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日本内科学会雑誌第104巻第6号

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Academic year: 2021

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はじめに

 人口の急激な高齢化などにより,本邦でも高 齢者喘息や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstruc-tive pulmonary disease:COPD)が増加しつつあ り,喘息,COPDともに約500~600万人の患者 数が推定されている.両疾患はいずれも気道炎 症を基本病態とするが,炎症の性質が異なり, ステロイド薬に対する反応性の違いなどからも 異なる疾患と考えられている.しかし,両疾患 の臨床症状には類似点も多く,喫煙歴を持つ高 齢患者の場合,喘息とCOPDの鑑別は難しい. COPDはタバコ煙を主とする有害物質を長期に 吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であ る.呼吸機能検査で正常に復すことのない気流 閉塞を示し,その気流閉塞は末梢気道病変と気 腫性病変が様々な割合で複合的に作用すること により起こり,通常は進行性である.臨床症状 としては,徐々に生じる労作時の呼吸困難や慢 性の咳,痰を特徴とするが,これらの症状に乏 しいこともある1).一方,喘息は気道の慢性炎 症,可逆性のある種々の程度の気道狭窄と気道 過敏性,そして,臨床的にはくり返し起こる咳, 喘鳴,呼吸困難で特徴付けられる閉塞性呼吸器 疾患であり,気道狭窄は,自然に,あるいは治 療により可逆性を示す.また,気道過敏性亢進 も重要な因子である2).COPDでは好中球性炎症 が,喘息では好酸球性炎症が主体であり,両者

気管支喘息―COPDオーバー

ラップ症候群(ACOS)

要 旨 浅井 一久1) 渡辺 徹也1) 栩野 吉弘1)2) 鴨井 博1)3) 平田 一人1)  喘息―COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の頻度は,慢性閉塞性肺 疾患(COPD)患者の 20~50%程度にみられる.ACOSの喘息がコント ロール不良で喘息発作を繰り返す場合,呼吸機能の悪化が早く,予後不良 となる.禁煙,気管支拡張剤を中心とする薬物治療に加えて,吸入ステロ イド薬(inhaled corticosteroid:ICS)を基本薬として長時間作用性気管 支拡張薬の併用が有用である.本稿では,ACOSの病態や治療方法につき 述べる. 〔日内会誌 104:1082~1088,2015〕

Key words 気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD),気管支喘息―COPDオーバーラップ症候群(ACOS)

1)大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器内科学,2)同 総合医学教育学,3)同 運動生体医学

Improvement of Awareness and Diagnosis for Chronic Obstructive Pulmonary Disease(COPD)by General Physician. Topics:III. Pathogenesis and Treatment of COPD;2. Asthma―COPD overlap syndrome(ACOS).

Kazuhisa Asai1), Tetsuya Watanabe1), Yoshihiro Tochino1)2), Hiroshi Kamoi1)3) and Kazuto Hirata1)1)Department of Respiratory Medicine,

Grad-uate School of Medicine, Osaka City University, Japan, 2)Department of Medical Education and General Practice, Graduate School of Medicine,

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の炎症機序に差異がある.また,表 1に示すよ うに,臨床的背景にも差異を認める.  さらには,喘息,COPD両者が合併していると 考えられる症例も少なくなく,難治性喘息の 1 つの寄与因子にCOPD合併が報告されており,逆 に喘息合併のCOPDは予後が悪いことも知られ ている.従来,両疾患の合併例はCOPD合併喘 息,asthmatic componentのあるCOPD,オーバー ラップ症候群などと呼ばれていたが,2014 年, COPDの国際委員会であるThe Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD) と,気管支喘息の国際委員会であるThe Global Initiative for Asthma(GINA)の合同コメントと して,Diagnosis of Disease of Chronic Airflow Limitation:Asthma-COPD Overlap Syndrome (ACOS)が出され,「喘息―COPDオーバーラップ 症候群(ACOS)」の名称に統一された3)

