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”概念の異種定式化設”の批判的検討―概念受容学習に及ぼす帰納的推論の影響―

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(1)

”概念の異種定式化設”の批判的検討―概念受容学

習に及ぼす帰納的推論の影響―

著者

工藤 与志文

雑誌名

東北教育心理学研究

7

ページ

27-42

発行年

2000-03-25

URL

http://hdl.handle.net/10097/00121883

(2)

“概念の異種定式化説"の批判的検討

一概念受容学習に及ぼす帰納的推論の影響-工 藤 与 志 文

(東北大学教育学部)

問 題 従来の概念学習研究、なかでも概念達成研究は、概念 の獲得を一連の遭遇事例 (instance) にもとづく仮説の 導出とその検証の過程であるととらえ、その仮説検証過 程を実験的に再現したものが中心であった。この場合、 仮説の導出過程もその検証過程もともに遭遇事例による 「帰納的推論」に基づくものであったため、概念学習が 遭遇事例の持つ諸属性に影響されると考えるのは当然で あった。事実、これまでの多くの概念学習研究で、は遭遇 事例に関わる変数が多く取り上げられてきた(たとえば、 岡本・清水,1968)

しかし、通常の学校教育場面でなされる概念の獲得は 必ずしも帰納的過程が中心ではなく、むしろ教授者が概 念の定義的属性および事例 (example) を直接教示し、 学習者がそれらを「受容」する過程でなされる場合がし ばしばみられるω。したがって、実際の教育実践に関心 を持つ研究者は、この種の「概念受容学習」に特別の関 心を示すとともに、概念受容学習においても、提示する 事例に関わる要因が学習結果に影響すると指摘してきた (Tennyson&Park, 1980;麻柄・伏見, 1982; Tennyson & Cocchiarella, 1986 ;伏見, 1995)。なかでも伏見 (1995) は、外延を誤って特殊化しつつ内包を把握していない学 習者に対して概念を教授する場合、焦点事例の違いが概 念学習に影響するという現象を統一的に説明する仮説 (焦点事例のはたらきとしての概念の『異種定式化説j]) を提唱している。伏見によると、学習者が当該概念に属 すると事前に正しく知っている事例(正知事例)を焦点 事例とした場合と当該概念に属さないと事前に誤って知っ ている事例(誤知事例)を焦点事例とした場合では、焦 点事例を受け入れた後の学習者の思考の方向、言いかえ れば概念の把握の仕方が異なるという。そして、この把 握の違いが“集合論による「概念」の定式化" (吉田, 1972) の違いを反映していると考えるのが「異種定式 化説」である。それでは、そもそも「概念」を集合論的 に定式化するとはどのようなことか?吉田はこの点につ いて以下のように述べている。 概念形成の過程には、ある集合の部分集合を指定 する過程が必ず含まれる。それゆえ、概念形成研究 の主要な問題は、いかなる集合のいかなる部分集合 を指定する過程であるか、その過程はいかなる条件 により規定されているか、などの問題であることに なる。そこで、 「概念」を集合論的に定式化する際 に、指定される部分集合の母集合を構成する基底の 選び方によって、内包的定式化と外延的定式化の2 つを区別することができる。 (312-313頁) 続いて、吉田は内包的定式化について次のように述べて いる。 基底に、事物現象あるいは事例の「属性の集合」 が選ばれ・・・事例はそれら属性集合の聞の積集合の元 として構成される。概念形成は、このように構成さ れた「属性集合の積集合」としての「事例の集合」 の部分集合を指定する過程となる。 (313頁) 内包的定式化では、属性集合を基底とし、事物・ 現象を、いわば「属性複合」として構成されたもの としてとらえる、といってよい。 (318頁) さらに、外延的定式化については次のように述べている。 基底に、事物現象そのものの集合、あるいは「事 例の集合」が選ばれ・・・この集合を基底として「新し い集合をつくる操作」によってさまざまな集合が構 成される。 (313頁) 外延的定式化では、事例(事物・現象)の集合を 基底集合とする、そして、属性を事例集合から抽象

(3)

されたものとしてとらえるのである。 (318頁) きて、異種定式化説によると、焦点事例が誤知事例の 場合は「外延的定式化」による概念形成がなされやすく、 正知事例の場合は「内包的定式化」による概念形成がな されやすくなるとし吟。伏見(1995) は次のように述べ ている。 焦点事例として誤知事例が用いられると、学習者 は焦点事例が思いがけずも(意外にも)当該概念の 正事例であったことに強く印象づけられる。この認 識は、当該概念の基底集合として「事例の集合」を 選ぶことに結びつく。当該概念の把握に際し、学習 者の思考は「外延的定式化」へと向くわけである0 ・・・ただし、この場合、内包(共通特徴)への着目は 背景にヲ│っ込む。内包は、外延的定式化の基底集合 である「事例の集合」から抽象されたものとしては じめてとらえられる。一方、焦点事例として正知事 例が用いられると、その事例が当該概念の正事例で あることは学習者にとって自明だから、学習者の思 考はおもに内包に向かう。学習者は当該概念の基底 集合として「共通特徴(属性値)の集合」を選ぶこ とになる。ただし、この場合、事例群(外延)への 着目は背景にヲ|っ込む。 事例~ (外延)は、内包的定 式化の基底集合である「共通特徴(属性値)Jの複 合としてはじめてとらえられることになる。 (60頁) さらに、定式化と課題解決との関係については、次のよ うに述べる。 概念の外延に関わる課題・・・に対しては、外延的定 式化がなされた場合の方が、基底集合に「焦点事

f

U

が選ばれるために、課題解決により結びつく。内包 的定式化がなされた場合には、基底集合が「共通特 徴の集合」であるため、課題解決には基底集合から の変換操作が必要になる(そしてその変換操作に困 難さを残す)。したがって、焦点事例として誤知事 例が用いられる方が、正知事例が用いられるよりも、 概念の外延に関わる課題の解決により効果的である。 これに対し、概念の内包に関する課題・ーに対しては、 正知事例が焦点事例として用いられる方が、誤知事 例が用いられるよりももっと効果的である。前者の 場合は基底集合が「共通特徴の集合」となる内包的 定式化がおこなわれやすいため、課題解決により直 接的に結びつき、後者の場合は基底集合が「事例の 集合」となる外延的定式化がおこなわれやすいため、 課題解決には基底集合からの変換操作が必要とされ、 その変換操作に困難さを残すからである。(6u-61頁) 以上の記述から異種定式化説を要約すると、 ①使用される焦点事例が正知事例である場合には内包的 定式化一「属性の集合」を基底集合として選択がな されやすく、誤知事例である場合には外延的定式化一 「事例の集合」を基底集合として選択ーがなされやす し、。 ②課題解決過程において、学習者は基底集合からの変換 操作に困難さを示す。 ①基底集合からの変換操作とは、内包的定式化の場合に は「属性集合」に基づいて「事例」を同定する過程の ことであり、外延的定式化の場合には「事例の集合」 から「属性」を抽象する過程のことである。 ④内包的定式化の場合は外延に関する課題の解決に変換 操作が必要とされ、外延的定式化の場合は内包に関す る課題の解決に変換操作が必要とされる。 となるだろう。ここから、課題解決に関してはFIG.1 に示されるような交互作用現象の存在が予測されること になる。伏見は、関連する一連の研究を概観し、これら の研究が概ねこの予測と一致した結果を示していること から、全体として異種定式化説は支持されたと結論づけ ている。 正知事例…外延に関わる課題<内包に関わる課題 誤知事例・・・外延に関わる課題>内包に関わる課題 FIG.l

r

異種定式化説」で予測される交互作用 しかし、異種定式化説から予測される交互作用現象に ついてはともかく、異種定式化説を構成する諸仮説を詳 しく吟味してみると、その論理的妥当性については疑問 を呈せざるを得ない点が含まれていることがわかる。第 一に、一連の実験で用いられた教材では概念の内包を構 成する属性を明確に教示しているため、このような条件 下では外延的定式化は成立しないのではないかという疑 問である。吉田が言うように、外延的定式化による概念 形成がまず事物の集合の確定からはじまるものであって、 内包の確定は事例集合からの抽象によるものだと考える のであるならば、はじめから教材によって属性が与えら れる状況では、この「抽象」段階を必要としないため、 むしろ内包的定式化に向かうのではないかという解釈も 成り立つのである。第二に、学習者は基底集合からの変

