路の実験・観察を行って もなお、これらのモデルを強固に保持する場合が多いことを述べ、先行概念が強固であり、変容 しにくいことを指摘している。筆者らは、中島(1995)の指摘も踏まえ、子どもたちは先行概念 が強固であり変容しにくいというだけではなく、学習後には先行概念や科学概念を併存して保持 する不十分な科学概念を構築しているのではないかと考えた。

 そこで、本研究では、学習後においても十分に科学概念が形成されていない子どもたちの不十 分な科学概念を科学概念へと再構成を促す学習指導方法を検討し、その効果を「回路を流れる電流」

の学習で検証することにした。

埼玉大学紀要 教育学部,65(2):1-11(2016)

(2)

2 不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法

 Hashweh (1986)やTsai (2000)は、先行概念から科学概念へと考えが変わるためには、先行 概念と矛盾する事象の間にある認知的葛藤と先行概念と科学概念の間にある認知的葛藤の両方を 解決する必要があると述べている。Tsai (2000)は、子どもたちは先行概念と矛盾した事象を提 示するだけでは科学概念を受け入れることはないと述べ、これらの解消のための新たな概念変容 モデルとしてコンフリクトマップといった授業モデルを提案している。具体的には、学習者に矛盾 した事象を示し先行概念との間の葛藤を認識させる。次に、科学概念を提示し先行概念との間の 葛藤を認識させる。そのうえで、生徒の科学概念を裏付ける事象となる臨界事象を観察させ、科 学概念の形成を図る。臨界事象を観察した後には、科学概念と密接に関係する科学概念や科学概 念をサポートする知覚を示すとしている。そこで、本研究ではHashweh (1986)やTsai (2000)

の研究を踏まえ、単元の学習のまとめ時に、一通りの学習を終えてもなお児童が保持するいくつ かの概念を併存した不十分な科学概念に対し認知的葛藤を生起させ、サポート事象を提示し、他 者と話し合いをさせることで科学概念への再構成を促すよう授業計画を行った。

 具体的には、次に示す①~⑤の教授学習過程を行う。

① 不十分な科学概念に気づかせる

 児童が保持する不十分な科学概念に気づかせるため矛盾事象を提示して揺さぶりをかけ、認 知的葛藤を生起させることで概念の再構成の必要性を喚起する。

② 認知的葛藤を共有・焦点化する

 ①で生起させた認知的葛藤を明確にする話し合いの場を設定する。これにより、個の中で生 じていた認知的葛藤を児童相互に共有化させ、何が問題なのかを焦点化し、視点を明確にした 実験・観察が行えるようにする。

③ サポート事象を提示する

 保持していた不十分な科学概念に気がついた児童が、科学概念を再度見直す事象としてサポ ート事象を提示する。サポート事象となる観察や実験を行うことで、児童に自身の保有する不 十分な科学概念をはっきりと自覚することができるようにする。

④ 不十分な科学概念を話し合いにより再構成する

 実験の結果や考察について他者と話し合いをすることで、不十分な科学概念を科学概念へと 再構成させる。話し合いを通して、他者の多様な解釈に触れさせ、個々が持つ考えの見直しや 再吟味をさせる。

⑤ 再構成された科学概念を活用する

 科学概念を生活の中で活用していくために、適用範囲を広げていく。

3 回路を流れる電流の概念の定着状況

3-1 調査対象及び時期

 4年生で学習した回路を流れる電流について、学習後の児童がどのような概念を構成している か調査した。調査は、埼玉県内の公立小学校5・6年生(計101名:内訳は小学校5年生が51名、

小学校6年生が50名)を対象として平成26年6月10日(火)に実施した。

(3)

‒ 3 ‒ 3-2 調査問題

 作成した問題は、図1に示した回路を流れる電流の向きや大きさを問う2つの小問からなる。実 施時間は、10分で行った。

問1 乾電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。乾電池から出ている電流の向 きを矢印(→)で表してみましょう。

 なお、 で書かれた部分が乾電池と 豆電球をつなぐ線です。

問2 乾電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。回路の中に検流計を2つ図の ようにつけました。検流計はどのようになり ますか。ア~ウの中から当てはまる記号に○

