無線システム用小型平面チルトビームアンテナに関 する研究
著者 宇野 博之
発行年 2008‑03‑22
URL http://hdl.handle.net/2297/9718
無線システム用小型平面
チルトビームアンテナに関する研究
宇 野 博 之
平成
20
年3
月博 士 論 文
無線システム用小型平面
チルトビームアンテナに関する研究
金沢大学大学院自然科学研究科
電子情報科学専攻
情報システム講座
学 籍 番 号 0523112101
氏 名 宇 野 博 之
目 次
第
1
章 序論1
1.1
本研究の背景. . . . 1
1.2
チルトビームアンテナの小型化. . . . 4
1.3
チルトビームアンテナの放射特性の測定法及び評価指標の定義. . . . 6
1.3.1
チルトビームアンテナの放射特性の測定法. . . . 6
1.3.2
チルトビームアンテナの評価指標の定義. . . . 7
1.4
本研究の目的と概要. . . . 9
第
2
章 位相差給電スロットアレー11 2.1
まえがき. . . . 11
2.2
アンテナの基本構成と放射特性. . . . 12
2.2.1
アンテナの基本構成及び放射パターン. . . . 12
2.2.2
各構成パラメータに対する放射特性. . . . 15
2.2.3
実験結果. . . . 19
2.3
ビーム切換特性. . . . 22
2.3.1 PIN
ダイオードスイッチを用いたビーム切換構成. . . . 23
2.3.2 MMIC
スイッチを用いたビーム切換構成. . . . 27
2.4 4
セクタアンテナへの応用. . . . 31
2.4.1
基本アンテナ構成. . . . 31
2.4.2
ビーム切換回路を用いた4
セクタアンテナの具現化構成. . . . 36
2.5
むすび. . . . 39
3.2.2
放射特性. . . . 46
3.3
スロット素子構成. . . . 48
3.3.1
アンテナ構成. . . . 48
3.3.2
各構成パラメータに対する放射特性. . . . 50
3.3.3
実験検討による特性評価. . . . 54
3.4
マルチセクタアンテナへの応用. . . . 56
3.5
むすび. . . . 60
第
4
章 クランク素子装荷ループアンテナ61 4.1
まえがき. . . . 61
4.2
アンテナの基本構成と放射特性. . . . 62
4.2.1
線状素子構成及び電流分布. . . . 62
4.2.2
放射パターン及び周波数特性. . . . 64
4.2.3
設計パラメータの検討. . . . 68
4.2.4
実験検討による特性評価. . . . 74
4.3
スロット素子構成. . . . 77
4.3.1
アンテナ構成. . . . 77
4.3.2
放射特性. . . . 78
4.4
マルチセクタアンテナへの応用. . . . 81
4.5
多段接続による高利得化. . . . 85
4.5.1
アンテナ構成及び電流分布. . . . 85
4.5.2
スロット素子構成. . . . 89
4.5.3
車載近距離レーダへの応用. . . . 92
4.6
むすび. . . . 98
第
5
章 チルトビームアンテナの薄型化に関する検討101 5.1
まえがき. . . . 101
5.2 EBG (Electromagnetic Band-Gap)
反射板の構成. . . . 103
5.3 EBG
反射板を用いたチルトビームアンテナ. . . . 106
5.3.1
基本構成及び薄型化効果の検証. . . . 106
実験検討による特性評価第
6
章 結論117
謝辞
本研究に関する発表論文 国際会議発表
研究会等 特許 参考文献
第 1 章 序論
1.1
本研究の背景近年,携帯電話の爆発的な普及に象徴されるように,将来のユビキタス社会や安全安心の社 会の実現に向けて無線システム分野の市場が急速な拡大を見せている.例えば,通信分野で言 えば,
GPS (Grobal Positioning System)
やDBS (Direct Broadcast from Satellite)
を始めとす る衛星通信システム,無線LAN (Local Area Network)
,WiMAX (Worldwide Interoperability for Microwave Access)
やUWB (Ultra Wide Band)
を始めとする移動体通信システム,ETC (Electronic Toll Collection)
,DSRC (Dedicated Short Range Communication)
や路車間・車 車間通信を始めとする車載通信システムなどがあり,通信以外の分野では,車載レーダやミ リ波イメージングなどがある[1],[2]