(4)

-28-換操作に困難さを示すとし、う仮説の根拠が不明確である という点である。この点は特に内包的定式化において問 題となる。というのも、外延的定式化は属性について未 知であっても事例集合の確定さえできれば成立するわけ であるから、内包の確定に困難がつきまとうであろうこ とは想像に難くないのに対し、内包的定式化の場合には 内包が確定されているのだから、それに基づいて外延を 確定することはそれほど困難でないと考えられるからで ある。吉田も、両定式化の関係を述べる中で、“外延的 定式化が可能であっても、内包的定式化は可能ではない という場合があり得る。逆に、内包的定式化が可能な場 合には、事例がすべて与えられている限り、必ず外延的 定 式化は可能である。"(317頁)と述べており、確定さ れた内包に基づいて事例を再構成する操作を困難なもの だとは考えていないようである。この問題について伏見 は、金属概念学習実験について解説する中で、次のよう に触れている。 もっとも、論理的には金属概念の内包的定式化が 可能となっている限り、外延の確定は可能なはずだ といえるかもしれなし、。提示された事例をその内包 によって正事例・負事例に正しく区別できるはずだ からである。その意味では事例分類課題で高成績を あげてもおかしくない。ただしそれが言えるのは、 学習者が外延に関する誤った判断 誤った特殊化ー を前もって所有していない場合だろう。学習者は金 属の外延に関して誤った特殊化をしていた点に留意 しなくてはならないのである。 (58頁) 吉田が展開する 「概念の定式化」論には、もともと、概 念形成する側の内的要因を考慮する余地は含まれていな いことからすると、上述の説明は、伏見の「内包的定式 化」と吉田の「内包的定式化」が概念的に同一ではない 可能性を示唆するものであり、学習者の内的要因の影響 を考慮に入れた新たな「概念の定式化」論の展開を予期 させるものである。しかし、伏見はこの問題についてこ れ以上の言及をしていない。したがって、外延に関する 誤った特殊化が存在する場合では、内包的定式化が成立 している学習者であっても外延の確定が困難であると考 える根拠は明確にされないままである。 以上のように、異種定式化説を構成する仮説を詳細に 吟味してみると、その論理的妥当性には疑問を皇せざる をえないことがわかる。特に、定式化の違いが課題解決 に影響を与えるメカニズムについての説明は十分とはい えない。現在までのところ、異種定式化説を支える基盤 は、予測される交互作用現象が一連の実験で示されたと いう経験的事実のみであるといってよいだろう。したが って、焦点事例の違いが課題解決に影響を与えるメカニ ズムを、異種定式化説とは全く異なった観点で、より簡 潔に説明することが可能であるかもしれない。言いかえ るならば、異種定式化説を支える基盤である交互作用現 象に関する別の説明原理を提出しうる可能性があるとい うことである。この可能性を追求するには、伏見が明確 にしてこなかった課題解決のメカニズムに焦点を当てて 詳細に検討する必要があるだろう。そのためには、課題 解決過程の論理的側面をモデル化し、実際の課題解決結 果と対照させてみなければならない。 それでは、概念受容学習における課題解決では、いか な る 推 論 過 程 が 想 定 さ れ る で あ ろ う か ?Tennyson

&

Park (1980)に よ る と 、 概 念 受 容 学 習 で は 、 帰 納 的 推 論にもとづく概念発見学習とは対照的に、「演鐸的推論」 過程が想定されている。すなわち、教授者は概念の定義 ノレールを事例を通じて演緯的に論証し、学習者はそのルー ルからの演鰐的推論にもとづく課題解決を求められるの である。この種の課題解決モデル(演鐸モデル)をF1G. 2に示す。 「一一一一一ー一一一一ーーーーー 一一一一一一一一ーー一一寸 C(χ) → P (χ)│ ルー/レ

l

C (a) → P (a) …事例

l

L _ーー一一一一一一一ー一ーーー一一一一一一ーーーー一一一一」 [演鐸的推論] P (b) → C (b) ・・・外延判断 C (c) → P (c) ー・内包判断 FIG.2 概念受容学習の演鐸モデル 'C'お よ び ‘p'は 「 述 語 定 項 」 で あ り 、 そ れ ぞ れ “カテゴリー Cに属している"“特性 Pを持つ"と読むo

'

x

'

は任意の個体が代入される 「個体変項」であり、 ‘a・b• c'は各々特定の個体を表わす「個体定項」 である。‘→'は合意、を表わしている。したがって、「定 義ルール」は“カテゴリーCに属している任意の個体は 特 性Pを持つ"と読み、「事例」は“カテゴリーCに属 している個体aは特性Pを持つ"と読む。モデルの点線 でかこまれた部分が直接学習される内容であり、そこで はルールと事例が提示され、事例はルールから演鐸的に 導かれている。さらに、学習した内容から2種類の判断 が導かれる。一方は、特性Pを持つ個体bが カ テ ゴ リ -Cに属するかどうかの判断であり、これは外延に関する 判断である。もう一方は、カテゴリーCに属する個体c

(5)

が特性Pを持つかどうかの判断であり、これは内包に関 する判断である。いずれの判断も学習したルールからの 演鐸的推論によっている(2)。 もちろん、異種定式化説が成立する状況においても同 様の演緯的推論がなされていると想定される。たとえば、 伏見 (1991)の実験を例にしてこの演緯モデルを説明し てみよう。カテゴリ

-c

は「金属」、特性Pは「電気を よく通す」、個体aは「銅あるいはカルシウム」である。 したがって、概念の定義ルールは「金属に属する任意の 個体は電気をよく通すという特性を持つ」であり、その 事例は「金属である銅(カルシウム)は電気をよく通す」 となる。そして、外延判断では、定義ルールから「電気 をよく通すナトリウムは金属である」という命題を演鐸 的に導き、ナトリウムが金属であるかどうか判断する。 また、内包判断では、定義ルールから「金属であるオス ミウムは電気をよく通す」という命題を演鐸的に導き、 オスミウムが電気をよく通すという特性を持つかどうか 判断する。これら外延および内包に関する判断は、 実験 での評価課題で求められる判断と一致している。 ところが、演鐸モデルで、は焦点事例如何によって課題 解決が異なるとは予想できないのである。というのも、 いずれの課題も同ーの定義ルールからの演鐸的推論によっ て解決可能であり、焦点事例が課題解決に直接関与する わけではないので、事例の違いによって課題解決の結果 が大きく異なるとは考えにくいからである。たとえば、 事例が銅であろうがカルシウムであろうが、金属概念の 定義ルールを受容し、それにもとづく演鐸的推論をすれ ば、いずれの課題も解決可能なはずである。しかし、実 験結果は内包に関する課題では正知事例である「銅」事 例の方が成績が良いのに対し、外延に関する課題では誤 知事例である「カルシウム」事例の方が成績が良く、異 種定式化説を支持するものであった。 以上のように考えてくると、伏見が異種定式化説の論 拠としてきた実験では演緯モデルに従った課題解決がな されていない可能性が浮上してくる。課題解決において 事例と課題内容との聞に交互作用が生じるということは、 ルールにもとづく一元的な推論経路ではなく、個々の事 例からの帰納的推論にもとづき、しかも課題ごとに異な る推論経路が存在することを示唆している。そこで、本 研究では以上のような条件を満たし、かつ異種定式化説 と一致する予測を導き得る新たなモデル(帰納モデル) を提唱する (FIG.3参照)。帰 納 モ デ ル の 特 徴 は 、 定 義ルールと事例との関係を演鰐的に解釈していない点に ある。すなわち、演鐸モデルのようにはじめから受容す べきものとしてルールをとらえるのではなく、焦点事例 としてとりあげられた個体に関する情報から帰納的に導 かれるものとして解釈するのである。したがって、学習 の中心はあくまで個体に関する情報となる。さらに、外 延に関する判断は個体からの直接的な帰納的推論による のに対し、内包に関する判断は帰納的に導かれた定義ルー ルから演鐸的推論によってなされるというように、それ ぞれの課題解決過程が別の推論経路をたどる点で異なっ ている。 「一一一一一一一一一一一一一一ーー 一一一一一一ーーーー一一寸