をつけなさい。

ア 検流計Aの方が、検流計Bよりも値が大きい。

イ 検流計Bの方が、検流計Aよりも値が大きい。

ウ 検流計Aも検流計Bも値は同じ。

図1 調査問題

3-3 結果とその分析

 結果は、表1、表2のようであった。なお、被験者は小学校5年生が51名、小学校6年生が50 名である。

表1 電流の向き(問1の結果)

電流が衝突 +極から-極へ -極から+極へ その他

5年生(N=51) 15(29.4) 31(60.8) 3(5.9)  2(3.9)

⒍年生(N=50) 14(28.0) 26(52.0) 6(12.0) 4(8.0)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

表2 電流の大きさ(問2の結果)

ア イ ウ(正答)

5年生(N=51) 17(33.3) 3(5.9) 31(60.8)

⒍年生(N=50) 21(41.2) 2(3.9) 27(52.9)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

 電流の向きは+極から-極へ流れるや電流の大きさはどの部分も同じとする正答者は、5年生 ではいずれも約6割、6年生ではいずれも約5割であることが分かる。電流の流れる向きについて 誤答の傾向を調べてみると、衝突説と考えられる回答をした児童は5年生15人(29.4%)、6年生 14人(28.0%)であった。学習したはずの児童の約3割が依然として衝突説を支持していること

問1 乾電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。乾電池から出ている電流の向 きを矢印(→)で表してみましょう。

なお、 で書かれた部分が乾電池と 豆電球をつなぐ線です。

問2 乾電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。回路の中に検流計を2つ図の ようにつけました。検流計はどのようになり

ますか。ア~ウの中から当てはまる記号に○ 検流計A をつけなさい。

ア 検流計Aの方が、検流計Bよりも値が大きい。 検流計B イ 検流計Bの方が、検流計Aよりも値が大きい。

ウ 検流計Aも検流計Bも値は同じ。

図 1 調査問題

3-3 結果とその分析

結果は、表1、表2のようであった。なお、被験者は小学校5年生が 51 名、小学校6年生が 50 名である。

表1 電流の向き(問1の結果)

電流が衝突 +極から-極へ -極から+極へ その他

5年生(

N=51

15(29.4) 31(60.8) 3(5.9) 2(3.9)

⒍年生(

N=50

14(28.0) 26(52.0) 6(12.0) 4(8.0)

注.数字は人数。( )は%を表す。

表2 電流の大きさ(問2の結果)

ア イ ウ(正答)

5年生(N=51) 17(33.3) 3(5.9) 31(60.8)

⒍年生(N=50) 21(41.2) 2(3.9) 27(52.9) 注.数字は人数。( )は%を表す。

電流の向きは+極から-極へ流れるや電流の大きさはどの部分も同じとする正答者は、5年生 ではいずれも約6割、6年生ではいずれも約5割であることが分かる。電流の流れる向きについ て誤答の傾向を調べてみると、衝突説と考えられる回答をした児童は5年生 15 人(29.4%)、6 年生 14 人(28.0%)であった。学習したはずの児童の約3割が依然として衝突説を支持している ことが分かる。また、両問正答者について調べたところ、5年生 18 人(35.3%)、6年生 11 名(22.0%) と低いことが分かった。4年生で学習した電流概念は、児童に十分に構築されていないといえる。

(4)

が分かる。また、両問正答者について調べたところ、5年生18人(35.3%)、6年生11名(22.0%)

と低いことが分かった。4年生で学習した電流概念は、児童に十分に構築されていないといえる。

そこで、「回路を流れる電流」について学習した4年生の児童に対し、検討した不十分な科学概念 の再構成を促す学習指導方法を適用し、その効果を調べることにした。

4 検証授業

4-1 調査対象及び時期

 調査は、平成26年6月から7月にかけて、回路を流れる電流の概念の定着状況を調べたと同じ 埼玉県内の公立小学校第4学年2クラスに対して行った。この2クラスを不十分な科学概念の再 構成を促す学習指導方法により授業を行うクラス(以下、実験群という)と教科書に示された方 法により授業を行うクラス(以下、統制群という)に分けた。授業は、両群ともに4名を1グルー プとして学習を実施した。なお、被験者の55名(実験群28名・統制群27名)は、事前調査から 事後調査まですべての授業および調査に参加した児童である。