.これらの無線システムにおいて,通信エリアや通信品 質,レーダで言えば検知距離や検知精度などのシステム性能を左右する重要なキーデバイス として“ アンテナ ”があり,それぞれのシステムに適したアンテナの研究開発が活発に行わ れている.例えば,屋内の無線
LAN
のような高速無線システム[3],[4]
では,マルチパス伝搬により 様々な伝搬路の電波が異なる時間(位相)で受信されるために生じるマルチパスフェージン グ[5]
や人体により直接波が遮断されるシャドーイング[6]
などによる伝送品質の劣化を低減 するためのアンテナ技術が研究されている[7]-[9]
.このようなアンテナ技術の一つとして,セ クタアンテナ技術がある.これは,指向性を有するアンテナを複数用いて,それぞれのアン テナを水平面の360
度の全方位をカバーするように配置し,状況にあわせて適切なアンテナ を選択する技術のことであり,構成が簡易でかつ複雑な信号処理が不要であることから,こ れまで多くの研究例が報告されている[10]-[14]
.中でも,生産性や設置の容易さの観点から,突起の無い平面構造のセクタアンテナが注目されており
[15]-[18]
,その基本アンテナ素子と してアンテナ面の鉛直方向から水平方向に傾斜(チルト)したビームを有する平面構造のチ図
1.1:
平面構造チルトビームアンテナの従来技術(1)外観上の問題などから平面構造であることが望ましいため,ビームの傾斜角(チルト角)や 方向を切り換えることができる平面アンテナが求められる.また,車載衛星通信システムで は,車両に設置するアンテナの指向性を衛星方向に向ける必要があることから,アンテナ面 を傾けずに衛星方向にビームを形成できる平面チルトビームアンテナが必要となる
[25]
.こ のように,チルトビームを放射するアンテナは様々な無線システムで求められており,他に も路車間通信の固定局及び車載端末[26]
や,地下街やビルの奥などの電波が届きにくい場所 の壁面に設置される携帯電話用ブースタなどで検討されている.これまでに,このような平面構造のチルトビームアンテナとして,ラジアルラインスロッ トアンテナ
[27]
,4
素子パッチアレーアンテナ[28]
,スロット八木・宇田アレーアンテナ[17]
, パッチ八木・宇田アレーアンテナ[18],[29]
,二重ループアンテナ[30]
,スパイラルアンテナ[31]
などが報告されている.図1.1
に示すラジアルラインスロットアンテナや4
素子パッチ アレーアンテナは,低姿勢な構成ではあるが,複数のアンテナ素子を配列し,平面的なアレー 効果を利用してビームをチルトさせているため,2
波長程度以上の比較的大きい平面寸法が 必要となる.また,複数の給電点から同時に給電する必要があることから電力分配器が必要 となり,給電構成が複雑になる.図1.2
に示すスロット八木・宇田アレーアンテナやパッチ 八木・宇田アレーアンテナは,図1.1
に示すアンテナと同様に基本的には低姿勢な構成では あるが,無給電素子を含む複数のアンテナ素子を用いてアレー効果を利用しているため2
波 長程度の平面寸法が必要となる.ただし,一点給電の簡易な給電構成でチルトビームを実現 することができる.また,図1.3
は,チルトビームを実現するために2
つの放射パターンの図
1.2:
平面構造チルトビームアンテナの従来技術(2)図
1.3:
平面構造チルトビームアンテナの従来技術(3)ラルアンテナを示している.これらのアンテナは,アンテナ素子数が少なく簡易な給電構成 でチルトビームを実現できるため,平面寸法を
1
波長程度と比較的小さくすることができる が,1/4
波長程度の厚みを必要とする.このように,従来の平面構造のチルトビームアンテ ナは,基本的には1/4
波長以下の低姿勢な構成だが,1
波長以上の比較的大きい平面寸法が 必要となる.例えば,車両のバンパーに搭載する車載レーダやノートパソコンに搭載する無線
LAN
装 置などを想定すると,ある程度の厚みは許容されるが,平面寸法が小さいアンテナが望まし1.2
チルトビームアンテナの小型化1.1
節では,従来の平面チルトビームアンテナは複数のアンテナ素子を用いたアレー効果 や進行波電流などを利用してチルトビーム特性を実現しているため,比較的大きな平面寸法 を必要とすることを述べた.本節では,1
波長以下の小型な平面寸法を実現するための構成 として,アンテナ厚を犠牲にした新規の平面チルトビームアンテナ構成を提案し,その動作 原理について述べる.図
1.4
は,提案する小型平面チルトビームアンテナを2
点波源モデルで示したものである.図
1.4
において,間隔d
を隔てた点波源(1)
と点波源(2)
は,無限反射板上から間隔h
を 隔てて配置されている.このとき,点波源(1)
及び(2)
の励振位相をそれぞれφ
1 及びφ
2 と する.このような構成において,写像の原理から反射板の -Z
側に位相が180
度反転した イメージ波源を仮定することができ,XZ
面の放射パターンはこれらの4
