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胸腺癌の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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胸腺癌の一例   山梨医科大学検査部病理1),同病理学教室2) 中澤久美子 弓納持勉 石井喜雄 早川直美 小山敏雄 須田耕一 概要:今回比較的稀な胸腺癌の一例を経験したのでその細胞像を中心泥報告する。  症例は50歳女性の肝臓Aの転移を伴った縦隔腫瘍で細胞診、組織所見、免疫組織化学お よび電顕所見より下里らの提唱する胸腺癌と診断された。すなわち、縦隔の穿牽1吸引細胞 診では、比較的小型の異型性のある上皮細胞が認められ、それは著明な‡亥小体を有し、背 景にはリンパ球が認められなかった。また、肝腫瘍生検の捺印細胞診でも同様な所見が得 られ、同組織診ではこの他に核分裂像が多数認められた。腫瘍細胞は免疫組織化学的にケ ラチン(+),Leu−7(一)で、電顕的には上皮性特有のトノフィラメントとデスモゾーム様所 見が認められた。以上、本例の診断に細胞診上の細胞異型の観察はもちろんであるカKリ ンパ球の有無などの背景の観察や免疫組織化学的所見が胸腺癌を確定または推定する上で 重要と考えられた。 1.はじめに  胸腺癌は、下里らt)、Snoverら2)、およ びWichら3)により悪性胸腺腫の中でも特に 細胞異型の強いものを胸腺癌として区別さ れたものである。  胸腺癌は悪性縦隔腫瘍の全国集計で2% と稀であるが4)、下里5)は1986年までの24 年間に174例の縦隔腫瘍を経験し、そのう ち17例が胸腺癌であったという。  今回我々は、下里らの提唱する胸腺癌と 考えられる一例を経験したので報告する。 皿.症例

患者:5磯女性

主訴:右季肋部痛 家族歴:父親が肝癌にて死亡 現病歴;昭和63年2月禦団検診の腹部超音 波検査で肝臓右葉に多数の腫瘤を指摘され た。精査目的で山梨医科大学第一内科を受 診し、転移性肝腫瘍の診断を受けるが自覚 症状がなく放置されていた。昭和63年9月 より右季肋剖塘が出現し次第に増強してき たため、昭和64年1月同科入院となった。

図1腹部CT像

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図2胸部断層写真

入院時、腹部に表面の不整な肝が剣状突起 下7横指、右鎖骨中線上肋骨弓下5樹旨触 知されへ縦隔にもレ線的に腫瘍が発見され た。 入院時腹部CT像:肝右葉前区域に12×9 cuの不規則な1㎝(㎞sity areaが認められ た他、肝全体に多数のspace oocupyi㎎ lesi㎝が認められた(図1)。 入院時胸部断層写真:気管分岐部の高さに 9×5.5㎝の腫闘陰影が認められた(図2)。 皿.細胞学的所見  縦隔の経皮的針生検細胞診(図3):出 血性背景に多数の比較的小型の腫瘍細胞力く 散在性ないしは上皮性の結合を示す集団と して認められ、リンパ球成分は認められな かった。腫瘍細胞は細胞境界が不明瞭で、 核は類円形で大小不同が見られ核縁の肥厚 はなく、クロマチンは微細穎粒状∼オパー ク状を呈していた。櫛1・体は、比較的大型 なものが1∼2個認められた。  肝腫瘍生検の捺印細胞診(図4):背景 にリンパ球はみられず、多数の腫瘍細胞が シート状に出現していた。腫瘍細胞の胞体 は不明瞭で、核は類円形で大小不同が

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図3縦隔の経皮的針生検細抱診像: ㍗ a)腫瘍細胞力浅合性及び散在性に出 現している(Papanicolau染色,x400) b)細胞は類円形で大,iNJFI司があり、 一部に大型の核ノ」体がみられる (Papanicolatimes,x1000)

(3)