4-2 授業の概要

 授業は、実験群ではア~エのように実施した。1単位時間の授業時間は、45分であった。検討 した学習指導方法に基づき授業を実施した部分は、エで示した時間である。

ア プロペラの回る向きから電流の流れ方について予想させ、検流計をつないだりダイオード に電流を流したりして、電流の流れ方や大きさを調べさせた(第1・2時)。

イ 乾電池2個を使ってプロペラを速く回すことのできるつなぎ方を考えさせ、乾電池一個の 時と比べた(第3・4時)。

ウ 直列つなぎと並列つなぎの回路に流れる電流の向きと大きさについて学習のまとめをした。

(第5・6時)

エ 不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法を適用し、回路を流れる電流についての科 学概念を再構成させた(第7・8時)。具体的な学習指導方法は①~⑤のようである。

① 「不十分な科学概念」を構築している児童たちの考えに対する矛盾事象(並列つなぎのモ ーターの回り方が変わらない)をクラス全員に見せ、認知的葛藤を生じさせるきっかけと した。

② 既存の知識を活用させながら議論させることで、今一度個人やグループで保持する概念 をふり返らせ、認知的葛藤を児童相互に共有・焦点化させた。

③ サポート事象(検流計を抵抗の前後に2つ接続した実験とその結果)を提示し、自らの 不十分な科学概念を実験の結果に基づき自身で検証することで明確に自覚させた。

④ サポート事象の実験後、グループで話し合いを行い不十分な科学概念を科学概念へと再 構成を図った。

⑤ 再構成された科学概念(回路を流れる電流には向きがある・大きさは変わらない)を適 用させた問題解決を行わせることにより「科学概念」を確かなものにさせた。

 一方、統制群では実験群のエで示した時間の指導方法にかわり、下記のオの学習を実施した。

オ 前時にまとめた科学概念をサポートする実験として検流計の実験を行い、再度、回路を流 れる電流についてまとめた(第7・8時)。第7・8時に適用した適用した具体的な学習指導

(5)

‒ 5 ‒ 方法は①~④のようである。

① 前時の復習として、電流の向きと大きさを確認させる。

② 抵抗の両側につけた検流計の実験を行い、再度、回路を流れる電流の大きさを見る実験 を行う。

③ 結果をもとに個人で考察した後、グループで話し合いを行う。

④ 再度、回路を流れる電流の大きさは変わらないことをまとめる。

4-3 調査

4-3-1 両群の等質性

 検証授業の7日前に、児童の先行概念を調べるため乾電池と豆電球をつなげた回路を流れる電 気についてその動きを図示させる問題、既習内容である豆電球がつくつなぎ方を問う問題、検証 授業と同じ物理領域のPISA2003で出題された「物と重さ」の問題の3問について質問紙調査(図 2)した。時間は、10分間である。

問1 かん電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。乾電池から出ている電気の流れ る向きを矢印(→)で表してみましょう。

 なお、 で書かれた部分が乾電池と 豆電球をつなぐ線です。

問2 かん電池と豆電球を使って、

右の図のようにさまざまなつ なぎ方をしました。電球がつ くものはどれですか。ア~キ の中から選んで記号を書きな さい。答えは1つとはかぎり ません。

問3 同じつみ木を右の絵のように、ちがった向きにしてはかりの上におきます。はかりがし めす重さはどうなりますか。次のア~エの中から1つ選んで、その記号を書きなさい。

