「在宅療養支援病院」が地域において果たす役割と課題
「在宅療養支援病院」が地域において果たす役割と課題
―2010年診療報酬改定前の状況―
武 田 誠 一
新潟青陵大学看護福祉心理学部福祉心理学科
Roles and Issues of "Home Medical Treatment Support Hospital" in the Region
: The Circumstance before 2010 Medical Treatment Fee Revision Nobukazu Takeda
NIIGATA SEIRYO UNIVERSITY DEPARTMENT OF SOCIAL WELFARE AND PSYCHOLOGY
キーワード
在宅療養支援病院、在宅医療、地域ケアシステム
Key words
home medical treatment support hospital, home healthcare, local care system
Ⅰ 研究目的
我が国の医療供給体制は、これまで病院を 中心とするものであった。しかし、近年は在 宅医療が重視され2006年の診療報酬改定で
「在宅療養支援診療所」が創設された1 )。この ように在宅医療の提供主体は診療所であるこ
とが打ち出されたが、2008年の診療報酬改定 では一部の病院においても「在宅療養支援診 療所」と同様の機能を果たす「在宅療養支援 病院」が創設された2 )。
この「在宅療養支援病院」に関して、筆者 は先行研究において「医療資源の限られた地 域において、在宅療養支援を担わざるを得な
図1 「在宅療養支援病院」の届出数 (2009年4月1日現在)
届出数
北 海 道 2
秋 田 県 1
岐 阜 県 1
静 岡 県 1
鳥 取 県 1
広 島 県 1
大 分 県 1
宮 崎 県 2
鹿児島県 1
指摘した。
だが、この先行研究は行政資料等を用いた 現状分析に過ぎず、実際にそれぞれの「在宅 療養支援病院」がどのような活動を行ってい るかを、明らかにできなかった。
そこで、本論文では現に届出されている
「在宅療養支援病院」がどのような在宅療養 支援を行っているのか、また、在宅療養支援 を行う際の課題について明らかにする。
なお、「在宅療養支援病院」の届出数(2009 年4月1日現在)は図1が示すとおりである。
Ⅱ 研究方法
調査は、2009年4月1日現在で「在宅療養 支援病院」の届出を行っていた病院を対象と して、以下の方法で郵送法により実施した。
1.調査期間 2010年2月
2.調査対象 「在宅療支援病院」11病院
(2009年4月1日現在)
3.調査方法 郵送法
4.調査内容 「在宅療養支援病院」届出 の課題、患者数、他機関との連携など
(在宅療養支援体制の実態把握を目的 とする内容)
なお、調査結果の公表などで回答者、所属 機関が特定されることはないことを調査依頼 文に明記した。
Ⅲ 結果
調査結果は、回収数7病院(有効回答6病 院)であった。なお、1病院は往診医の退職 を理由に既に「在宅療養支援病院」の届出を 取り下げていた。この点から「在宅療養支援 病院」を運営するためには、医師の確保が大 きな課題であることが明らかになった。
医学総合管理料」(4200点又は、4500点)を算 定した患者数については、10、11、12月の平 均は病院によりばらつきが見られた、0名が 最も多いが、40名以上の患者を担当している 病院も存在していた(図2)。
これらの病院が看取った在宅患者数は、ど の病院も多くはなく、届出から日が浅く在宅 で看取る実績が少ない現状であることが明ら かになった(図3)。
また、「在宅療養支援病院」の届出に関する 課題として、最も多い回答は、「24時間連絡を 受ける医師または看護師の配置」であり、24 間の体制を維持することが困難であることが わかった(図4、表1)。
図2 患者数 2009年10〜12月
0名 3病院
1病院 4
3 2 1
0 5名
1病院
17名
1病院
43名
図3 在宅看取り数
看取り0名 2病院
看取り1名 看取り3名 2
病院数 3 1
4 3 2 1 0
3病院
1病院
「在宅療養支援病院」が地域において果たす役割と課題
Ⅳ 考察
このように2010年の診療報酬改定前の「在 宅療養支援病院」の状況は、その役割を積極 的に果たせている病院と、そうでなない病院 が存在していた。
