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川野 恭雅 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 かわの やすまさ

川野 恭雅

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

乙第 1790 号

学位授与の日付

令和 1 年 10 月 3 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 2 項該当(論文博士)

学 位 論 文 題 目

Outcomes in patients with infections and augmented renal clearance: A multicenter retrospective study

(過大腎クリアランスを伴った感染症患者の予後:多施設後ろ 向き研究)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

中島 衡

(副 査) 福岡大学 教授

田中 正利

福岡大学 准教授

上杉 憲子

内 容 の 要 旨

【目的】

感染症は、集中治療を要する患者にとって大きな課題の一つである。感染症の治療を 行う上で重要なことは、適切な抗菌薬を適切な量で早期に使用することである。近年炎 症性メディエーターによって引き起こされる過大腎クリアランスという現象が注目され ており、集中治療室へ入室した患者の約 14-80%に認められると報告されている。感染症 患者が過大腎クリアランスを伴った場合、糸球体濾過量が亢進し腎代謝の影響を受ける 抗菌薬の血中濃度が低下することで臨床的な効果が減弱する可能性が指摘されている。

しかし、実際の臨床的な意義は未だに不明であり、過去に日本での検討は報告されてい ない。本研究では、日本の集中治療室へ入院し過大腎クリアランスを伴った感染症患者 の臨床的な特徴と予後に関して検討を行った。

【対象と方法】

2013 年 4 月から 2017 年 5 月に日本の 2 施設(福岡大学病院及び高知県高知市病院企業

団立高知医療センター) の集中治療室へ入室した 18 歳以上で抗菌薬治療が行われた 280

例の感染症患者(年齢:74 歳、四分位範囲:64-83)を対象とし、後ろ向き観察研究を行っ

た。妊婦、横紋筋融解症が疑われる患者、血清クレアチンキナーゼ 5000IU/L 以上の患

者、血清クレアチニン 1.1mg/dL 以上の腎機能障害患者、透析の既往のある患者は研究対

象より除外した。推定糸球体濾過量は集中治療室へ入室した際の検査結果を基に日本式

方程式を用いて評価し、推定糸球体濾過量が 130 mL/min/1.73 m

2

以上の場合を、過大腎

(2)

クリアランスありと定義した。過大腎クリアランスの独立したリスク因子を特定し、さ らに過大腎クリアランスが集中治療室での死亡予測因子であるか検討するために、単変 量解析及び多変量ロジスティック回帰分析を行なった。また、受信者動作曲線 (ROC)分 析を行い、ROC 下面積を用いて過大腎クリアランスを予測する因子の精度を求めた。

【結果】

280 例中 19 例(6.8%)が過大腎クリアランスを発現していた。死亡率は 9.6%であり、

死亡率に関する単変量解析では過大腎クリアランスの有無による 2 群間で有意差を認め なかった(p=0.7)。さらに、多変量ロジスティック回帰分析では、過大腎クリアランスの 独立したリスク因子として若年者が同定されたが(オッズ比 0.94;95%信頼区間、 0.91 - 0.96) 、過大腎クリアランスが集中治療室での死亡予測因子であることは示されなかっ た(オッズ比 0.57;95%信頼区間 0.11〜2.92)。また、過大腎クリアランスの予測因子と しての年齢の ROC 下面積は 0.79 (95%信頼区間、0.68-0.91)であり、カットオフ値は 63 歳であった(感度、68.4%;特異度 78.9%)。

【結論】

日本の集中治療室に入室した感染症患者における過大腎クリアランスの発現率は過去 の報告と比較すると低く、若年者は過大腎クリアランスのリスク因子であった。また、

過大腎クリアランスは集中治療室での独立した死亡予測因子ではなかった。

審査の結果の要旨

本論文は、感染症に対する抗菌薬治療において、その血中濃度低下に大きく関与す る糸球体濾過量の亢進に着目し、実際の臨床の現場での後ろ向き観察研究を行った結 果を解析し、考察した内容である。感染症の状態で産生される炎症性メディエーター は、過大腎クリアランスを惹起することで、抗菌剤の血中濃度を下げ、その結果臨床 効果が減弱する可能性が示唆されている。

