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概念分類課題における事例―反応学習と概念―反応 学習
著者 杉村 健, 矢吹 典子
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 14
ページ 65‑71
発行年 1978‑03‑25
その他のタイトル Instance―Response and Concept―Response Learnings in Conceptual Sorting Task URL http://hdl.handle.net/10105/6394
概念分類課題における事例一反応学習と概念一反応学習
杉村 健・矢吹典子い
(心理学教室) (研究生)
概念分類課題においては、いくつかの事例1たとえば、バナナ、キャベツなど)の絵を1枚す っ被験者に手渡し、それらを上位概念(果物、野菜)に基づいて分類できるように訓練する(杉 村、1974;S㎎im阯m&Terao.1976)。 2つの細長い穴が左右に並べて開いている分類箱で、
左側には果物の事例を、右側には野菜の事例を入れさせるような分類訓練をするとしよう。被験 者が事例を手渡されたとき、ある者は バナナは右、キャベツは左 というように、事例そのも のに分類反応をするであろうし、他の者は バナナ=果物は右、キャベツ=野菜は左 というよ うに、事例の概念に分類反応を連合するであろう。前者は事例一反応学習、後者は概念一反応学 習とよばれる。
このような2種の学習に関連して、K㎝dler and Ward(1972)は成人について事例名の記憶 とカテゴリー名の記憶が存在することを示唆し、Tighe㎜d Tighe(1972)は弁別移行学習の研 究において、事例一報酬関係の学習とカテゴリー(次元〕一報酬関係の学習を区別した。Tiψe
㎜d Tigheは子どもも成人もともに2つの学習をすることができるが、子どもは事例一報酬関係 の学習が、成人はカテゴリー一報酬関係の学習が優勢であることを示唆した。Tighe and Tiψe
(1975)は7歳児と大学生に動物と身体の部分に属する事例を分類させたあとで、5つのタイプ の再認課題を与えて、どのような学習をしていたかを査定した。その結果、7歳児は主として事 例一報酬関係を、大学生はカテゴリー一報酬関係を学習していることが示された。彼らのいう事 例一報酬関係の学習は本研究の事例一反応学習に、カテゴリー一報酬関係の学習は概念一反応学 習に相当するものであろう。最近S㎜gim㎜m and Temo(1976)は3,5,6歳児に概念分類課 題、半概念分類課題、および無概念分類課題を与えて、事例一反応の連合を学習する能力はこの 年齢ではあまり発達しないが、概念一反応の連合を学習する能力は年齢にともなって増大するこ
とを示した。
本研究の目的は、4歳児と5歳児に事例命名と概念命名の下で概念分類課題を与え、事例一反 応学習と概念一反応学習がどの程度行われているかを、Tighe a皿d Tighe(1975)と類似した方 法を用いて査定することである。先ず、果物と野菜の事例を用いて、事例命名か概念命名の下で
‡ I−1stanoe−Response a皿d Co皿。ept−Respo−1se Learnings i皿Conceptua1S01・ti皿g Task
*ホ Takeshi Sugim皿ra and Noriko Yab口ki
(Departme㎜t of Psycho1ogy,Nara U皿〜ersity of Ed㎜cation,Nara)
概念分類学習を行わせ、そのあとで次の3種の再認課題を与える。タイプA一分類課題に用い た事例と、分類課題と違う概念に属している事例の対(例:りんことボール)。 タイプB一分 類課題に用いた事例と、分類課題には用いなかったが同じ概念に属している事例の対(例:りん
