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地域における「在宅療養支援病院」の役割

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ショートノート 武田誠一 8 5

地域における「在宅療養支援病院」の役割

武 田 誠 一 l

R o l e  o f home m e d i c a l  t r e a t m e n t  s u p p o r t  h o s p i t a l "   i n  community 

TAKEDA Nobukazu 

キーワード:在宅療養支援病院在宅療養支援診療所在宅医療 地域ケアシステム keywords :  Home m e d i c a l  t r e a t m e n t  s u p p o r t  h o s p i t a l .   homecare s u p p o r t  c l i n i c .  

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I.はじめに

在宅での療養を支援する体制づくりは,

医療保険制度,介護保険制度の中心的な課 題となっており,制度や人材育成など新た な取り組みが導入されてきている. I 在宅 療養支援診療所 J (以下,在療診)も,そ のような在宅療養をサポートする社会的な 体制構築の中で誕生した診療所であった (佐原 2 0 0 7  :  1 5 ‑ 2 5 ) .   2 4 時間の往診,訪 問看護など在宅で療養を続ける患者にとっ て,頼もしい存在になるはずであった. し かし現状では必ずしも予想した通りには 機能していない.その対策のーっとして「在 宅療養支援病院」が誕生し病院における 在宅療養支援も診療報酬上で評価されるよ

うになった.

そこで本研究では. I 在療診」の機能を 補完する目的で創設された「在宅療養支援 病院」の現状を分析し今後,地域におい て「在宅療養支援病院」が果たしていくべ

2 0 0 9 年 9 月 1 5 日受付 /2010 年 1 月 8 日受理

き役割を f 食言すしていく.

I I .   r 在宅療養支援診療所」と「在宅 療養支援病院 j

「在療診j は全国的に見ても地域による 偏在が大きく,市部に集中し郡部には少な いと報告されている(千葉・濃沼・伊藤・

ほか 2 0 0 8  :  1 7 4 ) . また,新潟県の現状を 調査した武田は「現状では,在宅医療を提 供する医療機関としては. r 在療診』では ない診療所が中心となっていると考えられ る J (武田 2 0 0 7  :  7 3 ‑ 8 5 ) と述べている.

このように,地域に偏りなく「在療診」

が整備されていない状況では,武田や千葉 が指摘するように「在療診」ではない診療 所,病院等の活用を図らなくてはならない (千葉・濃沼・伊藤・ほか 2 0 0 8  :  1 7 4   :武 田 2 0 0 7  :  7 3 ‑ 8 5   :武田 2 0 0 9:  1 2 3 ‑ 1 3 2 ) .  

このような状況を受け. 2 0 0 8 年の診療 報酬改定において,在宅療養を支援する診

1

九州保健福祉大学大学院(通信帝 1 ] ) 社会福祉学研究科修士課程 ( 2 0 0 3 年度)修了 新潟青陵大学看護福祉心理

学部福祉,心理学科

(2)

療所がない地域では,在宅療養の主たる担 い手が病院である場合でも診療報酬上で高 く評価できる仕組みとして「在宅療養支援 病院」が導入されることになった(中央社 会保険医療協議会 2 0 0 7 )  . 

「在宅療養支援病院j は. I 在療診 J とほ ぼ同じ施設基準であるが,大きく異なる部 分は「保険医療機関である病院であって,

当該病院を中心とした半径 4km 以内に診 療所が存在しないものであること J (医学 通信社 2 0 0 8:  8 1 4 ‑ 8 1 5 ) とされている部 分にある.

i l l . 本研究の目的

本研究は,地域おける「在宅療養支援病 院j の現状分析と. I 在宅療養支援病院」

が地域ケアシステムにおいて中核となるた めの今後の課題を論ずるものである.

「在宅療養支援病院 J に関する研究で,

武田は制度導入初年の 2 0 0 8 年における「在 宅療養支援病院」届出数は極めて少なく,

その原因は「半径 4km 以内に診療所が存 在しない」とした地理的要件にあると指摘 している(武田 2 0 0 9  :  9 3 ‑ 1 0 0 ) .   この現 状は,大きく転換される状況にないと考え

られる.

しかし先行研究では,少数とはいえ現に 存在している「在宅療養支援病院」が地域 においてどのような f 支割を果たしているか については,分析されていない.

「在宅療養支援病院 J は地域に「在療診 J

のみならず一般の診療所すら,存在しない 場合に限り,届出が認められている病院で ある.つまり,地域における唯一の医療機 関として在宅療養支援の機能を果たしてい ると考えられる.