つの波源の合成に よって形成されることになる.このモデルにおいて,例えば,間隔
h
を1/4
波長以上である0.417 λ
に設定し,間隔d
を0.333 λ
,位相差δ
(=φ
1-φ
2)を ±110
度とした場合の放射パターンの計算結果を図1.5
に示す.ここで,λ
は自由空間の波長であり,点波源(1)
及び(2)
の振幅は同レベルと している.計算には,モーメント法電磁界シミュレーション[32]
を用いた.図1.5
から,位 相差δ
=110
度とすることにより+Z
軸方向から+X
軸方向へ54
度チルトした主ビーム が得られ,位相差δ
=-110
度とすることにより主ビームは+Z
軸方向から-X
軸方向へ チルトすることになる.これは,図1.6
に示すように,点波源を反射板上から1/4
波長以上図
1.4:
提案チルトビームアンテナの2
点波源モデル離して配置するとローブが割れる特性を利用したものであり,
2
点波源とし位相差を設ける ことで一方のローブをキャンセルさせ,チルトビーム動作を実現している.このように本提案アンテナによれば,
1/4
波長以上の厚みが必要ではあるが,1
波長以下 の平面寸法でチルトビームを実現できることが分かる.したがって,本提案アンテナは,あ る程度の厚みは許容できるが実装面積が制限されるような機器に搭載するチルトビームアン テナに適している.図
1.5: 2
点波源モデルのXZ
面放射パターン1.3
チルトビームアンテナの放射特性の測定法及び評価指標の 定義1.2
節では,本論文で新たに提案する小型平面チルトビームアンテナの動作について述べ た.本節では,このようなチルトビームアンテナの放射特性を測定する方法と,本論文で用 いるチルトビームアンテナ性能を判断する評価指標の定義について述べる.1.3.1
チルトビームアンテナの放射特性の測定法チルトビームアンテナでは,基本的に垂直面と円錐面の
2
つの面における放射パターンを 測定することで性能を評価することが一般的である[17],[18]
.垂直面パターンとは,図1.5
に 示されるように,主ビーム方向の方位角φ
において仰角θ
を変化させたときの放射パターン のことであり,円錐面パターンとは主ビーム方向の仰角θ
において方位角φ
を変化させたと きの放射パターンのことである.図
1.7
に,チルトビームアンテナの鉛直方向を+Z
方向,チルト方向を+X
方向とした 場合の垂直(XZ
)面パターンの測定系及びそのときの放射パターンの測定結果の一例を示 す.放射特性の測定は,チルトビームアンテナを送信アンテナ,単指向性で水平/垂直の両図
1.7:
垂直面パターンの測定系及び放射パターン図
1.8:
円錐面パターンの測定系及び放射パターン偏波を同時に測定できる対数周期(ログペリ)アンテナを受信アンテナとして使用し,スペ クトラムアナライザで検波する方式で行っている.ここでは,パーソナルコンピュータを用 いてターンテーブルを自動回転させながら,約
2
度毎にデータを取り込んで自動的に測定で きるようにしている.このときの電波暗室のサイズは,6
×4
×2 m
であり,送受信アンテ ナ間の距離は約3 m
である.また,送信アンテナへの給電にはシグナルジェネレータ(SG
) を接続して測定を行っており,このとき給電ケーブルには放射特性への影響が出ないように フェライトコアや吸収シートを取り付けている.また,SG
は電波暗室の外に配置し放射特 性に悪影響を及ぼさないようにしている.測定系の校正には,利得が既知のホーンアンテナ を用いて,それとの比から利得を算出しており,単位として「dBi
」を用いる.「dBi
」は無指 向性アンテナの利得との比を表した値である.なお,図1.7 (b)
に示す放射パターンは,最 大利得で規格化した表示としている.図1.8
は,円錐面パターンの測定系及び放射パターン の一例を示している.円錐面パターンの測定では,主ビーム方向のチルト角にあわせてター ンテーブルの回転軸を傾斜させている以外は垂直面パターンの測定と同様である.図
1.9:
本提案チルトビームアンテナにおけるF/B
比の定義指標であるチルト角,円錐面パターンの半値角,
F/B
比について述べ,本論文における定義 とする.チルト角とは,図
1.7 (b)
に示すθ
t のことであり,垂直面パターンにおいてアンテナ面の 鉛直方向から水平方向に主ビームがチルトしている角度のことを指す.また,円錐面パター ンの半値角は,図1.8 (b)
に示すθ
H のことであり,円錐面パターンにおいて放射電力密度が 最大放射方向の1/2
となる二つの方向を挟む角のことである.F/B
比は,一般に指定方向の 利得と,指定方向の逆方向から±60
度の角度範囲内における最大利得との比で定義される が[33]
,反射板により主ビームと反対方向への放射量が著しく低く,図1.7 (b)
