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保険概念の再検討

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Academic year: 2021

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保険概念の再検討

⎜⎜ 平成21年度大会共通論題 ⎜⎜

問題提起と要約

総合司会 大 城 裕 二

1. 問題提起

昨20年度大会では いま保険とは何かを考える が共通論題テーマとされ,

5名の報告者それぞれの立場から現代保険現象の多様性あるいは変容性が捉 えられ,従来の保険様相を刷新するさまざまな特質が指摘されていた。すな わち, 保険とは何か の指摘を後に預け,その問い掛けに向けての機運が 窺われる状況にあった。それほど 保険とは何か を端的に説明する課題は,

多くの保険関係者・研究者にとって周知のとおり,相当に慎重を要するとこ ろなのである。過去に華々しく展開された 保険概念 ・ 保険本質 論争は,

不毛の論議ではないかとされながらも,ドイツ保険学会で一先ず終息を見た ことから,我が国における同論争もある程度の範囲に落ち着き,保険概念に 関わる支配的理解が導かれてきたとすることができる。

しかし,情報化を基本的背景とする環境変化の趨勢は,社会経済の基本体 系を揺り動かせる派生的変化の様々を湧出させている。果たして, 保険と は何か の合理的表現を再合意すべき機運が熟してきているのであろうか。

今回,4名の報告者に標記課題に挑戦して頂くことになっている。とくに意 図があるわけではないが,以下の報告順で,それぞれの立場とテーマをもっ

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*平成21年10月25日の日本保険学会大会(龍谷大学)報告による。

/平成22年1月12日原稿受領。

【平成21年度日本保険学会大会】共通論題 保険概念の再検討

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て論題に迫って頂くことになった。

まず,第一報告として名古屋大学の家森信善先生が 金融論の研究や教育 における保険への関心 と題し, 保険論の隣接領域である金融論(および 経済学)の分野で, 保険 がどのように教育され,研究されているのかを 明らかにすること に焦点を当てて報告される。そして,第二報告として香 川大学の安井敏晃先生が 保険概念における不可欠な条件について と題し,

保険について理解していない消費者に対して保険概念を説明する上で,そ の概念のなかでも特に強調する必要のある要素について検討すること を中 心として報告される。また,第三報告として長崎大学の大倉真人先生が リ スク移転および集積システムとしての保険−経済学的アプローチ− と題し,

経済学的アプローチによって,保険の機能を リスク移転 と リスク集 積 という2つの観点から言及していくこと を目的として報告される。さ らに,最後の第四報告として,学習院大学の後藤元先生が 法律の適用・解 釈における保険概念の役割 と題し, 具体的な法規定の適用・解釈に際し て,保険概念に関する議論がどのような役割を果たしうるのかという問題に ついて検討すること を論点として報告される。以上4氏の報告から,果た して,現代保険概念の検討に向けて何がしかの意義と糸口を切り開きうるこ とになるのか,後の質疑応答を含めて,各氏の論点に関心が寄せられるとこ ろである。

2. 質疑応答を終えて

共通論題 への取り組みに備えて,報告4氏と司会者は,幾度か共同討 議の場を設け,前年度 共通論題 における多様な指摘を斟酌し,複雑化・

細緻化する現代保険現象からする 保険概念の再検討 に思いが巡らされる 状況を理解した。そうした再検討への学問的整理と一般的認識は,種々実践 的難題に出くわしつつも,未だ科学的アプローチを要請するほどには十分な 背景が形成されるには至っているようでもない。したがって,報告各氏の論 点は,それぞれの専門分野から持ち場を明確にして論題に接近する方法を取

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ることで合意するに至った。とくに,情報化・グローバル化の急激な進展を 背景とする現代社会経済環境のもとで,総合学的な保険学の手法は,変動的 社会関係を多角的に解きほぐすことを避けがたい状況に置かれていたのであ る。

報告各氏の論旨を司会者なりに要約してみれば,以下のポイントに整理す ることができる。まず,第一報告の家森信善先生は,幾多の資料を提示しつ つ,これまで金融論学者の間であまり重視されてこなかった保険概念の特殊 的位置づけについて,近年,隣接学問領域,とくにファイナンス/リスクマ ネジメントといった経済学・金融論との相互作用において,しだいに新しい 段階へと発展し始めていることが確認できるとされた。また,第二報告の安 井敏晃先生は,保険の説明に関して多様な見解が見られるなかで,保険商品 とされるものに保険概念を類推させるのみでは十分でなく,保険消費者に伝 えるべき保険概念のコアとされるべき条件について言及し, リスク分担 を条件とする リスク転嫁 の特質が指摘されるべきところであるとされた。

続いて,第三報告の大倉真人先生は,近年における金融技術の発達により リスク移転 という性質のみでは保険を個別的に特徴づけたことにはなら ないことを指摘し,経済モデル分析を通して 最適保険契約 の特徴を明ら かにし,保険の機能を説明する上でのもう一つのポイントとして 社会的に 望ましいリスク配分 (集団形成)を指摘された。最後に,第四報告の後藤 元先生は,保険に関わる法規定の適用実践から,典型的保険に関する議論の みによって保険概念を一律に規定しうるわけではなく,幾つかの事例を丹念 に検討しながら,広く公共政策的配慮をもって解釈されるべき側面があるこ とを指摘された。

以上,各氏の論題に迫る報告内容を司会者なりに要約してみたが,各氏は それぞれの専門領域から保険概念が持つ意義を思量されながら巧みに論及さ れていた。また,質疑応答における会場からの問い掛けにも,広く保険が適 正に説明されることの必要性を慮るものが多く,それぞれに論題を盛り上げ る趣旨のものであった。制限時間内に環境変化と保険概念の整合性を図るこ

保険学雑誌 第 609号

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とは至難の業であったが,いつかは問い直されざるを得ない課題であること を感じさせる空気が漂っていた。報告者と会場質問者等各氏の真摯な取り組 みに敬意を表したい。

最後に,市場経済の利益社会的関係のなかで高度化を辿った近代保険の構 造と意義は,新たな価値体系に則って保険概念の新標識を定立させるまでに は,まさに忍び寄る転換ともいうべき経緯を辿りそうである。今回,保険概 念の再検討を試みたことは,人間社会が取り組むべき遠大なる課題を保険学 の使命として改めて認識させたといえるのではなかろうか。

(筆者は,岡山商科大学教授)

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保険概念の再検討

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