-:

--c

(χ) → p (χ)._γ・ルール

l

[帰納的推論]:

C

(a) P (a) -・・事例 L.l一一一一一一ーー一一一一ーー ー一一一一一一ーーーー一一一一」 P (b) → C (b) …外延判断 C (c) → P (c) …内包判断 [演縛的推論] FIG.3 概念受容学習の帰納モデル さて、この帰納モデルが異種定式化説と一致した予測 を導く点については、 「カテゴリーにもとづく帰納 (category-based induction)Jに関する研究(Osherson et al., 1990)を援用することで説明することができる。 カテゴリーにもとづく帰納とは、前提・結論ともに「あ るカテゴリーに属する全事例が、ある特性を持っている」 という形の推論のことである。Oshersonらは被験者に さまざまなタイプの帰納的論証を提示し、それらの論証 の強度(すなわち、前提から導かれる帰結がどの程度正 しいか)を判断させるという手続きによって、帰納的推 論に関わる諸現象を明らかにするとともに、それらを整 理 し 統一的・包括的な説明を与える試みを行った。そ れ によると、特殊的前提から一般的帰結を導く帰納的論証 (一般帰納論証)の場合、前提の事例が上位カテゴリー の典型的な事例である方がその論証は強いと判断される という。たとえば、特定の鳥から任意の鳥一般に帰納す る以下の2つの論証では、スズメを事例にした論証の方 が強いと判断されやすい。 ( 1 )鳥であるスズメは血液中のカリウム濃度が高い。 .・.鳥である任意の個体は血液中のカリウム濃度が高 い。(鳥は血液中のカリウム濃度が高い。) ( 2 )鳥であるペンギンは血液中のカリウム濃度が高い。 . .鳥である任意の個体は血液中のカリウム濃度が高 い。 (鳥は血液中のカリウム濃度が高い。)

(6)

-30-Oshersonらによると、このように判断されるのは、ス ズメがペンギンよりもその上位カテゴリーである鳥類に 関してより典型性が高いからである。 また、特殊的前提から特殊的帰結を導く帰納的論証 (特殊帰納論証)の場合、前提と帰結の事例の類似性が 高い方がその論証は強いと判断されるとし吟。たとえば、 以下の2つの論証ではタカを事例にした論証の方が強い と判断されやすい。 ( 3 )鳥であるタカは血液中のカリウム濃度が高い。 . .鳥であるワシは血液中のカリウム濃度が高い。 ( 4 )鳥であるタカは血液中のカリウム濃度が高い。 .・.鳥であるニワトリは血液中のカリウム濃度が高い。(3) 以上を帰納モデルに適用してみると、一般帰納論証は 内包に関する判断の際に、特殊帰納論証は外延に関する 判断の際に関与していると考えることができょう。伏見 (1991)の実験で説明するとすると、内包判断の場合、 そのもととなるルールについて以下のような帰納的論証 がなされているものと考えられる。 ( 5 )金属である銅は電気をよく通す。 .・.金属である任意の個体は電気をよく通す。 (金属は電気をよく通す。) ( 6 )金属であるカルシウムは電気をよく通す。 .・.金属である任意の個体は電気をよく通す。 (金属は電気をよく通す。) Oshersonらにしたがえば、 「銅」のような正知事例の 方が、金属らしからぬ「カルシウム」のような誤知事例 よりも典型的な金属であると判断されるので、正知事例 から帰納された定義ルールの方を確からしいとするだろ う。定義ルールの確からしさはそれにもとづく課題解決 に影響を与えるはずである。したがって、内包に関する 判断は、正知事例を用いた方が有利であると予想できる。 また、外延判断の場合、以下のような帰納的論証がな されているものと考えられる。 (7)金属である銅は電気をよく通す。 .・.金属であるカリウムは電気をよく通す。 ( 8 )金属であるカルシウムは電気をよく通す。 .・.金属であるカリウムは電気をよく通す。(4) 前提カテゴリーと帰結カテゴリーの類似度について考え てみると、金属であるかどうかわからない、あるいは金 属だと思っていない物質(たとえば、カリウム)につい て推論する場合は、カルシウムのような誤知事例を用い た方が、前提・帰結ともに金属カテゴリー内での位置が 非典型的・周辺的であるという点で類似していると判断 されるであろう。したがって、正知事例よりも誤知事例 を用いた方が、結果的に金属概念の外延の広がりをもた らすものと期待できる。(5) 以上の予測は異種定式化説にもとづくものと一致して いる。このことは、異種定式化説の依拠する現象が演鐸 モデルではなく帰納モデルによって説明されることを意 味している。さらにいえば、それらの現象が外延と内包 の結びつけによる概念形成の結果というよりも焦点事例 に関する個別事実の学習とそれにもとづく帰納的推論の 結果に過ぎない可能性(以下、事実学習説)を示唆して いる。本研究では、異種定式化説提唱の発端となった伏 見 ・ 岩 崎 (1990)お よ び そ の 追 試 的 研 究 で あ る 伏 見 (1991)の実験1にもとづき、事実学習説の妥当性を検 証してし、く。 実 験 1 1. 目 的 伏見・岩崎 (1990)および伏見(1991)で用いられた 教材文は、基本的には「演鐸的論証」にもとづいている といえる。すなわち、 「金属」という物質には共通特徴 があることがまず述べられ、その特徴を特定の金属(焦 点事例)にもとづいて解説する部分が続くという構成で ある。しかし、事実学習説の観点から教材文を見直すと、 教材文中で、は金属の定義ルールに相当する記述が明示的 に述べられていないという難点を指摘することができる だろう。すなわち、金属の共通特徴は焦点事例に則して 羅列的に解説されており、それらの特徴が金属一般に成 り立つものであることは、それぞれの解説の最後に“ というのもまた、 「銅(カルシウム)

J

をはじめとする 金属の特徴の一つで、ある"とまとめられているだけなの である。したがって、学習者が何らかの原因で金属一般 に関する記述という教材文の趣旨を読み取りそこない、 特定の金属に関する「事実」を読み取った可能性は否定 しきれないだろう。もしそうなら、演鐸モデルよりはむ しろ帰納モデルにしたがった課題解決がなされる可能性 が高まることになる。そこで本実験では、伏見らの原研 究で用いられた教材文を定義ルールが明示されるように 書きかえて追試をおこなう。異種定式化説からすれば、

(7)

定義ルールの明示化によっても定式化の方向に変化が生 じるとは考えられないので、原研究の結果が再現される ことが期待される。一方、事実学習説の観点からすれば、 定義ルールの明示によって帰納モテソレにもとづいた課題 解決の可能性がより減少し、演鐸モデルにもとづく課題 解決が促進されると考えられる。したがって、いずれの 焦点事例によっても高成績が得られることになるだろう。 本実験の目的は、定義ルール明示化の効果に関して、異 種定式化説による予測と事実学習説による予測のいずれ かが妥当であるかを決定することである。

2

.

方 法

2-1.

教材文 教材文は、表現を若干改めた点をのぞけば、伏見・岩 崎(1990) で使用したものと同一である。すなわち、金 属の共通特徴である「特有の光沢をもっJ

r

電気をよく 通す

J

r

熱をよく伝える

J

r

延性展性がある」について、 自由電子の存在とからめて説明している。原研究との違 いは、文章中で“「金属」とは次のような特徴を持った 物質であると考えられる。①・・・"というように 4つ の共通特徴を列挙し、金属概念の定義ルールが明示的に なるようにした点である。焦点事例は、伏見 (1991) の 実験1と同様、「銅」と「カルシウム」の 2種設定した。 なお従来から、ルールと事例の論述の仕方には、事例に 対してルールを先行させる方法と、事例となる事実をま ず提示しそこからルールを導く方法が提唱されている (Evans et al.,1962)。そこで、論述型式が影響する可 能性も含めて焦点事例の効果を検討するため、金属概念 の定義ルール(共通特徴)をまず提示し、その事例とし ての個別の金属特徴を説明するru-eg型式と、まず事例 の特徴を解説しその特徴を金属概念の定義ルールへと拡 張するeg-ru型式に対応するような教材文を用意した。 このように、事例と論述型式の組合せにより、 4種類の 教材文が作成されることになる(資料1参照)。

2-2.