に示すように バックローブが主ビームと同様にアンテナ面より上方に形成される本提案のチルトビームア ンテナにおいてはその定義が適用できない.そこで,チルトビームアンテナのF/B
比として 提案されている定義を適用することにする[18]
.この定義は,図1.9
に示すように,原点O
を頂点,X
軸(チルトビーム方向)を中心線とした頂角が120
度の円錐体を用いて,主ビー ムを含む円錐方向における最大利得と他方の円錐方向における最大利得との比をF/B
比と して定義するものである.図1.9
に示す放射パターンの例では,前方の最大値であるA
にお ける利得と後方の極大であるB
における利得の比がF/B
比となる.本論文では,高速無線 通信を高い伝送品質で実現するために必要とされる10 dB
以上を設計の目安とする[34]
.1.4
本研究の目的と概要1.1
,1.2
節では,平面チルトビームアンテナの小型化の必要性を述べるとともに,アンテ ナ厚を1/4
波長以上に設定し,ローブが割れる特性を積極的に活かすことで,1
波長以下の 小型な平面寸法を実現できることを示した.本論文では,1.2
節で述べたアンテナの動作原理 を利用した具体的なアンテナ素子の開発を目的とし,小型でかつ簡易な給電構成の平面チル トビームアンテナの構成を提案する.また,提案アンテナの実用性を高めるためにアンテナ 厚を低減する手法についても検討する.以下に各章の概要を述べる.2
章:位相差給電スロットアレー2
章では,1.2
節で述べた動作メカニズムを有するアンテナの具現化構成として,反射板上 の波源を2
つのスロット素子とし位相差給電する構成を提案する.素子形状をスロット素子 とすることで,一般に無線回路で使用されているマイクロストリップライン(MSL
)から電 磁界結合により給電でき,アンテナと無線回路が一体形成することができる.まず本章では,各構成パラメータと放射特性との関係を計算により明らかにするとともに,
分配給電回路を用いた位相差同時給電構成において実験評価と計算結果を比較する.また,
SPDT
(Single Pole Double Throw
)スイッチを用いて2
つのスロット素子の位相差を切り換 えるアンテナ構成を検討し,ビーム切換の可能性を示す.さらには,無線システムへの応用 として,マルチセクタアンテナの構成を提案し,小型なセクタアンテナが実現できることを 示す.3
章:クランク素子装荷ひし形アンテナ3
章では,1.2
節で述べた動作を1
素子で実現することができ,分配給電を必要としない アンテナ構成として,従来から提案されている先端開放ひし形アンテナにクランク素子を設 けた構成を提案する.まず,提案アンテナの電流分布を電磁界シミュレーションにより計算することでクランク 素子の動作を明らかにし,図
1.4
に示す2
点波源モデルと同様の動作メカニズムによりチル トビームが得られていることを示す.また,素子形状をスロット素子構成にすることで,主 偏波方向を切り換えることができるとともに,簡易な給電構成でアンテナ素子を励振できる4
章:クランク素子装荷ループアンテナ4
章では,1
波長ループアンテナを基本として,ループ素子にクランク素子を設けたアン テナ構成を提案する.提案するループアンテナは,3
章 で述べるアンテナ構成と同様に1
素 子でかつ一給電でチルトビームを実現することができる.まず,アンテナ素子上の電流分布から,
2
点波源モデルと同様の動作をしていることを示 し,設計パラメータの検討として各構成パラメータに対する放射特性への影響を計算により 把握し,設計手法を明確化する.また,実験により計算結果の妥当性を検証し,良好なチル トビーム特性が得られることを示す.次に,スロット素子構成において実験結果と計算結果 を比較し,給電点を切り換えることでビーム方向切換を実現できることを示す.さらに無線 システムへの応用として,マルチセクタアンテナ構成及び複数素子を多段接続した構成につ いて提案する.マルチセクタアンテナでは,3
素子で6
セクタ特性を達成できる構成を示す とともに,素子間結合による特性劣化量を把握する.多段接続構成では,高利得化と挟ビー ム化を同時に実現することができることを明らかにし,車載レーダ用アンテナに適している ことを示す.5
章:チルトビームアンテナの薄型化に関する検討本論文で提案するアンテナ構成は,
1.2
節 で述べたように,平面寸法を1
波長以下に低減す ることができるが,反射板との間隔を1/4
波長以上必要とする.そこで5
章では,2
~4
章 で提案するアンテナをより実用的な大きさとするために,EBG
(Electromagnetic Band-Gap
) 構造の反射板を用いることによるアンテナの薄型化を検討する.まず本章で用いる
EBG
反射板の基本構成及び動作を示すとともに,EBG
反射板の反射位 相特性について述べる.次に,2
章で述べたアンテナ構成にEBG