ア ①のめもりが一番重い。

イ ②のめもりが一番重い。

ウ ③のめもりが一番重い。

エ すべて同じ重さ。

図2 等質性を調べる質問紙

① 前時の復習として、電流の向きと大きさを確認させる。

② 抵抗の両側につけた検流計の実験を行い、再度、回路を流れる電流の大きさを見る実験を 行う。

③ 結果をもとに個人で考察した後、グループで話し合いを行う。

④ 再度、回路を流れる電流の大きさは変わらないことをまとめる。

4-3 調査

4-3-1 両群の等質性

検証授業の7日前に、児童の先行概念を調べるため乾電池と豆電球をつなげた回路を流れる電 気についてその動きを図示させる問題、既習内容である豆電球がつくつなぎ方を問う問題、検証 授業と同じ物理領域の PISA2003 で出題された「物と重さ」の問題の 3 問について質問紙調査(図 2)した。時間は、 10 分間である。

問1 かん電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。乾電池から出ている電気の流れ る向きを矢印(→)で表してみましょう。

なお、 で書かれた部分が乾電池と 豆電球をつなぐ線です。

問2 かん電池と豆電球を使って、

右の図のようにさまざまなつ ア イ ウ エ なぎ方をしました。電球がつ

くものはどれですか。ア~キ キ の中から選んで記号を書きな オ カ

さい。答えは1つとはかぎり ません。

問3 同じつみ木を右の絵のように、ちがった向きにしてはかりの上におきます。はかりが しめす重さはどうなりますか。次のア~エの中から1つ選んで、その記号を書きなさい。

①のめもりが一番重い。

②のめもりが一番重い。

③のめもりが一番重い。

すべて同じ重さ。

図2 等質性を調べる質問紙

① ② ③

① 前時の復習として、電流の向きと大きさを確認させる。

② 抵抗の両側につけた検流計の実験を行い、再度、回路を流れる電流の大きさを見る実験を 行う。

③ 結果をもとに個人で考察した後、グループで話し合いを行う。

④ 再度、回路を流れる電流の大きさは変わらないことをまとめる。

4-3 調査

4-3-1 両群の等質性

検証授業の7日前に、児童の先行概念を調べるため乾電池と豆電球をつなげた回路を流れる電 気についてその動きを図示させる問題、既習内容である豆電球がつくつなぎ方を問う問題、検証 授業と同じ物理領域の PISA2003 で出題された「物と重さ」の問題の 3 問について質問紙調査(図 2)した。時間は、 10 分間である。

問1 かん電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。乾電池から出ている電気の流れ る向きを矢印(→)で表してみましょう。

なお、 で書かれた部分が乾電池と 豆電球をつなぐ線です。

問2 かん電池と豆電球を使って、

右の図のようにさまざまなつ ア イ ウ エ なぎ方をしました。電球がつ

くものはどれですか。ア~キ キ の中から選んで記号を書きな オ カ

さい。答えは1つとはかぎり ません。

問3 同じつみ木を右の絵のように、ちがった向きにしてはかりの上におきます。はかりが しめす重さはどうなりますか。次のア~エの中から1つ選んで、その記号を書きなさい。

①のめもりが一番重い。

②のめもりが一番重い。

③のめもりが一番重い。

すべて同じ重さ。

図2 等質性を調べる質問紙

① ② ③

① 前時の復習として、電流の向きと大きさを確認させる。

② 抵抗の両側につけた検流計の実験を行い、再度、回路を流れる電流の大きさを見る実験を 行う。

③ 結果をもとに個人で考察した後、グループで話し合いを行う。

④ 再度、回路を流れる電流の大きさは変わらないことをまとめる。

4-3 調査

4-3-1 両群の等質性

検証授業の7日前に、児童の先行概念を調べるため乾電池と豆電球をつなげた回路を流れる電 気についてその動きを図示させる問題、既習内容である豆電球がつくつなぎ方を問う問題、検証 授業と同じ物理領域の PISA2003 で出題された「物と重さ」の問題の 3 問について質問紙調査(図 2)した。時間は、 10 分間である。

