臨 床 實 験
〔女子讐學研究・第14答。第2號頁153−156・昭和19年5月〕
Coccobazillus foetidus ozaenae lこよう
限局性化膿性腹膜炎の1例
東京女子讐學專門田校外科教室(主任橋 本
くシ モト (受付.昭和18年10月27日)1緒
言 佐伯教授)島
シマ子
コ Ozaena菌が鼻腔粘膜に炎症を起し、堪へがたき悪臭を獲せしめ、かの不快なOzaenaなる病 粛輩嚢せしめることは、衆知の事なるも、本菌は鼻腔粘膜に炎症を起さしめるのみならす・身艦諸 組織に於て繁殖し夫々の化膿性炎症を起すことあり。例へば、中耳炎、上顎螢蓄膿症、皮下結締織 炎等なり。 然し本菌により化膿性腹膜炎を護せしと云ふ例は本邦に於ては未だ嚢表されづ㍉本教窒に於て昭 和18年斯る1例を経験せるを以て姑に報告す。暮臨
淋
例 患者:米○和0 14歳の女鬼にて藝妓屋の抱へts Y o 主訴:下腹部の疹痛並に腫脹。 家族廃:特記すべきことなし。 既径歴;種痘、麻疹を輕過し、12歳の時数日間微熱罐き馨師の診察を受けたる所レ線上肺門に陰影をみと むと雲はれたるも病床に就くには至らざりき。 現病歴:昭和17年12月頃より18年1月にかけて何となく回忌なぐ野守を休ませると喜べリ、2月頃下 腹部の鈍痛を訴へ歩行時下腹部をか玉へる如くになしみたるも肺の悪き爲ならむと考へ何等治療せず放置せり0 3月2日感胃にか蕊)咳漱多く熱感倦怠あPo 3月4日以來放尿時終宋痛を訴へた)0 3月10日頃下腹部の腫脹を認め該部の自白痛並に猛痛ありき、3月12日本院小兇科1(:て胸部の診察を受け、 レ憩検査の結果、結核の所見なしと云はれ離宅せり。 同夜39.5。C護熱し悪寒を俘ふ、腹痛は徐々に旨くなり 下痢便1同あy。13H14日は同様39℃前後の獲熱あy、腹痛は績きたるも悪心嘔吐はなかりき0 3月15目本院皮膚科外來に需診、外科に廻され.しものな)o放尿時疹痛は引き績き存し,たるも裏急後重はな く便通は3月12Nの下痢便玖來は1日1∼2同の普通便なり。 一69一154 初診時所見:昭和18年3月15日入院、獲病後5日目なり。 患者は膿格中等・榮養梢譲へ、顔面蒼白・:苦悶朕を呈し,・艦温36・5℃・脈搏90・舌稽≧乾燥・ 薄き白苔あり、口腔粘膜に異常を認めづ『、胸部に著攣なく、膝蓋腱反射正常、Ozaenaeに特有の 臭氣なし。 腹部所見として、下腹部中央に手掌大の割合限局せる腫脹を認め、波動を呈し、口吟痛墜痛あり 特にマック・バーネー氏黒占に相撃し無痛著明、腹筋緊張著しからす、四肢φ運動並に知萱異常を認 めす、四肢:顔面等に浮腫なし。
赤血球沈降速度: 1時間7mm、2時間27mm
血液所見: 白」血球数1400 赤血球数300萬血色素68%
白血球分類 中性嗜好分葉核白血球 〃 桿朕核 1’. 淋 巴 球 モノチー.テン エオジン嗜好細胞 単三性嗜好細胞プラスマ細胞
尿所見: 240%x5%
55.5% / 1O.5% 7.0% L5% O.5% leO% 黄色、清澄、申性、蛋白、糖、膿汗色素を認めす、沈査鏡検上可見なし。 以上の所見により、波動性腫脹は少しく正中線に寄り、普通の場合とは異るも、先づ急性虫垂炎 による膿瘍との診断の下に帥日手術を行へりげ 手術 勝見: 昭和18年3月15日、佐伯教授執刀、ヌペルカイン1cc腰椎麻醇の下に、膀下部正中線に於 て約6 cmの皮膚切開を行ふに、正中線は腓豚様を呈し出血甚しく、炎症の腹壁を思はしめたり。 注射器により試験穿刺を試みたる所濃き黄線色の膿を誰明せり。 依って電氣メス匠て深部を:切開し約15優 cc位の膿を吸引排除せり。悪臭なし。膿瘍腔は孚L児頭 より少しく小なるものにして、其の壁より小揖血せるあり、ガ「ゼタンポンを埋入、手術創はエ端 縫合し置をたり。手術所見並に膿の肉眼的所見よりPneumokokken Peritonitisならんかとの疑 を懐き早運膿汁の槍査を本校細菌學教室に依頼せり。 術後の経過: 3月16日艦温37.5℃、脹榑119至、頭痛、悪心、嘔上等なし。 17目、等温37.2℃、脈搏102至、放尿耳隠末痛去り、何等の苦痛を訴へす、タ7ポンガーゼ1−70一