そこで本研究では. I 在宅療養支援病院」

の概要と病院が位置する二次医療圏の在宅 医療体制を把握し. I 在宅療養支援病院」

がその地域で果たしている役割と,今後「在 宅療養支援病院」が地域において在宅医療 や在宅福祉の中核としての役割を果たすた めの課題についても考察する.なお,二次 医療圏とは医療法に基づき都道府県が策定 する「医療計画」において. I 特殊な医療 を除く一般の医療で,主として病院におけ る入院に係わる医療を提供する体制の確保 を図る地域 J (ぎょうせい 1 9 9 5  :  6 ) と されており,地域住民の日常的な保健・医 療に密接した圏域である.

N. 方法

「在宅療養支援病院」の届出数を把握す るため,各地方厚生局及び地方厚生局都府 県事務所に対し行政文書開示請求等を行 い. 2 0 0 9 年 4 月 1 日現在における「在 宅療養支援病院jの「届出受理医療機関名 簿(届出項目別 ) J の開示を受けそのデー

タを集計した

また,それぞれの「在宅療養支援病院」

の地域性を理解するため,所在地の各道県 地域医療計画を用い. I 在宅療養支援病院」

が属する二次医療圏内の在宅医療の提供体 制についても把握した.

なお,使用したデータ・資料は,公開さ れているものまたは開示決定がなされたも のを収集し用いた.

V. 結果および考察

1 .   r 在宅療養支援病院 J の現状

「在宅療養支援病院 J ( 2 0 0 9 年 4 月 1

日現在)は,全国で 1 1 病院のみである.

(3)

ショートノート

北海道

秋田県 鳥取県

広島県

岐車県

" " " "  

静岡県

函 南 町

武田誠一 8 7  

都 道 府 県 届 出 数 北 海 道 2  秋 田 県

岐 車 県 静 岡 県 鳥取県 広島県 大分県

宮崎県 2 

鹿 児 島 県

2 0 0 9 手 4 月 1 白扇在

宮崎県

鹿児島県

も 0 ;

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図 1 r 在宅療養支援病院jの届出数 ( 2 0 0 9 年 4 月 1 日現在).所在地,二次医療圏

(4)

また,全国で北海道,秋田県,岐阜県,静 岡県,鳥取県,広島県,大分県,鹿児島県,

宮崎県の 9 道県のみに存在している(図 1 ) .  

次に,届出を行っている病院の概要につ いて,所属する二次医療圏,病床形態,病 床数等は表 l のとおりである.病床形態で は,一般病床のみ 3 病 院 療 養 病 床 の み 3 病院,一般病床と療養病床が 3 病 院 一 般 病床,療養病床と介護保険適用療養病床が 1 病院,精神病床が 1 病院で,多くが一 般病床,療養病床を持つ病院が占めていた.

また,病床数も 1 0 0 床以上の病院は 3 病 院のみで,大半が 1 0 0 床未満の病院であっ た.

なお. I 在宅療養支援病院 J は「半径 4 km 以内に診療所が存在しない j とした地 理的要件が課されているが,図 l で明ら かなように,県庁所在地に存在する病院 もあれば,二次医療圏を構成する地域に県 庁所在地を含むなど. I 在宅療養支援病院」

は必ずしも過疎. I へき地」にしか存在し ていないというわけではない.

2 .   r 在宅療養支援病院 j の地域での役割

「在宅療養支援病院」は在宅医療の体制

が不足している地域に限り,その役割を病 院に求めるものである.その実態を分析す るため,今回は各二次医療圏内の在宅医療 提供体制の把握結果から,同じ地域に「在 療診」が存在する,岐阜県恵那市,大分県 竹田市,鹿児島県鹿児島市を取り上げてみ

る.

まず,恵那市は「東濃 J 医療圏に属して おり,二次医療圏の東部地域に当たり,へ き地診療所,へき地医療拠点病院が存在 し,医療資源が乏しい地域である(岐阜県 2 0 0 8 ) .   I 在療診」は 3 か所存在するが,

市街地に集中している. I 在宅療養支援病 院 J は山間部に存在している(図 2). 

竹田市は. I 豊肥 J 医療圏に属しており,

山間部でへき地診療所,へき地医療拠点病 院が存在し医療資源が乏しい地域である (大分県 2 0 0 8 ) . I 在療診」は 5か所存在す るが,市街地に集中している. I 在宅療養 支援病院 J は山間部に存在している(図 2). 

