氏 名 こさか ひでとも
小阪 英智
学 位 の 種 類
博士(医学)
報 告 番 号
甲第
1863号
学位授与の日付
令和
3年
3月
16日
学位授与の要件
学位規則第
4条第
1項該当(課程博士)
学 位 論 文 題 目
Influence of femoral and tibial deformities on postoperative alignment after opening wedge high tibial osteotomy
(大腿骨及び脛骨の変形が高位脛骨骨切り術後のアライメント に対する影響)
論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授
立花 克郎
(副 査) 福岡大学 教授
井上 亨
福岡大学 准教授
佐藤 寿彦
内 容 の 要 旨
【目的】
開大式高位脛骨骨切り術 Opening Wedge High Tibial Osteotomy (OWHTO) は内反型変 形性膝関節症の症例に対して脛骨を骨切り矯正することによって、膝関節外側の相対的に 軟骨の状態が正常な領域へ荷重を移す手術方法で、疼痛を改善させ、人工関節置換術を避 ける、もしくは人工関節までの期間を延長する目的で施行されている。
良好な臨床成績の維持には、矯正後の目標とした荷重軸の獲得が重要であると言われて いるが、術前、術中計画通りに矯正しても目標としたアライメントを獲得できない症例が 報告されている。矯正不良の要因として大腿骨関節面の傾斜や脛骨関節面の傾斜が指摘さ れている。大腿骨の変形として、大腿骨近位では頚体角、大腿骨骨幹部では外弯角、遠位 部では大腿骨の関節面の傾斜がある。これらの変形が大腿骨の関節面に与える影響、及び OWHTO 術後の矯正不良に与える影響に関しての報告は少ない。今回の研究の目的は、OWHTO 術後の矯正不良に与えている因子を分析することである。
【対象と方法】
対象は 2012 年 2 月~2015 年 6 月まで OWHTO を施行した症例の内、単純レントゲンが正
しく評価できない症例、末期変形性膝関節症及び変形性股関節症を有する症例を除いた計
45 例 45 膝(男性 13 膝、女性 32 膝)を対象とした。術後 1 年後の mechanical axis index
(%MA), mechanical lateral distal femoral angle(mLDFA), 大腿骨外弯角、大腿骨頚体
角、術前及び術後 1 年後の mechanical medial proximal tibial angle(mMPTA)以上の6 項目を計測し評価した。過去の報告より術後の至適%MA を 57~67%として、術後1年後 の%MA が 56%以下を矯正不足群(1 群)、57%~67%を至適矯正群(2 群)、68%以上を過矯 正群(3 群)に分けた。
統計学的評価として、術後の%MAの各群の測定項目の平均の差はone-way analysis of variance (ANOVA)のpost hoc Tukey tests を使用した。また、mLDFA, 大腿骨外弯角、大 腿骨頚体角、術前及び術後1年後のmMPTAが術後の矯正不良に与える影響をロジスティック 回帰分析で解析した。さらに、矯正不良に関連する因子のカットオフ値を求めるためにROC 曲線を用いて解析した。また、mLDFAと大腿骨外弯角、大腿骨頚体角の相関性を調べるた めpearson’s 相関係数を用いて解析した。優位水準を0.05とし統計処理を行った。
【結果】
至適矯正群(2 群)は 23 例(51%)であった。一方で矯正不足群(1 群)は 12 例(27%)、
過矯正群(3群)は 10 例(22%)であった。
矯正不足に関して、mLDFA の平均角度は 1 群で 90.0°±2.4°、2 群で 87.3°±1.3°、
3 群で 88.0°±2.1°であり、1 群の平均角度は 2 群と3群に比べ大きかった(p < 0.01)。
外弯角の平均角度は 1 群で 3.3°±2.3°、2 群で−0.3°±2.0°、3 群で−1.5°±2.3°で あり 1 群の平均角度は2群と 3 群に比べ大きかった(p < 0.01)。術前の mMPTA の平均角度 は 1 群で 83.9°±1.0°、2 群で 86.1°±2.1°、3 群で 86.4°±1.0°であり、1 群の平 均角度は2群と 3 群に比べ小さかった(p < 0.05) 。大腿骨頚体角、術後の mMPTA の平均 角度は至適矯正群と有意差がなかった。mLDFA と外弯角には正の相関関係を認めていた
(r=0.47, p < 0.01) 。多変量ロジスティック回帰分析では、mLDFA (odds Ratio: OR, 15.60; 95% CI, 2.01–120.97)と大腿骨外弯角(odd Ratio: OR, 11.60; 95% CI, 1.32–
33.3)が矯正不足に影響を与える因子であった。矯正不足になるカットオフ値は mLDFA が 90.0°(感度, 50.0%; 特異度, 100%; AUC, 0.85)で外弯角が 0.35°(感度, 91.7%; 特 異度, 72.7%; AUC, 0.89)であった。過矯正群に関しては mMPTA の平均角度は 1 群で 92.3°±2.8°、2 群で 92.1°±1.2°、3 群で 94.9°±1.6°であり、3 群は 1 群と 2 群に 比べ有意差をもって大きかった(p < 0.01)。その他の測定項目には有意差はなかった。多 変量ロジスティック回帰分析では術後の mMPTA (odds Ratio: OR, 88; 95% CI, 1.66–
4665.33)が過矯正に影響を与える因子であった。
【結論】
OWHTO 術後の矯正不良には mLDFA と大腿骨外弯角が関連していた。術後に至適なアライ
メントを獲得するためには、大腿骨の変形を考慮する必要があり、大腿骨の変形がある症
例に対しては、術後矯正不足にならないため OWHTO だけではなく、大腿骨骨切りも併用し
た手術が必要であることが示唆された。
審査の結果の要旨