反射板を適用し,従来の 反射板適用時の特性との比較から薄型化できることを明らかにする.また,実験により計算 結果の妥当性を検証するとともに,EBG
反射板によるアンテナ特性への影響を検討する.6
章:結論6
章では,1
~5
章で述べた本研究での成果をまとめるとともに,今後の研究課題につい て述べる.第 2 章 位相差給電スロットアレー
2.1
まえがき1.2
節では,本論文で提案する小型平面チルトビームアンテナの基本的な動作原理につい て述べた.本提案アンテナは,位相差を有する2
つの放射源を反射板から所定の間隔を隔て て配置する構成であり,これによりチルトビームを実現することができるとともに,位相差 を切り換えることでビーム方向を容易に切り換えることができる.本提案アンテナを構成する平面アンテナ素子としては,様々なものが考えられ,最も簡単な アンテナ素子としては
2
素子のダイポールアンテナやスロットアンテナが考えられる.ダイ ポールアンテナは,一般的に平衡給電する必要があるため,マイクロストリップライン(MSL
) のような不平衡線路から給電するためにはバランのような平衡・不平衡変換素子が必要とな る.このため,本章では,本提案アンテナを実現するアンテナ素子として2
素子のスロット アンテナを用いた位相差給電スロットアレーに着目し,具現化構成及び放射特性について検 討を行う.スロットアンテナは,主偏波を垂直
E
θ 偏波成分とすることができるため,アンテナ素子 を水平に配置して用いる場合,一般の無線通信システムで用いられる偏波と一致させること ができる.また,スロットアンテナは,MSL
と電磁界的に結合させることで,容易に給電す ることができる.これらの特徴から,スロットアンテナは本提案アンテナの構成素子として 有用であると考えられる.本章の
2.2
節では,2
素子のスロットアンテナを用いた小型平面チルトビームアンテナの 基本構成を示し,各構成パラメータに対する放射特性の変化を把握するとともに,実験によ りチルトビーム特性が得られることを示す.2.3
節では,高周波スイッチを用いた2
方向の ビーム切換構成を示し,電磁界シミュレーション及び実験によりビーム切換が実現できるこ とを示す. 節では,位相差給電スロットアレーを用いた セクタアンテナ構成を提案し,2.2
アンテナの基本構成と放射特性2.2.1
アンテナの基本構成及び放射パターン位相差給電スロットアレーの基本構成を図
2.1
に示す.位相差給電スロットアレーは,厚さt
,比誘電率²
r の誘電体基板上の平面寸法がL
gx×L
gy のGND
面に形成された長さがL
s, 幅がW
s の2
つのスロット素子と,スロット素子から所定の間隔h
離した位置にスロット素 子面と平行に配置された寸法がL
rx×L
ry の反射板とから構成される.このとき,2
つのス ロット素子の間隔をd
,それぞれのスロット素子の励振位相をφ
1 及びφ
2 とし,2
つのスロッ ト素子に位相差δ (
=φ
1-φ
2)
を与えて同時に給電することで,チルトビームが形成される ことになる.なお,2.2.1, 2.2.2
では,基本特性把握のためMSL
による給電は行わず,ギャッ プポートによる給電を用いたモーメント法解析により放射特性を検討する.ギャップポート は,それぞれのスロット素子の中央に配置する.上記構成における放射パターンの一例として,
h
=0.417 λ
,d
=0.333 λ
及びδ
=80
度に設定した場合のモーメント法電磁界シミュレータIE3D [32]
を用いて計算した結果を図2.2
に示す.このとき,アンテナ素子の各構成パラメータは,L
gx =0.767 λ
,L
gy =0.733 λ
,t
=0.027 λ
,²
r =2.6
,L
s =0.317 λ
及びW
s =0.017 λ
であり,反射板の寸法(L
rx×
L
ry)
及び誘電体基板の平面寸法は無限大である.図2.2 (a)
はXZ
面における放射パターン,図
2.2 (b)
は円錐面パターンであり,いずれも垂直E
θ 偏波成分を示している.図2.2
から分かるように,+
X
軸方向へ45
度チルトした主ビームが得られており,このときのF/B
比は10.5 dB
,指向性利得は10.1 dBi
,円錐面パターンの半値角(Half Power Beam Width :
HPBW)
は89
度である.ここで,図1.4
に示す2
点波源モデルにおいて,反射板との間隔h
及び素子間隔
d
を同様に設定した場合(図1.5
)に比べて垂直面チルト角が小さくなってい る.これは,スロット素子構成であることから,スロット素子からだけではなくGND
板全 体からも放射があり,その影響が見られていると考えられる.図2.3
は,指向性利得,垂直 面チルト角,円錐面パターンの半値角及びF/B
比の周波数特性を示している.ギャップポー トによる理想的な給電方法であることから,20 %
