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遺伝子の発現活性と核内局在:

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遺伝子の発現活性と核内局在:

高発現遺伝子、未分化関連遺伝子および 肝細胞特異的遺伝子のふるまい

Gene expression and nuclear localization:

behaviors of highly expressed genes, pluripotency-related genes and

hepatocyte-specific genes

2013 年 2 月

早稲田大学大学院 先進理工学研究科 生命理工学専攻 分子遺伝学研究

宇田川 紘司

Koji UDAGAWA

(2)

目次

略号一覧 ... 1

緒言 ... 3

第 1 部 1.1. 序論 ... 9

1.2. 材料と方法 ... 14

1.3. 結果 ... 21

1.3.1. 一過的遺伝子発現系における解析 ... 21

1.3.2. HeLa細胞のゲノムに安定的に組み込まれたレポーターの局在 ... 29

1.3.3. マウスES細胞のゲノムに安定的に組み込まれたレポーターの局在 ... 34

1.4. 考察 ... 42

1.4.1. ベントDNAによる転写活性化と遺伝子の核内配置の関係 ... 42

1.4.2. ベントDNAをもつレポーターの局在に対する細胞分化の影響 .... 45

(3)

第 2 部

2.1. 序論 ... 47

2.2. 材料と方法 ... 49

2.3. 結果 ... 52

2.3.1. マウスES細胞における未分化関連遺伝子 および肝細胞特異的遺伝子の核内局在 ... 53

2.3.2. 肝細胞への細胞分化における未分化関連遺伝子 および肝細胞特異的遺伝子の核内局在の変化 ... 54

2.3.3. 遺伝子の核内配置と遺伝子密度、 ならびに遺伝子の核内配置とGC含量との関係 ... 62

2.4. 考察 ... 65

2.4.1. 細胞分化、遺伝子発現、ならびに遺伝子の核内局在の間の関係 ... 65

2.4.2. 本研究の結果と過去の報告との比較 ... 67

2.4.3. 遺伝子の核内配置を規定する要因 ... 72

総括 ... 74

謝辞 ... 76

参考文献 ... 77

研究業績 ... 85

(4)

略号一覧

3D three-dimensional

Akt3 thymoma viral proto-oncogene 3 gene BAC bacterial artificial clone

CD11b integrin alpha M CK18 cytokeratin-18

Cyp7α1 cytochrome P450, family 7, subfamily α, polypeptide 1 gene DAPI 4′,6-diamidino-2-phenylindole

Dppa2 developmental pluripotency associated 2 gene E-MEM Eagle’s minimum essential medium

Ephb1 Eph receptor B1 gene ES embryonic stem FBS fetal bovine serum

FGF-4 fibroblast growth factor 4

FISH fluorescence in situ hybridization FITC fluorescein isothiocyanate

GFP green fluorescent protein

G-MEM Glasgow minimum essential medium haFGF human acidic fibroblast growth factor HGF hepatocyte growth factor

IFN-γ interferon gamma gene

Igh immunoglobulin heavy chain complex gene Igk immunoglobulin kappa chain complex gene iPS induced pluripotent stem

Klf4 Kruppel-like factor 4 (gut) gene LIF leukemia inhibitory factor

Mash1 achaete-scute complex homolog 1 (Drosophila) gene MEF mouse embryonic fibroblast

(5)

MPO myeloperoxidase

MYB myeloblastosis oncogene NA numerical aperture Nanog Nanog homeobox gene NEAA non-essential amino acids

Oct4 POU domain, class 5, transcription factor 1 gene PBS phosphate buffered saline

Pck1 phosphoenolpyruvate carboxykinase 1, cytosolic gene PCR polymerase chain reaction

Ptn pleiotrophin gene

Rex1 zinc finger protein 42 gene Rex2 reduced expression 2 gene Sox2 SRY-box containing gene 2 gene SSC standard sodium citrate

Tat tyrosine aminotransferase gene Tdo2 tryptophan 2,3-dioxygenase gene

zスタック画像 焦点面を等間隔にずらして撮影した一連の顕微鏡写真

レポーター遺伝子インテグラント細胞株 ゲノム DNA にレポーターコンスト ラクトが安定的に組み込まれた細胞株

(6)

緒言

真核生物の遺伝子発現は、様々な段階で制御され、しかも各段階で様々なメカ ニズムによって制御されている。遺伝子発現の主要な制御は遺伝子の転写の段階 でなされ、多くの場合、この制御が最終的な遺伝子の発現に大きく影響する。転 写制御のメカニズムには、最も基本的なものとして、シスエレメントとトランス 因子による制御、DNA分子のもつトポロジー[1-3]や物理的特性[4, 5]による 制御がある。また、DNAの塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現を制御する機構 として、DNAやヒストンの化学修飾(エピジェネティックな制御)がある[6, 7]。 さらに、真核生物ではゲノムDNAはクロマチン構造をとっているため、クロマチ ンの構造変換や、局所的なヌクレオソームの配置やその変化も転写の制御に関わ っている[8, 9]。

1990 年代後半から、細胞核内における遺伝子の空間配置も遺伝子発現を左右す るパラメーターのひとつであることが明らかになってきた[10-18]。高等真核生物 のゲノムDNAは高度に組織化されて核に収納されており、個々のゲノム領域(染 色体)は間期細胞核内で互いに区画化され、テリトリー構造(chromosome territory;

染色体テリトリー)をとっている[15, 19-21]。遺伝子がゲノム DNA 上に存在し ていることから、遺伝子の核内配置とともに染色体テリトリーの分布が調べられ、

染色体上の遺伝子の空間配置が遺伝子の発現活性と相関するという現象が報告さ れた[22-24]。たとえば、未分化関連遺伝子である OCT4 は、ヒト胚性幹細胞

(embryonic stem cell; ES細胞)核内で高活性であるが、その遺伝子座は染色体テ

リトリーから飛び出している(ループアウト)ことが報告された[23]。このよう な遺伝子領域のループアウトは、遺伝子を転写ファクトリーに接近させやすくし て、遺伝子発現を活性化させていると考えられている[16]。これとは逆に、人為 的に遺伝子を核膜につなぎ止めると、その遺伝子発現が著しく減少することが報 告されている[12, 25]。核膜につなぎ止められた遺伝子は、核膜内膜のタンパク 質と相互作用するクロマチン修飾酵素によってヘテロクロマチン化され、その発 現が抑制されたのだと考えられている。このように、遺伝子の核内配置が遺伝子

(7)

の発現活性に影響を与えることから、これらの関係を明らかにすることは、現代 生命科学の重要な課題であると考えられる。

細胞核内における遺伝子の配置を定量的に解析する場合、主に次のふたつの方 法がとられる[26]。ひとつは対象とする遺伝子同士、あるいは染色体や核膜など の構造体との相互の位置関係[相対核内配置(relative positioning)]を解析するも ので、もうひとつは核の中心から標的とする遺伝子がどれだけ離れているか、と いう分布[放射状核内配置(radial positioning)]を調べるものである。細胞核には 構造的に特徴づけられる“中心”は存在しないが、対比染色によって染められた 細胞核の幾何学的重心を核の中心として求めることは、技術的には比較的容易で ある[26]。このため、遺伝子の放射状核内配置を調べる研究が多数行われてきた

