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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

【論文の課題】

本論文は、現代日本女性の社会的地位を測定し、女性が社会階層とその再生産をどのよう に経験しているかを記述することを目的として、量的社会調査データを用いて実証研究を 行なった論文である。まず、日本における実証研究として、1985 年以降の「社会階層と社 会移動調査(通称:SSM調査)データ」を用いた分析を中心に、女性の社会的地位が階層研 究においてどのように扱われてきたかを明らかにした。そしてジェンダーに関する主要な テーマとしては、(1) 地位達成過程とライフコース、(2) 階層帰属意識の決定要因、(3) 移 動表・階級分析、(4) 意識と文化、(5) 家族と社会階層が扱われてきたを示した。それぞれ の分野で、実証研究は、階層研究が女性を研究対象として含めることの困難に様々な形で対 処しようとしてきたことを確認した。

その上で、女性の社会的地位をどのように測定するべきかを考察し、測定のための具体的 な方針を示した。社会的地位の測度として職業的地位と所得が、社会的地位の単位として個 人と世帯が、それぞれ重要であることを示し、個人単位の職業的地位と世帯単位の生活水準 という2つの側面によって社会的地位を捉えることが妥当であることを示した。さらに、女 性個人の職業的地位の測度として、個人所得を中心的に扱いながら、職種と従業上の地位を 合わせた職業分類も用いるという方針を示した。

SSM調査および日本版総合社会調査(通称:JGSS調査)データを詳細に、かつ時系列的に 分析した結果、女性の階層再生産の今後について、まず、大きな貧困リスクを持った未婚女 性が増えていくことが予想された。未婚女性の二極化が起きるか、未婚女性と貧困の結びつ きが強固になるかは、労働市場における女性の地位の変化に依ると考えられる。女性の職業 的地位について、育児休業制度の実質化が重要であるが、それが女性の職業的地位の上昇に つながるかどうか、様々な層の女性の動向を注視していく必要がある。複合的不平等の解明 のために取り組むべき課題として、第一に将来の日本社会における男女の階層再生産を捉 えること、第二に階層とジェンダーによる複合的不平等の、他の属性による不平等と比較し た場合の特徴を捉えることが挙げられた。

