学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2017 年 6 月 28 日(水)
報告番号:甲・乙 第 号 氏名:易 凱
論文審査
担当者 主査 教授 印
副査 教授 印
副査 教授 印 審査論文の題目: Development of heterotopic transplantation of the testis with the epididymis to evaluate an aspect of testicular immunology in rats
(ラットにおける精巣免疫の評価のための異所性精巣・精巣上体移植法の開発)
著 者:
Kai Yi, Naoyuki Hatayama, Shuichi Hirai, Ning Qu, Shogo Hayashi, Shinichi Kawata, Kenta Nagahori, Munekazu Naito and Masahiro Itoh
掲載誌:PLoS ONE 12(5):e0199067 (2017) 論文要旨:
若年男性の抗がん治療による男性不妊症(精子形成障害)が、先進諸国で問題視されている。そこで、
抗がん治療前の精巣摘出→臓器保存→抗がん治療後の自家移植の方法の模索が求められている。このよ うな背景の中、これまでに精巣細胞、精巣組織移植が実施されているが、臓器レベルにおける同所性精 巣移植は、その移植技術の難しさから、報告は少ない。そこで本研究においては、精巣をより簡易的に 移植でき、精巣温度が上昇しない頚部皮下への異所性精巣移植を新たに考案し、検討を行った。具体的 には、頸部皮下への異所性精巣移植の有用性を評価するために、同所性精巣移植との手術時間および成 功率を検討した。また、拒絶反応を起こさない同系モデル(ドナーLEW ラットの精巣をレシピエント LEWラットへ移植)、急性拒絶モデル(ドナーACIラットの精巣をレシピエントLEWラットへ移植)、 慢性拒絶モデル(ドナーF344ラットの精巣をレシピエントLEWラットへ移植)の3群の異所性精巣移 植モデルを用いて、精巣・精巣上体における評価を行った。その結果、頚部皮下への異所性精巣移植は、
同所性精巣移植と比較して、精巣における組織構造および造精機能について有意差は認められなかった が、異所性精巣移植は有意に手術時間を短縮し、成功率を向上させた。異所性精巣移植モデル間におけ る組織学的評価および分子生物学的評価では、急性拒絶モデルの精巣において、軽度の精巣炎が観察さ れ、サイトカイン(IFN-γ、IL-1β、IL-10)およびアポトーシス(caspase3、caspase8)関連遺伝子のmRNA 発現量の増加が認められた。一方、慢性拒絶モデルは、障害は見られず、同系モデルと有意な差は認め られなかった。
審査過程:
1.本研究の主眼である頚部皮下への異所性精巣移植の意義と背景について充分に理解し説明できた。
2.拒絶に関連した各種の要因について適切に答えることができた。
3.小児の停留睾丸と異所性精巣移植モデルの比較に関して適切に説明できた。
4.精巣移植モデルの観察期間について明瞭に答えることができた。
5.今後の精巣移植の臨床応用の方向性について自分の考えを有していた。
価値判定:
本研究によって、精巣を頸部皮下に移植する新たな動物モデルが確立された。今後の抗がん治療前の 精巣摘出に関して、新たな治療の選択肢と可能性を示すものであり、学位論文としての価値を認めた。