Title
ニセアカシア内樹皮レクチンタンパク質と遺伝子の特性解
明( 内容の要旨 )
Author(s)
吉田, 和正
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 乙第072号
Issue Date
2003-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2317
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本掴)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 会 吉 田 和 正 (茨城県) 博士(農学) 農博乙第72号 平成15年3月13日 学位規.則第4条第2項該当 ニセアカシア内樹皮レクチンタンパク質と遺伝子の 特性解明 主査 岐阜大学 教 授 副査 信州大学 教・授 副査 静岡大学 教 授 副査 岐阜大学 助教授 雄 彦′昭 吾 英守友美 橋本 田 合 大徳 西 河 論 文 の 内 容 の 要 旨 赤血球を凝集するタンパク質が生物界に存在することが報告され、これをレクチンと称 することになった。レクチンタンパク質は特定の構造の糖や糖鎖を認識でき、これらと可
逆的に碍合する。その後、このタンパク質は広範な生物から見いだされ、知見の集積が進
んだが、木本植物、樹木におけるこのタンパク質の特性や、これをコードする遺伝子の特 性は依然と.して不明のままであったので、これらの特性を解明することを目的に、マメ科 樹木のニセアカシア(血坤血ザ削`あαCαdα)を材料に選んで研究を開始した。 第1章においてはニセアカシアの内樹皮からレクチンを得ることから研究を始めた。内 樹皮からレクチンを単臥精製してその性質を魂べた。レクチン分子は29kDaのサブユ ニット4個から構成されており、ウサギの赤血球を凝集することが判明した。また、このタンパク喪は凝集反応においてルアセテル_β_ガラクトサミンによって最も阻害されたの
で、これをルアセテルガラクトサミン結合型レクチンと分類した。 続いて、抗レクチン抗体を用いてニセアカシアの内樹皮cDNAライブラリーをスクリー ニングしてレクチンをコードするcDNAクローン(RBLlO4)を得た。このRBLlO4は2$6の アミノ酸からなるポリペプチドをコードしている、また、これと内樹皮レクチンのN末端 アミノ酸配列との比較から、このN末端側31残基はシグナルペプチドであると推定した。 また、RBLlO4の塩基配列から考えられるアミノ酸配列は他の科に由来するレクチンとは 違っていたが、木材料と同じマメ科に属する別の植物に由来するレクチン類とは40-る0% の相同性を示したので、ニセアカシアの内樹皮レクチンは当初の分類学による予想通り、 マメ科レクチンファミリーに帰属できることを確認した。 また、ニセアカシアにおけるレクチンの存在様相を蛍光抗体法で調べたところ、内樹皮では柔細胞だけに局在し、■繭管、靭皮繊維、コルク形成層、コルク皮層には存在しないこ
とを明らかにした。木部では柔細胞にその存在を確認した。しかし、木部における柔細胞の存在数は小さいので、ここセのレクチン量は内樹皮に比づて少ないと考えた。
さろ▼に、内樹皮のレクチンの年変動について調べた。レクチンmRNAは寧月に認めら
れるようになり・、その状態は翌3月まで続くが、4月から7月にかけては確認できなかっ た。以上のことなどから、レクチン遺伝子の発現とレクチンの蓄積は季節変動している、内樹鍵のレクチン生合成は転写段階で制御されていると考察した。また、このタンパク質
は葉が老化して落葉する秋に蓄積され、.'以後、冬期を通して保有しつづけ、新芽が展開す る5月には認められなくなることから、ニセアカシアは落葉前に棄却からラミノ酸やタンパク質を回鱒し、レクチンに組換えて枝鱒や幹部の内樹皮に蓄え、翌春の芽吹きの隙に必