【論文の構成】

本研究は、以下のような章・節で構成されている。

はじめに

第1章 日本の社会階層研究における女性 1. SSM調査の変遷

2. 地位達成過程とライフコース 2.1 オーソドックスな地位達成過程分析

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2.2 ライフコースの分析

2.3 労働市場における女性の位置の特徴

2.4 ライフコース研究と地位達成過程研究の関連 3. 階層帰属意識の決定要因

4. 移動表・階級分析 5. 意識と文化 6. 家族と社会階層

7. 女性を研究に取り込むこととその問題点

第2章 社会的地位の2側面とその測定 1. 社会的地位の測度

2. 社会的地位の単位

3. 個人の職業的地位と世帯の生活水準 4. 個人の職業的地位の測定をめぐって 4.1 従業上の地位

4.2 個人所得

第3章 個人の職業的地位の再生産 1926 - 1985年生女性 1. データ

2. 変数 3. 分析

4. 婚姻状況別の分析に向けて

第4章 既婚女性が経験する階層再生産 1. データの概要

2. 分析結果

2.1 個人の職業的地位についての分析 2.2 世帯の生活水準についての分析 3. 既婚女性の経験する階層再生産の特徴

第5章 女性未婚者の職業的地位の特徴 1. 研究背景

1.1 問題関心

1.2 未婚者の社会階層についての先行研究 2. データと変数

2.1 SSM調査における未婚者

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2.2 データと変数 2.3 記述統計 3. 分析

3.1 イベントヒストリー分析 3.2 40歳時未婚者の職業的地位 4. 考察

5. SSM調査に見る女性の階層再生産

第6章 社会的地位の2側面と社会意識 1. 問題意識

2. データと変数 3. 記述統計 4. 分析

4.1 分析(1) 個人所得と夫妻所得、その関連の違い

4.2 分析(2) 個人所得・夫妻所得との関連の年齢層による違い 5. まとめと考察

第7章 変化の可能性――若年女性は地位の変化をどう受け止めているか 1. 問題意識

1.1 ライフイベントと女性の就業 1.2 生活満足度

1.3 パネル調査データを用いる意義 1.4 分析の方針

2. データと変数 2.1 データ 2.2 変数 3. 分析 3.1 記述統計

3.2 分析(1) 就業状況と結婚・出産の生活満足度への影響 3.3 分析(2) 婚姻状況別の分析

3.4 分析(3) 結婚継続年数と生活満足度 3.5 分析(4) ワーク・ライフ・バランスの影響 4. 考察

第8章 階層とジェンダー、その複合的不平等の解明に向けて――女性の社会階層のこれか ら

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1. まとめ

2. 現代日本社会における女性の階層再生産

3. 課題――階層とジェンダーによる複合的不平等の解明

補章 職業的地位とジェンダー――職業威信スコアはジェンダー中立的か 参考文献

【論文の要旨】

以下では、本研究の要旨を章ごとに提示する。

1章では、日本における実証研究、1985年以降のSSM調査データを用いた分析を中心に、

女性の社会的地位が階層研究においてどのように扱われてきたかを明らかにした。ジェン ダーに関する主要なテーマとしては、(1) 地位達成過程とライフコース、(2) 階層帰属意 識の決定要因、(3) 移動表・階級分析、(4) 意識と文化、(5) 家族と社会階層が扱われてき た。それぞれの分野で、実証研究は、階層研究が女性を研究対象として含めることの困難に 様々な形で対処しようとしてきたことを示した。

2章では、女性の社会的地位をどのように測定するべきかを考察し、測定のための具体的 な方針を示した。先行研究を踏まえ、女性の社会的地位の測定法のうち、その測度と単位に それぞれ考察を加えた。社会的地位の測度として職業的地位と所得が、社会的地位の単位と して個人と世帯が、それぞれ重要であることを示し、個人単位の職業的地位と世帯単位の生 活水準という 2 つの側面によって社会的地位を捉えることが妥当であることを示した。ま た、女性個人の職業的地位の測度として、個人所得を中心的に扱いながら、職種と従業上の 地位を合わせた職業分類も用いるという方針を示した。

3章においては、まず、社会的地位の2側面について、SSM調査データを用いて女性にお ける階層再生産の状況を記述するため、分析のための変数を構成した。また、2側面のうち 個人の職業的地位について、1985年から2015年までのSSM調査データを用いて出身階層と の関連の分析を行って概要を示した。分析によって、女性の社会的地位の2側面に対する両 親の出身階層変数それぞれの重要性、婚姻状況の影響の大きさが示された。

4章においては、1985年から2015年までのSSM調査データを用いて、戦後日本社会の既 婚女性が経験してきた階層再生産を実証的に記述した。分析の結果示された、既婚女性の経 験してきた階層再生産の特徴は、第一に、両親の職業がともに到達階層の2側面、個人の職 業的地位および世帯の生活水準に関連していること、第二に、父親はホワイトカラーである か否か、母親は非正規雇用を除く専門職であるか否かが女性の出身階層として重要である こと、第三に、出身階層の影響は、到達階層が個人の職業的地位である場合と世帯の生活水 準である場合に多少の違いがあることである。両親の職業的地位の効果が重なることによ って既婚女性は出身階層の強い影響を、個人の職業的地位と世帯の生活水準、それぞれに対 して受けていると考えられた。既婚女性が経験する階層再生産は深刻であるにもかかわら

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ず、明示されにくく問題化されにくかったと考えられた。

5章においては、増加し続ける未婚者について、1985年から2015年までのSSM調査デー タを用いて、その階層的特徴の変遷を明らかにした。初婚に対するイベントヒストリー分析 の結果、女性未婚者は近年にいたって男性未婚者と同様、低階層、とくに不安定雇用と結び つくように変化したと考えられる。また、40 歳時未婚者の分析によって、未婚者、とくに 未婚女性の貧困リスクがさらに大きくなることが推測された。ただし、未婚女性については、