問1 かん電池と豆電球をつないだ回路で豆電球が 光っています。乾電池から出ている電気の流れ る向きを矢印(→)で表してみましょう。

なお、 で書かれた部分が乾電池と 豆電球をつなぐ線です。

問2 かん電池と豆電球を使って、

右の図のようにさまざまなつ ア イ ウ エ なぎ方をしました。電球がつ

くものはどれですか。ア~キ キ の中から選んで記号を書きな オ カ

さい。答えは1つとはかぎり ません。

問3 同じつみ木を右の絵のように、ちがった向きにしてはかりの上におきます。はかりが しめす重さはどうなりますか。次のア~エの中から1つ選んで、その記号を書きなさい。

①のめもりが一番重い。

②のめもりが一番重い。

③のめもりが一番重い。

すべて同じ重さ。

図2 等質性を調べる質問紙

① ② ③

(6)

4-3-2 一通りの授業(第5・6時まで)を終了した児童が構成した概念

 第5・6時で一通りの授業を終えた児童が構成した概念を調べるために、質問紙調査を行った。

問題は図1と同じ調査問題を使用した。実施時間は10分間で行った。なお、この回答の結果に対 して「絶対正しい、たぶん正しい、少し不安だ、とても不安だ」に○をつけさせ、保持している 概念に対する確信の度合いについても調査した。

4-3-3 不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法の効果

(1)不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法実施後の概念

 第7・8時終了後の実験群と統制群の児童が保持する概念とその概念を活用できるかを調べる ため、質問紙調査を行った。問題は知識を問う問題として回路を流れる電流の概念の定着状況を 調べた図1の問題を使用した。活用を問う問題は、図3に示した豆電球や検流計を2つに増やし たものを使用した。図1と図3の問題(小問4問)の解答時間は、15分間で行った。

問3 乾電池と豆電球2個をつないだ回路で豆電球 が光っています。乾電池から出ている電流の向 きを右の図に矢印(→)を書き入れなさい。な お、 で書かれた部分が乾電池と豆電球 をつなぐ線です。

 また、豆電球の明るさはどのようになってい ますか。次のア~エから選びなさい。

ア 豆電球①の方が、②より明るい。

イ 豆電球②の方が、①より明るい。

ウ どちらも同じ明るさ。

エ どちらも明かりが付かない。

問4 乾電池と豆電球2個をつないだ回路で豆電球 が光っています。回路の中に検流計を2つ右図 のようにつけました。検流計はどうなりますか。

あてはまる記号をア~ウから選びなさい。

ア 検流計Aの方が、検流計Bよりも値がおお  きい。

イ 検流計Bの方が、検流計Aよりも値がおお  きい。

ウ 検流計Aも検流計Bも値は同じ。

図3 活用を問う質問紙

(2)児童が保持する概念に対する確信の度合い

 第7・8時に実施した不十分な科学概念の再構成を促す学習指導の各授業過程における児童が 保持する概念に対する確信の度合いをワークシートの記述から調べた。調査は、具体的な学習指 導方法①の矛盾事象を見せ認知的葛藤を生起させたことによる自身が保持する概念に対する確信

4-3-2 一通りの授業(第5・6時まで)を終了した児童が構成した概念

第5・6時で一通りの授業を終えた児童が構成した概念を調べるために、質問紙調査を行った。

問題は図1と同じ調査問題を使用した。実施時間は10分間で行った。なお、この回答の結果に対 して「絶対正しい、たぶん正しい、少し不安だ、とても不安だ」に○をつけさせ、保持している 概念に対する確信の度合いについても調査した。

4-3-3 不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法の効果

(1) 不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法実施後の概念

第7・8時終了後の実験群と統制群の児童が保持する概念とその概念を活用できるかを調べる ため、質問紙調査を行った。問題は知識を問う問題として回路を流れる電流の概念の定着状況を 調べた図1の問題を使用した。活用を問う問題は、図3に示した豆電球や検流計を2つに増やし たものを使用した。図1と図3の問題(小問4問)の解答時間は、15分間で行った。