鹿児島市は,鹿児島県の県都であり「鹿 児島 J 医療圏に属している,都市部である

ため医療体制も整備されている(鹿児島県 2 0 0 8 ) .   I 在療診jは 5 9 か所存在しているが,

そのほとんどが市街地に集中しており.1在 宅療養支援病院jは市街地を離れた地域に

表 1 届出病院の概要

病院名 所在地 二次医療国 病床形態 病床数 病床の内訳 一般 療養 介護 精神 A  北海道 京極町 f 後志 j 医療酉 精神 1 2 0   ¥ ¥   ¥ ¥   ¥ ¥   1 2 0   B  北海道 日高町 f 日高」医療圏 一酸+療養+介護 64  3 4   6  24  、 ¥ C  秋田県 潟上市 「秋田周辺」医療菌 一般 1 4 0   1 4 0   ¥ ¥   ¥ ¥   ¥ ¥   D  岐阜県 恵那市 「東濃 J 医療圏 一般+療養 5 6   3 4   2 2   ¥ ¥   、 ¥

│鳥取県 静岡県 函南町 日野町f 西 駿 護 霊 園 療養 一般 8 9 5 9     ¥ ¥   9 9   ¥ ¥   8 5   ¥ ¥   ¥ ¥   ¥ ¥   ¥ ¥  

G  広島県 北広島町 f 広 一般 44  44  、 ¥ ¥ ¥   ¥ ¥   H  大分県 竹田市 「 豊 一般+療養 1 3 6   9 0   46  ¥ ¥   ¥ ¥  

宮崎県 日向市 r s 圏 一般+療養 5 7   2 4   3 3   ¥ ¥   ¥ ¥   J  宮崎県 野尻町 「西諸 j 医療圏 療養 80  ¥ ¥   8 0   ¥ ¥   九 ¥

K  i 鹿児島県 鹿児島市 f 鹿児島」医療圏 療養 5 5   ¥ ¥   5 5   ¥ ¥   、 ¥

(5)

ショートノート

存在している.

以上の 3 地域の例を通して「在宅療養支 援病院」は,過疎,へき地にも存在するが,

それだけに限られてはいない.

つまり「半径 4km 以内に診療所が存在 しない」という地域において在宅療養支援 を担っているわけである.

3 . 今後の課題

先ほどの例から見て「在宅療養支援病院」

の存在には地理的要件が不可欠である,と ころで「在宅療養支援病院」は全国的に少 ない状況だが,この地理的要件が広がりを 阻んでいる理由なのだろうか.

この件に関して,武田は中央社会保険医 療協議会における「在宅療養支援病院 J 導 入検討時に, I 半 径 4km 以 内 に 診 療 所 が 存在しない」基準から想定した場合,全国

大分県

竹田市

在宅帰前.鋼19"1112 Itlf1ll1! 権.宅..実権隠慣用3J 会 ‑ 在宅..,色調

市主諸手主世話康所 (5か F リ

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武田誠一 8 9

で 1 7 か 所 程 度 し か 該 当 し な い と の 論 議 が なされていたと指摘している.また,当初 か ら 届 出 で き る 病 院 が 少 な い に も か か わ らず,この要件が採用された背景について は,ハードルが低い場合,多くの病院が届 出を行い,患者の囲みが行われることへの 懸念があったとも指摘している. (武田 2009 :  9 3 ‑ 1 0 0 )  

さて,表 l が示す現状からみて,在宅療 養を支える病院とは 急性期中心の大病院 ではなく,地域住民の身近な中小の病院等 が中心である.中小の病院はこれまでも地 域おける在宅療養支援を行ってきた実績が 存 在 す る . 例 え ば 「 在 宅 時 医 学 総 合 管 理 料 j と い う , 在 宅 医 療 に 関 す る 診 療 報 酬 は , 200 床未満の中小の病院と診療所のみ に認められているが,この「在宅時医学総 合管理料」の届出を行っている病院は全国

鹿 児 島

鹿児島県 鹿児島市

図 2 恵那市,竹田市,鹿児島市の状況

(6)

で 1 0 0 0 か所近く存在している(福祉医療 機構 2 0 0 8 )  . 

つまり中小の病院は,医療機関の機能が 急性期か慢性期かという大きく 2 つに分 類されるなかで,いずれにも分類できない 役割を担っており(篠田・中川・小室 2 0 0 5  :  7 8 ‑ 8 3 ) . その一つが地域おける在宅 療養支援機能である.