その理由は「24時間連絡を受ける医師また は看護師の配置」が大きな要因になっている、
先にも触れたが、往診医の退職によって「在 宅療養支援病院」の届出を取り下げていた病 院も存在していた。
つまり、医師不足と表裏一体の「在宅療養 支援診療所」や診療所が存在しない地域のみ に届出を認める施設基準の影響であると言え る。
Ⅴ まとめ
2010年の診療報酬改定前の「在宅療養支援 病院」の状況は、病院の在宅療養支援機能が 期待されているにもかかわらず、十分に機能 していなかった。病院がその機能を発揮する
には、活動の範囲が限定されている点の改善 が求められる。
さて、筆者はかねてより「在宅療養支援病 院」のこのような現状を憂慮し、「在宅療養支 援病院」届出の地理的要件緩和を提言してき たが2 )、2010年4月の診療報酬改定において、
「在宅療養支援病院」の施設基準に「許可病 床数が200床未満の病院であること、又は」と いう文言が追加され、これまでの「半径4k m以内に診療所が存在しない」という要件よ り緩和されることになった。
これにより「在宅療養支援病院」は「半径 4km以内に診療所が存在しない」という枠 に縛られずに開設されることになった。した がって、現在、都市部で「許可病床数が200床 未満の病院」が「在宅療養支援病院」として 誕生しており、同時に地方都市や郡部でもこ れまでの「半径4km以内に診療所が存在し ない」という要件によって、「在宅療養支援病 院」として届出できなかった病院も、「在宅療 養支援病院」として届出が行われている(図 5)。
図4 「在宅療養支援病院」の届出に関する課題
表1 「在宅療養支援病院」の届出に関する課題 43%
24時間連絡を受ける医師または 看護師の配置が難しい
14%
14%
14%
15%
24時間往診が可能な体制確保が 難しい
24時間訪問看護の提供が可能な 体制確保が難しい
在宅療養患者の緊急入院を受け 入れる病床確保が難しい その他
サンプル数7 複数回答 度数 相対度数 24時間連絡を受ける医師または看護師の配置が難しい 3 43%
24時間往診が可能な体制確保が難しい 1 14%
24時間訪問看護の提供が可能な体制確保が難しい 1 14%
在宅療養患者の緊急入院を受け入れる病床確保が難しい 1 14%
その他 1 14%
これからは「在宅療養支援病院」が量的に 拡大し、その役割、必要性が増していくであ ろう。今後の研究課題としては「在宅療養支 援病院」を都市型、地方都市型という視点で の分類、分析が求められるのではないかと考 えられる。
謝辞
本研究は、財団法人在宅医療助成 勇美記念財 団に2008年度 在宅医療助成 指定公募(後期)
「過疎地における在宅医療の現状と課題」(研究 代表者 武田誠一)の助成による成果である。な お、本研究の成果の一部は、第48回日本医療・病 院管理学会学術総会にて報告している。
届出数 都道府県
北 海 道 16 青 森 県 2 岩 手 県 0 宮 城 県 4 秋 田 県 2 山 形 県 2 福 島 県 3 茨 城 県 5 栃 木 県 1 群 馬 県 6 埼 玉 県 15 千 葉 県 11 東 京 都 11 神奈川県 8 新 潟 県 4 富 山 県 3 石 川 県 9 福 井 県 7 山 梨 県 3 長 野 県 6 岐 阜 県 4 静 岡 県 5 愛 知 県 18 三 重 県 3
届出数
全国 333病院 都道府県
滋 賀 県 3 京 都 府 10 大 阪 府 24 兵 庫 県 26 奈 良 県 2 和歌山県 2 鳥 取 県 1 島 根 県 2 岡 山 県 12 広 島 県 13 山 口 県 3 徳 島 県 6 香 川 県 6 愛 媛 県 4 高 知 県 5 福 岡 県 15 佐 賀 県 5 長 崎 県 8 熊 本 県 8 大 分 県 5 宮 崎 県 5 鹿児島県 17 沖 縄 県 3
「在宅療養支援病院」が地域において果たす役割と課題
(引用文献)
1)佐原康之.在宅療養支援診療所について.グ ループ診療研究.2007 ; 13⑴ : 15-25.
2)武田誠一.「在宅療養支援病院」の開設数の 現状と課題-在宅療養を支える病院の役割につ いて-.新潟青陵学会誌.2009 ; 1⑴ : 93-100.
3)武田誠一.地域における「在宅療養支援病 院」の役割.最新社会福祉学研究.2010 ; ⑸ : 85-91.