第11回群馬遺伝子導入研究会
日 時:平成 18年 1月 24日 (火) 18: 00∼ 場 所:群馬大学医学部 刀城会館 代表世話人:森 昌朋 (群馬大院・医・病態制御内科学)基調講演>
遺伝子治療の実現に向けて 桑野 博行 (群馬大院・医・病態 合外科学) 1990年に世界で初めて遺伝子治療が行われ 15年が経 過した. 2005年 6月現在世界では 1076の遺伝子治療の プロトコールがあり, その 66%708例がアメリカで日本 は 10例 0.9%にすぎない. 適応は 66%が癌であり遺伝子 病 8.8%, 血管病変 8.6%と続いている. ベクターは 72% がウイルスベクターである. 遺伝子治療には人の 康な 活動に不可欠な遺伝子に変異があるために生じる単一遺 伝子病に対し変異のない遺伝子をベクターで体内に導入 して機能発現させる遺伝子補充療法や癌原遺伝子の発現 による発癌や癌抑制遺伝子 (p53など) の異常による発 癌に対し癌原遺伝子を不活化させる遺伝子, 正常な癌抑 制遺伝子をベクターで体内に導入して機能発現させた り, 患者のリンパ球に癌細胞に対する免疫を強化する遺 伝子 (GM-CSF など) を導入して体内に戻す方法などが ある. ウイルスベクターにはレトロウイルス, レンチウ イルス, アデノウイルスが主であるが, アデノウイルス ベクターに対するアナフィラキシーやレトロウイルスベ クター導入後に白血病を発症した症例が報告され, より 安全な非ウイルスベクターを用いたリポフェクション 法, エレクトロポレーション法などが注目されているが 効率の点でウイルスベクターに劣っている. 遺伝子治療 が始まって 15年. 日本ならびに世界における遺伝子治 療の現状と問題点をふまえ, 遺伝子治療実現に向けての 将来展望について 察する.一般演題>
1.生体内の樹状細胞の動員と IL-18遺伝子治療を組み 合わせた新しい癌免疫遺伝子療法の開発 齋藤 徹也,田原 秀晃 (東京大・医科研・臓器細胞工学 野) 桑野 博行 (群馬大院・医・病態 合外科学) 【背景/目的】 IL-18は NK 細胞の活性化を介して強力 な抗腫瘍免疫反応を誘導するサイトカインである. しか しながら IL-18単独では十 な全身的抗腫瘍免疫の誘 導は難しい.この問題点を解決するため,IL-18に強力な 抗原提示細胞として知られる生体内の樹状細胞を動員す る Flt3L の併用を試み, その 有 用 性 を 検 討 し た. 【方 法】 両側側腹部に腫瘍を接種した B 6マウスに生体内 エレクトロポレーション法にて Flt3L を, アデノウイル スベクターにて腫瘍内に IL-18を遺伝子導入し抗腫瘍 効果と機序を解析した. 【結 果】 併用治療群では, 治 療側のみならず非治療側の腫瘍に対しても有意な腫瘍増 殖抑制効果を認め, 所属リンパ節での腫瘍特異的 CTL 活性, NK 活性においても有意な増強が得られた. FACS 解析では併用治療群において腫瘍浸潤 NK 細胞・樹状細 胞の数の有意な増加と樹状細胞の成熟化を認めた. 【結 語】 Flt3L の併用により, IL-18による NK 細胞等の自 然免疫の増強のみならず, 樹状細胞を介した獲得 (特異 的) 免疫が誘導され, 新しい癌免疫遺伝子治療になり得 る可能性が示唆された. 2.ヒストンコードと甲状腺ホルモンによる遺伝子発現 抑制機構 梅澤 良平(群馬大院・医・病態制御内科) 遺伝子発現には, 遺伝子の一次的配列に加えてクロマ チン構造の変化が重要な役割を果たしている. 近年, そ の機構としてクロマチンの基本骨格であるヒストンの特 異的アミノ酸残基が修飾を受け, その組み合わせにより クロマチン構造が変化していることが明らかとなりつつ ある. (ヒストンコード説). そこで今回, 我々は TRH 遺 255 Kitakanto Med J 2006;56:255∼256伝子のプロモーター近傍のヒストンの特異的アミノ酸の アセチル化およびメチル化の状態を経時的に検討した. さらに, それぞれの遺伝子制御における役割を検討した. その結果, TRH 遺伝子発現もヒストンの特定のリジン 残基のアセチル化とメチル化の状態が複雑に変化し制御 されていることが示唆された. 今後, このようなヒスト ンコードを制御することによる治療薬の開発が期待され る. 3.非小細胞肺がんにおける EGFR 遺伝子変異と臨床病 理学的因子の検討 中野 哲宏,大谷 嘉己,清水 裕 森下 靖雄 (群馬大院・医・臓器病態外科学) 【目 的】 非小細胞肺癌 (NSCLC) の EGFR 遺伝子の 変異を解析し, その頻度や臨床病理学的因子との相関に ついて検討した. 【方 法】 NSCLC (腺癌 ; 55例, 扁 平上皮癌 ; 25例) の癌部, 正常肺の凍結組織よりゲノム DNA を抽出し, EGFR 遺伝子のエクソン 18, 19, 20, 21 領域について遺伝子変異の有無を解析し, 臨床病理学的 データと比較検討した. 【結 果】 NSCLC 80例中 25 例 (30%) に変異を認めた. 組織型別では, 腺癌 55例中 24例 (43%), 扁平上皮癌 25例中 1例 (4%) に変異を認 めた. 多変量解析の結果, 臨床病理学的因子で変異と有 意な相関を認めたのは, 喫煙歴および組織型であった. ( 察) 喫煙歴を有さない肺癌症例, 特に女性, 腺癌症例 においては,高頻度に EGFR 遺伝子変異を有することが かった. 第11回群馬遺伝子導入研究会 256