の帯域内においてほぼ特性は一定であるこ とが分かる.以上のように,
1.2
節で提案したチルトビームアンテナの具体的な構成として,2
つのス ロット素子を位相差給電する位相差給電スロットアレーを検討し,良好なチルトビーム特性 が得られることがわかった.ここで,図1.4
に示す2
点波源モデルと比較すると,位相差やれる電流が放射に寄与していることが要因と考えられる.そこで,
2.2.2
では,GND
板寸法 などアンテナを構成する各構成パラメータに対する放射特性について検討する.図
2.1:
位相差給電スロットアレーの基本構成図
2.2:
位相差給電スロットアレーの放射パターン2.2.2
各構成パラメータに対する放射特性ここでは,位相差給電スロットアレーにおける各構成パラメータを変化した場合の放射特 性について検討を行う.なお,
2.2.1
で示した構成パラメータの値を初期値として検討を進 める.位相差
δ
に対する指向性利得,垂直面チルト角,円錐面パターンの半値角及びF/B
比を 図2.4
に示す.この結果から,指向性利得は位相差δ
が120
度のときに最大となり,垂直面 チルト角は位相差δ
が大きくなるにつれて大きくなっていることが分かる.また,円錐面パ ターンの半値角は位相差δ
を大きくすることで狭くすることができ,F/B
比は位相差δ
を60
度としたときに最も高く,42
度から83
度の範囲において10 dB
以上得られることが分 かる.このため,高いF/B
比を得るためには,適切に位相差を設定する必要がある.図
2.5
は,スロット素子間隔d
を変化した場合の指向性利得,垂直面チルト角,円錐面パ ターンの半値角及びF/B
比を示している.ここでは,F/B
比が10 dB
以上得られるように それぞれの間隔d
に対する位相差δ
を次のように調整している.d
=0.167 λ
のときはδ
=
120
度,d
=0.25 λ
のときはδ
=100
度,d
=0.333 λ
のときはδ
=80
度,d
=0.417 λ
のときはδ
=50
度,d
=0.5 λ
のときはδ
=40
度 である.図2.5
から,間隔d
が狭 いほど,指向性利得が高く,かつ円錐面パターンの半値角が狭くなることが分かる.次に,
GND
寸法を変化した場合のアンテナ特性について検討する.図2.6
に,X
軸方向 のGND
寸法L
gx を変化した場合の指向性利得,垂直面チルト角,円錐面パターンの半値角 及びF/B
比を示す.この結果から,X
軸方向のGND
寸法に対して指向性利得及びF/B
比 の変化が大きく,GND
寸法L
gxが大きくなるにつれて指向性利得及びF/B
比が高くなるこ とが分かるが,アンテナの小型化の面から0.75
波長程度が適当と考えられる.図2.7
は,Y
軸方向のGND
寸法L
gy に対する指向性利得,垂直面チルト角,円錐面パターンの半値角及 びF/B
比を示している.Y
軸方向のGND
寸法であるため円錐面パターンの半値角に多少 の変化は見られるが,全体的に特性の変化は小さい.次に,反射板との間隔
h
に対するアンテナ特性を検討する.図2.8
に,反射板との間隔h
に対する指向性利得,垂直面チルト角,円錐面パターンの半値角及びF/B
比を示す.図2.8
から,間隔h
が広くなるにつれて垂直面チルト角が大きくなっていることが分かる.また,あることが分かる.
ここまでは反射板寸法を無限大として検討してきたが,次にアンテナの具現化を想定して 有限寸法の反射板を適用した場合のアンテナ特性を検討する.反射板寸法
L
rx 及びL
ry を変 化した場合の指向性利得,垂直面チルト角,円錐面パターンの半値角及びF/B
比を図2.10
に示す.なお,ここではL
rx =L
ry とする.図2.10
から,反射板寸法によって指向性利得に 多少の変化は見られるが,1
波長以上に設定することで9 dBi
以上は得られることが分かる.また,反射板寸法が大きくなるほど垂直面チルト角が大きくなっており,これは反射板の端 部での回折が影響していると考えられる.ちなみに,無限反射板の場合の垂直面チルト角は,
図
2.2
に示すように,45
度である.F/B
比については,1.5
波長のときに変化が大きくなっ ているが,反射板寸法によらず10 dB
程度以上は実現できている.これらのことから,反射 板寸法を1
波長程度以上に設定することで,9 dBi
以上の指向性利得で,10 dB
以上のF/B
比を有するチルトビーム特性を得ることができる.図
2.4:
位相差δ
に対するアンテナ特性図 間隔 に対するアンテナ特性
図
2.6: GND
寸法L
gx に対するアンテナ特性図
2.7: GND
寸法L
gy に対するアンテナ特性図
2.9:
反射板間隔h
に対する放射パターン図
2.10:
反射板寸法L
rx, L
ry に対するアンテナ特性2.2.3
実験結果ここでは,位相差給電スロットアレーを試作し,アンテナ特性を評価する.