事前テスト 伏見 (1991) の実験 1と同一である。金属8種・非金 属 2種、計10種類の物質(リチウム、ナトリウム、イオ ウ、鉄、金、カルシウム、ヨウ素、銅、カリウム、アル ミニウム)について、それぞれ比重と融点および簡単な 説明を載せた。そして、各物質について①金属か非金属 かどちらともいえないか②電気をよく通すか否か①磁石 と引きつけあうか否か、を判断させた。

2-3.

事後テスト 伏見(1991) の実験 1の事後テストは、伏見・岩崎 (1990) の事後テストの改良版であるので、こちらを採 用した。ただし、「属性値判断課題」は事例の効果が認 められなかったので、本実験では割愛した。

2-3

1

.

事例分類課題 概念の外延に関する課題である。事前テス トと同じ10 種類の物質について、各々簡単な説明を載せ、金属・非 金属・どちらともいえないものに分類させた。物質の説 明では、教材文で示した金属特徴の有無が4っともすべ て示される。

2-3-2.

特徴想起適用課題 概念の内包に関する課題である。課題では、オスミウ ムという金属がもっ金属としての共通特徴を箇条書きで 書き出すことを求められる。 2-4. く事例一概念〉関係解釈課題 被験者が教授者側の意図どおり、教材文の内容を「演 鐸的論証」として理解しているかどうかを知るためには、 事例の特徴と金属概念一般の特徴との関係をどのように 読みとったのか知る必要がある。そのため、本実験では 事例と概念の関係をどのように解釈しているかを調べる 課題を新たに付け加えた。 (TABLE1参照)。 TABLE1く事例 概念〉関係解釈課題 文章中では、「銅」の特徴と金属一般の特徴との関係に ついてどのように述べていたでしょうか?あなたの考え に最も近い選択肢を一つ選んで、その番号をOでかこん でください。 ①「銅」の特徴はすべての金属にあてはまる。 ②「銅」の特徴はたいていの金属にあてはまる。 ①「銅」特徴は多くの金属にあてはまるが、あてはまら ない金属もかなりある。 ④「銅」の特徴と金属一般の特徴との関係については何 も述べていない。 ※ Ca群用の課題では「銅」が「カルシウム」になっている。

2-5.

実験の概要 実験手続きは基本的に伏見(1991) に従っている。す なわち、実験は事前テスト、教材文の読み、事例分類課 題、く事例一概念〉関係解釈課題よりなる第1セッション と特徴想起適用課題よりなる第 2セッションに分けられ る。 第1セッションで、は、 5頁からなる冊子を 4種類作成 して対象者にランダムに割り当てた。それぞれの冊子に は、事例に関しては「銅」と「カルシウムJ 2種類、論 述型式に関してはru-eg型とeg-ru型の 2種類のいず れかの組合せによる教材文が含まれており、それ以外は すべて同一であった。以下、銅を事例とした ru-eg型 一

32

(8)

教材文を読んだ群を ICU・ru-eg群」、 eg-ru型教材文 を読んだ群を ICU・eg-ru群 」 と す る。同様に、カル シウムを事例としたru-eg型教材文を読んだ群を ICa'

ru-eg群」、 eg-ru型 教 材 文 を 読 ん だ 群 を ICa・eg-ru

群」とする。 第2セッションは第Iセッションの終了後約20分の間 隔をおき、特徴想起適用課題の冊子(1頁)を配布した。 2-6.被験者及び実験期日 被 験 者 は 宮 城 県 内 の 大 学 生93名である。実験期日は 1999年6月であった。 3.結 果 以下の分析方法は、基本的に伏見 (1991)と同一であ る。 3 - 1.分析対象者の選択 事前の事例分類においてカルシウムを金属とした者10 名、銅を金属としなかった者3名、 計13名を分析対象者 から除外した。その結果、 Cu・ru-eg群19名、 Ca・ ru-eg群21名、 Cu・eg-ru群21名、 Ca・eg-ru群19名となっ た。以下、 これら80名を分析の対象とする。 3-2.事前の事例分類標題の結果 事前の「金属か非金属かjに関する群ごとの平均正答 数(正答者率)は、焦点事例を除く 6種の金属に対して、 Cu ・ru-eg群3.16 (53%)

Ca・ru-eg群3.19 (53%)

Cu ・eg-ru群3.05 (51%)

Ca・eg-ru群2.95 (49%) であり、群聞に差は認められない。また、非金属2種を 含めた計8事例に対しては、 Cu・ru-eg群4.74 (59%)、 Ca ・ru-eg群4.57 (57%)

Cu・eg-ru群4.62 (58%)

Ca ・eg-ru群4.38 (55%)であり、ここでも群聞に差は 認められない。したがって、以下の分析は群間の等質性 を前提としておこなうこととする。さらに、これらの平 均正答数は伏見 (1991)の結果と類似しているため、本 実験の被験者は伏見 (1991)の被験者と比較可能である と考え、以下の分析をおこなう。 また、伏見(1991)にならい、事前において高成績で あった鉄・金・アルミニウムの 3種の金属を「易事例」、 低成績であったリチウム・ナトリウム・カリウムの 3種 の金属を「難事f列

U

と呼び、易事例・難事例別に結果を 分析する。 3-3.事例分類課題の結果 焦点事例とした銅とカルシウムを除く事例について各 正答に1点を与えた時の平均得点をTABLE 2に示す。 ru-eg群、 eg-ru群 そ れ ぞ れ に つ い て 、 事 例 に よ る 平 均 得点の差を比較したところ、統計的に有意な差は認めら れなかった。伏見 (1991)と比較すると、特に難事例の 得点がCu群 に お い て 高 い こ と が わ か る。ま た 、 論 述 型 式の影響を見るため、 Cu群、 Ca群それぞれについて、 論述型式による平均得点、の差を比較したが、有意な差は 認められなかった。 TABLE 2 事例分類課題の結果 易3事 例 難3事例 Cu

ru-eg群 2.89 2.63 Ca ・ru-eg群 2.90 Cu • eg-ru群 2.95 Ca' eg-ru群 2.95 2.10 2.71 2.57

3-4.

特徴想起適用課題の結果 計 8事例 6.95 6.67 7.43 7.42 オスミウムがもっ金属としての共通特徴として「光沢 をもっ

J

I電 気 の 良 導 体 で あ る

J

I熱の良導体である」 「延性展性に富む」の趣旨の記述があれば各1点を与え、 4点 満 点 と し た。TABLE 3に 各 特 徴 ご と の 正 答 者 数 と平均点を示す。ru-eg群、 eg-ru群それぞれについて、 事例による平均得点の差を比較したところ統計的に有意 な差は認められなかった。伏 見 (1991)と比較すると、 「通電性」以外は総じて本実験の方が正答者率が高いこ とがわかる。また、論述型式の影響を見るため、 Cu群、 Ca群 そ れ ぞ れ に つ い て 、 論 述 型 式 に よ る 平 均 得 点 の 差 を比較したが、有意な差は認められなかった。 TABLE 3 特徴想起適用課題の結果 光沢あり 通電性 熱良導性 延性展性 平均得点 Cu ・ru-eg群 15(79) 16(84) 16(84) 17(89) 3.32 Ca

ru-eg群 16(76) 14(67) 12(57) 17(81) 2.81 Cu • eg-ru群 19(筑)) 17(81) 16(76) 16(76) 3.24 Ca • eg-ru群 15(79) 13(68) 16(84) 11 (58) 2.89 ※ ( )内は正答者率 3-5. く事例一概念〉関係解釈標題の結果 TABLE 4に 結 果 を 示 す。事 例 の 特 徴 が すべて の 金 属にあてはまると演鐸的に解釈したものは、どの群でも 半数程度にとどまった。わずかながら、事例と金属の関 係は記述されていないと回答した者も存在する。この結 果は く事例一概念〉関係の解釈如何がテスト成績に影響 を与える可能性を示唆するものである。そこで、これま での分析から事例および論述型式両要因の効果に違いが ないと考え、すべての群を込みにして、正しく解釈した 者(正解釈群)とそうでない者(誤解釈群)とを大別し、 各テスト成績を比較した (TABLE 5)。 そ の 結 果 、 事 例分類課題の計8事例で正解釈群の平均得点が誤解釈群