問1 乾電池と豆電球2個をつないだ回路で豆電球 ア イ が光っています。乾電池から出ている電流の向

きを右の図に矢印(→)を書き入れなさい。な お、 で書かれた部分が乾電池と豆電球 をつなぐ線です。

また、豆電球の明るさはどのようになってい ますか。次のア~エから選びなさい。

ア 豆電球①の方が、②より明るい。

イ 豆電球②の方が、①より明るい。

ウ どちらも同じ明るさ。

エ どちらも明かりが付かない。 ア イ 問2 乾電池と豆電球2個をつないだ回路で豆電球

が光っています。回路の中に検流計を2つ右図 のようにつけました。検流計はどうなりますか。

あてはまる記号をア~ウから選びなさい。 検流計

A

ア 検流計Aの方が、検流計Bよりも値がおお

きい。 検流計

B

イ 検流計Bの方が、検流計Aよりも値がおお

きい。

ウ 検流計Aも検流計Bも値は同じ。

図3 活用を問う質問紙

(2) 児童が保持する概念に対する確信の度合い

第7・8時に実施した不十分な科学概念の再構成を促す学習指導の各授業過程における児童が

ア イ

(7)

‒ 7 ‒

の度合い、③のサポート事象を提示後の自身が保持する概念に対する確信の度合い、④の話し合 いによりまとめた科学概念に対する確信の度合いについて行った。確信の度合いは、「絶対正しい、

たぶん正しい、少し不安だ、とても不安だ」の中から1つを選択させた。

4-4 結果とその分析 4-4-1 両群の等質性

(1)問1の結果

 問1は、学習前の児童が保持している先行概念を調べたものである。結果は、表3のようにな った。この問題の結果からは、実験群、統制群の児童が保持する概念には差がないといえる。また、

両群共に約7割の児童は、回路を流れる電流が衝突して豆電球が光るという考えを保持している ことが分かる。両群の学習前の児童が保持している概念の割合は、よく似ていると言える。

表3 学習前の児童が保持している先行概念(問1の結果)

電流が衝突 +極から-極へ -極から+極へ その他

実験群(N=28) 20(71.4) 3(10.7) 1(3.6) 4(14.3)

統制群(N=27) 20(74.1) 4(14.8) 0(0.0) 3(11.1)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

(2)問2及び問3の結果

 問2及び問3の正答数と誤答数は表4のようであった。問2及び問3の実験群と統制群の正答 者数と誤答者数を直接確率計算2×2で検定を行ったところ、いずれの問題も有意な差は見られ なかった(問2.両側検定:p=1.00、問3両側検定:p=0.252)。この2つの問題に関しては、両 群等質と考えることができる。

表4 両群の正答数と誤答数

問題 問2 問3

群 実験群(N=28) 統制群(N=27) 実験群(N=28) 統制群(N=27)

正答数 3(10.7) 3(11.1) 26(92.9) 22(81.5)

誤答数 25(89.3) 24(88.9) 2(7.1) 5(18.5)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

4-4-2 一通りの授業(第5・6時まで)を終了した児童が構成した概念調査の結果

 第5・6時で一通りの授業を終えた児童が構成している概念を調べた結果は、表5のようであ った。

表5 両群の正答数と誤答数

問題 問1 問2

群 実験群(N=28) 統制群(N=27) 実験群(N=28) 統制群(N=27)

正答数 28(100) 25(92.6) 14(50) 15(55.6)

誤答数 0(0)  2(7.4) 14(50) 12(44.4)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

(8)

 問1及び問2の実験群と統制群の正答者数と誤答者数を直接確率計算2×2で検定を行ったと ころ、いずれの問題も有意な差は見られなかった(問1.両側検定:p=0.236、問2.両側検定:

p=0.789)。また、一通りの授業を終えた児童は、回路を流れる電流の向きについてはほとんどの 児童が正答しているが回路を流れる電流の大きさについては誤答者が多く見られることが分かる。

問2の回答を詳しく調べてみると誤答者のうちア(減衰モデル)を選択した児童は、実験群が14 人(50.0%)、統制群が18人(64.3%)であった。両群共に抵抗の前後で電流の大きさが減少し ていると考えている児童が多く見られることが分かる。なお、イを選択した児童は両群共にいなか った。また、両問正答した児童は実験群が14名(50.0%)、統制群が14名(51.9%)と少ないこ とも分かった。一通りの授業だけでは、多くの児童に科学概念が十分に構成することができなか ったことが分かる。さらに、誤答者の多かった問2について、実験群の児童が保持している概念 に対する確信の度合いについて調査した結果は表6のようであった。

