砂子沢ダムゼロエミッションの対応について
鹿島建設㈱ ○正会員 伊藤 健人 鹿島建設㈱ 正会員 近藤 正芳 1. はじめに
砂子沢ダム本体工事は、秋田県鹿角郡小坂町を流れる米代川水系小坂川(支川砂子沢川)に建設する堤体積 28.3 万 m3、堤高 78.5m、堤長 185mの重力式コンクリートダムである。砂子沢ダムでは当現場の環境保全活 動としてゼロエミッション活動の推進に取り組んでいる。湛水池内の伐木チップ材は堆肥化し法面保護工の植 生基盤材や跡地整備工の土壌改良材として有効利用している。また濁水処理プラントの脱水ケーキやコンクリ ート打継処理で発生するグリーンカットズリ、仮設設備基礎コンクリート、基礎岩盤保護用モルタル、コンク リート試験供試体は破砕して場内仮設道路や盛土材として利用している。本報文では、これまでの施工実績に ついて報告する。
2. 処理方法 2−1 伐木処理
本現場で発生する木材(伐木材、枝葉、伐根、型枠材)はリサイクル基本方針に基づき有効利用を図ること とした。伐木材のうち有価材となるものは造材・集積し、スギ・カラマツ等の針葉樹は用材(構造材)として、
その他の広葉樹はパルプ材として売却をした。有価材として処理できない伐根・枝葉等については図−1のよ うに現場内でチップ化し、緑化基盤材および跡地整備工において覆土と混合し土壌改良材として有効利用する。
砂子沢ダム本体工事 現場発生木材処理フロー
・植生基材吹付
・一次破砕工
・二次破砕工
・木材チップ整形工
・覆土に混合 型枠材他 積込ヤード
(各現場)
原石山・土捨場等 錠地区集積ヤード
錠地区破砕ヤード
錠地区堆肥化ヤード ダムサイト・原石山等 ダムサイト
湛水地 伐木・集積
造 材
造 材 幹
針葉樹
広葉樹
積 込
積 込 パルプ材
用材
運 搬
運 搬
枝葉
積 込 運 搬
ダムサイト
(堤体掘削部) 伐 根 伐根 積 込 運 搬
原石山 骨材プラント
枝葉集積
伐 根
積 込 運 搬
積 込 運 搬
伐根 枝葉
台作土捨場 枝葉集積 枝葉 積 込 運 搬
巻立・検尺
集 積 巻 立
枝葉 伐根
堆肥化 木材破砕工 木材
チップ 堆肥化 売 却
売 却
有価材として 有効利用
法面保護工 緑化基盤材として再生利用
跡地整備工 土壌基盤材として再生利用 緑化基盤材
土壌改良材
伐木処理工
法面保護工
跡地整備工
本体工事対象外 用材
パルプ材
型枠材他 集 積 運 搬 破 砕
チップ化総量 4,000m3
キーワード ゼロエミッション、伐木,チップ化、自然堆肥化、脱水ケーキ
連絡先 〒017‑0201 秋田県鹿角郡小坂町小坂字上谷地 25‑1 砂子沢ダム本体工事JV(事) 0186‑30‑7552 写真-1 チップ化状況
図-1 現場発生木材処理フロー
写真-2 土壌改良材施工状況
6-232 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)
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2−2 脱水ケーキ処理
濁水処理の副産物として発生する脱水ケーキは、湛水池内上流の流木運搬路(湛水池内の流木を場外に搬出 用、湛水池内点検船舶運搬用道路)の盛土材として利用した。脱水ケーキには、改良材として高炉セメントを 混合攪拌(40kg/m3)し、ブルドーザ(15t級)で敷均し転圧、雨水等が溜まらないよう小型振動ローラで 表面を平滑に仕上げた。改良、盛り立て数量は全体で約 47,000m3である。
2−3 コンクリート破砕
ダム基礎岩盤保護モルタル吹付(厚さ 5cm)、コンクリート試験の残コン、強度試験供試体、仮設備基礎コ ンクリートは、40mm程度に破砕し場内仮設道路の路盤材や盛土材などに利用している。破砕機はバックホウ 0.7m3級に破砕用アタッチメントを取り付けたものを採用した。
2−4 グリーンカットズリ処理
堤体コンクリート打継面で発生するグリーンカットズリ は、脱水ケーキと同様に流木運搬路盛土材として利用する 計画であった。ただし、六価クロム溶出試験を行った結果 若干ではあるが基準値をオーバーした。(基準値 0.05mg/ℓ に対し 0.06mg/ℓ 程度)そこで集積されたグリーンカット ズリに同量程度の水を加え攪拌を行ったところ 0.02mg/ℓ 程度まで六価クロムが低減されることを確認することが できた。しかしこのままでは打継面処理工程に洗浄作業が 加わり、コンクリート打設工程の遅れが懸念された。その ため本体打設機械であるタイヤショベルに写真‑5 のような
脱着式洗浄装置を取り付け作業効率の向上をはかった。洗浄作業は堤体上での打継面作業の中で実施でき、洗 浄水は既存の排水設備を用いて堤体濁水プラントで処理した。
洗浄後のグリーンカットズリは場内で仮置き水切りを行った後、六価クロム溶出試験を実施し基準値以下で あることを確認後に盛土材として利用した。グリーンカットズリ盛土材の総量は約 600m3である。
3. むすび
ゼロエミッションへ向けた活動は発注者と施工業者が協力して取り組んでいかなければ達成することは困 難である。平成 19 年度に堤体コンクリートの打設、伐木材のチップ化をすべて完了した。工事終盤となる平 成 20、21 年度は跡地整備工など本活動の締めくくる重要な年であり、砂子沢ダム建設工事関係者全員で、さ らなる環境保全向けて努力していく所存である。
写真-3 脱水ケーキ改良状況 写真-4 コンクリート破砕状況
写真-5 グリーンカット洗浄設備
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