2.2.2
までは,ギャップポートを用いた理想的な給電構成として検討を行ってきたが,実験では,
T
分岐構 成のMSL
を用いることで位相差給電を行う.図2.11
に,位相差給電スロットアレーの給電 構成を示す.誘電体基板のスロット形成面の対向する面(-Z
面)にT
分岐形状のMSL
を 形成し,スロット素子を電磁界結合により給電する.T
分岐MSL
は,ポート側ラインの特 性インピーダンスが50
Ω,スロット素子と結合するラインの特性インピーダンスが100
Ω となるように線路幅が調整される.また,T
分岐MSL
の分岐部分を中央からS
だけシフト させることで,2
つのスロット素子に位相差を与えている.スロット素子とT
分岐MSL
は,オープンスタブ長
L
st を調整することにより整合を取ることができる.図
2.12
に試作した位相差給電スロットアレーを示す.実験では,設計周波数を5 GHz
帯 とし,厚みt
を0.027 λ
(1.6 mm)
,比誘電率²
r を2.6
の誘電体基板を用いた.アンテナ 素子の各構成パラメータは,スロット素子長L
s =0.333 λ
(20 mm)
,スロット素子幅W
s=
0.033 λ
(2 mm)
,スロット素子間隔d
=0.333 λ
(20 mm)
,GND
寸法L
gx =L
gy =0.833 λ
(50 mm)
,MSL
幅W
1 =0.067 λ
(4 mm)
,W
2 =0.017 λ
(1 mm)
,スタブ長L
st=
0.029 λ
(1.75 mm)
,シフト幅S
=0.083 λ
(5 mm)
,反射板との間隔h
=0.417 λ
(25 mm)
,反射板寸法L
rx =L
ry =2 λ
(120 mm)
とした.図2.13
に,VSWR
特性を示す.測 定結果は,計算結果に比べて中心周波数が低い方にシフトしている.これは,誘電体基板の 比誘電率などが正確にモデル化できていないことが原因の一つと考えられる.なお,計算で は,FDTD
法[35]
を用いている.図2.14
に,中心周波数における放射パターンを示す.測 定結果と計算結果がほぼ同等の特性であり,計算による検討結果が妥当であることが分かる.このとき,測定結果における動作利得は
9.4 dBi
,垂直面チルト角 は40
度,円錐面パターン の半値角は98
度,F/B
比9 dB
である.図2.15
は,測定結果における放射パターンの周波 数特性である.垂直面における放射パターンに多少の変化は見られるが,ほぼ200 MHz
(比 帯域4 %
)の帯域でほぼ同等の特性が得られていることが分かる.2.2.1
で示したギャップ給 電構成に比べて周波数に対して放射パターンが大きく変化しているが,これはT
分岐MSL
の周波数特性により2
つのスロット素子の位相差が周波数に対して一定とならないことが原図
2.11:
位相差給電スロットアレーの給電構成図
2.12:
位相差給電スロットアレーの試作モデル図
2.13:
位相差給電スロットアレーのVSWR
特性図
2.14:
位相差給電スロットアレーの放射パターン2.3
ビーム切換特性2.2
節では,位相差給電スロットアレーの基本構成及び放射特性について述べ,チルトビー ム特性を実現できることを示した.本節では,位相差給電スロットアレーのビーム方向切換 構成及び放射特性について述べる.位相差給電スロットアレーのビーム切換構成を図
2.16
に示す.図2.16
において,誘電体基 板のスロット形成面に対向する面(-Z
面)にπ
分岐形状のMSL
を形成し,SPDT
(Single Pole Double Throw
)構成の高周波スイッチを配置している.高周波スイッチは,π
分岐MSL
を切換給電することにより,2
つのスロット素子の位相差を切り換えることができるため,ビーム方向の切換が可能となる.高周波スイッチの 端子
1
と端子2
を接続する場合,図2.11
に示す構成と同等となり,+X
軸方向にチルトしたチルトビーム特性が得られる.このとき,π
分岐MSL
の端子3
側のMSL
は特性に影響を及ぼさないように,分岐部分で開放となるよ うにする必要がある.例えば,高周波スイッチの端子3
のインピーダンスがショートのとき,L
m をλ
e/4
(λ
e:
実効波長)の奇数倍に設定することで,分岐部分で開放とすることができ る.また,高周波スイッチの端子3
のインピーダンスがオープンのとき,L
m をλ
e/2
の整数 倍に設定すればよい.本節では,アンテナの小型化を考慮して,L
m =λ
e/4
とする.また,高周波スイッチとして,
PIN
ダイオードスイッチを用いた構成と,MMIC
スイッチ(FET
) を用いた構成のそれぞれについて試作し,ビーム切換特性を評価する.図
2.16:
位相差給電スロットアレーのビーム切換構成2.3.1 PIN
ダイオードスイッチを用いたビーム切換構成PIN
ダイオードを用いたSPDT
スイッチ回路を図2.17
に示す.図2.17 (a)
は正電源のみ を用いた片電源構成,図2.17 (b)
は正負の電源を用いた両電源構成を示している.これらの スイッチ回路において,片電源構成の方が回路構成が複雑であるため,アンテナ基板上に配 置した場合,アンテナ特性に影響を及ぼす可能性がある.そこで,ここでは図2.17 (b)
の両 電源構成を適用する.図2.17 (b)
において,正電源を印加した場合,D1
とD4
がオン状態 となり,端子1
と端子2
が接続され,また端子3
が短絡される.また,負電源を印加した場 合,D2
とD3
がオン状態となり,端子1
と端子3
が接続され,また端子2