表6 実験群の児童の問2の回答に対する確信の度合い

絶対正しい たぶん正しい 少し不安だ とても不安だ

ア(減衰モデル) 7(50.0)  5(35.7)  0(0.0)  2(14.3)

ウ(大きさは同じ) 3(21.43) 8(57.14) 3(21.43) 0(0)  

 注.数字は人数。( )は%を表す。

 回路を流れる電流の大きさについて、誤答であるアを回答した児童は「絶対正しい」「たぶん正 しい」を合わせると14人中12人と減衰モデルに対して確信の度合いが高いことがわかる。また、

正答であるウを選択した児童であっても「絶対正しい」と確信を持っている児童は14人中3人と 少ないことが分かり、児童の多くが不十分な科学概念を保持していると考えることができる。

4-4-3 不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法実施後の概念調査の結果

 不十分な科学概念の再構成を促す学習指導終了後の実験群と統制群の児童が保持する概念とそ の概念を活用できるかを調べた問1及び問2の結果は、表7~表10のようであった。

表7 問1の結果

電流が衝突 +極から-極へ(正答) -極から+極へ

実験群(N=28) 0(0.0) 28(100.0) 0(0.0)

統制群(N=27) 1(3.7) 25(92.6)  1(3.7)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

表8 問2の結果

アと回答 イと回答 ウと回答(正答)

実験群(N=28) 2(7.1) 0(0.0) 26(92.9)

統制群(N=27) 2(7.4) 0(0.0) 25(92.6)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

(9)

‒ 9 ‒ 表9 問3の結果

アと回答 イと回答 ウと回答(正答)

実験群(N=28) 3(10.1) 0(0.0)  25(89.3)

統制群(N=27) 4(14.8) 9(33.3) 14(51.9)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

表10 問4の結果

アと回答 イと回答 ウと回答(正答)

実験群(N=28) 3(10.7) 0(0.0) 25(89.3)

統制群(N=27) 12(44.4) 0(0.0) 15(55.6)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

 問1~問4の実験群と統制群の正答者数と誤答者数を直接確率計算2×2で検定を行ったとこ ろ、知識を問う問1及び問2はいずれも有意な差は見られず(問1.両側検定:p=1.000、問2.

両側検定:p=1.000)、両群とも正答者が9割近くいることが分かる。一方、活用問題として作成 した問3及び問4は実験群の方が統制群に比べ正答者の割合が多く、いずれも有意な差が見られ た(問3.両側検定:p=0.003、問4.両側検定:p=0.014)。

4-4-4 児童が保持する概念に対する確信の度合い

 各授業過程における児童が保持する概念に対する確信の度合いは表11~13のようになった。

 なお、表11~13は第5・6時で一通りの授業を終えた児童が構成している概念を調べた調査に おいて問2に誤答者が多かった(正答者14人、誤答者14人)ため、回路に流れる電流の大きさに ついて各授業過程で児童が保持している概念に対する確信の度合いを調べた。

表11 ①の矛盾事象を見せた場面での児童がはじめに主張した概念に対する確信の度合い

絶対正しい たぶん正しい 少し不安だ とても不安だ

問2の正答者(N=14) 3(21.4) 5(35.7) 5(35.7) 1(7.1) 

問2の誤答者(N=14) 1(7.1)  2(14.3) 7(50.0) 4(28.8)

   計(N=28) 4(14.2) 7(25.0) 12(42.0) 5(17.9)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

表12 ③のサポート事象を提示後に児童がはじめに主張した概念に対する確信の度合い

絶対正しい たぶん正しい 少し不安だ とても不安だ

問2の正答者(N=14) 4(28.6) 8(57.2) 1(7.1)  1(7.1) 

問2の誤答者(N=14) 0(0.0)  0(0.0)  5(35.7) 9(64.3)