見られた。クロマチンは細穎粒状で大型核 小体が1∼2個認めらね縦隔の細胞診と ほぼ同様な所見であった。 IV.病理組織学的所見 縦隔腫瘍生検(図5):仕較的充実性に 増殖する腫塙組織で、腫瘍細胞は主として round∼polygonalで、 N/C比は高く核は hyperchrouaticで、核小体の目立つものが 認められた。腫瘍は比較的間質に乏しく、 その中にはリンパ球はほとんど認められな かった。  肝腫瘍生検(図6):肝組織内に塊状な いし充実性の腫瘍組織が認められ、腫瘍細 胞の所見は縦隔腫瘍生検とほぽ同様であっ た。また核分裂像が目立ち強拡大1視野に 2∼4個ほど認められた。 V.免疫組織化学的所見  抗ケラチン抗体(毘〔㎜DE(XImSON,CAM5 .2)および抗Leu−7抗体(eSCTON OEOζINSO N)をPAP法にて行ったe腫瘍細胞は胞体 がケラチン強陽性を示したが、㎞一7は陰 性であった(図7)。 VI、電子顕微鏡所見  ホルマリン固定標本より電顕標本を作製 した。上皮性細胞特有のトノフィラメント とデスモゾーム様所見が認められ、カルチ ノイドや小細胞癌に見られる様な明らかな 神経内分泌願粒は認められなかった(図8)。 図5縦隔腫瘍生検組織像:腫瘍は間質に乏し   くリンパ球はほとんど認められない(x200) 図6 肝腫癌生検像:核分裂像が多数

見られる(⑳)

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 図4

肝腫瘍捺印細胞診像:著明な大型 核小体がみられる(Pap染色,xlOOO)

図7免疫染色(左ケラチン、右1創一7)   ケラチン強陽性、Leu−7陰性

(4)

図8電顕像:ト17tラメントと飛ヅーム様所見が見られる(x10000)   表1憤鯨腫と胸腺癌の臨床細胞学的鑑別 鑑別点 細胞異型 弱い 強い 核分裂橡 極めてまれ 多い リンパ球成分 伴う ほとんど認められない

まれ しばしばあり ケラチン(+) ケラチン(+) Leu−7(+) Leu−7(一)

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V1.考察  今回の呈示例は肝臓への転移を伴った縦 隔腫瘍で、細胞学的に異型性のある上皮細 胞は核小体が著明で、核分裂像も多数認め られた。免疫組織化学的に同細胞の胞体は ケラチン(+)Leu−7 (一)であった。また腫瘍 の胞巣内にはリンパ球はほとんど認められ なかった。このような所見は下里ら1)のい う胸腺癌のそれと一致すると考えられた。 表1に胸腺腫と胸腺癌の鑑別s)を示したが、 特にケラチンとLeu−・7の免疫染色上の相違 が両者の鑑別点として重視されているS’7》。 さらに、胸腺腫では遠隔転移ぱ稀であるが Pt.文献 1) Simosato Y et a1: Car℃i㎜ of the  thymus : an analysis of eight cases,  A蹴 J Surg Pa thol 1: 109−121, 1977 2) Snover DC et a l: Thymic carc i negla:  five distinctive histological var−  iants. Am J Surg Pathol 6: 451−470,

 1982

3) Wick Ua et a1: Primary thymic carci一 ㎜s.Am J Surg Pathol 6:61働,

 1982

4)竹川宏典他:胸腺癌(未分化癌)の  一例.日胸疾会誌26:M1−545,1988 胸腺癌においては高率に認められている3’ e)。5)下里幸雄:胸腺腫ならびにその関連腫 本例のような胸腺癌を、細胞診で診断す るには異型性などの細胞形態の観察はもち ろんであるが背景のリンパ球の有無も特に 重要であると考えられる。また胸腺腫との 鑑別が困難と思われる例にはケラチン、 Leu−7の免疫染色を積極的に試みるべきで ある。 珊.まとめ  肝臓への転移を伴った胸腺癌の一例(50 歳女性)について細胞像を中心記報告し た。  瘍.病理と臨床5:1164−1170,1987 6) Morinaga S et ai:Multiple thymic  squamcus cel l ca rci噸as associated  with m i xed type thyiacma. A田 J Surg  Patho1 11: 982−988, 1987 7) 笹1勃R巳産匡ノ㌧: i重オ豆…舷藻i貰フりi産巨(部)ii}ト雀}{i糖  腺腫ならびに胸腺癌の治療と予後.日

 嶋志46:612−617, 1987

8)山川久美他:経皮的針生検細胞診で  悪性と確診された胸腺癌の一例.日臨  細胞誌 26:471−475,1987

参照

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