[25, 27-32]。

遺伝子の放射状核内配置の機能的な重要性は、遺伝子の転写活性化に伴って放 射状核内配置が変化したという観察事実から示唆された。たとえば、多くの場合、

転写が活性化している遺伝子は核膜周縁部よりも核中心部に局在することが知ら れている[27-31]。Kosakらは、マウスのBリンパ球の分化過程において、転写活 性化に伴って、IghとIgkの局在が核膜周縁部から核中心部へ移動することを報告 した[27]。また、Williamsらは、神経前駆細胞への分化に重要な転写因子MASH1 をコードする遺伝子 Mash1 の局在を、マウス ES 細胞の神経細胞への分化過程で 調べ、Mash1 が高発現した状態で核中心部に多く局在すると報告している[30]。

一方で、転写が活性化するにもかかわらず核内局在が変化しない遺伝子も少なく

ない[27, 28, 31, 32]。マウスのT細胞がTh1細胞へ分化する過程において、IFN-γ

は遺伝子が発現し始めても核膜周縁部に留まることが知られている[28]。さらに、

遺伝子発現の変化無しに、局在のみが変化する遺伝子の存在も報告されている

[30]。このように、放射状核内配置と遺伝子発現が機能的に密接に関わっている

(8)

本論文では、特徴的な発現様式をもつ遺伝子を対象として、それらの発現活性 と核内局在との関係を調べた研究結果について報告する。本研究では、人工ベン トDNAにより活性化された外来遺伝子の核内局在解析と、未分化関連遺伝子なら びに肝細胞特異的遺伝子の核内局在解析というふたつの研究を実施した。その成 果を、それぞれ第1部と第2部に分けて述べる。

第1部の研究では、人工ベントDNAにより転写が活性化される系を用いて、こ の活性化の分子機構にレポーター遺伝子の核内局在が関与しているか否かについ て解析した。4 種類の細胞を用いて蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法

(fluorescence in situ hybridization; FISH)による解析を行った結果、一過的遺伝子 発現系と安定的遺伝子発現系のどちらの実験系においても、ベントDNAをもつレ ポーター遺伝子ともたないレポーター遺伝子の核内局在に違いが見られないこと が明らかになった。すなわち、ベントDNAによる転写活性化に遺伝子の核内局在 が関与しないことが判明した。ベントDNAによる遺伝子の転写活性化のメカニズ ムとして、クロマチン構造に着目した研究から、転写活性化がヌクレオソームス ライディングによって引き起こされることが既に明らかになっていた[33]。とこ ろが、従来の研究ではレポーター遺伝子の核内局在に関してはまったく調べられ ておらず、ベントDNAを介した転写活性化のメカニズムとして、遺伝子の核内局 在が関与している可能性が考えられた。しかし、本研究によって、この可能性は 否定され、ベントDNAによる転写活性化がヌクレオソームスライディングのみに よって起こることが明らかになった。

第 2 部の研究では、遺伝子の核内局在に関する基礎的な知見を得ることを目的 として、細胞の未分化性の維持に重要な遺伝子(未分化関連遺伝子)と肝細胞特 異的遺伝子の核内局在と、遺伝子発現および細胞分化との関係について解析した。

具体的には、マウス ES 細胞とそれを分化誘導して得られる肝細胞を材料に

3D-FISH解析を行った。その結果、マウスES細胞および肝細胞における当該遺伝

子の核内配置ならびに分化に伴う局在変化について、新たな知見を得ることがで きた。さらに、これらの遺伝子の核内局在は、遺伝子発現よりも遺伝子周辺の遺

(9)

伝子密度や GC 含量との間に相関があることを見出した。これらの結果から、遺 伝子はその発現様式によらず、遺伝子密度や GC 含量のような、より高次の特性 に従って細胞核内に配置されているという結論を得た。

(10)
(11)

第 1 部

人工ベント DNA により活性化された外来遺伝子の核内局在

(12)

1.1. 序論

ゲノム DNA には様々な構造の DNA が存在する。らせん軸の軌道が曲がった

DNA はベント DNA(bent DNA)と呼ばれ、ウイルスから高等真核生物のゲノム

まで天然に幅広く存在している。さらに、この構造はDNAの複製起点や転写の制 御領域といった機能的に重要な領域にしばしば高頻度に存在することが知られて

いる[2, 34-41]。これまでの多くの研究によって、このようなベントDNAが遺伝

子機能の制御とクロマチン構造の構築の両方に重要な役割を果たしていることが 明らかにされてきた[1-3, 42, 43]。真核生物においては、ベントDNAはいくつか のメカニズムによって機能する。たとえば、(1)転写因子のシスDNA配列へのア クセッシビリティを高める、(2)基本転写因子と上流の制御領域を隣接させる、(3)

転写因子の結合によって構造が変化する、(4)ヌクレオソームスライディングの 受け皿として働く、などである[1-3, 33]。

ベントDNAの形状は転写にとって重要な因子になりうる。原核細胞においては、

正(右巻き)の超らせん構造を擬態したベントDNAが転写を活性化する。このよ うな構造はRNA ポリメラーゼのプロモーターへの結合を促し、プロモーター開鎖 複合体の形成を促進する[43-46]。一方、真核細胞においては負(左巻き)の超ら せん構造を擬態したベントDNAによって転写が活性化する[3, 33, 47-52]。真核 細胞のゲノムDNAは、クロマチンの基本単位であるヌクレオソームに折り畳まれ ており、そのDNAは左巻きの超らせんを形成している[53, 54]。負の超らせん構 造を擬態したベントDNAは、局所的に転写開始に有利なクロマチン構造をつくる ことで転写を活性化できると考えられている[3, 47, 55, 56]。一般的に、ヌクレオ ソームは転写因子の結合や集合を阻害し、転写を抑制すると考えられているが[57, 58]、負の超らせん構造はこの問題を回避する機構を用意しているようである。

上述の知見をもとに、転写を人為的に活性化させるための人工ベントDNAが西 川や隅田らによって合成された[47, 48]。これらの人工ベント DNA では、約 10 塩基対の周期で配置されたdT/dAトラクト(dT/dA塩基対の数個の連なり)がDNA

(13)

の曲がりを形成しており、周期性の違いが 3 次元構造に違いをもたらしている。

たとえば、9 塩基対の周期は左巻きの超らせん構造を形成し、10、11 塩基対の周 期は、それぞれ平面カーブ、右巻きの超らせん構造を形成する。西川らは、9塩基 対の周期で(dT/dA)5トラクトを4つもった36塩基対のT4(“T”は(dT/dA)5トラク ト、4はこのトラクトの数を示す。以下、同じ。)を合成した。そして、COS-7 細 胞を用いた一過的遺伝子発現系において、T4がレポーター遺伝子の転写を活性化 できることを明らかにした[47, 48]。さらに、(dT/dA)5トラクトを延長したT8、 T16、T20(図1. 1)、T24、T28、T32、T36、T40のすべての構造について、COS-7 細胞を用いた同様の解析が行われ、一過的遺伝子発現系ではこれらの構造が転写 を活性化できることが示された[48]。