1.ACOSの疫学

 ACOSの臨床的特徴は,「喘息に関連して通常 見られるいくつかの所見とCOPDに関連して通 常見られるいくつかの所見を示す持続性の気流 閉 塞 を 特 徴 と す る. そ の た めACOSは 喘 息 と COPDの両方に見られる特徴を有することで診 断される」と記載された通りである.COPDは, 通常 40 歳以上の成人においてみられる疾患で あり,40歳以上の慢性の気流閉塞を示す喘息と COPDを区別するのは難しくなり,特に高齢喫 煙 者 で は 喘 息 とCOPDの 区 別 は 困 難 で あ る. COPDにおけるACOSの有病率については 20~ 50%の報告があり(図 1)4),加齢に伴い増加す ると考えられる.本邦においては,喘息サイド から見れば,2005年の厚生労働省「気管支喘息 の有病率・罹患率およびQOLに関する全年齢階 級別全国調査」において,65歳以上の高齢者端 息で 24.7%がCOPD合併喘息であると報告され ている.2008年に行われたインターネットによ る高齢者喘息の実態調査では,65歳以上の高齢 者喘息の 48.4%にCOPD(肺気腫・慢性気管支 炎)が併存していると報告されている5).一方, COPDサイドから見れば,2000 年の厚生労働省 「呼吸不全調査研究班」の全国疫学調査では, 3,214 例のCOPD患者のうち 838 例(26.1%)が 喘息合併COPDであると報告されている.我々の 検討でも,65歳以上の高齢者喘息109例におけ るCOPDの合併は33例(30.3%)で,逆にCOPD 症例188例の喘息合併は43例(22.9%)であっ た. 表1 喘息とCOPDの臨床像の相違 臨床像 気管支喘息 COPD 喫煙歴 可能性あり ほとんど全て 若年発症 あり 稀 慢性湿性咳嗽 ± ++ 息切れ 変化あり 常時,体動時増悪 夜間症状 あり 稀 日内変動,週内変動 あり 稀 合併症 アレルギー性鼻炎アレルギー アトピー性皮膚炎 心疾患 肺癌 骨粗鬆症 うつ病 図1 高齢者閉塞性換気障害におけるオーバーラップ 症候群の割合

Gibson PG, et al. Thorax 2009;64:728-735.

70 60 50 40 30 20 10 0 40-49 50-59 60-69 70-79 >80 年齢 男性 女性 オ ー バ ー ラ ッ プ 症候群 の 頻度 (%)

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2.ACOSの臨床的特徴

 ACOSは,喘息とCOPDの両者の合併であり, 病理的側面も疫学的側面も両者の特徴を兼ね備 え る.表 26)に 喘 息,COPD,ACOSの 特 徴 を 示 す.COPDを発症する40歳以降にACOSはみられ るが,持続性の気流閉塞に加えて,発作性の気 流閉塞の悪化を認め,気流閉塞は完全に正常に 復さないため,ACOSは喘息やCOPD単独に比較 してQOL(quality of life)がより低い.さらに, 増悪がより多く,ACOSではCOPDに比較して, 頻回に増悪する比率が 2 倍,重症の増悪も 2 倍 近くみられる(図 2)7).また,コントロール不 良で喘息発作を有するACOSでは,喘息コント ロール良好なACOSやCOPD単独に比べて,呼吸 機能の経年的低下が有意に速いことが知られて いる(図 3)8).そのため,ACOSは,死亡率がよ り高く,経済的損出がより高いことが知られて おり,適正な診断・治療が求められる.