155 部抜去、薪たにヨードホオルムガーゼ挿入。 18日、艦温39.5DC、脈搏85至、憂なし。 20日、二三正常、二三交換、創腔は梢ミ小となりし感じなり、膿分泌減少す。 ・24日、術後9日目にて縫:合=部¢)抜糸施行0 29.日、術後2週間にして床の上に起き、徐々に歩行して差支へなき様になりたり。 4月5日、軍ガーゼ交換、何等特記すべきことなく極めて経過良好にして殆ど離床しi普通の子 供同様遊び歩くに出る。 4月19日耳鼻科の診察を受けたるも臭鼻症はなしとの事なり。 斯くして非常に良好の維過をとり何等の障碍を残すことなく手術後45日にして殆ど全治、約小 豆大の肉芽創を残して退院せり。 爾後2度本科外來をおとつれ手術創は完全に治癒せり。 検出菌の性欺 (本校細菌學教室) 検串菌は本患者の膿汁中よbはグラム陰性の短桿菌が謹明されたるも他菌は誰明されす。 本桿菌は二三を有し、芽胞なく・固有運動を有せづ㍉普通回天培養基上にて獲育良好にして、著 明の粘液性歌を有す。マウスを0.000001mgにて艶死せしむ。糖に回しては、
Lavulose, Arabinose, Saccharose, Mannit, Maltose. lnorit. Xy!ose, Rharnnose, Glico−
se, Lactose等を杢部分解しb牛孚しに野しては之を攣化せしめす。
以上の槍査所見により該桿菌はFriedl蝕derの肺炎桿菌叉はBazillus mucOsus capsulatus
と認められたりb
以上本患者に於ける下腹部膿瘍に於てOzaena菌の存在が確認されたるも他の菌を讃明されす。 是によってOzaena菌による化膿性限局性腹膜と回することを得。
皿 考 按
Bazillus mucosus cap樋latusは1893 Abe1氏がOzaena患者鼻腔分泌物中よη護見せる1爽膜菌にし て、氏は之を以て靱性耳鼻症の病原菌とせり、其の後1899Per6z氏田臭感症患者の鼻腔分泌物中よりCocc・ obazillusを護督して臭鼻症の病原菌ならんと唱へたるものなηo而して之等の細菌はFriSchの襲見せる Bazillus rhinoscleromatis並にFried!6nder氏の肺炎桿菌等と夫々其の性欺趣めて類似のものなη。次い でHofer(1913)Ward(1916)等又本菌を臨床上患者の鼻腔分泌物[P i)謹明せPo馬副に於ても1922坂上 氏はOzaena患者よりPeiez菌と’一致せる菌ゑ分離し、更にAbel Kapsel菌と比較し、雨者を同一種屡のも のなりとし、訳出の出所の異ることによって多少の差違を生ずるならんとせ塑。文1922高柳氏は本菌は音に、 Ozaena患者の鼻腔分泌物のみならず、中耳炎、上顎竃蓄膿症等所謂茸鼻科領域の疾患膿汁中よりも分離され ることあy’とし・更に耳鼻科領域以外の部位にては1904CasteUanie等は赤痢檬患者のi糞便中より本菌類似蓉 を分離し、.19G3∼1933伊藤民、關民、田澤、呼水氏又赤痢様患者よy本菌類似菌を分離せる報告あYo又193! 奥山氏は本門による外陰部皮下結締織炎並に之が分離菌の性厭につきて報告せη。 一 71 一一
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