1. 1 T203次元構造

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(14)

その後、様々な実験系でこの一連の人工ベントDNAによる転写の活性化が確認 された。たとえば、酵母(Saccharomyces cerevisiae)のミニ染色体を用いた実験で は、T12、T20、T28の3種類のDNAによりβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(レポータ ー)の転写が50~60倍活性化することが示された[33]。また、HeLa細胞、マウ ス胚性幹細胞(embryonic stem cell; ES細胞)、およびES細胞を分化させて得られ た肝細胞を用いて、T20がゲノムに安定的に組み込まれたときの転写活性化能が調 べられた[48, 51]。HeLa細胞の場合、T20は下流に配置したレポーター遺伝子(ル シフェラーゼ遺伝子)の転写を活性化した[48]。しかし、マウス ES 細胞と肝細 胞の場合、転写活性化はレポーター遺伝子(GFP 遺伝子)のゲノム上の挿入位置 に依存し、T20による転写の活性化は活性遺伝子領域においてのみ起こることが示 唆された[51]。さらに、マウスの個体を用いて、T4、T20、T24、T28、T32、T36、

T40の転写活性化能が調べられた。この実験では、レポーター遺伝子(ルシフェラ ーゼ遺伝子)をもつプラスミドDNAが、ハイドロダイナミクス法[59]によって マウスの尾静脈から投与された。その後、肝細胞におけるレポーター遺伝子の転 写活性が測定され、各DNAが2~8倍転写を活性化することが確認された[49, 50, 52]。

T20のような負の超らせん構造を擬態したベントDNAによる転写の活性化のメ カニズムについては、クロマチン構造に注目した研究によって、メカニズムの一 端が明らかになっている。たとえば、一過的遺伝子発現系において、T4断片を適 切な回転的位相でプロモーターの上流に近接させて配置すると、T4はヒストンコ アを引き寄せることでTATA BoxをリンカーDNA 領域に“移動させ”、しかも回 転的位相に関しては、その副溝を外側に向かせる[47]。また、酵母のミニ染色体 を用いた実験では、T12、T20、T28のDNA領域に形成されたヌクレオソームはそ の並進位相(translational positioning)が揺らいでいることが明らかにされた[33]。 この“揺らぎ”がプロモーター領域のヌクレオソームの可動性に影響を与え、転

写因子のTATA Boxへのアクセッシビリティを高めていると考えられている。こ

れらの知見から、T20のような負の超らせん構造を擬態した人工ベントDNAはヒ ストンコアの受け皿として作用しており、ヌクレオソームスライディングを誘引

(15)

する構造因子として機能すると考えられる(図1. 2)[33]。

このように、負の超らせん構造を擬態した人工ベントDNAによる転写の活性化 のメカニズムについては、これまでクロマチン構造に注目した研究が行われてき たが、レポーター遺伝子の核内局在に関してはまったく調べられていなかった。

しかし、ベントDNAを介した転写活性化のメカニズムとして、遺伝子の核内局在 が転写活性化に寄与している可能性がある。また、この点を調べればベントDNA による転写活性化のメカニズムの全容が明らかになる。そこで、本研究では、人 工ベント DNA がレポーター遺伝子の核内局在に影響を与えるか否かを明らかに することを目的として、蛍光in situハイブリダイゼーション法(fluorescence in situ

hybridization; FISH)による解析を行った。なお、本研究では人工ベントDNAとし

て、T20(図1. 1)を用いた。

(16)

1. 2 T20による転写活性化のメカニズム

T20領域はヒストンオクタマーとの親和性が高く、プロモーター領域のヒストンオ クタマーを引き込むことで当該領域を“ヌクレオソームフリー”の状態にし、転 写を活性化させる。TFIIDは基本転写因子TFIID、TATAはTATA Boxをそれぞれ 表す。棚瀬(参考文献33)より改変。

(17)

1.2. 材料と方法

1.2.1. 細胞培養

アフリカミドリザル腎臓由来 COS-7 細胞、ヒト子宮頸癌由来 HeLa 細胞ならび にHeLa細胞に由来する細胞株は、5%胎仔ウシ血清(fetal bovine serum; FBS)を含 むイーグル最少培地(Eagle’s minimum essential medium; E-MEM)を用いて、37°C、

5% CO2条件下で培養した。マウスES細胞株E14TG2a[60]ならびにこれに由来

する細胞株は、10% FBS、0.1 mM 2-メルカプトエタノール、0.1 mM非必須アミノ 酸(non-essential amino acids; NEAA)、1 mMピルビン酸ナトリウム、1000 Units/ml 白血球阻止因子[leukemia inhibitory factor; LIF(Chemicon)]を含むグラスゴー最 少培地(Glasgow minimum essential medium; G-MEM)を用いて、フィーダー細胞 不在のゼラチンコートディッシュ上にて、37°C、7.5% CO2条件下で培養した。

これらの細胞はスライドガラス上で12時間培養した後、FISHに用いた。

1.2.2. レポーターコンストラクトとエレクトロポレーション

一 過 的 遺 伝 子 発 現 系 に お け る レ ポ ー タ ー の 核 内 局 在 を 調 べ る た め に 、

pST0/TLN−7と pLHC20/TLN−6を用いた[47, 48]。これらのプラスミドは、それ

ぞれエレクトロポレーション法によって COS-7 細胞あるいは HeLa 細胞に導入さ れた[47, 48]。エレクトロポレーションは、以下の通りに行った。細胞をサブコ ンフルエントまで培養したディッシュから培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水

[phosphate buffered saline without calcium and magnesium; PBS (−)]で洗浄した後、

0.25%トリプシン[1 mM EDTA、0.2% NaHCO3を含むPBS (−)溶液]を用いて細胞 をディッシュから回収した。血球計算盤を用いて細胞数を計測した後、5×106 cells/mlとなるようにHEPES緩衝培地[10 mM HEPES-NaOH (pH 7.4)/E-MEM]に 細胞を懸濁した。あらかじめ紫外線で滅菌しておいたエレクトロポレーション用 キュベット(電極間0.4 cm)に細胞懸濁液を250 µl入れ、さらに500 ng/µlに調製

(18)

