第 4 章 クランク素子装荷ループアンテナ 61
4.2 アンテナの基本構成と放射特性
4.2.3 設計パラメータの検討
図 4.8: クランク素子幅wc を変化させた場合のクランク素子長 Lc に対するアンテナ特性
られる.図 4.10 は,図1.4 に示す2 点波源モデルにおいて位相差 δ を変化した場合の F/B 比を示しており,位相差は F/B比を決定する重要なパラメータであると同時に,F/B比が最 大となる位相差は一意に決定されることを示している.本提案アンテナでは wc = 0.008 λ
で F/B 比が最大となる位相差149 度 がこれに相当すると考えられる.しかしながら,wc =
0.008 λ 以外のクランク素子幅においても同様の位相差となるクランク素子長が存在するが,
高いF/B 比は得られていない.これは,図 4.11 に示すように,クランク素子長が短くなる ことにより,クランク素子上における電流のピークとなる位置が折返し部 (B)から ループ素 子とクランク素子との接続部 (E) の方向へ移動し,クランク素子上の電流が完全に相殺され なくなるためと考えられる.これにより,クランク素子からも放射することになり,F/B比 が劣化すると考えられる.また,図 4.9 において,同じ位相差におけるクランク素子長を比 較すると,クランク素子幅が狭い方が短いクランク素子長でよいことが確認できる.これは,
クランク素子を先端短絡の負荷としてみなすと [44],頂点 (A)-(C) 間の電流位相差はこの 負荷インピーダンスにより決定されると考えられるためである.つまり,負荷インピーダン スは,クランク素子の特性インピーダンスやクランク素子長により求められるので,クラン ク素子幅,すなわちクランク素子の特性インピーダンスを変化することで,クランク素子長 が変化することになる.以上のことから,クランク素子は頂点 (A)-(C) 間の電流位相差を 決定すると同時に,クランク素子上からの放射を抑えるような長さに決定する必要がある.
図 4.10: 2 点波源モデルにおける位相差 δ に対する F/B 比
図 4.11: クランク素子上の電流分布
図4.12 は,ループ素子の一辺の長さL を変化した場合の指向性利得及びF/B比を示して いる.図 4.12 において,F/B 比が最大値におけるアンテナ素子の全長,すなわちループ素 子長L とクランク素子長 Lc の総和(4L+4 Lc)を見ると,L= 0.206 λ のときは4L+ 4 Lc = 1.604λ,L = 0.253λ のときは 4L+4Lc = 1.648 λ,L= 0.301 λ のときは4 L+4 Lc = 1.704 λ となり,ほぼ一定であることが分かる.これは,F/B 比が最大となる アンテナ素子の全長はほぼ一意に決定されることを示している.また,F/B 比と利得が同時 に最大となるループ素子長とクランク素子長の比率が存在する.以上のことから,本アンテ ナを設計する場合は,F/B比が最大となるアンテナ素子の全長を決定した上で,ループ素子 長とクランク素子長の比率を決定すればよいといえる.
ここまでは反射板寸法を無限大として検討してきたが,次にアンテナの具現化を想定して 有限寸法の反射板を適用した場合のアンテナ特性について検討する.反射板寸法に対する指 向性利得,F/B 比及びチルト角を図 4.13 に示す.図 4.13 (a) から,反射板の寸法によって 主ビームのチルト角が変化することがわかる.これは,反射板の端部での回折が影響してい ると考えられる.図 4.13 (b) からは,主ビーム方向である X 軸方向の反射板寸法に対して 利得が大きく変化することが確認できる.また,反射板の一辺の長さを 1波長以上に設定す
ることで 9 dBi 以上の指向性利得が得られることがわかる.図 4.13 (c)から,反射板の寸法
られず,ほぼ一定となることは確認しており,これは反射板とアンテナ素子との間隔が 1/4 波長以上離れているため反射板との相互結合が小さいことを示している.アンテナ素子の入 力インピーダンス特性については,次に詳細に述べる
図4.12: ループ素子長 Lを変化させた場合のクランク素子長 Lc に対するアンテナ特性