(9)

より有意に高く (t=2.97,df=72.4,

p<

.01)、特徴想起 適用課題で正解釈群の平均得点が誤解釈群より有意に高 いことがわかった (t=2.67,df=60.6,

p<

.01)。 なお、選択肢の分布に関して、特に群差は認められな かった。 TABLE 4 く事例一概念〉関係解釈課題の結果 。すべての金属 。たいていの金属 似(の金属

8

記述なし

N

R

Cu・ru-eg群 8(42) 5 (26) 3 (16) 3 (16) 0 Ca

ru-eg群

l

l

(

臼)

8

(

3

8

)

1

(

5

)

1

(

5

)

0

Cu• eg-ru群

l

l

(

臼) 6 (29) 3 (14) 1 ( 5) 0 Ca• eg-ru群 9(47) 6 (32) 3 (16) 0 1 ( 5) ※ ( )内は正答者率 TABLE 5 <事例一概念〉関係の解釈ごとの課題成績 事例分類課題 特徴想起適用課題 難 3事 例 計 8事例 正解釈群 2.69 7.51 占 川 一 回 守 一 FhunxU 44 r 一 円 4 U 司 i 均 一 1 1 平 一 誤解釈群 2.31 6.73 4.考 察 結果が示す通り、事例要因および論述型式要因いずれ も効果がなかった。本実験の課題の成績は伏見 (1991) と比べると総じて高得点であり、その結果として焦点事 例の効果が解消されてしまったと考えることができる。 この結果は、異種定式化説では予見不能であり、定義ルー ルの明示によって演鐸モデルにもとづく課題解決が促進 されると考える事実学習説に有利な結果であると言える だろう。しかも、焦点事例の特徴と金属一般の特徴の関 係を演鐸的に解釈した被験者がそうでない被験者よりも 有意にテスト成績が良かったという結果は、演緯モデル にしたがった課題解決が高成績を生むという予測とも合 致している。以上のことから、本実験において焦点事例 の効果が示されなかったのは、原研究以上に演鐸モデル にもとづいた課題解決が多く見られたからではなし、かと 推測される。 実 験

2

1 . 目 的 実験1によって、異種定式化説が論拠としてきた現象 が帰納モデルによる問題解決に由来している可能性が強 まった。そこで、実験 2ではその可能性を直接検証する。 すなわち、帰納的推論による問題解決が典型的であると 考えられる事態、つまり特定の事例に関する個別学習事 態において、異種定式化説から予測される結果が得られ るのではなし、かという予想を確かめる。もしもこの予想 が確かめられれば、異種定式化説の基盤となる現象が個 別的事実の学習とそれからの帰納的推論によるものであ ることが明らかとなり、事実学習説を補強することにな るだろう。 2.方 法 2 -1.教材文 教材文は、伏見・岩崎 (1990) の教材文中の金属概念 一般に関する記述をすべてカットしたものである。した がって、教材文は金属概念に関する説明文という性格を 失い、あくまで、銅あるいはカルシウムに関する性質を 記述した文章となる。その点以外は、性質の記述の内容・ 方法はすべて原研究の教材文と同ーとした(資料2参照)。

2-2.

事前・事後テスト 事前・事後テストはすべて実験 lと同一である。 2-3.実験の概要 実験の概要も基本的に実験1と同一であり、事前テス 卜、教材文の読み、事例分類課題、く事例一概念〉関係 解釈課題よりなる第1セッションと特徴想起適用課題よ りなる第 2セッションに分けられる。 第1セッションでは、 5頁からなる冊子を2種類作成 して対象者にランダムに割り当てた。それぞれの冊子は、 「銅」と「カルシウム」いずれかを焦点事例とした教材 文が含まれており、それ以外はすべて同一であった。以 下、銅を事例とした教材文を読んだ群を iCu群」、カル シウムを事例とした教材文を読んだ群を iCa群」とす る。 第2セッションは第 1セッションの終了後約30分の間 隔をおき、特徴想起適用課題の冊子(1頁)を配布した。 2-4.被験者及び実験期日 被験者は、実験 1の被験者と同じ大学に在学している 63名である。ただし、実験 1に参加した者は含まれてい ない。実験期日は1999年6月であった。 3.結 果 3 - 1.分析対象者の選択 事前の事例分類においてカルシウムを金属とした者6 名、銅を金属としなかった者5名、計10名を分析対象者 から除外した。その結果、 Cu群29名、 Ca群24名となっ た。以下、これら53名を分析の対象とする。 3-2.事前の事例分類課題の結果 事前の「金属か非金属か」に関する群ごとの平均正答 数(正答者率)は、焦点事例を除く 6種の金属に対して、

(10)

-34-Cu群3.06(51%)、Ca群3.08(51%) であり、群聞に差 は認められない。また、非金属 2種を含めた計8事例に 対しては、 Cu群4.76(59%)、Ca群4.83(60%) であり、 ここでも群聞に差は認められなし、。したがって、以下の 分析は群聞の等質性を前提としておこなうこととする。 さらに、これらの平均正答数は実験1及び伏見(1991) の結果と類似しているため、本実験の被験者はこれらの 実験の被験者と比較可能であると考え、以下の考察をお こなう。 3-3.事例分類課題の結果 焦点事例とした銅とカルシウムを除く事例について各 正答に1点を与えた時の平均得点をTABLE6に示す。 事例ごとの平均得点、の差を比較したところ、難事例にお いてCa群の方が有意に得点が高く(t = 2 . 71• df = 43. 3 • p

<

.01)、計8事例においてもCa群が有意に得点が高い ことがわかった (t= 2 . 32 • df = 42.9 • p

<

.05)。 TABLE 6 事例分類課題の結果 Cu群 Ca群 例 一 ) 3 事 一 引 か 3

2 2 易 - 計8事例 5.69 6.71 難 3事例 1.00 1.96 3-4.特徴想起適用課題の結果 オスミウムがもっ金属としての共通特徴として「光沢 をもっJ

I

電気の良導体であるJ

I

熱の良導体である」 「延性展性に富む」の趣旨の記述があれば各l点を与え、 4点満点とした。 TABLE 7に各特徴ごとの正答者数 と平均点を示す。事例ごとに平均得点の差を比較したと ころ統計的に有意な差は認められなかった。 TABLE 7 特徴想起適用課題の結果 光沢あり 通電性 熱良導性 延性展性 平均得点 Cu群 11(38) 18(62) 14(48) 18(62) 2.10 Ca群 7(29) 16(67) 9(38) 14(58) 1.92 ※ ( )内は正答者率 3-5. く事例一概念〉関係解釈課題の結果 TABLE 8に結果を示す。教材文の内容が特定の金 属の性質に関する解説であるにもかかわらず、事例の特 徴と金属一般の特徴の関係に関する記述はないとする解 釈は、どの群でも 3~4 割程度であった。 教材文を解釈 する段階ですでに個別の事例から金属一般に性質を広げ る帰納的推論がなされていることがうかがえる。これは、 帰納モデルでいうと事例に関する情報から事例が属する カテゴリ一一般に関する判断を帰納するプロセスと一致 する。モデルによれば、内包に関する課題はここで帰納 されたルールにもとづく演緯的推論によって解決される ことになる。したがって、事例の特徴が金属一般にもあ てはまると考える傾向が強い被験者は、内包に関する課 題の解決過程においてより帰納モデルに適合しているこ とになろう。そこで、 く事例一概念〉関係解釈課題で選 択肢①ないし②を選択した者に限定し、これらの被験者 の特徴想起適用課題の平均得点、を検討したところ、 Cu 群2.40、Ca群1.67であり、 Cu群の方が有意に得点が高 い傾向が見られた (t=1.75.df=20.

