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基本構成及び薄型化効果の検証

第 5 章 チルトビームアンテナの薄型化に関する検討 101

5.3 EBG 反射板を用いたチルトビームアンテナ

5.3.1 基本構成及び薄型化効果の検証

図 5.5: 反射板間隔 h に対する垂直(XZ)面チルト角

次に,図5.4 に示すそれぞれの構成における放射特性をFDTD法電磁界シミュレータ [35]

を用いて計算した.なお,計算では誘電体基板の損失は考慮していない.図 5.5 に,5 GHz において反射板との間隔 h を変化した場合の垂直(XZ)面のチルト角を示す.このときの アンテナ素子の各構成パラメータは,スロット素子の長さ Ls = 25 mm0.417λ),スロッ ト素子の幅 Ws = 1 mm0.017 λ),GND 板寸法 Lg = 50 mm0.833λ),スロット素子 間隔 d 20 mm0.333 λ),スロット間の位相差 δ(=φ1 — φ2)= 80 度 である.また,

PEC 及び EBG反射板の寸法は 149 mm × 149 mm2.483 λ ×2.483 λ)であり,このと きの EBG 反射板のパッチ素子の数(N× N)は10 ×10素子である.図 5.5 において,38 度のチルト角が得られる反射板間隔 h を比較すると,EBG 反射板では 9.1 mm0.152 λ) であるのに対してPEC反射板は 25 mm0.417λ)であることから,約64 %の薄型化が実 現できていることが分かる.図 5.6 は,反射板間隔 h を変化した場合の指向性利得を示して いる.EBG 反射板を用いた場合の指向性利得は,11.6 mm0.193 λ)をピークに反射板間 隔が狭くなると指向性利得が低下していることが確認できる.これは,近接することにより

図 5.6: 反射板間隔 h に対する指向性利得

図 5.7: EBG 反射板を用いた位相差給電スロットアレーにおける反射板間隔h に対する放射

パターン

板間隔が大きくなると,+Z 軸方向に形成されるサイドローブが増大していることが確認で きる.PEC 反射板に関しても,30 mm0.5 λ)程度以上になると利得が低下し始めている が,これもサイドローブ増大による影響である.

図 5.8 は,垂直面チルト角が 38 度,つまりEBG 反射板ではh 9.1 mmPEC 反射板

では25 mmとした場合の垂直 E 偏波成分の放射パターンを示している.EBG 反射板を用

図 5.8: EBG 及びPEC反射板を用いた位相差給電スロットアレーの放射パターン 射パターンへの影響は見られていない.このときの EBG 反射板における指向性利得は 11.2 dBi,円錐面パターンの半値角は 86度である.

次に,EBG 反射板を用いた場合の周波数特性について検討する.図 5.9 は,垂直(XZ 面チルト角の周波数特性である.EBG 反射板を用いた場合は,PEC反射板に比べて周波数 に対するチルト角の変化が大きいことが確認できる.これは,図 5.3 に示すように,EBG 射板の反射位相が周波数に対して大きく変化する特性を有しているためである.本アンテナ の実用性をさらに高めるためには,この周波数特性の改善が必要であると考えられる.

これまでは,EBG反射板寸法を固定(149 mm× 149 mmN × N 10× 10))として 検討してきたが,次に反射板寸法と放射パターンとの関係について検討を行う.図 5.10 に,

パッチ素子数(N × N)に対する垂直(XZ)面放射パターンを示す.図 5.10から分かるよ うに,N 10 素子以上になると放射パターンの変化はほとんど見られず,8 素子になると 主ビームが高仰角方向に向いている.これは,図 2.10 に示すPEC反射板のときと同様に反 射板の端部での回折が影響していると同時に,5 GHz 帯 で反射位相が 0 度となるような動 作を得るためには 10 素子以上必要であることを示していると考えられる.

以上のように,EBG 反射板を用いることで本提案アンテナの薄型化を実現できる一方で,

図 5.9: 垂直(XZ)面チルト角の周波数特性

図 5.10: パッチ素子数(N × N)に対する垂直(XZ)面放射パターン

5.3.2 実験検討による特性評価

ここでは,5.3.1 で述べた EBG 反射板による薄型化効果を実証するために,EBG 反射板 を用いた位相差給電スロットアレーを試作し,特性を評価する.

まず,5.3.1で用いた EBG反射板を試作し,反射位相を測定した.EBG 反射板として用い

た誘電体基板には,中興化成工業製のフッ素樹脂基板(CGP-500²r =2.6(メーカ公表値))

を用いた.図 5.11 に,反射位相の測定系を示す.測定は電波暗室内で行い,2 つのホーンア ンテナを EBG 反射板に向けて配置し,ネットワークアナライザを用いて反射位相を測定す る.このとき,反射位相の基準は PEC反射板からの反射位相としている.試作したEBG 射板の反射位相を計算結果とあわせて図 5.12に示す.このときの EBG 反射板の各構成パラ メータは,5.3.1で述べた値と同様であり,計算には有限積分法を用いた電磁界シミュレータ MW-Studio [66]を用いた.図 5.12から,測定結果では 5.3 GHzにおいて反射位相が 0度と なっていることが分かる.誘電体基板の比誘電率 ²r が 2.6 のときの計算結果と比較すると,

6 % の誤差が生じており,この誤差は測定で用いた誘電体基板を正確にモデル化できていな

図 5.12: EBG 反射板の反射位相の測定結果

いことが要因である.そこで,計算では比誘電率 ²r を 2.4 とすると,ほぼ同様の反射位相特 性が得られていることから,以降,比誘電率を 2.4 とした計算結果と測定結果を比較するこ とにする.