ごとみかん)。タイプC一分類課題と同じ概念に属するが分類課題には用いなかった事例(概 念事例)と、新しい概念に属する事例(非概念事例〕の対(例:バナナととけい)。分類課題に おいて事例一反応学習をしていたならば、次の2つの選択型を示すと考えられる。(1)タイプAで 誤事例(例えばボール〕が選択され、タイプCでは2一つの事例が選択される。(2)タイプAとタイ プBで誤事例が選択され、タイプCでは2つの事例が選択される。他方、概念一反応学習をして いたならば、タイプAでは正事例、タイプBでは誤事例、タイプCでは概念事例を選択し、非概 念事例は選択されないであろう。このような考えに基づいて被験者を分類した場合、次のことが 予想される。(1)5歳児は4歳児に比べて、概念一反応学習者が多く、事例一反応学習者は少な いであろう。(2)事例命名によって事例一反応学習者が多くなり、概念命名によって概念一反応 学習者が多くなるであろう。
方 法
実験計画 2×2×3×3の要因計画が用いられた。第1の要因は被験者の年齢で、4歳児 と5歳児である。第2の要因は学習材料の要因で、事例の異なる2つのセットを用いた。第3は 分類学習の際の命名の要因で、事例命名、概念命名、および命名なしである。第4は再認テスト のタイプ(A,B,C)で、これは被験者内要因である。
被験者 被験者は、4歳児48名男女24名ずっと5歳児48名男女24名すっ、合計96名であった。
年齢の平均と範囲は、4歳児では4歳6ケ月(4歳2ヶ月一5歳Oケ月)、5歳児は5歳8ケ月
(5歳3ヶ月一6歳2ケ月)であった。年齢ごとに男女の数が同じで平均年齢がほぼ等しい6群 が作られた。なお、これ以外に、4歳児で分類学習ができなかった者が4名あった。
装置と材料 2つの木製の分類箱が用いられた。外面は赤色ラッカーで塗装されており、底 面は14㎝×15㎝、前面の高さは6㎝、後面の高さは15㎝である。斜面の中央よりやや上部に8㎝
x1㎝の投入口があけられている。2つの分類箱は投入口が左右になるように横に並べて置いた。
表1に示す事例の線画が分類学習と再認テストに用いられた。これらの事例は、杉村・市」ll(
1975)の概念カテゴリー規準表で高頻度のものと、幼児になじみのあるボール、とけい、かさか らなっている。分類課題には絵に書いた形が丸い事例(キャベツとみかん)と細長い事例(にん じんとぶどう)が選ばれ、1事例ずつ5㎝×6㎝の白い厚紙に貼りつけられた。1事例につき15 枚ずつ作り、4枚のブロックの中に4つの事例が入ること、同じ事例が続かないことを条件にし て配列した。再認課題では丸いもの同士と長細いもの同士が対にされ、12㎝×5㎝の白い厚紙に 貼りつけられた。先に述べた3つのタイプの対が4対ずつ作られ表1に示す順序で呈示された。
表1 分類学習と再認テストに用いた事例 セ ッ ト 1 セ ッ ト 2 分 類 学 留 分類 学 習 野 菜 果 物
キャベツ みかん にんじん ぶどう
野菜 果 物
再認テスト
C
B A C A
B
AC B
B AC
かぼちゃ一とけい バナナーぶどう ボールーキャベツ きゅうり一えんぴつ みかん一と.けい
りんご一みかん
か さ一ぶどうボールーりんご
きゅうり一にんじん キャペッーかぼちゃ にんじん一えんぴつ
か さ一バナナ
かぼちゃ りんご きゅうり バナナ
A C
B BA
C B CA
C BA
バナナーか さ えんぴつ一にんじん かぼちゃ一キャベツ にんじん一きゅうり
りんご一ボール ぶどう一か さ りんご一みかん みかん一とけい
えんぴっ一きゅうり キャベツーポール
ぶどう一バナナ
とけい一がぼちゃ手続き 実験は、被験者の属する園において個別的に行われた。被験者は実験のための小部 屋へ入ると、実験者と机をはさんで向かいあってすわる。最初に、分類箱が投入口を被験者の方に
向けて机の上に置かれ、分類の仕方に慣れさせるために、赤色の円と三角形を用いて予備訓練を 行った。
ここにあるポストでゲームをしましょう。今から円と三角のカードをわたしますから、ポ ストの2つの入口に分けて入れてください。それぞれのカードの入口は決まっているので、カ ードの入口をあてるゲームです。あなたがカードを入れたら、私は あたり 、 はずれ と 言いますから、 あたり と言われるように頑張ってください。
教示に続いて、被験者の反応速度に応じてカードを1枚ずつ手渡した。被験者の半分の者には 円を右、三角形を左に入れさせ、残りの者にはその逆にした。カードが誤りの投入口に入れられ た場合には、 これはこちらですよ。 と言って修正した。8回連続正反応の基準に達すると、
分類学習用のカード4枚を机の上に並べ、事例名を知っているかどうかを確認するために、絵の 名前を言わせた。続けて次の教示が与えられた。
