第 2 章 位相差給電スロットアレー 11
3.3 スロット素子構成
3.3.2 各構成パラメータに対する放射特性
3.3.1 で述べたアンテナ構成において,各構成パラメータに対して放射特性がどのように変
化するかを検討する.検討には,FDTD 法電磁界シミュレータ Fidelity [35]を用いて放射特 性を計算した.
まず,反射板間隔 h を変化した場合の垂直Eθ 偏波成分の放射パターンを図 3.9 に,その ときの放射特性を表 3.2 に示す.このときのアンテナ素子の各構成パラメータは,t =0.027 λ,²r = 2.6,L = 0.397 λ,w = 0.024 λ,Lc = 0.12 λ,ws = 0.0085 λ,d = 0.0085 λ,Lg = λ,Ld = 3.4 λ,Lr = 3.4 λ,Lm = 0.08 λ であり,以降これらの値を初期値 として検討している.図 3.9及び表 3.2 から,3.2 節で述べた線状素子構成と同様に,反射板 間隔が大きくなるとチルト角が大きくなっている.また,線状素子構成に比べて垂直面チル ト角が全体的に小さくなっている.この一つの要因は,2.2.1でも述べたように,スロット素 子構成としたことによりスロット素子からだけでなく GND 板からも放射しているためと考 えられる.もう一つの要因としては,反射板寸法を有限としたことであり,2.2.2 でも述べた ように有限反射板とすることにより垂直面チルト角が小さくなっていると考えられる.
次に,反射板間隔 h を 0.34 λ に固定して,GND 板寸法 Lg 及び反射板寸法 Lr を変化 した場合の放射特性について検討する.図 3.10 は GND 板寸法 Lg を変化した場合の垂直 Eθ 偏波成分の放射パターンを示し,表 3.3 にそのときの放射特性を示す.これらの結果か ら,GND 板寸法により大きな特性の変化は見られないが,バックローブレベルに着目する とバックローブが最小となる適切な寸法(ここでは,Lg = λ)が存在することが確認でき る.これは,スロット素子からだけでなく GND 板からの放射も存在していることを意味し ている.このため,良好な F/B 比を実現するためには GND 寸法を適切に設定する必要が ある.次に,反射板寸法 Lr に対する垂直 Eθ 偏波成分の放射パターンを図 3.11,そのとき の放射特性を表 3.4 に示す.反射板寸法 Lr が大きくなるほど垂直面チルト角が大きくなっ ていることが分かる.これは,2章で述べた位相差給電スロットアレーの結果(図 2.10)と 同様の結果であり,反射板の端部での回折が影響していると考えられる.
以上のように、スロット素子構成においても,線状素子構成と同様にチルトビーム特性が 得られ,このときの主偏波が垂直 Eθ 偏波成分であることが分かった.但し,スロット素子 を構成する GND 板からの放射も無視できないことから,良好なチルトビームを実現するた めには GND 板寸法を含む全体の構成パラメータの最適設計が求められる.
図 3.9: クランク素子装荷スロットひし形アンテナの反射板間隔 h に対する放射パターン
表 3.2: クランク素子装荷スロットひし形アンテナの反射板間隔 h に対する放射特性
h Directivity [dBi] Tilt angle [deg.] HPBW [deg.] F/B ratio [dB]
0.255 λ 10.8 30 60 11
0.34 λ 10.7 35 67 9
0.425 λ 10.5 40 75 7
図 3.10: クランク素子装荷スロットひし形アンテナの GND板寸法 Lg に対する放射パターン
表 3.3: クランク素子装荷スロットひし形アンテナの GND 板寸法 Lg に対する放射特性
Lg Directivity [dBi] Tilt angle [deg.] HPBW [deg.] F/B ratio [dB]
0.833 λ 10.1 35 63 6
λ 10.7 35 67 9
1.167 λ 10.9 35 89 8
図 3.11: クランク素子装荷スロットひし形アンテナの反射板寸法 Lr に対する放射パターン
表 3.4: クランク素子装荷スロットひし形アンテナの反射板寸法 Lr に対する放射特性
Lr Directivity [dBi] Tilt angle [deg.] HPBW [deg.] F/B ratio [dB]
2.04 λ 10.7 30 72 9
2.55 λ 10.5 33 66 7
3.4 λ 10.7 35 67 9