   計(N=28) 4(14.3) 8(28.6) 6(21.4) 10(35.7)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

(10)

表13 ④の話し合いによりまとめた概念に対する確信の度合い

絶対正しい たぶん正しい 少し不安だ とても不安だ

問2の正答者(N=14) 5(17.9) 9(32.1) 0(0)  0(0) 

問2の誤答者(N=14) 9(32.1) 5(17.9) 0(0)  0(0) 

計(N=28) 14(50.0) 14(50.0) 0(0.0) 0(0.0)

 注.数字は人数。( )は%を表す。

 表11からは、誤答者の約8割が「少し不安だ」「とても不安だ」と自身の構築している考えに不 安を抱いていることが分かる。また、正答している児童も「少し不安だ」「とても不安だ」と⒍人(約 4割)の児童が回答しており、自身の構築している概念に不安を感じていたことが伺える。これは、

誤答の児童の一人が「プロペラの回り方が違う」と発言したための影響があったのではないかと 考えられる。

 表12からは、サポート事象を提示したことにより、問2の誤答者全員が「少し不安だ」「とても 不安だ」と不安を感じていることが伺える。正答者は、不安を感じている児童が少ないことが分 かる。

 表13の「絶対正しい」「たぶん正しい」を合わせると100%であることから、実験群の問2の正 答者も誤答者も④の話し合いによりまとめた概念に対して確信をもったことが伺える。

5 全体的な考察

 本研究は、学習後であっても不十分な科学概念を保持している学習者に科学概念への再構成を 促す学習指導方法を検討しその効果を調べることが目的であった。検討した学習指導は、単元の 学習のまとめ時に、一通りの学習を終えてもなお児童が保持するいくつかの不十分な科学概念に 対し矛盾事象を提示して認知的葛藤を促し、科学概念を再度見直すサポート事象を提示し、他者 と話し合いをさせることで科学概念への再構成を促すというものである。検証を行った内容は、R.

Osborne & P.Freyberg (1985)ら多くの研究者により学習前の児童が多様な考え方を保有するこ とが指摘され、我が国でも畔・井村(2010)や永井・河北(1999)らにより先行概念が強固であ り、変容しにくいことが指摘されてきた電流の学習で実施した。

 検証を行った学習内容の「回路を流れる電流」の概念の定着状況を調べた結果からは、4年生 で学習した電流概念は、検証授業を実施した学校の5・6年生の児童に十分に構築されていない ことが改めて明らかになった。

 一通りの授業を終えた児童が構成している概念を調べた結果からは、回路を流れる電流の大き さについて多くの児童が科学概念を構成することができなかったことが分かった。確信の度合い について調査した結果からは、誤答者は先行概念である減衰モデルに対して確信の度合いが高く、

正答者であっても「絶対正しい」と確信を持っている児童は少ないことが分かった。

 こうした学習者たちに実施した不十分な科学概念の再構成を促す学習指導方法実施後の概念調 査を行った活用問題として作成した問いの結果からは、実験群の方が統制群に比べ有意に正答者 の割合が多く、科学概念を構成させるにいたったと考えることができる。検証授業の各授業過程 における児童が保持する概念に対する確信の度合いを調べた結果からは、不十分な科学概念を抱 いていた児童たちは矛盾事象を見せた場面で自身の構築している概念に不安を感じていたことが

(11)

‒ 11 ‒

伺えた。また、サポート事象を提示したことにより自身の構築している考えに不安を抱いているこ とも分かった。しかし、話し合いによりまとめた科学概念に対しては確信をもったことが伺えた。

確信の度合いの変容の様子からは、自身の不十分な科学概念に対し認知的葛藤を促し、サポート 事象を提示し自身の構築している考えに不安を抱かせたことが示唆された。これらのことから、本 研究で検討した学習指導方法が、一通りの学習を終えてもなお児童が保持する不十分な科学概念 を、科学概念へと再構成するのに有効な方法となり得たのではないかと考える。

引用・参考文献

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(2016年3月15日提出)

(2016年5月10日受理)

参照

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