ドガラス上に播き広げた。細胞はスライドガラス上でさらに 12 時間培養した後、

FISHに用いた。

1.2.3. DNAプローブの調製

FISH に 用 い る DNA プ ロ ー ブ は 、pST0/TLN−7[47]、pLHC20/TLN−6、 pLHC20/loxP/TLN−6[48]、pLHC20/loxP/neo/SL[51]を鋳型として、ニックトラ ンスレーション法により調製した。標識には biotin-16-dUTP(Roche Diagnostics GmbH)またはdigoxigenin-11-dUTP(Roche Diagnostics GmbH)を用いた。DNAプ ローブは終濃度30 ng/µlとなるように hybridization buffer(50% formamide、10%

dextran sulfateを含む1×SSC)に溶解した。

1.2.4. 細胞核標本の作製

FISHのための細胞核標本作製は、文献[19, 61, 62, 63]を参考にして行った。

スライドガラスに付着した細胞を4% paraformaldehyde/PBS (−)で10分間処理して 固定した後、0.5% TritonX-100/PBS (−)で20分間の膜透過処理を行った。さらに、

20% Glycerol/PBS (−)に30分間浸漬した後、液体窒素を用いて凍結融解を5回行っ

た。塩酸処理(0.1 N 塩酸に 10 分間浸漬)、PBS (−)での洗浄後、37°C の 0.002%

pepsin/0.01 N塩酸溶液中で10分間、タンパク質を分解した。一連の洗浄工程[0.05

M MgCl2/PBS (−)で 5 分 間 、2 回 、PBS (−)で 5 分 間 、1 回 ] の 後 、1%

paraformaldehyde/PBS (−)で10分間、再固定した。次いで、PBS (−)、2×SSCでそれ ぞれ5分間洗浄した後、50% formamide/2×SSCに浸漬し、4°Cで保存した。

1.2.5. FISH

4°Cの50% formamide/2×SSCで保存したスライドガラス上の標本は、細胞核DNA

の変性に先立って 70%エタノール、90%エタノール、100%エタノールに順次浸漬 した後、乾燥させた。標本を73°Cの70% formamide/2×SSC溶液中に5分間漬けた 直後、−30°Cの70%エタノールで急冷して細胞核DNAを変性させた。次いで、再 度一連のエタノール溶液に順次浸漬した後、乾燥させた。ハイブリダイゼーショ ンはハイブリダイゼーションボックスを用いて湿潤・暗黒・定温(37°C)条件下

(19)

で3日間行った。ハイブリダイゼーションの後、サンプルを0.1×SSC(60°C、5分 間)で3回洗浄した。ブロッキング溶液(5% BSA、0.05% Tween-20を含む4×SSC)

でブロッキングを行った後、biotin標識プローブはFITC-avidin(Life Technologies)

とbiotinylated anti-avidin antibody(Vector Laboratories)を用いて、digoxigenin標識 プローブはrhodamine-conjugated anti-digoxigenin Fab fragments(Roche Diagnostics GmbH)を用いて、それぞれ可視化した。細胞核はVECTASHIELD Mounting Medium with DAPI(Vector Laboratories)を封入剤としてカバーガラス[No. 1S, 22 mm×22 mm, thickness 0.17±0.02 mm(MATSUNAMI)]で封入した。

1.2.6. 肝細胞への細胞分化

マウスES細胞(棚瀬によって樹立された、レポーターがゲノムに安定的に組み 込まれた細胞株[51])は、以下の方法により肝細胞に分化誘導して FISH 解析に 用いた[51, 64]。

1.2.6.1. ステップ 1

マウスES細胞を0.1%ゼラチンでコートした培養ディッシュに1.7×104 cells/cm2 となるように播き広げ、STEP 1培地[10% FBS/G-MEM、100 Units/ml LIF、200 µg/ml G418、10 nM all trans-retinoic acid(SIGMA)]を用いて、37°C、7.5% CO2条件下に て3日間培養した。

1.2.6.2. ステップ 2

細胞を 0.1%ゼラチンでコートした新たな培養ディッシュに 1.7×104 cells/cm2と なるように播き、STEP 2培地[10% FBS/G-MEM、200 µg/ml G418、100 ng/ml human acidic fibroblast growth factor; haFGF(R&D SYSTEMS)、20 ng/ml fibroblast growth factor 4; FGF-4(PEPROTECH EC)、50 ng/ml hepatocyte growth factor; HGF

(PEPROTECH EC)]を用いて、37°C、7.5% CO2条件下にて5日間培養した。

(20)

敷き、そこに細胞を 1.7×104 cells/cm2 となるように播いた。STEP 3 培地[10%

FBS/G-MEM、200 µg/ml G418、10 ng/ml Oncostatin M(SIGMA)]を用いて、37°C、

7.5% CO2条件下にて2日間培養した。

1.2.6.4. ステップ 4

ステップ 3 の後、培地を STEP 4 培地[5% FBS/William’s medium E(Life Technologies)、200 µg/ml G418、200 µg/ml L-Glutamine(SIGMA)、100 ng/ml NEAA、 20 ng/ml Penicillin-Streptomycin(Life Technologies)、500 ng/ml Insulin(SIGMA)、 100 nM Dexamethasone(SIGMA)]に切り替えて、37°C、7.5% CO2条件下にて5~ 7日間培養した。

1.2.7. 免疫染色による肝細胞への分化の確認

マウス ES 細胞の肝細胞への分化は、肝細胞特異的遺伝子の遺伝子産物である

cytokeratin-18を対象とした免疫染色によって確かめた。免疫染色はFISHのプロー

ブの可視化と同時に行った。一次抗体と二次抗体はそれぞれgoat anti-mouse CK18 antibody(Santa Cruz Biotechnology)とAlexa Fluor 647 donkey anti-goat IgG(Life

Technologies)を用いた。免疫染色で染色された細胞の細胞核を、肝細胞核のFISH

画像取得に用いた。

1.2.8. 蛍光顕微鏡と画像取得

オリンパス社製共焦点レーザー顕微鏡システム FluoView FV1000-D を用いて FISH解析を行った。ひとつの細胞核に対して、焦点面を0.2 µm間隔でずらして、

約70枚の画像を取得した(図1. 3A、B)。このように焦点面をずらして撮影した 一連の顕微鏡写真を以降、“z スタック画像”と表記する。高倍率で鮮明な画像を 取得するため、対物レンズは UPlanSApo 60×O[NA=1.35(Olympus)]あるいは PlanApoN 60×OSC[NA=1.4(Olympus)]を用いた。事前に蛍光ビーズを用いて、

対物レンズの色収差の測定を行い、UPlanSApo 60×Oを用いて取得した画像につい ては収差の補正を施した。PlanApoN 60×OSCは波長405 nmから650 nmまでの色 収差が極小化されている対物レンズであり、色収差を補正する必要がなかったた

(21)

め、PlanApoN 60×OSCを用いて取得した画像は補正を施さなかった。

1.2.9. 放射状相対距離の算出

細胞核の中心から FISH のシグナルまでの放射状相対距離は以下のように求め た(図1. 3C、D)[64]。

取得した画像は、MetaMorph(Molecular Devices)を用いて以下の画像処理を施 した。ガウスフィルター(3×3)とメディアンフィルター(5×5)を用いてノイズ を取り除いた後、核の内部であるがDAPIで染められなかった領域を“Fill dark holes” フィルター(Morphology Filters 機能のひとつ)を用いて取り除いた。続いて、画 像データを4D viewer plug-inを用いてMetaMorphに読み込んだ。細胞核の重心GN