p<

.10)。なお、 事例分類課題に関しては有意差は認められなかった。 TABLE 8 く事例一概念〉関係解釈課題の結果

G

すべての金属 @たいていの金属 。多くの金属 @記述なし Cu群 1(3) 9 (31) 11 (38) 8 (28) Ca群 1(4) 11(46) 3 (13) 9 (38) ※ ( )内は正答者率 4.考 察 事例分類課題では誤知事例を焦点事例とした方が高得 点であり、特徴想起適用課題では、両群で差は見られな かった。これらの結果は、帰納モデルの予測とは完全に 合致してはいないが、誤知事例のはたらきに関しては予 測どおりであり、正知事例も予測と反対のはたらきを示 したわけではなし、。したがって、全体として帰納モデル と矛盾しない結果であるといえよう。同時にこのことは、 個別の事実に関する学習場面でも異種定式化説と矛盾し ない結果が得られたことを意味しており、異種定式化説 の理論的背景に重大な疑問を投げかけるものである。そ もそも異種定式化説は、概念の定式化の方向の違いによ って、実験結果を説明するものである。しかし、概念受 容学習そのものが成立し得ない状況でも、少なくとも外 延に関して予測と一致した結果が得られたということは、 その説明原理そのものを再検討せざるを得ないことを示 している。 また、全体の比較では特徴想起適用課題における事例 の効果は検出できなかったものの、個別の事例を概念一 般に帰納的に適用させる傾向の強い被験者に限ると、正 知事例がやや有利であることが示された。この結果は、 帰納モデルの妥当性を補強するものであるとともに、異 種定式化説から予想される正知事例のはたらきとも一致 している。 以上のように、個別的事実の学習場面においても、異 種定式化説が論拠としている現象とほぼ類似した結果が 得られたことから、事実学習説が支持されることが明ら

(11)

かとなった。異種定式化説の基盤となっている実験にお いても、実際に生じていたのは概念受容学習ではなくむ しろ事実学習であり、帰納モデルにもとづいた課題解決 がなされていたのではないかと考えられる。 討 論 本研究は、異種定式化説の論拠としている現象が、概 念受容学習の結果ではなく、個別の事実の学習とそれか らの帰納的推論の結果として説明可能であるという可能 性を追求するためになされた。実験 1では、概念の定義 ルールを明示することでテスト成績が上昇し、事例の効 果が解消することが明らかになった。また、実験 2では 非概念学習事態であっても異種定式化説による予測と矛 盾しない結果が得られることが明らかとなった。これら の実験結果はともに異種定式化説にとって不利な側面を 有していると言えよう。まず、実験 1の教材文は、演縛 的推論が促進されるように改善されたという点で、原研 究よりもすぐれた概念学習教材である。その「改善」に よって事例の効果が解消してしまう点に関しては、演緯 モデルからは予測可能であっても、異種定式化説から予 測することはできない。また、仮にこの「改善」が異種 定式化説を成立させる何らかの条件を変化させてしまっ たのだとしたら、異種定式化説が教授実践上持ち得る意 味はきわめて限定されたものになってしまうだろう。さ らに、実験 2の結果は異種定式化説に代わる別の説明原 理を示唆するものである。もちろん論理的には、非概念 学習事態で類似した結果が得られたからといって直ちに 異種定式化説を反駁するものにはなりえないであろう。 しかし、実験 2の事例分類課題の結果は、単なる金属事 例の選択数の増加ではなく金属と非金属の弁別ができて いることを示している。また、特徴想起課題でも、事例 を概念一般に適用させる傾向の強い被験者に限ると、原 研究と同程度の得点がCu群で得られている。教材文中 に概念に関する教示がないことを考慮すれば、個別事実 に関する情報のみであっても原研究とほぼ同内容の課題 解決がなされると考えてもよいだろう。概念学習を仮定 しなくても同内容の課題解決がなされるとすれば、概念 の定式化による説明は必要なくなるのである。 結局、実験1と実験2の結果をともに解釈できるのは、 異種定式化説ではなく概念受容学習の演鐸および帰納モ デルである。以上のことを総合的に判断すれば、異種定 式化説の論拠として提出されている実験においても、被 験者が学習したのは特定の概念というよりもむしろ特定 の事実に過ぎず、課題解決に及ぼす焦点事例の違いの効 果は帰納的推論の経路の違いで説明可能であると思われ る。 なお、本研究で明らかになったことの一つに、概念受 容学習場面において学習者が自発的に帰納的推論をおこ なっているということがある。く事例一概念〉関係解釈 課題の結果によれば、すくなからぬ被験者が演鐸的推論 を求められているところでも帰納的推論をおこなってお り、しかも、これらの帰納的推論が課題解決に影響を与 えている。このことは、教授者が演鐸モデルにもとづく 課題解決を想定している場合であっても、学習者は帰納 モデルにもとづいた課題解決をおこなってしまう可能性 を示唆するものである。そのような場合、学習場面で用 いられた事例の特質に課題解決が受ける影響の大きさは、 教授者の想定を越えることになるだろう。今後、概念受 容学習における事例のはたらきに関して、学習者が自発 的におこなう帰納的推論という観点から検討しなおす作 業が必要になるものと思われる。 文 献

Ausu出1,0.P.1963 The Psychology of Meaningful

Verbal Learning : An Introduction to School Learning. Grune & Stratton, New Y ork. Evans,].L. ,Homme,L.E. ,& Glaser,R. 1962 The

Ruleg System for the Construction of Programmed Verbal Learning SeQuences. The ]ournal of Educational Research, 55, 513-518. 伏見陽児 1991 焦点事例の違いが概念の学習に及ぼす 効果教育心理学研究, 39,409-418. 伏見陽児 1995

r

概念」教授の心理学 提示事例の有 効 性 川 島 書 庖 伏見陽児・岩崎哲郎 1990 提示事例の違いが概念の特 徴再生と事例分類に及ぼす効果 教育心理学研究, 38,405-412. 麻柄啓一・伏見陽児 1982 図形概念の学習に及ぼす焦 点事例の違いの効果 教育心理学研究, 30,57-61. 岡本夏木・清水御代明 1968 概 念 の 獲 得 東 洋 他 ( 編 ) 学習心理学ハンドブック 金子書房

Osherson,D.N. ,Smith,E.E. ,Wilkie,O. ,Lopez,A.&

Shafir,E. 1990 Category-Based Induction.

Psychological Review, 97, 185-220.

Tennyson,R.D. & Cocchiarella,M.]. 1986 An Empirically Based Instructional Design Theory

(12)

-36-for Teaching Concepts.

Review of Educational Research,56,4O-

7

1. Tennyson,R.D. & Park,Ok-Choon 1980 The

Teaching of Concepts: A Review of Instructional Design Research Literature. Review of Educational Research, 50,55-70. 吉田章宏 1972抽象と具体一概念形成の心理学的研究に よせて一 日本児童研究所(編)児童心理学の進歩E 金子書房

2

9

7

-

3

3

7

.