3.ACOSの診断

 表 33)にACOSの診断・治療のための「慢性気 流閉塞を示す疾患への症候群的アプローチ」を 示す.Step1~Step5 に従い,まず慢性気道疾患 の存在を確認し,喘息,COPD,ACOSとして症 候群的に分類し,スパイロメトリーにより確定 し,初期治療を施し,必要ならば専門医に紹介 表2 喘息,COPDとACOSの通常みられる特徴 特徴 喘息 COPD ACOS 発症年齢 通常小児期に発症するが,どの年齢でも見られる 通常40歳以上 通常40歳以上であるが,小児期や若い時に症状がある 場合もある 呼吸器症状のパターン 症状は変化する(日内や長期間 で),しばしば活動制限がある.し ばしば運動,感情,ほこりやアレ ルゲン曝露がトリガーとなる. 慢性で通常持続的な症状, 特に運動時に見られるが, 調子の良い日と悪い日も見 られる. 労作時呼吸困難などの呼吸 器症状は持続的であるが, 日内変動なども顕著である. 肺機能 現在も and/or 過去に可逆性の気流閉塞がある., e. g. BD可逆性,気 道過敏性 FEV1は治療で改善するが, post-BDFEV1/FVC<0.7であ る. 気流閉塞は十分に可逆的で はないが,現在または過去 にしばしば可逆的である. 寛解時の肺機能 症状がなければ正常かもしれない 持続的な気流閉塞 持続的な気流閉塞 既往歴や家族歴 多くの患者がアレルゲンに感作されており,小児喘息の既往や喘息 の家族歴を有する. 有害な粒子やガスの曝露歴 (多くの場合は喫煙やバイ オマス曝露)がある. しばしば〈現在または過去 に〉医師が喘息,と診断し た現病歴,アレルゲン感作, 喘息の家族歴がある.かつ/ または有害物質の曝露歴が ある. 時系列経過 しばしば自然または治療により改善するが,結果として固定性の気 流閉塞をきたす場合もある. 一般的に,治療にもかかわ らず,ゆっくりと年単位で 進行する. 治療により症状は部分的で はあるが有意に改善する. 進行は通常見られ,治療の 必要性は高い. 胸部X線 通常正常 重度な肺過膨張所見や他のCOPDの所見 COPDと同様 増悪 増悪はあるが,治療により増悪リスクがかなり改善される. 増悪は治療により軽減できる.併存症があれば,障害 をおこしやすくなる. 増悪はCOPDよりさらに起 こしやすいが,治療により 低下できる.併存症は障害 を起こしやすくする. 典型的な気道炎症 好酸球 and/or 好中球 喀痰中好中球,気道でのリンパ球があり,全身性炎症 を示すかもしれない 喀痰中の好酸球 and/or 好 中球

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するという段階的なアプローチが推奨されてい る.  Step1 として,慢性気道疾患の有無を評価す る必要がある.臨床症状としては,慢性的また はくり返される咳や痰,息切れや喘鳴,くり返 される急性下気道感染症などがある.喫煙歴や 大気汚染や職業的に有害な粒子やガスへの曝露 歴などの確認も必要である.身体所見として は,時に正常である場合もあるが,慢性気道疾 患の特徴である肺過膨張所見や喘鳴やラ音など の異常な聴診所見もみられる場合がある.画像 診断としては,胸部X線写真や胸部CTでは,肺 過膨張所見,気道壁肥厚,エアートラッピング, ブラや気腫病変などが認められ,気管支拡張 図3 喘息を合併したCOPDの肺機能予後

Silva GE, et al:Chest 2004;126:59-65

1 0.9 0.8 0.7 時間経過 0 5 10 15 20 発作のある喘息 (年) 呼吸機能が正常 に 維持され て い る割合 喘息なし 発作のない喘息 図2 COPDとオーバーラップ症候群における増悪の比較

COPD Gene studyのGOLD stage 2以上の1059名.医師により喘息合併なしと診断された 796例と合併ありと診断された119例を解析.

Hardin et al. Respiratory Research 2011, 12:127

COPD 18% COPD and Asthma 42.7%* 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 Frequent Exacerbations Percentage of Subjects COPD 17.6% COPD and Asthma 32.8%* 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 Severe Exacerbations Percentage of Subjects