したがって,仮にこの「半径 4km 以内 に診療所が存在しない」という地理的要件 が緩和できれば,今以上に在宅療養支援 を中小の病院の役割として求めることがで き,診療所と地域の中小病院を中心とした 在宅療養支援の体制が構築できるはずであ る.

このことは. I 在 療 診 」 が 24 時間の往 診実施や緊急入院先の確保などの問題を抱 え,在宅療養を求める住民の願いに応え切 れていない現状解決の糸口になると考えら れる.やはり. I 半径 4km 以内に診療所 が存在しない」という地理的要件は再検討 が必要であるといえる.

確かに制度導入時に論議された病院に よる患者の囲い込みへの懸念は存在する,

よって単純に地理的要件の撤廃ではなく,

「半径 4km 以内に在療診が存在しない」

という緩和が望ましいと考える.この場合,

「在療診」の集中する都市部では届出は増 えないが. I 在療診」が少ない郡部などで は「在宅療養支援病院」が増加する可能性 があり,在宅療養支援の体制が弱い地域の 解消につながると考えられる.

VL まとめ

「在宅療養支援病院 J は,医療資源の限 られた地域において,在宅療養支援を担わ

ざるを得ない地域状況からその役割を果た しているのであろうと t 佳測できる.つまり,

「在宅療養支援病院」は地域における在宅 療養支援の中核であることは間違いない.

しかし現状としてはあまりに少ない状 況にあり,在宅療養支援を行う病院を評価 するという制度導入時の目的を達している

とは言い難い.

今後「半径 4km 以内に在療診が存在し ない」という要件緩和の検討が必要である と言える.この要件の緩和によって. I 在 療診」の存在しない地域では,新たな「在 宅療養支援病院 J が中核となり,地域の診 療所や在宅介護サービスと連携を図ること で,医療資源が限られた地域においても住 民が望む地域ケアシステムを構築できるの ではないかと考える.

さて,そのためには現に存在する「在宅 療養支援病院」の支援活動内容を検討する 必要がある.しかし本研究は「在宅療養 支援病院」への実態調査の事前把握として 行政資料等を用いた現状分析に過ぎず,実 際にそれぞれの「在宅療養支援病院 J がど のような活動を行っているかは,今後の調 査で明らかにしたい.

謝辞

本研究は,財団法人在宅医療助成勇美 記念財団 2 0 0 8 年度在宅医療助成指定公 募(後期) I 過疎地における在宅医療の現 状と課題 J (研究代表者:武田誠一)の成 果の一部である.

(引用文献)

佐原康之 ( 2 0 0 7 ) I 在宅療養支援診療所に

ついて J r グループ診療研究.1 1 3   ( 1 ) .  

(7)

ショートノート

1 5 ‑ 2 5 .  

千葉宏毅・濃沼信夫・伊藤道哉・ほか ( 2 0 0 8 )

「在宅療養支援診療所の経年推移と在宅 看取りの地域性に関する一考察 J r 日本 医療・病院管理学会誌 j4 5  ( S u p p l e m e n t )   , 

1 7 4 .  

武田誠一 ( 2 0 0 7 ) 1 新潟県内の在宅医療の サービス基盤に関する研究新潟県にお ける「在宅療養支援診療所」の開設状況」

『新潟青陵大学紀要 j ( 7 ) ,  7 3 ‑ 8 5 .   武田誠一 ( 2 0 0 9 ) 1 新潟県における「在宅

療養支援診療所」の診療実態から見る「地 域ケア体制整備」の課題 J r 最新社会福 祉学研究 j ( 4 ) ,  1 2 3 ‑ 1 3 2 .  

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日)

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鹿 児 島 県 ( 2 0 0 8 ) 1 鹿 児 島 県 保 健 医 療 計 画 J (http://www.pre f . k a g o s h i m a .  

武田誠一 9 1  

j p / k e n k o ‑ f u k u s h i / k e n k o ‑ i r y o /  g a i y o /   h o k e n i r y o u k e i k a k u . h t m   . l 2 0 0 9 年 8 月 3 1

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院支援のシステム化と地域連携 亜急性 期病床の意義と運営のポイント 亜急性 期病床における退院支援の実際と課題」

『看護展望 j3 0   ( 7 ) ,  7 8 ‑ 8 3  

参照

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