この研究では、実際に集中治療室に入室した患者 280 名を対象に、推定糸球体濾過

量が 130mL/min/1.73m

2

以上の場合を過大腎クリアランスであると定義し、19 例の

該当患者を抽出した。発現率は 6.8%であり、既報告と比較して低く、若年者であるこ とが独立したリスク因子として同定された。カットオフ値は 63 歳(感度 68.4%、特異

度 78.9%)であった。集中治療室での死亡の予測因子であることは示されなかった。

1. 斬新さ

近年着目されている炎症時の過大腎クリアランスという現象を今までに報告のない日

本人を対象として解析を行い報告した点は斬新である。

(3)

2. 重要性

過大腎クリアランスという現象が、抗菌薬の血中濃度を下げ、臨床効果を発揮できな い可能性があると考え、実際の死亡率の比較検討を行ったことは重要である。

3. 実験方法の正確性

過大腎クリアランスの有無で 2 群に分け、過大腎クリアランスを有する群を生存者と 死亡例との 2 群に分けて多変量ロジスティック回帰分析を正確に行っていた。

4. 表現の明瞭性

目的、方法、結果は、正確かつ詳細に表現されている。結果に基づいた考察について は、過去の論文を十分検討し、今回の報告の位置づけを示すとともに、実施した解析 の不十分な点を明確に示している。

5. 主な質疑応答

Q1:腎機能の急速な低下には、臨床現場でたびたび遭遇するが、今回発表された過大 腎クリアランスという病態は、はじめて耳にした病態である。そのメカニズムについ ては、どれほどのことがわかっているのか

A1:全身性の炎症反応、血管収縮、そして輸液過多などで心拍出量が増加するといわ れているが、具体的にどのようなサイトカインが働いているか?輸出細動脈が拡張す るのかなどについては、調べた文献中には明確に記載されていなかった。

Q2:DIC score との関連は調べられているか?

A2:この過大腎クリアランスは、重症度からすると軽い症例に起こることが知られ ており、今回報告症例では、DIC に関しての検討を行っていない。

Q3:実際に過大腎クリアランスが認められた症例では、治療後には eGFR 値はどう

なったのか?

A3:約 1 週間ほどで eGFR 値は低下することが多く、一過性の反応であった。

Q4: 過大腎クリアランスが認められると感染症の抗菌薬治療にどのような変化を もたらすのか?

A4:文献的には、再発率が高かったとする報告がある。抗菌薬の効果不十分に関連が あるのではないかと考えている。

Q5:今回用いた eGFR 測定法が妥当であったのかどうかという点はどのように考え

ているのか?

A5:もちろん eGFR 値がよいマーカーではないことは承知しているが、救命救急の

実際の場では、腎機能を評価する基盤とする数値はどうしても必要であり、この数値

を使った検討とした。このことについては、論文中に limitation として記載した。

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Q6:今回の検討は、細菌感染、特に敗血症に関しての検討であったが、ウイルス感染 症ではこのような病態は起こりえないのか?

A6:細菌感染症においても原因菌の同定は簡単ではなく、さらにウイルス感染の原 因ウイルスに関しては、もっと困難を極めるので、研究を行って実証することは難し いと思われる。しかし、ウイルス感染症でも同様にこの病態のきっかけを作ることは あり得ると考えている。

その他の質問に関しても、申請者は適切に答えた。また、今後の検討に関するアド バイスもあった。

本論文は、論文中の記載にもあるとおり、種々の study limitation があり、探索的

研究と位置づけられるが、今後も対象患者数を追加した解析を継続することで、新し

い問題提議に結びつく、独創性と発展性を有するものと思われ、学位論文に値すると

評価された。

参照

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