と境界面(核表面)ならびに FISHシグナルの重心 GSを決めるために、それぞれ のチャンネルにおいて適切な閾値を設定した。画像データはこの閾値において二 値化処理され、二値化処理された画像を用いて細胞核ならびにFISHシグナルの重 心の座標を求めた。さらに、二値化処理された画像データは、ImageJ(version 1.47c、

http://imagej.nih.cov/ij)を用いて TextImage 形式に変換した。最終的に、細胞核と FISHシグナルの重心座標のデータならびにTextImage形式の画像データをR言語

[65]で作製したプログラム上に読み込み、核の中心およびシグナルを通る直線 と核表面との交点Mの座標を求めた。プログラム上で核の中心からシグナルまで の距離GNGSと、核の中心から核表面までの距離GNMを求め、放射状相対距離は

(核の中心からシグナルまでの距離 GNGS)/(核の中心から核表面までの距離

GNM)として算出した(図1. 3C、D)。すべてのシグナルから算出されたそれぞれ

の放射状相対距離を、0から1までを10等分した画分に分配した。すべてのシグ ナルの個数に対するそれぞれの画分に分配されたシグナルの個数の割合を図にプ ロットした。

1.2.10. 統計学的解析

(22)

z

A B

#1 #2 #3 #4 #5

#6 #7 #8 #9 #10

#11 #12 #13 #14 #15

#16 #17 #18 #19 #20

#21 #22 #23 #24 #25

GN

GS M

x

y

z

GN GS

M

C

R

M

GNGS GNM

GNGS GNM

D

(23)

1. 3 zスタック画像を用いた放射状相対距離の測定

本研究で行った解析手法の概略を示す。zスタック画像とは、焦点面を等間隔にず らして撮影した一連の顕微鏡写真のことである。詳細は本文(“1. 2. 8. 蛍光顕微鏡 と画像取得”、“1. 2. 9. 放射状相対距離の算出”)を参照。

(A)異なる焦点面での画像取得。共焦点顕微鏡を用いて、0.2~0.3 µm の間隔で 40~70枚のzスタック画像を取得した。

(B)取得した z スタック画像の一例。マウス ES 細胞の内在遺伝子を FISH によ り可視化した(赤色のシグナル)。核はDAPIにより染色した(図中白色部分)。特 に濃く染まっているところは、染色中心と呼ばれるヘテロクロマチン領域である。

スケールバーは5 µm。

(C)仮想的な細胞核を切り開いた様子。FISH シグナルを赤色で示す。核の中心 からシグナルまでの距離GNGSは赤線の長さに相当する。

(D)放射状相対距離の決定のプロセス。

(24)

1.3. 結果

1.3.1. 一過的遺伝子発現系における解析

隅田らが行った、COS-7細胞とHeLa細胞を用いた一過的遺伝子発現系での実験 条件[48]を踏襲してレポーターコンストラクトを細胞に導入し、細胞核におけ るそれらの分布を調べた。レポーターコンストラクトは、pLHC20/TLN−6 と pST0/TLN−7[47, 48]を用いた(図1. 4)。pLHC20/TLN−6はルシフェラーゼ遺伝 子のプロモーターの上流に T20 配列を含むコンストラクトであり、COS-7 細胞で はルシフェラーゼ遺伝子の発現を約70倍活性化できることが明らかになっている

[48]。一方、pST0/TLN−7 は T20 の代わりに直線状の DNA が組み込まれたプラ

スミドで、対照実験用に用いた。

1. 4 レポーターコンストラクトの構造

pST0/TLN−7と pLHC20/TLN−6の構造。T4′は枠内のDNA配列、tk promoter は単 純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼのプロモーター、AmpRはアンピシリン耐 性遺伝子をそれぞれ表す。隅田(参考文献48)より改変。

!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$

#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"#$!"

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#$!"!!!!!"#!$!!!!!"#!$!!!!!"#!$!!!!!

#####$!#"#####$!#"#####$!#"#####"#"$

$!$" T4' "#"$

$!$" T4' "#"$

$!$" T4' "#"$

$!$" T4' T4'

pST0/TLN-7

pLHC20/TLN-6

tk promoter luciferase gene

AmpR

(25)

エレクトロポレーション法によって細胞にレポーターコンストラクトを導入し、

24 時間後に細胞を固定して FISH 解析を行った。レポーターコンストラクトの核 内局在は、ビオチン標識あるいはジゴキシゲニン標識したプローブを用いて可視 化した(図1. 5、1. 6)。焦点面をずらして細胞核全体を観察すると、ひとつの核の 中に大きさの異なる複数のFISHシグナルを観察することができた(図1. 5、1. 6)。

また、それらのシグナルは核中心部よりも核膜周縁部に多く局在するように見え た。

はじめに、ひとつの細胞核の中で観察されたシグナルの個数を調べた。その結 果、観察事実から予想されたように、ひとつの細胞核の中で1個から20個程度(中 央値 3~4 個)のシグナルが見られることが確認された(図 1. 7)。また、COS-7 細 胞 と HeLa 細 胞 の そ れ ぞ れ の 細 胞 集 団 に お い て 、pST0/TLN−7 の 分 布 と

pLHC20/TLN−6の分布はほぼ同じであった(図1. 7)。

次に、核の中心から FISHシグナルまでの距離を測定した(図 1. 8)。距離は、

上述(“1. 2. 9. 放射状相対距離の算出”の項)したように、核の中心から核表面ま

での距離に対する核の中心からシグナルまでの距離の比(放射状相対距離)とし て求めた(図 1. 3)。算出された放射状相対距離をもとにして、0 から 1 まで 0.1 間隔の画分にサンプルを分配し、各画分に分配されたサンプル数を解析した。

COS-7細胞でも、HeLa細胞でも、また、レポーターコンストラクトの種類を問わ

ず、それぞれの画分に含まれるシグナルの個数は核の中心から核膜周縁部方向に 向けて増加した(図1. 8)。さらに、その分布は核内に一様に分布する場合の理論 曲線と同じプロファイルを示した(図1. 8)。したがって、核内に導入されたレポ ーターコンストラクトは核内に均一に広がって分布することがわかった。このよ

うに、COS-7細胞とHeLa細胞のどちらにおいても、レポーターコンストラクトの

核内局在にT20の有無に起因する有意な違いは見られなかった。

(26)

COS-7

(27)

1. 5 一過的遺伝子発現系におけるレポーターコンストラクトの核内局在

(I)

COS-7 細胞に、pST0/TLN−7 と pLHC20/TLN−6 をそれぞれエレクトロポレーショ

ン法によって導入した。前者は対照実験用サンプル、後者はテストサンプルとし て用いた。24時間後、パラホルムアルデヒドによって固定し、FISH法によってプ ラスミドの局在を可視化した。細胞核はDAPIにより染色した。z軸方向に沿って

0.2 µm間隔で40~60枚の写真を撮影した。図では代表的な顕微鏡写真を示す。数

字は画像番号を示し、白丸でシグナルを示す。スケールバーは5 µm。

(28)

