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象牙芽細胞の枯渇は象牙芽細胞分化と象牙質形成を誘導する

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Academic year: 2021

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歯科治療のために窩洞を形成した歯の髄腔側で は,象牙芽細胞による石灰化が亢進する.以上 は,失われた硬組織を補填する生体防御反応であ り,臨床現場では,より早期の修復象牙質形成が 求められる.この過程において,窩洞形成にとも ない象牙芽細胞の細胞死が誘導され,新生象牙芽 細胞の出現が観察される.しかしながら,象牙芽 細胞死と修復象牙質の形成との関係は良く分って いない.今回我々は,遺伝子改変マウスを用い て,ジフテリア毒素(DT)投与により象牙芽細 胞を特異的に死滅させる実験系を構築した.この 実験系を用いて,修復象牙質の形成に対する象牙 芽細胞死の重要性を調べることを目的とした. Ⅰ型コラーゲンのプロモーター[Col1⎝2.3⎠] の制御下で GFP を発現するマウスの上顎の第一 臼歯を回収した.凍結切片を作製し,共焦点レー ザー顕微鏡で観察した.その結果,象牙芽細胞に GFP の発現が特異的に観察された.したがって, 歯髄組織において,Col1⎝2.3⎠ は象牙芽細胞特異 的なマーカーであることが示された.そこで Col1⎝2.3⎠–Cre/flox–stop–flox–ジフテリア毒素受 容体(DTR)マウスを作製した.Col1⎝2.3⎠–Cre/ DTR マウスに DT を投与すると,象牙芽細胞が 組織特異的に死滅することを確認した.次に Col1⎝2.3⎠–GFP/Col1⎝2.3⎠–Cre/DTR マウスを用 いて,象牙芽細胞の枯渇後の再生象牙芽細胞の出 現の有無を観察した.その結果,枯渇した象牙芽 細胞は,時間依存的に再生することが明らかに なった.次に,象牙芽細胞枯渇後の修復象牙質の 形成を,カルセイン標識により観察した.その結 果,象牙芽細胞を枯渇した条件下でのみ,象牙質 へのカルセインの取り込みが認められた.さら に,micro–CT による解析結果から,象牙芽細胞 の枯渇後に硬組織体積が増えることが示された. 以上より,象牙芽細胞の枯渇が新生象牙質形成を 誘導することが明らかになった.次に,象牙芽細

〔学位論文要旨〕

松本歯学 46:101~102,2020

象牙芽細胞の枯渇は象牙芽細胞分化と象牙質形成を誘導する

趙 麗娟

松本歯科大学 大学院歯学独立研究科 硬組織疾患制御再建学講座 (主指導教員:各務 秀明 教授) 松本歯科大学大学院歯学独立研究科博士(歯学)学位申請論文

Depletion of odontoblasts induces odontoblastic differentiation and dentin formation

L

IJUAN

ZHAO

Department of Hard Tissue Research, Graduate School of Oral Medicine, Matsumoto Dental University

(Chief Academic Advisor : Professor Hideaki Kagami)

The thesis submitted to the Graduate School of Oral Medicine, Matsumoto Dental University, for the degree Ph.D. (in Dentistry)

(2)

胞の枯渇後に歯髄組織で活性化されるシグナル伝 達経路を解析した.その結果,象牙芽細胞の枯渇 後 に, 副 甲 状 腺 ホ ル モ ン(PTH: parathyroid hormone)/PTH 関連蛋白質(PTHrP: PTH–re-lated protein)受容体の発現上昇が歯髄組織で確 認された.象牙芽細胞の枯渇条件下では,PTH/ PTHrP 受容体を介して活性化される PKA(pro-tein kinase A) の 下 流 シ グ ナ ル 分 子 で あ る CREB(cAMP responsive element binding pro-tein)のリン酸化の上昇も認められた.さらに, PTH(1–34)のマウスへの投与は,象牙芽細胞 の枯渇にともなう新生象牙質の形成を促進した. 以上の所見より,象牙芽細胞死が歯髄環境に作 用して,⑴歯髄間葉系細胞の PTH/PTHrP 受容 体/PKA 経路を活性化する結果,象牙芽細胞へ の分化が亢進すること,⑵それに引き続き新生象 牙質の形成を誘導することが示唆された.すなわ ち象牙芽細胞死を引き金とした,象牙芽細胞の再 生および新生象牙質の形成を調節する歯髄環境の 存在が示唆された. 松本歯学 46⑵ 2020 102

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