要なタンパク質合成に備えていると推定した。 第2章ではニセアカシア内樹皮でレクチン遺伝子発現の制御機掛こついて調べた。まず、 この遺伝子のクローニングを行った。R8LlO4をプローブとしてニセアカシア・ゲノミックD恥ライブラリーをスクリーニングしたところ、R凱104をコードする遺伝子他壷ぐ2)
を含む3つの遺伝子(付加∫、和良c∂)を得た。 次に、上記3遺伝子の発現特性について調べた○各遺伝子の器官別と月別の発現様式は 違っていた。遺伝子卑おぐ2は内樹皮では夏から翌春にかけて発現した○桝c∫の・mRNA は内樹皮、種子および根で認められ、内樹皮では5月を除いて通年確認できた。勾血引ま どの器官においても年間を通して発現しなかった○内樹皮レクチンの役割の一つとして冬 期の窒素貯蔵が示唆されているが、上記の結果によると、ニセアカシアの内樹皮ではこの 役割に係わる度合いが発現したレクチン遺伝子によって違うと考察した。 第3章ではニセアカシアの内樹皮レクチン遺伝子プロモーターの特性について調べた。 内樹皮で主に発喝している遺伝子郎ねc2の5-上流領域が、他の植物の師部において特異 的に遺伝子発現する否かを調べるため、5・上涜領域(転写開始点を基準として-793からセ6bp)にレポ一夕一連伝子(00S遺伝子)を結合した融合遺伝子を作製し、タバコに導入
した。得られた組換えタバコでのGUS遺伝子の発矧ま茎、葉柄および根の師部と、師師こ隣
接する皮層と髄の柔細胞および一部の木部柔細胞で認められたが、他の組織では確認でき なかったpこのことから、勾壷dの5・上涜領域はタバコにおいて遺伝子を主に師部で発現 させるプロモーターとして機能していることが判明した。また、やねc2プロモーター中に は、これまでに報告されている師部での発現に関わっている囁基配列(モチーフ)のうち、 GATAモチーフ、ボックス32および13 bpモチーフに該当する配列が存在することを明 らかにした。 次に、和良c2プロモ⊥ターを5側-637bpまでを削り取ると、髄の柔細胞でも発現した。 このことから、一793∼一637bpの領域に表皮での遺伝子発現を、また、-637∼346.bpの領域 には髄の柔細胞での遺伝子発現を抑制する配列がそれ卓れ存在すると考察した。しかし、 ここまでの検討では上述の3種類のモチーフが勾壷dアワ章一タ一において師部での発 現に関わっているか否かを明らかにできなかった。ー133-審 査 結 果 の 要 旨 平成15年1月24月,岐阜大学において口頭による公開論文発表の後,審査員「同は本論文を 審査した。 レクチンと称し属定の構造の糖や嘩鎖を認識し,これらと可逆的に結合するタンパク質を生 物界から得たと報告されて以来,これに関する知見集積が進んでいますが,木本植物におけるこ のタンパク質の特性やこれをコードする遺伝子の特性などは不明のままの状態が続いていた。 そこで・申請者はこうした特性を解明するためにマメ科樹木のニセアカシア(凡元血南 ク∫占〟ゐded血ノを材料として研究を行らた。 第l章ではまずニセアカシア内樹皮からレクチンを得てその性質を調べた。この分子は 29kDaのサブユニット4個からなることや,ウサギめ赤血球を凝集することを示した。また,こ のレクチンは凝集反応においてルナセテル』-ガラクトサミンによって強く阻害されたのでル アセテルガラクトサミン結合型レクチンセあると分類した。 次に,抗レクチン抗体を用いてニセアカシテの内樹皮cDNAライブラリーをスクリーニング し,レクチンをコードするcDNAクローン(RBL104)を得た。これが286ゐアミノ酸よりなるポ リペプチドをコードしていること,また,内樹皮レクチンのN末囁アミノ酸配列との比較から,こ のN末端側31残基がシグナルペプチドであることなどを推定した。