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表3 慢性気流閉塞を示す疾患への症候群的アプローチ 慢性気道疾患の診断 慢性気道疾患を示す症状がありますか はい STEP 1 STEP 3 STEP 4 STEP 5 成人における症候群的診断 患者の状態を最も表す喘息および COPD の特徴をチェックしなさい チェックされた個数を比べて,診断を選びなさい STEP 2 いいえ まず,他疾患を考慮する 特徴 喘息 COPD 発症年齢 □20 歳以前 □40 歳以上 □分,時間,1 日単位での変化 □夜間や早朝の悪化 □運動,大笑いなどの感情,ホコリやアレ  ルゲン曝露が引き金となる □治療にも関わらず症状が持続 □よい日も悪い日もあるが,いつも日常的  に症状があり,労作時呼吸困難がある □引き金に関係なく,慢性の咳・痰が続く 肺機能 □気流閉塞の変動がみられる  (スパイロメトリー,ピークフロー) □持続的気流閉塞がみられる (気管支拡張薬使用後の1秒率 70% 未満) 寛解時の肺機能 □正常 □異常 □前医が喘息と診断 □喘息やアレルギー疾患の家族歴  (アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎) □前医が COPD,慢性気管支炎,肺気腫と  診断 □タバコ煙やバイオマス燃料などリスク因子  への過度の曝露 □症状の経年悪化はない.季節や年により  変化がある □自然に,または気管支拡張薬に即効的に,  ICS に週単位で改善する □症状は徐々に悪化する  (年単位で悪化する) □即効性の気管支拡張薬の救済効果は限定的 胸部レントゲン写真 □正常 □重度な過膨張所見 診断 喘息 喘息の特徴が ある ある両方の特徴が COPD の特徴がある 確定診断 喘息 たぶん喘息 ACOS の可能性 たぶん COPD COPD COPD 3 項目以上の所見があれば,喘息か COPDと診断できる.喘息とCOPD が同点数であれば,ACOS の診断を考慮する 症状のパターン 既往歴や家族歴 時系列変化 著明な可逆性気流閉塞 (気管支拡張剤前後) もしくは,他の気流閉塞の変動の証拠 気管支拡張剤使用後の 1 秒率 70% 未満 スパイロメトリー 初期治療* 専門医へのコン サルト 喘息治療薬 LABA なし 単剤治療 喘息治療薬 LABA なし 単剤治療 ICS と LABA +/or LAMA 考慮 COPD 治療薬 COPD 治療薬 *GINA と GOLD ガイドラインを参考にする ・治療にもかかわらず,症状が持続する場合や増悪する場合 ・診断が確定しない場合(例えば,肺高血圧症,心血管疾患や他の呼吸器症状の原因を疑う場合) ・喘息や COPD が考えられるが,非典型的や追加の症状や徴候がある場合(例えば,血痰,体重 減少,寝汗,発熱,気管支拡張症の所見や他の肺疾患が考えられる場合) ・喘息や COPD の所見が乏しい場合 ・併存症がある場合 ・GINA,GOLD ガイドラインに基づいた診断が必要な場合

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症,肺結核などの肺感染症,間質性肺炎,心不 全などの鑑別診断も行う.GINAやGOLDで示さ れている種々のスクリーニングのための質問票 を用いるのも有用である.  Step2として,喘息,COPD,ACOSの症候群的 診断を行う.発症年齢,症状(特に発症時の症 状と進行性,可逆性,季節性か通年性か),既往 歴,喫煙を含む社会的・職業的リスク,以前に ついた診断や治療内容と治療に対する反応性な どに関する注意深い問診により,典型的な喘息 やCOPDの診断プロファイルが集積される.喘息 とCOPDの全ての特徴がリストに挙げられてい るわけではないが,これにより典型的な喘息と COPDが区別可能である.次に喘息とCOPDの典 型的な所見の数を数えて,3 項目以上の陽性所 見があれば,喘息あるいはCOPDであると診断が できる.これらの所見がないからといって他の 疾患を除外はできない.例えば,アレルギー疾 患の既往があれば,喘息による呼吸器症状の可 能性が増加するが,喘息には非アレルギー性も あるので診断に必須項目ではない.アトピーは 全人口にみられ,その後COPDを発症する患者に も存在する.喘息とCOPDの両方の所見が同程度 みられる患者ではACOSの診断が考えられる.  Step3 として,スパイロメトリー(肺機能検 査)が施行される.スパイロメトリーは,慢性 気道疾患を疑う患者の評価には必須である.初 診時または再診時に,可能であれば気管支拡張 薬治療前後で行うべきである.スパイロメト リーにより気管支拡張薬吸入後の1秒率70%未 満により,COPDと診断できるが,固定性の気流 閉塞を示す喘息やACOSは否定できない.また, 逆に気管支拡張薬に反応を示す場合は,気管支 喘息と診断できるが,可逆性の大きいCOPDや ACOSは否定できない.ピークフローメーターは スパイロメトリーの代用にはならないが,1~2 週間くり返して測定して著明な変動がある場 合,喘息の診断が確定的になる.また,スパイ ロメトリーでの著明な可逆性所見(気管支拡張 薬によるFEV1 の改善が 12%以上かつ 400 ml以 上)は,COPD単独では通常みられず,喘息や ACOSの可能性が高くなる.