このカードで、さっきと同じゲームをしましょう。今度もたくさん あたり と言われる ように、うまく入れてください。
カードを被験者に手渡すとき、概念命名群では、 これは野菜です。 とか これは果物です。
のように実験者が概念名を言った。事例命名群では、 これはキャベツです。 とか これはバナ
ナです。 のように事例名を言い、命名なし群では何も言わなかった。分類学習の基準は8回連 続正反応であり、60試行までにこの基準に達しない者は除外した。約4分問、WPPSIの知識検 査を行ってから、再認テストに移った。次の教示を与えてから、表1に示すような順序でカード を1枚すっ呈示し、どちらか一方の絵を選択させた。
このゲームでは2枚の絵を見せます。1枚は前にポストに入れた絵です。どちらが入れた 絵か指さしてください。さあ始めましょう。前にポストの中に入れたのはどちらですか。
結 果
分類学習 2つのセットの成績はほぼ同じであったので、以下の分析はセットをこみにして 行った。表2は、学習基準達成までに要した試行数の平均と標準偏差を示したものである。年齢
×命名条件の分散分析を行ったところ、命名条件の主効果だけがF(2,90)=3,53,P<.05で有 意であった。誤差項(272.83)を用いて条件間の有意差検定をしたところ、概念命名(11.7)が事 例命名(19.2)よりも!(90)=3.05,P<.O1で、命名なし(20.6)よりもパ90)=3.61,P〈.O1 で有意に速かった。
表2 分類学習の基準達成までに要した試行数 命 名 条 件
概念命名 事例命名 命名なし X lO.9 20.1
4歳児 S D 14,4 14.8
X 12,4 18.3 5歳児
Sj) 13,6 14.5
.22,8
15.7 18,5 16.5
再認テスト 再認テストでは、1人の被験者に3つのタイプの課題が与え.られているので、
それらに対する反応の組合わせによって、被験者の学習型を推測することができる。先に述べた ように、分類課題において事例一反応学習をしていたならば、次の2つの選択型を示すと考えら れる。(1)タイプAで誤事例が選択され、タイプCでは概念事例と非概念事例が選択される。12)タ イプAとタイプBで誤事例が選択され、タイプCでは概念事例と非概念事例が選択される。他方、
概念一反応学習をしていたならば、タイプAでは正事例、タイプBでは誤事例、タイプCでは概 念事例を選択し、タイプCの非概念事例は選択されないと考えられる。それぞれのタイプで4対 ずつの反応を求めているが、4対の中で1つでも上に述べた事例が選択されていればチェックし、
それによって各被験者を事例一反応学習型、概念一反応学習型、あるいはその他の型のいずれか に分類した。その結果が表3である。
表からわかるように、その他の型に属する者が4歳児では39.6%、5歳児で45.8%であって予 想外に多かったが、本研究では事例一反応学習型と概念一反応学習型を示す者に焦点をあてて、
次のような分析を行った。まず、命名条件をこみにしたとき、それぞれの学習型に属する者の出
現頻度が期待値(16名)と有意に異なるかどうかを、年齢別に検定した結果、4歳児では〃(2)=
9.88,Pく.01で有意になり、5歳児ではX2(2):3.88,P>.10で有意にならなかった。4歳児につ いてさらに検定を行ったところ、事例一反応学習者の出現頻度はX2(1)=4.58,P〈.05で期待値よ り有意に多く、概念一反応学習者はだ(1)=9.38,Pく伽で期待値よりも有意に少なかった。5歳 児では概念一反応学習者は期待値とほば同じであり、事例一反応学習者は期待値よりやや少な いが統計的には有意でなかった(κ2=2.34,P>.10)。次に、その他の型を除いて2(学習型〕×2
(年齢)分割によって検定を行ったところ、炉(1)=7.95,P<.01で有意になった。これは、4歳児 は5歳児に比べて事例一反応学習が多く、概念一反応学習者が少ないことを示す。
事例一反応学習者の比率を色変換し、年齢×命名条件の分散分析を行った。その結果、年齢の 主効果がγ2(1)=18.27,P<.O1で有意になり、これは4歳児が5歳児よりも事例一反応学習者が多 いことを示す。しかし、命名条件の主効果(κ2=4.06、〃二2,P〉、10)も年齢との交互作用(炉:3.