HeLa

(29)

1. 6 一過的遺伝子発現系におけるレポーターコンストラクトの核内局在

(II)

HeLa細胞に、pST0/TLN−7とpLHC20/TLN−6をそれぞれエレクトロポレーション 法によって導入した。前者は対照実験用サンプル、後者はテストサンプルとして 用いた。24時間後、パラホルムアルデヒドによって固定し、FISH法によってプラ スミドの局在を可視化した。細胞核はDAPIにより染色した。z軸方向に沿って0.2 µm 間隔で 40~60 枚の写真を撮影した。図では代表的な顕微鏡写真を示す。数字 は画像番号を示し、白丸でシグナルを示す。スケールバーは5 µm。

(30)

1. 7 エレクトロポレーション後の細胞核で観察された FISHシグナルの 個数

COS-7 細胞(A、B)あるいは HeLa 細胞(C、D)に、pST0/TLN−7(A、C)と

pLHC20/TLN−6(B、D)をそれぞれエレクトロポレーション法によって導入した。

pST0/TLN−7は対照実験用サンプル、pLHC20/TLN−6はテストサンプルとして用い

た。その後、FISH法によってプラスミドの局在を可視化し、ひとつの細胞核で観 察されたシグナルの個数を数えた。nは解析した細胞の数を示す。

1 5 10 15 20 25 30

0 10 20 30 40 50 60

(n = 248)

0 10 20 30 40 50 60

1 5 10 15 20 25 30

(n = 251)

0 10 20 30 40

1 5 10 15 20 25 30

(n = 175)

0 10 20 30 40

1 5 10 15 20 25 30

(n = 171)

COS-7HeLa

A B

C D

pST0/TLN-7 pLHC20/TLN-6

(31)

1. 8 一過的に細胞核に導入されたプラスミドの局在

COS-7細胞(A、B)あるいはHeLa細胞(C、D)に導入されたpST0/TLN−7(A、

C)と pLHC20/TLN−6(B、D)の放射状核内配置をヒストグラムで示す。核の中

心からの相対距離を10等分に分割し、それに従って細胞核内の空間を層状に分割 した。その後、各層に含まれるシグナルの個数を計数した。横軸の 0 は核の中心 を、1は核膜の相対距離をそれぞれ表す。曲線はシグナルが細胞核内に均一に分布 したときに得られる理論曲線を示す。nは計数したシグナルの総数を示す。

40 30 20 10

00 0.2 0.4 0.6 0.8 1

n = 806

(%)

A

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

40 30 20 10 0

n = 813

(%)

B

COS-7

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

30

20

10

0

n = 990

(%)

C

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

30

20

10

0

n = 1277

(%)

D

HeLa

pST0/TLN-7 pLHC20/TLN-6

(32)

1.3.2. HeLa細胞のゲノムに安定的に組み込まれたレポーターの局在 レポーターがゲノムに安定的に組み込まれた細胞株(以降、“レポーター遺伝子 インテグラント細胞株”と表記する)を用いて、レポーターの核内局在を調べた。

HeLa細胞のレポーター遺伝子インテグラント細胞株として、HLB8/T20とHLB8、

HLB10/T20とHLB10、HLB13n5/T20と HLB13n5の3組6 株を実験に用いた。こ れらの細胞株はレポーター遺伝子が 1 コピーのみゲノム上に導入されているもの で、各組の前者がT20を含む細胞株、後者がT20を含まない細胞株である(図1. 9A)

[48]。Cre-loxPシステムを用いて、T20を含む細胞株からT20領域だけを欠失さ

せて T20 を含まない細胞株が作製されたため、両者においてレポーターコンスト ラクトが導入されたゲノム上の位置は同じである。これらの細胞株は、隅田によ って樹立された[48]。隅田による解析で、T20を含む細胞株(HLB8/T20、HLB10/T20、

HLB13n5/T20)において、T20がレポーターの転写を活性化できることが明らかに

されている(図1. 9B)[48]。

FISH解析の結果、すべてのレポーター遺伝子インテグラント細胞株で、ひとつ の細胞核の中にひとつのシグナルを観察することができた(図1. 10)。続いて、シ グナルの核内局在を解析した。それぞれの細胞株で、全体の 30%から 40%近くの シグナルが核内のある特定の領域に局在する傾向を示した(図1. 11A)。たとえば、

HLB8/T20 は核の中心からの相対距離が 0.7~0.8、HLB8 は 0.6~0.8、HLB10/T20

は 0.6~0.7、HLB10 は 0.7~0.8、HLB13n5/T20 は 0.8~0.9、HLB13n5 は 0.7~0.8 の位置に多くのレポーターの局在が見られた。統計学的な解析を行ったところ、

HLB8/T20とHLB8ならびにHLB10/T20とHLB10の2組では、T20を含む細胞株 とT20を含まない細胞株との間でレポーターの局在に有意差は見られなかった(図

1. 11B)。一方で、HLB13n5/T20ではHLB13n5に比べてレポーターは核膜周縁部に

局在していた(図1. 11B)。

(33)

1. 9 実験に用いた HeLa細胞のレポーター遺伝子インテグラント細胞株

(A)レポーターコンストラクトの組み込まれた位置。レポーターが挿入されたゲ ノム上の位置を矢じりで示す。隅田(参考文献48)より転載。

(B)T20によるレポーター遺伝子の転写活性化の効果。ルシフェラーゼ遺伝子の 発現レベル(+T20/−T20)は、T20を含む細胞株のルシフェラーゼ遺伝子の発現レ ベルを、T20を含まない細胞株の発現レベルで除した“fold activation”として示し た。隅田(参考文献48)より改変。

840k

850k

860k

870k

880k 830k 820k 810k 800k

chromosome 6 HLB8/T20

& HLB8

43810k

43830k

43850k 43790k 43790k 43770k

43870k

43890k 43910k

VEGFvascular endothelial growth factor

chromosome 6 HLB10/T20

& HLB10

128470k

128480k

128490k

128500k

128510k

128520k

128530k

128540k

128550k

chromosome 8 HLB13n5/T20

& HLB13n5 A

HLB13n5/T20 HLB10/T20 HLB8/T20

0 10 20

Fold activation of transcription by T20 (+T20/-T20)

B

(34)
(35)

1. 10 HeLa細胞株におけるレポーター遺伝子の局在

FISH解析によって得られたzスタック画像の一例を示す。レポーター遺伝子は赤 く染色し、白丸で示した。細胞核はDAPIで染色し、青で示した。数字は画像番号 を示す。スケールバーは5 µm。

(36)

1. 11 HeLa細胞株におけるレポーター遺伝子の放射状核内配置

FISH解析によって得られたzスタック画像(図1. 10)を用いて、レポーター遺伝 子の放射状核内配置を解析した。

(A)レポーター遺伝子の分布プロファイル。T20 を含む細胞株(HLB8/T20、 HLB10/T20、HLB13n5/T20)の分布を赤線で、T20を含まない細胞株(HLB8、HLB10、