が短絡される.図
2.18
に,正電源を印加した場合のスイッチ特性を示す.設計周波数は5 GHz
帯として おり,PIN
ダイオードにはM/A-COM
製のMA4SPS402
を使用した.5 GHz
において 通 過損失(S21
)は1.2 dB
,アイソレーション(S31
)は21.8 dB
である.図
2.19
は,PIN
ダイオードのSPDT
スイッチを用いた位相差給電アレーの試作モデルで ある.誘電体基板のスロット形成面と対向する面に,スイッチ回路を構成している.図2.19
において,誘電体基板の厚みt
を0.027 λ
(1.6 mm)
,比誘電率²
r を2.6
,スロット素子長L
s =0.333 λ
(20 mm)
,スロット素子幅W
s =0.017 λ
(1 mm)
,スロット素子間隔d
=0.333 λ
(20 mm)
,GND
寸法L
gx=L
gy =0.833 λ
(50 mm)
,MSL
幅W
1 =W
3 =W
4 =0.05 λ
(3 mm)
,W
2 =0.017 λ
(1 mm)
,スタブ長L
st =0.033 λ
(2 mm)
,シフト幅S
=0.092 λ
(5.5 mm)
,反射板との間隔h
=0.417 λ
(25 mm)
,反射板寸法L
rx =L
ry =2 λ
(120 mm)
とした.また,π
分岐MSL
の分岐部で開放となるように,L
m +L
p =λ
e/4
にし ている.ここで,L
p は図2.17
に示すように端子2
あるいは3
からGND
までの長さである.図
2.20
に,VSWR
特性の測定結果を示す.5 GHz
において,VSWR
が2
以下であり,比 帯域幅はVSWR < 2
において14 %
である.次に,放射パターンを図2.21
に示す.図2.21
において,測定結果と計算結果はほぼ同等の特性が得られており,正負電源を切り換えるこ とでビーム方向切換を実現できていることが分かる.このとき,+V
c において動作利得は8.2 dBi
,垂直面チルト角は40
度,円錐面パターンの半値角は101
度,F/B
比は11 dB
で ある.また,-V
c において動作利得は8.6 dBi
,垂直面チルト角は40
度,円錐面パターン の半値角は103
度,F/B
比は9 dB
である.図
2.17: PIN
ダイオードを用いたSPDT
スイッチ回路図
2.18: PIN
ダイオードスイッチの測定結果図
2.19: PIN
ダイオードスイッチを用いた位相差給電スロットアレーの試作モデル図
2.20: PIN
ダイオードスイッチを用いた位相差給電スロットアレーのVSWR
特性図
2.21: PIN
ダイオードスイッチを用いた位相差給電スロットアレーの放射パターン2.3.2 MMIC
スイッチを用いたビーム切換構成2.3.1
で述べたPIN
ダイオードを用いたスイッチ回路構成では,回路構成を簡易にするために両電源を必要とした.ここでは,片電源でかつ簡易な回路構成で実現できる
MMIC
ス イッチを用いた構成を検討する.図
2.22
に,FET
で構成されたMMIC
のSPDT
スイッチ回路を示す.図2.22 (a)
は簡易 モデル,図2.22 (b)
は詳細モデルを示している.図2.22 (b)
において,V
c1 をオンにした場 合,端子1
と端子2
が接続され,端子3
が短絡される.また,V
c2 をオンにした場合,端子1
と端子3
が接続され,端子2
が短絡される.図
2.23
に,V
c1 をオンにした場合のスイッチ特性を示す.設計周波数は5 GHz
帯としてお り,MMIC
スイッチとしてM/A-COM
製のMASWSS0070
を使用した.5 GHz
において 通 過損失(S21
)は1.2 dB
,アイソレーション(S31
)は30.6 dB
である.図2.18
に示すPIN
ダイオードを用いたスイッチ特性とほぼ同等の特性である.図
2.24
は,MMIC
スイッチを用いた位相差給電アレーの試作モデルである.図2.24
にお いて,MSL
幅W
1 =W
3 =W
4 =0.067 λ
(4 mm)
,シフト幅S
=0.083 λ
(5 mm)
,L
m=
0.167 λ
(10 mm)
であり,その他のアンテナ構成パラメータは2.3.1
で述べたPIN
ダイ オードスイッチを用いた場合と同様である.図
2.25
にVSWR
特性の測定結果,図2.26
に放射パターンの測定結果を示す.図2.25
に おいて,設計周波数である5 GHz
でVSWR
が2
以下を実現できており,比帯域幅はVSWR
< 2
において15 %
である.図2.26
においては,測定結果と計算結果はほぼ同等の特性が得 られており,ビーム方向切換を実現できている.このとき,V
c1 をオンとしたとき,動作利 得は8.5 dBi
,垂直面チルト角は40
度,円錐面パターンの半値角は87
度,F/B
比は11 dB
である.また,V
c2 をオンとしたとき,動作利得は9.1 dBi
,垂直面チルト角は40
度,円錐 面パターンの半値角は95
度,F/B
比は9 dB
である.PIN
ダイオードを用いた場合に比べ,円錐面パターンが狭くなっているが,これはスイッチ回路を構成する
MSL
が異なるためで あると考えられ,給電回路からの放射が影響していると考えられる.図
2.22: MMIC SPDT
スイッチ回路図
2.23: MMIC SPDT
スイッチの測定結果図
2.24: MMIC
スイッチを用いた位相差給電スロットアレーの試作モデル図
2.25: MMIC
スイッチを用いた位相差給電スロットアレーのVSWR
特性図