05、〃テ2,P〉.1O)も有意でなかった。概念一反応学習者についても同様な検定を行ったところ 年齢の主効果が〃(1)=5,18,P〈.05で有意になった。これは、5歳児が4歳児よりも概念一反応 学習者が多いことを示す。命名条件の主効果(κ2=2.71、〃=2P〉.10)および交互作用(X2=0.81
〃=2,P>.m)は有意でなかった。
表3 再認テストで各学習型を示した人数
年 齢 命名条件 学 習 型
事例一反応 概念一反応 その他 概念命名 6
4歳児 事例命名 8 命名なし 9
3 7 2 6 1 6 合計 23 6
概念命名 4 5歳児 事例命名 2 命名なし 5
命名な 合計 11
19 5 7 7 7 3 8 15 22
考 察
再認テストの結果は、5歳児は4歳児に比べて概念一反応学習者が多く、事例一反応学習者は 少ないという予想を確証した。これは、分類学習において4歳よりも5歳が上位概念を利用しゃ すいことを示し、Sugi㎜皿a㎜d Temo(1976)と一致する。表3からわかるように、4歳児は 事例一反応学習者が概念一反応学習者より多いが、5歳児では両者がほぼ同じになっている。こ のことから、5歳児を境界にして学習型の転換が生じ、より年長になると概念一反応学習者が多
くなることが示唆される。
他方、命名条件と学習型に関する予想は支持されなかった。すなわち、概念命名によって概念 一反応学習者は多くならないし、事例命名によって事例一反応学習者が多くならなかった。本研 究では、概念命名によって事例と概念の結合が強められるので、概念一反応学習が行われやすく また、事例命名や命名なしの場合には事例一反応学習が行われやすいと仮定した。概念命名によ って分類学習が促進されたという結果は、この仮定に一致すると考えられるが、それが再認テス トには反映されなかったのである。すなわち、概念命名によって概念一反応学習が行われていて も、それが十分確立したものでなかったために、再認テストに転移しなかったのかもしれない。
この点に関して、Co1e(1976)は原学習と逆転学習において、同じ人の学習型が変化することを 実証している。いずれにしても、分類学習では年齢差はないが命名条件の効果はあり、再認テス トでは逆に、年齢差があって命名条件の効果がなかったことについては、今後さらに検討されな くてはならない。
本研究で用いた再認テストは、Underwood(1965)によって考察された誤再認法(false recog−
niti㎝method)であるが、この方法は主として謀反応に頼っている。したがって、謀反応が少な かったり、ほとんど生じない場合には、学習型についての的確な情報を得ることができない。本 研究でも、同一タイプに属する4つの対で1つでも指定された反応があれば、それによって学習 型を推測したのである。また、その他の型に属する者が予想外に多かったが、あるときは事例一 反応学習をし、他のときは概念一反応学習をするというように、学習型に一貫性がなかった者で あるのか、他の何らかの学習の仕方をしていた者であるのかわからない。いずれにしても、分類 学習において事例一反応学習と概念一反応学習という2つの学習型があると仮定するならば、そ れが的確に査定される方法を見つけ出す必要があろう。
要 約
4歳児と5歳児に、事例命名と概念命名の下で概念分類学習をさせた。そのあとで、3つのタ イプの事例対からなる再認テストを与えて、事例一反応学習と概念一反応学習がどの程度行われ ていたかを調べた。(1)分類学習は概念命名によって促進されたが、年齢による差はなかった。(2)
5歳児は4歳児に比べて概念一反応学習者が多く、事例一反応学習者は少ないという予想は支持 された。(3)概念命名によって概念一反応学習者が多くなり、事例命名によって事例一反応学習者 が多くなるという予想は支持されなかった。
引 用 文 献
Co1e,M,1976Aprobetrialproced1』re{orthest凹dyo{childre11 sdiscrimination
learni皿g and tI・a皿sfer.Joωrωo oゾ五 ρ〃 ㎜ε〃〃 Cゐ〃dρ8ψcハ。 o8J,
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K㎝dler,H.H、,&W町d,J.W.1972R㏄og皿iti㎝㎜d re㎝皿。f related㎝d…related
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U11derwood,B.J.1965False recog−1itio皿prod凹。ed by imp1icit÷erbaI respoIlses.
Jo〃rπa o∫亙 ρ8r加πe f∂! P3ツ。ゐ。 o8 , 70, I22−129.
〔付記〕 本研究は、極楽坊保育園と春日保育園の御協力によって完成したものである。先生 方および園児に心から感謝致します。