註 , ,¥.') 憶執官三権 議、こも、ヒう丈犠 金;竺皇官?主主 義)'v- )'vの

f

発 見

i

を巴的としているの民対し、さ手枝教育場彊 でなされる概念獲得過程は定義ルールの「受容」が 中心となるという点で鋭く異なっている。両者はそ れぞれ従来主張されてきた発見学習と受容学習 (Ausubel,1963) に対比することができょう。 ( 2 ) 演鰐論理学的にいえば、モテ.ルにおける外延判 断は「後件肯定の誤り」となる。ただし、定義ルー ルが双条件的陳述であるならば誤りとはならない。 概念の定義ルールでは双条件的に解釈できる場合が 多い。 ( 3 ) これらの論証をモデルで、用いた論理記号で表現 すれば、以下のようになる。 ( ‘B'は“鳥である"、‘p'は“血液中のカリウ ム濃度が高い"と読む。) (1) (2) B (スズメ)→p(スズメ)

B

(X)→p (x) (3) B (タカ) →p (タカ) B (ワシ) →p (ワシ) B (ペンギン)→p(ペソギン)

B

( x ) →p (x) (4) B (タカ) →p (タカ) B (ニワトリ)→p(ニワトリ) (4 ) これらの論証をモテソレで用いた論理記号で表現 すれば、以下のようになる。 (‘M' は“金属に属する"、 ‘p'は“電気をよく通 す"と読む。) (5) (6) M (銅) →p (銅) M (カルシウム)→p(カルシウム)

M(

X)→

P(

x)

M(

x ) →

P

(x) (7) (8)

M(

銅) →

P

(銅)

M

(カルシウム)→

P

(カルシウム) M (カリウム)→P(カリウム) M (川ウム) →P (州ウム)

(

5

)

もっとも、帰納モデルでの外延判断は、ここで の帰納的論証の形式と完全には一致していない。帰 納モデルと適合しているのは、以下の推論である。

M(

銅) →

P

(鍋)

M

(カルシウム) →

P

(カルシウム) P (カ刊ム) → M (カリウム) P (カリウム) →M (カリウム) つまり、帰結の述語定項が前提と帰結で入れ替わっ ているのである。したがって、厳密にいえば、 。会¥eτ'son~b';lì灼上げた論証の形式ヒは異なって いることになる。しかし、我々の日常の恵、考では条 件文を双条件的に解釈し、前件と後件を入れ替えた 推論を頻繁におこなうことに照して考えると、上述 の形式の論証でもカテゴリーの類似度によって推論 の強さが影響されると想定することは可能であろう。

(13)

《付録1 実験lで用いた教材文》 【Cu.ru-eg群用】 この世界にはさまざまな物質が存在している。私たちが「金属」と呼んでいる一群のものも、それら物質の一部をひ とまとめにして名づけたものにほかならない。さて、一群の物質をまとめて「金属」と呼ぶからには、そのまとまりに 含まれる個々の物質は「非金属」とは異なる共通した特徴をもっているはずである。実際「金属」は「非金属」とはず いぶん異なる特徴をもっている。現代の科学では、次のような特徴を持った物質を「金属」と呼んでいる。 こうたく ①ピカピカした光沢(つや)をもっ。 ②電気をよくとおす。 ③熱をよく伝える。 えんせい てんせい ④延性・展性が大きいほ│っ張るとのびやすい・薄くのばしやすし、)。 ここでは、 (1)電気器具の材料として広く使われており、また十円玉の素材にもなっている「銅」をとりあげて、金 属の特徴を説明をしていこう。 まず第ーに「銅」はピカピカした光沢(つや)をもっている。ピカピカしていないように見える「銅」があったとし ひま〈 ても、それは表面が酸化したからか、あるいは被膜におおわれているからであり、みがけばちゃんとピカピカした表面 が現われる。

I

銅」が特有の光沢(ピカピカ)をもっているのは、「銅」にあたった光の多くが吸収されず、反射され るためである。「銅」の中には自由に動ける電子すなわち自由電子がたくさん存在しており、これが反射される光の割 合が多い原因になっている。「銅」の結晶では、電子の一部が原子から離れ、「銅」原子はイオン (Cuつ と な っ て い る。原子から離れた電子、すなわち自由電子は一つの原子に束縛されることなく、結晶の中を自由に動きまわれるよう な身軽さをもっ。たとえていえば、「銅」のイオンの浮く海を自由電子が動きまわってイオン同士の仲をとりもってい る、ということになる。(図は省略)こうした構造が、反射される光の割合を大きくしているのである。「ピカピカした 特有の光沢をもっ」というのは「銅」の特徴のひとつである。 第二に「銅」は電気をよく通す。電気の流れにくさを表わす電気抵抗値を表に示す。 電気抵抗値(流れにくさ) 銅 . . .1.7 (2) ガ ラ ス ・・・1018 ゴ ム ・・・1020 ナイロン ・・・1018 この電気抵抗値が小さいほど電気が流れやすいわけで、ガラスやゴムやナイロンに比べて、し、かに「銅」が電気をよ く通すかがわかるだろう。これは「銅」の中にたくさん存在する自由電子が電流のはこび手となっているからなのであ る。この「電気をよく通す」というのも「銅」の特徴のひとつである。 第三に「銅

J

は熱をよく伝える。熱の伝わりやすさを表わす熱伝導度を表に示す。 熱伝導度(伝わりやすさ) 銅 … O. 7 6 (3) ガ ラ ス ・・・

O

.

005 紙 一'0.0006 ナイロン ・・・

O

.

003 一

(14)

38-この値が大きければ大きいほど熱が伝わりやすいわけであり、ガラスや紙やナイロンに比べ「銅」が非常によく熱を 伝えることがわかるだろう。この性質も「銅」の中にたくさん存在する自由電子によるものであり、それらが移動して 熱を運ぶからなのである。

I

熱をよく伝える」というのもまた「銅」の特徴のひとつである。 えんせい てんぜい 第四に「銅」は延性・展性が大きい。銅線を引っ張ると伸びて細い針金になる。これが延性である。銅線を引っ張る 力をじよじょに大きくしていくと、もとの銅線の長さの(()160%程度までは切れずに伸びる。非金属の場合には考えら れないくらい伸びるのである。また「銅」をかなづちで叩くと、だんだんと伸びて広がって薄い板になる。これが展性 である。展性が大きし、からこそ、厚さO.lmmぐらいの銅板にたやすく加工できるし、もっと薄い銅箔にすることもでき るのである。例えば非金属のダイヤモンドはたしかに硬いが、かなづちで叩けばこなどなに砕けてしまう。ダイヤモン ドには展性がほとんどないからである。延性・展性が大きいということは、結局ねばり強い、こわれにくいということ であり、これもまた「銅」の中に自由電子がたくさん存在するからなのである。たとえば粘土は適当な水分がある時は 粘り気があって自由に形を変えられるが、水分がなく乾いている時にはすぐこなごなになってしまう。これは粘土の中 で自由に動ける水が糊の役目をしているからだ。

I

銅」の場合は自由電子がその糊の役目をしているので、延性・展性 に富み、こわれにくく加工しやすいのである。この「延性・展性が大きい」というのも「銅」の特徴なのである。 【Cu

eg-ru群】 この世界にはさまざまな物質が存在している。私たちが「金属jと呼んでいる一群のものも、それら物質の一部をひ とまとめにして名づけたものにほかならない。さて、 一群の物質をまとめて「金属」と呼ぶからには、そのまとまりに 含まれる個々の物質は「非金属」とは異なる共通した特徴をもっているはずである。いったい「金属」はどのような特 徴を持っているのだろうか? このような疑問に答えるため、 (1)電 気器具の材料として広く使われており、また十円玉の素材にもなっている「銅」 をとりあげて、その特徴を調べてみた。その結果わかったことを説明していこう。 こうた〈 まず第ーに「銅」はピカピカした光沢(つや)をもっている。ピカピカしていないように見える「銅」があったとし ても、それは表面が酸化したからか、あるいは被膜におおわれているからであり、みがけばちゃんとピカピカした表面 が現われる。「銅」が特有の光沢(ピカピカ)をもっているのは、「銅」にあたった光の多くが吸収されず、反射される ためである。「銅」の中には自由に動ける電子すなわち自由電子がたくさん存在しており、これが反射される光の割合 が多い原因になっている。「銅」の結晶では、 電子の一部が原子から離れ、 「銅」原子はイオン (Cuつとなっている。 原子から離れた電子、すなわち自由電子は一つの原子に束縛されることなく、結晶の中を自由に動きまわれるような身 軽さをもっ。たとえていえば、 「銅」のイオンの浮く海を自由電子が動きまわってイオン同士の仲をとりもっている、 ということになる。(図は省略)こうした構造が、反射される光の割合を大きくしているのである。

I

ピカピカした特 有の光沢をもっ」というのは「銅」の特徴のひとつである。 第二に「銅」は電気をよく通す。電気の流れにくさを表わす電気抵抗値を表に示す。 、、 , , , ,. さ 一