さらに,.RBL104の塩基配 列から考えられるアミノ酸配列は他科の植物レクチンのそれとは違うが,試料と同じマメ科の別 植物のレクチン類とは4MO%の相同性があったことから,ニセアカシアのレクチンをマメ科レ クチンファミリーに帰属できるとした。 ニセアカシア内でのレクチン存在様相を蛍光抗体法で調べ,内樹皮では柔細胞だけに存在し, 師管,靭皮繊維,コルク形成層,コルク皮層には存在しないことを確かめた。木部でも柔細胞だけ に局在することを確認した。 また,内樹皮レクチンの年変動を調べた。レクチン血は畠月に確認できるようになり,そ れは翌3月まで続いたが,4月から7月までは確認できなかった。このことなどから,レクチン 遺伝子発現とレクチン蓄積は季節変動している,内樹皮でのレクチン生合成は転写段階で制御さ れているなどと考察した。さらに,このタンパク質は葉が落葉する秋に蓄積され,冬中保有され ているが,新芽が展開する5月には消失することから,ニセアカシテは落葉前にアミノ酸やタン パク質を真部から回収し,枝や幹の内樹皮部にレクチンとして蓄え,翌春の芽一吹き時に必要なタ ンパク賢台成に徳えていると考察した。 第2章ではニセアカシアの内樹皮内でのレクチン遺伝子発現制御機鱒について調べた。まず, 遺伝子甲クローニングをした。RBL104をプローブとしてニセアカシア・ゲノミツクDNÅラ イブラリーをスクリーニングし,RBい04をコードする遺伝子(勾,ねc2)を含む3個の遺伝子 (みJecエ卑/ecのを得た。 上記3遺伝子の発現特性も調べた。各遺伝子の発現様式は器官や月によって違っていた。遺 伝子」軸ねc2は内樹皮で夏から翌春にかけて発現した。卑Jec∫のmRNAは内樹皮,種子および根 で認められ,内樹皮では5月以外の年間を通して確認できた。付加古はどの器官でも発現しなか った。内樹皮レクチンには冬期の窒素貯蔵形態の一つであると指摘されているが,この結果から, ニセナカシア内樹皮で発現するレクチン遺伝子の種類によってこのような機能に係わる轟度が 違うと考察した。 第3章ではニセアカシアの内樹皮レクチン遺伝子ブロモーターの特性について調べた。内樹
皮で発現している遺伝子卑/ec2の5●上流領域が他の埴物の師部において遺伝子発現するか否か を調べるため,5・上流領域(転写開始点を基準として-793から+26bp)にレポ一夕一連伝子(GUS 遺伝子)を結合した融合遺伝子を作製してタバコに導入した。 組換えタバコでのGUS遺伝子の発現は茎,嚢柄と根の師部、師部に隣接する皮層,髄の柔細胞 および一部の木部柔細胞で認められたが他では認められなかった。このことから卑Jec2の5・ 上流領域はタバコにおいて遺伝子を主に師部で発現させるプロモーターとして機能しているこ とを示した。付加ファロモーター中には既に報告されている師部での発現に関わっている塩基 配列(モチーフ)`のうち,GATAモチーフ,ボックス32j3よLび13bpモチーフに該当する配列が 存在することも明らかにした。 卑Jec2プロモーターを5-側一637bpまでを削る取った時には髄の柔細胞でも発現した。このこ とから一793∼-637bp領域に表皮で,また,づ37∼-346 bp領域に鹿の柔細胞でゐ遺伝子発現を抑制す る配列が存在すると考察した。 以上について,審査員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文として十 分に価値のあるものと認めた。 学位論文の基礎となる学術論文 l)K.Yoshida,K.Baba,N.YamamotoandK.Tazaki:ClムningofalectincDNAandseasonal ChangeSinlevelsofthelectinanditsmRNAintheinnerbarkofRobiniapsezLゐacacia・PLant 肋如〟血rβfoわ紗,25:S45-S53(1994).