図 5.13 に,EBG 反射板を用いた位相差給電スロットアレーの試作モデルを示す.試作モ デルでは,給電構成は図 2.11に示す構成と同様であり,T分岐MSLを用いて2 つのスロッ ト素子を位相差給電している.このときのアンテナ素子の各構成パラメータは,EBG反射板 の影響を考慮して 5.3 GHzでインピーダンス整合が取れるように,スロット素子長Ls = 18 mm,スロット素子幅Ws = 2 mm,スロット素子間隔d 19 mmGND 寸法Lgx = Lgy

= 45 mmMSL W1 = 4 mmW2 = 1 mm,スタブ長 Lst = 2.25 mm,シフト幅 S 5 mm,誘電体基板の厚み t 1.6 mm とした.図 5.14 に,VSWR 特性の測定結果及び計 算結果を示す.測定結果は,計算結果とほぼ一致しており,5.3 GHzにおいて VSWR 1.4 である.図 5.15 は,5.3 GHz における垂直Eθ 偏波成分の垂直(XZ)面放射パターンを示 している.測定結果は計算結果と同様な放射パターンが得られており,計算結果が妥当であ ると同時に,EBG 反射板を用いることにより本提案アンテナの薄型化を実現できることが実

図 5.13: EBG 反射板を用いた位相差給電スロットアレーの試作モデル

次に,EBG 反射板を用いたことによるアンテナ特性への影響を検討する.表5.1 PEC 及び EBG 反射板を用いた位相差給電スロットアレーのアンテナ特性を示す.ここでは,反 射板との間隔を PEC反射板では 25 mmEBG反射板では9.1 mm としている.利得につい て見ると,PEC反射板では測定結果と計算結果の差が1.6 dBであるのに対して,EBG 反射 板ではその差が 2 dB である.これより,EBG 反射板を用いたことによる利得劣化量は 0.4 dB 程度と考えることができ,EBG 反射板を用いたことによるアンテナ特性への影響は小さ く,実用的に問題の無いレベルであると考えられる.また,PEC 反射板を用いたときのチル ト角が EBG 反射板に比べて3 度大きくなっているが,これは動作周波数を 5 GHzから 5.3 GHz に変更したことにより,PEC 反射板における反射板間隔が実効的に大きくなったこと が要因である.

以上のように,実験からもEBG 反射板を用いることで本提案アンテナの薄型化が実現で きることが分かった.また,EBG 反射板による損失も実用的に問題の無いレベルであること が確認できた.

図 5.14: 試作モデルの VSWR特性

図 5.15: 試作モデルの垂直(XZ)面放射パターン @ 5.3 GHz

表 5.1: アンテナ特性の比較

Gain [dBi] Tilt angle [deg.]

PEC reflector Meas. 9.1 41

Calc. 10.7 43

EBG reflector Meas. 8.1 38

5.4 むすび

本章では,本論文で提案した小型平面チルトビームアンテナの反射板に EBG 構造を適用 した場合のアンテナの薄型化効果を検証するとともに実際に適用する際に向けての課題の抽 出を行った.また,EBG 反射板適用時のアンテナ利得への影響を試作評価により把握した.

以下に本章で得られた結果をまとめて示す.

(1)2章で述べた 従来のPEC反射板を用いた位相差給電スロットアレーとその PEC反射 板を完全磁性体として動作するように形成したEBG 反射板に置き換えた構成との放射 特性を FDTD 法を用いて比較した.その結果,PEC 反射板に比べて約64 %の薄型化 が実現できることを示し,EBG 反射板適用による薄型化効果を実証した.しかしなが ら,EBG反射板の反射位相が周波数特性を有していることから,PEC反射板に比べて 周波数に対する垂直面チルト角の変化が大きく,今後はこの周波数特性の改善が必要と なる.

(2)EBG 反射板の必要なパッチ素子数を把握するために,パッチ素子数と放射パターンと の関係を検討した結果,10×10素子以上とすることで放射パターンの変化はほとんど 見られず,最低 10×10 素子以上は必要であることが分かった.これは,反射板端部で の回折の影響や所定の反射位相を実現するために必要となるパッチ素子数を示している といえる.

(3)EBG反射板を用いた位相差給電スロットアレーを実際に5 GHz帯において試作し,放 射特性を評価した結果,計算と同様に EBG 反射板を用いることでチルトビームアン テナの薄型化を実現できることが分かった.また,PEC 反射板と EBG 反射板を用い た場合のそれぞれのアンテナ利得を比較した結果,EBG 反射板適用による損失増加は

0.4 dB 程度(EBG 基板としてフッ素樹脂基板使用時)であり,EBG 反射板を用いる

ことは実用的に問題の無いレベルであることを示した.

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