4.ACOSの治療

 Step4 として,症候群的診断,スパイロメト リーの結果から,喘息,COPD,ACOSの診断に 基づき,初期治療を開始する.表 3に示すよう に,ACOSと 診 断 さ れ れ ば 吸 入 ス テ ロ イ ド 薬 (inhaled corticosteroid:ICS)の治療から開始す る.ICS は喘息死を予防し,中等度から重症の COPD患者に比べて軽度な症状のように見える コントロール不良の喘息症状を示す患者の死亡 も予防する.喘息かACOSと症候群的に診断する か,COPDの診断に確信がなければ,確定診断さ れるまで喘息の治療を開始する.まず,ICS(少 量または中等量を症状に応じて使用する)によ る治療を行い,長時間作用性β2 刺激薬(long acting β2 agonist:LABA)は以前使用されてい れば継続し,追加してもよい.最も重要なこと は,喘息の特徴があるならばICSを使用せずに LABAのみによる治療(LABA単独治療)をしな いことである.一方,COPDと症候群的に診断さ れれば,症状に応じ適切な気管支拡張薬(長時 間 作 用 性 抗 コ リ ン 薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA)やLABA)やLAMA/LABAコ ンビネーション治療を行い,ICS単独治療は行わ ないことが重要である.  このように,ACOSの薬物療法の基本はICSと 長時間作用性気管支拡張薬の併用である.気管 支喘息治療の基本薬であるICSの効果は高齢者 端息でも同様であることが示されている.長時 間作用性気管支拡張薬には,LAMA,LABA,経 口テオフィリン薬があり,自覚症状や作用と副 作用に留意して,単剤もしくは多剤併用が行わ れる.それぞれの薬剤の作用機序は異なるが, 自覚症状,運動能力,QOLの改善効果ばかりで なく増悪の予防効果も示されている.また,

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ACOSでは,禁煙や呼吸リハビリテーション,ワ クチン療法,さらには,GINAやGOLDで指摘さ れている併存症の治療も行うべきである.  Step5 として,ACOSの専門医へのコンサルト (紹介)が必要な場合がある.ACOSの診断や治 療は,当初プライマリ・ケア医によってなされ るが,ACOSは喘息やCOPD単独より予後が悪い ため,以下に示すような場合は,確定診断のた め専門医への紹介が推奨される.専門医への紹 介としては,治療にも関わらず,症状が持続す る場合や増悪する場合,診断が確定しない場合 (例えば,肺高血圧症や心血管疾患,他の呼吸器 症状の原因を疑う場合),喘息やCOPDが考えら れるが,非典型的や追加の症状や徴候がある場 合(例えば,血痰,体重減少,寝汗,発熱,気 管支拡張症の所見)や他の肺疾患が考えられる 場合,喘息やCOPDの所見が乏しい場合,併存症 がある場合,GINA,GOLDガイドラインに基づ いた診断が必要な場合などが指摘されている.

まとめ

 本稿では,ACOSの頻度や特徴,予後などにつ いて述べ,2014 年に発表されたACOSガイドラ インに基づき,ACOSの診断やICSを中心とする ACOSの治療について概説した.今回発表された 段階・症候群的アプローチが今後,実際に使用 され,有用性や問題点が検討され,本邦におい ても,独自のガイドラインが作成されると思わ れる.高齢者喘息やCOPDの診療で,ACOSに関 する臨床的基礎的な検討はまだまだ少なく,今 回のガイドライン発表を契機にACOSの病態や バイオマーカーの検討が進展することが期待さ れる. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:平田一人;講演 料(アステラス製薬,アストラゼネカ,杏林製薬,グラ クソ・スミスクライン,第一三共,日本ベーリンガーイ ンゲルハイム,ノバルティスファーマ),研究費・助成 金(MSD,グラクソ・スミスクライン,杏林製薬),寄 附金(アステラス製薬,日本ベーリンガーインゲルハイ ム) 文 献 1) 日本呼吸器学会COPDガイドライン第 4 版作成委員会編:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドラ イン.日本呼吸器学会,東京,2013. 2) 日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会 監修:喘息予防・管理ガイドライン 2012.協和企画,2012. 3) Global Initiative for asthma : Global strategy for asthma management and prevention(GINA)Revised 2014 http://

www.ginasthma.org/

4) Gibson PG, et al : The overlap syndrome of asthma and COPD : what are its features and how important is it? Thorax 64 : 728―735, 2009.

5) 足立 満,他:本邦における高齢者喘息の現況と課題.アレルギー・免疫 16 : 248―259, 2009.

6) 平田一人,他:ACOS(asthma-COPD overlap syndrome)と吸入ステロイド療法.アレルギーの臨床 34 : 949― 953, 2014.

7) Hardin M, et al : The clinical features of the overlap between COPD and asthma. Respir Res 12 : 127, 2011. 8) Silva GE, et al : Asthma as a risk factor for COPD in a longitudinal study. Chest 126 : 59―65, 2004.  

参照

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