HLB13n5)の分布を青線で示し、シグナルが細胞核内に均一に分布したときに得

られる理論曲線を灰色で示す。横軸の0は核の中心を、1は核膜の相対距離をそれ ぞれ表す。nは計数したシグナルの総数を示す。p値は、T20を含む細胞株と T20 を含まない細胞株との間でKolmogorov-Smirnov検定を行い算出した。

(B)箱ひげ図を用いた核内分布の比較。分布の特徴をより明確にするため、デー タを箱ひげ図で示した。n、p値は(A)と同じ。

(n = 51)

HLB10

(n = 50)

HLB10/T20

p = 0.235 (n = 51)

HLB8/T20

(n = 56)

HLB8 p = 0.258

(n = 59)

HLB13n5

(n = 60)

HLB13n5/T20

p = 0.003 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

B

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

HLB8/T20 ( ); n = 51

HLB8 ( ); n = 56 p = 0.258

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

HLB10/T20 ( ); n = 50

HLB10 ( ); n = 51 p = 0.235

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

HLB13n5/T20 ( ); n = 60

HLB13n5 ( ); n = 59 p = 0.003

A

(37)

1.3.3. マウス ES細胞のゲノムに安定的に組み込まれたレポーターの局在

“1.3.2. HeLa 細胞のゲノムに安定的に組み込まれたレポーターの局在”と同様 の解析を、マウスES細胞のレポーター遺伝子インテグラント細胞株を用いて行っ た。細胞は、MES32/T20とMES32、MES25/T20とMES25、MESA2/T20とMESA2、

MES7/T20とMES7の4組8株を用いた。これらの細胞株はレポーター遺伝子が1

コピーのみゲノム上に導入されているもので、各組の前者が T20 を含む細胞株、

後者がT20を含まない細胞株である(図1. 12A)[51]。HeLa細胞のレポーター遺 伝子インテグラント細胞株と同様に、T20 を含まない細胞株は Cre-loxP システム を用いて T20 を含む細胞株から作製された。これらの細胞株は、棚瀬によって樹 立された[51]。また、T20による転写活性化能もすでに調べられており、これら の細胞株では、T20は転写を活性化するもののその程度は低かった(図1. 12B)[51]。

FISH 解析を行ったところ、HeLa 細胞の場合と同様、すべてのレポーター遺伝 子インテグラント細胞株で、ひとつの細胞核の中にひとつのシグナルを観察する ことができた(図1. 13)。次に、細胞核におけるシグナルの局在部位を解析した。

MES32/T20 は MES32 に比べてレポーターが核膜にかなり近いところに局在する

傾向が見られた(図1. 15A)。MESA2/T20とMESA2では、レポーターの局在の分 布は、シグナルが核内に一様に分布する場合の理論曲線にほぼ一致した(図1. 15A)。

MES25/T20とMES25の組においても、レポーターの局在の分布はシグナルが核内

に一様に分布する場合の理論曲線に近かった(図1. 15A)。一方、MES7/T20とMES7 の組ではレポーターの局在の分布が異なり、一見、MES7においてレポーターが核 中心部側に多く局在するように見えた(図1. 15A)。しかし、統計学的な解析を行 ったところ、MES7/T20とMES7の組では局在に違いは見られなかった(図1. 15C)。

同様に統計解析を行ったところ、MESA2/T20 と MESA2 ならびに MES25/T20 と

MES25の2 組においても、T20の有無による局在の違いは見られなかった(図1.

15C)。一方、MES32/T20 は MES32 に比べてレポーターが有意に核膜付近に局在

(38)

次に、細胞分化の影響を調べるために、マウスES細胞を肝細胞に分化誘導して レポーターの核内局在を調べた。解析には、MES32/T20 と MES32、MESA2/T20 とMESA2、MES7/T20とMES7の3組6株を用いた。cytokeratin-18(CK18)を免 疫染色して染色された細胞を肝細胞に分化したと見なし、局在解析に供した(図

1. 14)。しかし、免疫染色のシグナルを目視観察ではっきりと確認できた細胞は少

なかった。このため、解析対象となったサンプル数が少なく、一見、T20を含む細 胞株と含まない細胞株との間で、レポーターの核内局在に変化が生じたような結 果が得られた(図1. 15B)。しかし、統計解析を行ったところ、3組の細胞の組合 せのすべてで、両者の間でレポーターの核内局在における違いはないことが判明

した(図1. 15C)。また、分化前後のレポーターの局在の分布プロファイルを比較

したところ、実験に用いた 6 株すべての細胞株で、分化後にレポーターの局在す る範囲が広がったことがわかった(図1. 15C)。さらに、MES7を除く5株の細胞 株でレポーターの局在が核の中心方向に近づく現象が見られた(図1. 15C)。しか し、これらの現象についてもT20の有無による差異は見られなかった。

(39)

1. 12 実験に用いたマウスES細胞のレポーター遺伝子インテグラント細 胞株

(A)レポーターコンストラクトの組み込まれた位置。レポーターが挿入されたゲ ノム上の位置を矢じりで示す。棚瀬(参考文献51)より転載。

(B)T20によるレポーター遺伝子の転写活性化の効果。GFP遺伝子の発現レベル

(+T20/−T20)は、T20を含む細胞株のGFP遺伝子の発現レベルを、T20を含まな

い細胞株の発現レベルで除した“fold activation”として示した。棚瀬(参考文献 51)より改変。

104170K 104180K 104190K 104200K 104210K 104220K 104230K 104240K 104250K 104260K

Tgfbr3

chromosome 5 MES32/T20

& MES32

147230K 147240K 147250K 147260K 147270K 147280K 147290K 147300K 147310K 147320K

Uspli

Alox5ap

chromosome 5 MES25/T20

& MES25

15250K 15260K 15270K 15280K 15290K 15300K 15310K 15320K 15330K 15340K

chromosome 13 MESA2/T20

& MESA2

127930K 127940K 127950K 127960K 127970K 127980K 127990K 128000K 128010K 128020K

Acox1

Cdk3 Evp1

Srp68 Fbf1

chromosome 11 MES7/T20

& MES7 A

Fold activation of transcription by T20 (+T20/-T20)

0 1 2 3

MES32/T20 MES25/T20

MES7/T20 MESA2/T20

0 1 2 3

MES32/T20 MESA2/T20 MES7/T20

Fold activation of transcription by T20 (+T20/-T20)

B

(40)
(41)

1. 13 マウス ES細胞におけるレポーター遺伝子の局在

FISH解析によって得られたzスタック画像の一例を示す。レポーター遺伝子は赤 く染色し、白丸で示した。細胞核はDAPIで染色し、青で示した。数字は画像番号 を示す。スケールバーは5 µm。

(42)

1. 14 肝細胞におけるレポーター遺伝子の局在

FISH解析によって得られたzスタック画像の一例を示す。レポーター遺伝子は赤 く染色し、白丸で示した。細胞核はDAPIで染色し、青で示した。肝細胞への分化 は肝細胞特異的タンパク質であるcytokeratin-18(CK18)に対する免疫染色(緑色、