ω

一 回 初 ノ ¥ E ワ t 一 n u n U 8 -ー ー に -1

1 1 0 れ 一 ⋮ 一 ⋮ ⋮ 1 流 一 一 ⋮ 〆 , ‘ . -値 -一 ス ム ン 蹴 一 銅 一 ラ 気 一 ガ ゴ ナ 電 一 この電気抵抗値が小さいほど電気が流れやすいわけで、ガラスやゴムやナイロンに比べて、いかに「銅」が電気をよ く通すかがわかるだろう。これは「銅」の中にたくさん存在する自由電子が電流のはこび手となっているからなのであ

(15)

る。この「電気をよく通す」というのも「銅」の特徴のひとつである。 第三に「銅」は熱をよく伝える。熱の伝わりやすきを表わす熱伝導度を表に示す。 熱伝導度(伝わりやすさ) 銅 …O. 7 6 (3) ガ ラ ス ・・・O. 005 紙 …O. 0006 ナイロン ・・・O. 003 この値が大きければ大きいほど熱が伝わりやすいわけであり、ガラスや紙やナイロンに比べ「銅」が非常によく熱を 伝えることがわかるだろう。この性質も「銅」の中にたくさん存在する自由電子によるものであり、それらが移動して 熱を運ぶからなのである。

r

熱をよく伝える」というのもまた「銅」の特徴のひとつである。 えんせい てんせい 第四に「銅」は延性・展性が大きいほ│っ張るとのびやすい・薄くのばしやすい)。銅線を引っ張ると伸びて細い針 金になる。これが延性である。銅線を引っ張る力をじよじょに大きくしていくと、もとの銅線の長さのは)160%程度ま では切れずに伸びる。非金属の場合には考えられないくらい伸びるのである。また「銅」をかなづちで叩くと、だんだ んと伸びて広がって薄い板になる。これが展性である。展性が大きいからこそ、厚さO.lmmぐらいの銅板にたやすく加 工できるし、もっと薄い銅箔にすることもできるのである。例えば非金属のダイヤモンドはたしかに硬いが、かなづち で叩けばこなごなに砕けてしまう。ダイヤモンドには展性がほとんどなし、からである。延性・展性が大きいということ は、結局ねばり強い、こわれにくいということであり、これもまた「銅」の中に自由電子がたくさん存在するからなの である。たとえば粘土は適当な水分がある時は粘り気があって自由に形を変えられるが、水分がなく乾いている時には すぐこなごなになってしまう。これは粘土の中で自由に動ける水が糊の役目をしているからだ。

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銅」の場合は自由電 子がその糊の役目をしているので、延性・展性に富み、こわれにくく加工しやすいのである。この「延性・展性が大き い」というのも「銅」の特徴なのである。 以上明らかになった「銅」の特徴から、 「金属」とは次のような特徴を持った物質であると考えられる。 ①ピカピカした光沢(つや)をもっている。 ②電気をよくとおす。 ①熱をよく伝える。 えんせい てんぜい ④延性・展性が大きい。 註:Ca群用教材で、は「銅」が「カルシウム」となり、下線部は次のように変えられている。(1)r石灰石や大理石の成 分になっており、また動物の骨や歯などの重要な成分にもなっている」、

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百数十%Jなお、付録2についても同様。

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(16)

《付録2:実験2で用いた教材文》 【Cu群用】 君たちは「銅」という「金属」を知っているだろうか。「銅」は、(1)電気器具の材料として広く使われており、また 十円玉の素材にもなっている。ここでは、「銅」の特徴について説明していこう。 まず第ーに「銅」はピカピカした光沢(つや)をもっている。ピカピカしていないように見える「銅」があったとし ても、それは表面が酸化したからか、あるいは被膜におおわれているからであり、みがけばちゃんとピカピカした表面 が現われる。「銅」が特有の光沢(ピカピカ)をもっているのは、「銅」にあたった光の多くが吸収されず、反射される ためである。「銅」の中には自由に動ける電子すなわち自由電子がたくさん存在しており、これが反射される光の割合 が多い原因になっている。「銅」の結晶では、電子の一部が原子から離れ、「銅」原子はイオン (Cuつとなっている。 原子から離れた電子、すなわち自由電子は一つの原子に束縛されることなく、結晶の中を自由に動きまわれるような身 軽さをもっO たとえていえば、「銅」のイオンの浮く海を自由電子が動きまわってイオン同士の仲をとりもっている、 ということになる。(図は省略)こうした構造が、反射される光の割合を大きくしているのである。

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ピカピカした特 有の光沢をもっ」というのは「銅」の特徴のひとつである。 第二に「銅」は電気をよく通す。電気の流れにくさを表わす電気抵抗値を表に示す。 電気抵抗値(流れにくさ) 銅 … 1 .7 (2) ガ ラ ス ・・・1018 ゴ ム ・・・1020 ナイロン ・・・1018 この電気抵抗値が小さいほど電気が流れやすいわけで、ガラスやゴムやナイロンに比べて、いかに「銅」が電気をよ く通すかがわかるだろう。これは「銅」の中にたくさん存在する自由電子が電流のはこび手となっているからなのであ る。この「電気をよく通す」というのも「銅」の特徴のひとつである。 第三に「銅」は熱をよく伝える。熱の伝わりやすきを表わす熱伝導度を表に示す。 熱伝導度(伝わりやすさ) 銅 一O. 7 6 (3) ガ ラ ス ・・・O. 005 紙 一0.0006 ナイロン ・・・O. 003 この値が大きければ大きいほど熱が伝わりやすいわけであり、ガラスや紙やナイロンに比べ「銅」が非常によく熱を 伝えることがわかるだろう。この性質も「銅」の中にたくさん存在する自由電子によるものであり、それらが移動して 熱を運ぶからなのである。「熱をよく伝える」というのもまた「銅」の特徴のひとつである。 えんぜい てんぜい 第四に「銅」は延性・展性が大きいほ│っ張るとのびやすい・薄くのばしやすい)。銅線を引っ張ると伸びて細い針 金になる。これが延性である。銅線をヲ│っ張る力をじよじょに大きくしていくと、もとの銅線の長さの(4)160%程度ま では切れずに伸びる。非金属の場合には考えられないくらい伸びるのである。また「銅」をかなづちで叩くと、だんだ

(17)

んと伸びて広がって薄い板になる。これが展性である。展性が大きし、からこそ、厚さ O.lmmぐらいの銅板にたやすく加 工できるし、もっと薄い銅箔にすることもできるのである。例えば非金属のダイヤモンドはたしかに硬いが、かなづち で叩けばこなごなに砕けてしまう。ダイヤモンドには展性がほとんどなし、からである。延性・展性が大きいということ は、結局ねばり強い、こわれにくいということであり、これもまた「銅」の中に自由電子がたくさん存在するからなの である。たとえば粘土は適当な水分がある時は粘り気があって自由に形を変えられるが、水分がなく乾いている時には すぐこなごなになってしまう。これは粘土の中で自由に動ける水が糊の役目をしているからだ。

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銅」の場合は自由電 子がその糊の役目をしているので、延性・展性に富み、こわれにくく加工しやすいのである。この「延性・展性が大き い」というのも「銅」の特徴なのである。

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Y oshifumi Kudる

“Heteroformulation theory" is proposed by Fushimi (1995) to explain different effects of two types of focus

instances on scientific-concept learning. The purpose of this study was to attempt to replicate the results

of the original experiments (Fushimi & 1wasaki,1990;Fushimi,1991) which were reported to support

heteroformulation theory on non-original conditions, and to examine critically the validity of Fushimi' s

theory. The results showed that: (l)on condition that the reading materials used for the concept teaching

included explcit descriptions of the definition rule, two types of the focus instances had no different effects;

(2)on condition that the reading materials included no description of the definition rule, the results of

original experiments were replicated. 1t is suggested that the original data can be explained better by

inductive reasoning from the focus instances rather than by deductive reasoning from the definition rule of

the concept. Heteroformulation theory should 出 reexaminedfrom the viewpoint of

categoty-based

induction".

keyword: concept teaching, heteroformulation theory, categoty-based induction

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A

参照

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