氏 名 あべ いちろう
阿部 一朗
学 位 の 種 類
博士(医学)
報 告 番 号
乙第
1740号
学位授与の日付
平成
30年
10月
4日
学位授与の要件
学位規則第
4条第
2項該当(論文博士)
学 位 論 文 題 目
Clinical investigation of adrenal incidentalomas in Japanese patients of Fukuoka region with updated diagnosis criteria for sub-clinical Cushing’s syndrome
(サブクリニカルクッシング症候群新診断基準に基づいた日本 人(福岡地区)における副腎偶発腫瘍の臨床的検討)
論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授
田中 正利
(副 査) 福岡大学 教授
吉満 研吾
福岡大学 准教授
野見山 崇
内 容 の 要 旨
【目的】
副腎偶発腫瘍は画像検査の普及により増加の一途をたどっている。腫瘍が良性であっ ても、機能性か非機能性の判断が肝要である。我々は、副腎偶発腫瘍に対し、全例詳細 な入院精査を行っている。また、2017 年、副腎機能性腫瘍である、サブクリニカルクッ シング症候群の新診断基準が作成されたが、我々はこの改訂基準に基づいたサブクリニ カルクッシング症候群の診断方法を以前から採用し、精査を行ってきた。これを元に、
副腎偶発腫瘍の診断の内訳を明らかにするとともに、common disease(耐糖能障害、高 血圧、脂質異常症)の有無、臨床所見、検査所見、腫瘍径等の差異などにより、積極的 な精査を行うべきか判断ができるのであれば、早期の診断、治療に結びつく可能性が高 いと考え、機能性の予測因子について検討した。
【対象と方法】
福岡大学筑紫病院 内分泌・糖尿病内科にて 2014 年 4 月から 2017 年 3 月までに副腎偶 発腫瘍で紹介となった 61 例を対象として全例入院にて精査を行った。全症例に対して、
診断基準、ガイドラインをもとに、非機能性腫瘍、原発性アルドステロン症、褐色細胞
腫、クッシング症候群及びサブクリニカルクッシング症候群の診断を行い、それらの頻
度、検査所見、腫瘍径等の parameter を検討した。耐糖能障害は、HbA1c 値 6.5%以上ま
たは糖尿病治療中の症例を、高血圧は、収縮期血圧 140mmHg 以上かつ、または拡張期血
圧 90mmHg 以上、または治療中の症例を、脂質異常症は、LDL コレステロール値 140 mg/dl 以上かつ、または HDL コレステロール値 40mg/dl 未満かつ、または中性脂肪値 150 mg/dl 以上の何れかを満たすもの、または、治療中の症例とした。尚、サブクリニカルク ッシング症候群の診断について、新診断基準での診断と、旧基準での診断の両方で解析 を行い、新診断基準でのみサブクリニカルクッシング症候群と診断された症例と旧基準 にも当てはまる症例との差異の比較を行った。
【結果】
明らかな悪性を疑う腫瘍は認めなかった。サブクリニカルクッシング症候群の新診断 基準を用いた診断基準、ガイドラインに基づいた精査では、原発性アルドステロン症が 15 例(24.6%) 、褐色細胞腫が 8 例(13.1%)、非機能性腫瘍が 25 例(41.0%) 、クッシング 症候群及びサブクリニカルクッシング症候群が 13 例(9.3%)となった。サブクリニカル クッシング症候群旧基準での診断では、では、非機能性腫瘍 30 例(49.1%)、クッシング 症候群及びサブクリニカルクッシング症候群が 8 例(13.1%)となり、サブクリニカルク ッシング症候群新診断基準により、クッシング症候群及びサブクリニカルクッシング症 候群の診断例が増加した。また、非機能性腫瘍に比し、褐色細胞腫において BMI が有意 に少なく(p=0.026) 、腫瘍径が有意に大きかった(p=0.039) 。原発性アルドステロン 症、クッシング症候群及びサブクリニカルクッシング症候群については、非機能性と比 して有意に年齢が若く(p=0.049, 0.043) 、低カリウム血症が有意に多かった(p=0.014, 0.001) 。サブクリニカルクッシング症候群について、新診断基準でのみサブクリニカル クッシング症候群と診断された症例(5 例)と旧基準にも当てはまる症例(5 例)との差 異については明らかな差は認めなかった。
【結論】
副腎偶発腫瘍における既出の報告と比し、機能性腫瘍が多かった。これは、全例詳細
な入院精査を行ったこと、サブクリニカルクッシング症候群の新診断基準を採用したこ
とが要因と考えられた。腫瘍径の大きな症例、BMI の低い症例ではより褐色細胞腫を、若
年症例、低カリウム血症を有する症例では、原発性アルドステロン症、クッシング症候
群及びサブクリニカルクッシング症候群を特に念頭に置いて精査するべきと考えられ
た。また、サブクリニカルクッシング症候群について、新診断基準でのみサブクリニカ
ルクッシング症候群と診断された症例と旧基準にも当てはまる症例との差異はなく、新
診断基準の有用性も示された。副腎偶発腫瘍は、原則詳細な入院精査を行うこと、サブ
クリニカルクッシング症候群の新診断基準を用いた診断を適切に行うことが肝要と考え
られた。
審査の結果の要旨