写真右)により確認した。数字は画像番号を示す。スケールバーは5 µm。

(43)

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

MES32/T20 ( ); n = 40 ( ); n = 42

MES32

p = 0.024

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

( ); n = 63

MESA2/T20

( ); n = 59

MESA2

p = 0.795

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

( ); n = 57

MES7/T20

( ); n = 62

MES7

p = 0.149

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

( ); n = 63

MES25/T20

( ); n = 67

MES25

p = 0.992

A ES

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

( ); n = 32

MESA2/T20

( ); n = 33

MESA2

p = 0.409 0

10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

( ); n = 47

MES32/T20

( ); n = 20

MES32

p = 0.539

0 10 20 30 40 50

(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

( ); n = 35

MES7/T20

( ); n = 47

MES7

p = 0.529

B

(44)

1. 15 マウス ES細胞株におけるレポーター遺伝子の放射状核内配置 FISH解析によって得られたzスタック画像(図1. 13、1. 14)を用いて、レポータ ー遺伝子の放射状核内配置を解析した。

(A)マウスES細胞におけるレポーター遺伝子の分布プロファイル。

(B)肝細胞におけるレポーター遺伝子の分布プロファイル。

T20を含む細胞株(MES32/T20、MES25/T20、MESA2/T20、MES7/T20)の分布を 赤線で、T20を含まない細胞株(MES32、MES25、MESA2、MES7)の分布を青線 で示し、シグナルが細胞核内に均一に分布したときに得られる理論曲線を灰色で 示す。横軸の0は核の中心を、1は核膜の相対距離をそれぞれ表す。nは計数した シグナルの総数を示す。p値は、T20を含む細胞株とT20を含まない細胞株との間

でKolmogorov-Smirnov検定を行い算出した。

(C)箱ひげ図を用いた核内分布の比較。n、p 値は(A)、(B)と同じ。比較のた め、核の中心からの相対距離0.7の位置に赤線を引いた。

MES32

(n = 42) (n = 40)

MES32/T20

p = 0.024

(n = 67)

MES25

(n = 63)

MES25/T20

p = 0.992 (n = 59)

MESA2

(n = 63)

MESA2/T20

p = 0.795

(n = 62)

MES7

(n = 57)

MES7/T20

p = 0.149 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

(n = 20)

MES32

(n = 47)

MES32/T20

p = 0.539

(n = 33)

MESA2

(n = 32)

MESA2/T20

p = 0.409

(n = 47)

MES7

(n = 35)

MES7/T20

p = 0.529 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

C

(45)

1.4. 考察

1.4.1. ベント DNAによる転写活性化と遺伝子の核内配置の関係

本研究では、遺伝子の核内空間配置が人工ベントDNAによる転写活性化に関与 する因子であるか否かを明らかにすることを目的として、T20をプロモーターの上 流にもつレポーター遺伝子の核内局在を調べた。本研究では、細胞核内の遺伝子 の放射状核内配置を FISH 法によって調べた。FISH は個々の細胞の核内における 遺伝子の位置を可視化する手法であるが、その遺伝子の転写が起きているかどう かまではわからない。一方、T20をプロモーターの上流にもつレポーター遺伝子の 発現活性は、過去の研究においてはルシフェラーゼアッセイや定量PCR法によっ て調べられていた[48, 51]。これらの手法は、いずれも細胞集団の遺伝子発現を 調べる手法である。このように、遺伝子の核内局在は個々の細胞のレベルで解析 されており、発現活性は細胞集団のレベルで解析されているため、本来は両者の 関係を直接議論することはできない。遺伝子の核内局在と発現との関係を調べる 研究はこれまでにも多数行われてきたが、多くの場合、遺伝子発現は細胞集団の レベルで解析された[28, 30, 32]。これは、現在の技術では、単一の細胞を対象と した遺伝子の転写活性の測定が困難なためである。このような技術的な限界があ る中で、本研究では、多数の細胞核を解析対象としてFISH解析を行い、遺伝子の 局在を細胞集団の特性として扱うことで、発現活性と核内局在の関係を比較した。

一過的遺伝子発現系において、T20は細胞核内へのプラスミドの導入効率には影 響を与えなかった(図1. 7)。また、プラスミドの核内局在にも影響を与えなかっ

た(図1. 8)。したがって、一過的遺伝子発現系において、T20はレポーターコン

ストラクトの局在に影響を与える因子ではないことがわかった。すなわち、一過 的遺伝子発現系における T20 による転写活性化は、T20 をもつプラスミドの核内 局在では説明できない。

(46)

ひとつの可能性を考えることができた。一過的遺伝子発現系と安定的遺伝子発現 系とでは転写活性化の程度が異なり、一過的遺伝子発現系の方が転写活性化の程 度が大きい[47, 48, 51]。この違いは、核内におけるレポーター遺伝子の動きやす さによるものかもしれない。この考えに立てば、ゲノムDNAに取り込まれたレポ ーター遺伝子よりも、プラスミドDNA上のレポーター遺伝子の方がより自由に核 内を移動し、より高い頻度で転写ファクトリー(transcription factory)に接触でき ると考えられる[66, 67]。これが、一過的遺伝子発現系においてT20の転写活性 化の程度が大きい原因になっているのかもしれない。

レポーター遺伝子インテグラント細胞株20株、計10組を用いた解析のうち、8 組ではレポーターの核内局在にT20の有無による重要な違いは見出せなかった(図

1. 11、1. 15)。したがって、これらの細胞株の各組において、T20はレポーター遺

伝子の局在に明確な影響を与えていないと推察される。すなわち、安定的遺伝子 発現系においても T20 による転写活性化のメカニズムは、T20 をもつレポーター 遺伝子の核内局在では説明できない。HLB13n5/T20 と HLB13n5、MES32/T20 と

MES32のそれぞれの組では、T20をもつレポーター遺伝子がT20をもたないレポ

ーター遺伝子に比べて核膜周縁部に多く局在する傾向が見られた(図 1. 11B、1.

15C)。しかし、これは転写が活性化している遺伝子が細胞核の中心に近い領域に 存在するという一般的な知見とは異なる。この 4 株 2 組の結果は、ある場合にお いてはT20がそのDNA領域を核膜周縁部に移動させる可能性があることを示唆し ている。しかし、どちらの組においても T20 を含む細胞株でレポーター遺伝子の 転写活性化が起きていることから、核膜周縁部へのレポーター遺伝子の局在はT20 による遺伝子発現の活性化には影響を与えないと推察される。以上の結果から、

T20 をもつレポーター遺伝子の核内局在は T20 に誘導される遺伝子の活性化とは 無関係であると推察される。

本研究の結果は、一過的遺伝子発現系においても安定的遺伝子発現系において も、T20が転写に有利な場所へレポーター遺伝子を移動させるという作用をもたな いことを明確に示している。“1.1. 序論”で述べたように、T20による転写の活性

参照

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