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博士学位論文審査報告書

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2013 年 1 月 7 日

博士学位論文審査報告書

大学名 早稲田大学 研究科名 人間科学研究科 申請者氏名 加瀬 裕子

学位の種類 博士(人間科学)

論文題目 行動・心理症状(BPSD)に焦点をおいた認知症ケアマネジメントの分 析と評価

Analysis and Evaluation of Care Management focusing on Behavioral and Psychological Symptom of Dementia

論文審査員 主査 早稲田大学教授 町田 和彦 保健学博士(東京大学)

副査 早稲田大学准教授 辻内 琢也 博士(医学)(東京大学)

副査 早稲田大学准教授 扇原 淳 博士(医学)(順天堂大学)

本論文は、効果的な認知症ケアマネジメントの開発を目的として、現在行われてい る認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、以下 BPSD)への介入・対応の中で効果のあった事例を収集し,量的・質的に分析すること で,効果的な対処方法の傾向を明らかにしたものである。そもそも、BPSD は重複して 存在し、介入・対応も複合的に行われている現状では、ケアマネジメントの焦点も定 かではない。特定の BPSD に対して、どのような介入・対応が効果を上げたか、過去の 成功事例から関連性を明らかにすることで、認知症ケアマネジメントによる介入・対 応の焦点を明らかにした。

まず、第一章でケアマネジメントの登場の過程と機能について海外の文献を中心に 体系的文献レビューを行い、次の 2 点を整理・抽出した。①ケアマネジメントが効果 的効率的在宅ケアに不可欠であること、②ケアマネジメントが在宅生活維持を目的と している技法であること、という点であった。

第二章では、認知症ケアについて概要を述べたのち、エビデンスに基づいた認知症 ケアのガイドラインについて海外の先行研究の文献を整理・検討した。その結果、①

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認知症の原因には生物学的な要因と同時に心理社会的要因が関係していること、②心 理社会的要因に効果的介入をすることで,認知症を患いながらも在宅生活を維持する ことが可能となること、があきらかになった。

第三章から第五章は、東京都下 2 市および四国 1 県下の介護保険事業所(居宅介護 支援事業所、デイサービス事業所、介護施設事業所)80 箇所を対象(対象者は 1 箇所 5名)とした質問紙調査の結果を分析したものである。

第三章では、BPSD が改善した 204 事例(有効回収率 51%)について行なわれた介入・

対応についての記述データをカテゴリー化することで、BPSD への効果的アプローチの 構造を探索的にモデル化することを試みた。 その結果、効果が認められた BPSD の心 理社会的要因へのアプローチでは、利用者の役割や社会性を強化するための「場」を 調整することの重要性が示唆された。

第四章では施設における BPSD が改善した 130 事例を,多重コレスポンデンス分析を 用いて分析した。その結果,BPSD の内容と効果的な介入行動は 4 群に分かれた。まず、

第 1 群は行動性・攻撃性のある BPSD であり、落ちつかせる介入が効果に関連していた。

第 2 群は混乱と失見当識への対応が主要課題である BPSD 群で、その改善には,社会性 と能力活用を刺激する介入が関連していた。第 3 群は「幻視」等生理学的な原因に由 来する BPSD であり、対立を避けつつメリハリのある生活をめざす介入が効果に結びつ いたことが明らかになった。第 4 群からは被害妄想改善には聴覚の低下を補完する介 入の効果が示唆された。

第五章では在宅高齢者の BPSD が改善した 72 事例を対象に、コレスポンデンス分析 を行った。その結果、BPSD の内容と効果的な介入・対応行動は、大きく 5 群に分類さ れた。第 1 群では、「昼夜逆転」「介護への抵抗」に、「服薬の調整と管理」が効果的で あったことが示された.第 2 群では,「不穏な気分と行動」の改善に、「サービス利用 の促進」「家族・介護者への教育」「本人が自分でできる課題の遂行」が関連していた。

第 3 群には「暴言」のみが含まれ,「課題を簡単なものにした」ことが効果的な介入行

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動として示唆された。第 4 群と第 5 群からは,主に妄想・幻覚・暴力にかかわる BPSD 改善の関連が示されたが、特定の介入行動は示されなかった。

終章では現状から考えられる BPSD にかかわる効果的な認知症ケアマネジメントに ついての包括的な考察の記述がなされた。

以上これらの論文の内容について審査委員会で活発な質疑応答がなされた。その結 果、本研究の認知症改善事例の分析から得られたレトロスペクティブな事例研究の知 見は、先行研究の結果と一致しているだけでなく、特定の BPSD と介入・対応の関連を 示すことができたことにより、この改善事例の分析研究が今後の認知症ケアマネジメ ントの開発に繋がる可能性を示唆するものとして高く評価された。

なお、本論文の一部が掲載された主な学術論文は以下の通りである。

【1】加瀬裕子、多賀努、久松信夫、横山順一:認知症ケアにおける効果的アプロー チの構造-認知症の行動・心理症状(BPSD)への介入・対応モデルの分析か ら-,社会福祉学、53(1)、3-14、2012

【2】加瀬裕子、多賀努、久松信夫、横山順一:認知症の行動・心理症状(BPSD)と 効果的介入、老年社会科学、34(1):29-38、2012

【3】加瀬裕子、久松信夫:認知症ケアマネジメントの開発的研究―行動・心理症状

(BPSD)改善を焦点として― 、介護福祉学、19(2)、157-165、2012

以上、本論文が高齢者介護の先頭に立つケアマネ-ジャーの実践上の指針作りの 観点から見て有用な論文であり、本委員会は、本論文を博士(人間科学)の学位を授与 するに十分に値するものと認める。

以上

参照

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