フルタイムであれば困窮しないだけの所得を得る可能性はかつてより開けていると考えら れた。

4 章および5章の分析によって、女性の階層再生産について、以下のことが考えられた。

第一に、婚姻状況と初期キャリアの影響で、全般的に女性個人の職業的地位が低く抑えられ ている。第二に、出身階層は結婚との関連を考え合わせても、女性個人の職業的地位の達成 に有利に働いており、世帯の生活水準も視野に入れた女性の到達階層に対しても、基本的に は有利に働いていると見られる。

6章では、日本版総合社会調査(JGSS)データを用いて、既婚女性の個人の職業的地位お よび世帯の生活水準と社会意識・行動との関連、そのコーホートによる変化を記述した。分 析の結果、第一に、社会的地位の2側面は社会意識や行動との関連の様相が異なっているこ と、第二に、若い年齢層において個人の職業的地位および世帯の生活水準と社会意識・行動 の関連が強まっている傾向が見られた。このことから、とくに女性において日常生活におけ る社会階層の重要性が高まっていると考えられた。

7章においては、若年男女における婚姻状況と職業的地位の変動と生活満足度の変動との 関連を比較した。分析の結果、既婚女性において正規雇用への移行が生活満足度を低下させ ること、ワーク・ライフ・バランスの高い職場であっても既婚女性において無職から有職に 移行することが生活満足度を高めるとは言えないことなどが示された。最近年においても、

既婚女性にとっては個人の職業的地位が必ずしも主観的幸福に結びつかないことが考えら れ、有業の既婚女性にとって賃労働と家庭内のケア労働の二重負担が厳しいことが推測さ れた。

8章では、前章までの結果をまとめ、得られた知見を階層とジェンダーによって生み出さ れる複合的不平等の解明にいかにしてつなげることが可能か論じた。女性の階層再生産の 今後について、まず、大きな貧困リスクを持った未婚女性が増えていくことが予想された。

未婚女性の二極化が起きるか、未婚女性と貧困の結びつきが強固になるかは、労働市場にお ける女性の地位の変化に依ると考えられる。女性の職業的地位について、育児休業制度の実 質化が重要であるが、それが女性の職業的地位の上昇につながるかどうか、様々な層の女性 の動向を注視していく必要がある。複合的不平等の解明のために取り組むべき課題として、

第一に将来の日本社会における男女の階層再生産を捉えること、第二に階層とジェンダー による複合的不平等の、他の属性による不平等と比較した場合の特徴を捉えることが挙げ られた。

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補章では、階層構造そのものがジェンダー化されていることについての実証分析として、

2012 年に行われた社会調査データを用いて、職業威信スコアのジェンダー中立性について の分析を行った。分析結果から、第一に、職業の性別構成と評定対象のジェンダーによる職 業威信スコアの差との間に関連が見られること、第二に男性(女性)は男性(女性)を高く 評定するという「身内びいき」的効果があること、第三に、高学歴と年齢が高いことが評定 におけるジェンダー・ステレオタイプの影響を弱めることが示された。こうした研究は階層 とジェンダーの結びつきを読み解く重要な糸口となると考えられる。

【審査結果】

この論文は、現代日本女性の社会的地位を測定し、女性が社会階層とその再生産をどの ように経験しているかを記述することを目的としている。これを実証的に解明するため に、非常に詳細な分析を行っている。複数のデータを時系列的に分析し、複数のモデルを 用いた分析から導かれた結論には、かなりの説得力がある。

まず、筆者の分析能力の充実性が指摘されるであろう。これに伴い、仮設設定の堅実 性、分析手法の適切なこと、結果の解釈の妥当性といった、実証研究には欠かせない能力 を筆者は持ち合わせている。さらに、この論文は問題設定、先行研究の整理、分析枠組 み、分析そのものとその妥当性、結果の提示とその解釈、そして結論まで、すべての段階 において完成度が高い。各段階での議論が論理的に展開され、結論に至るまでのプロセス が明確である。そしてその結論は、政策提言まで結び付けられるであろう、社会学にとっ ては重要な貢献に値する。

この博士論文の公開審査は、2019年9月10日(火)13時から開催された。そこで指摘 された点がいくつかあった。まず、制度的な要因も関わってくるはずなので、それも考慮 した方が良い。それに対し、申請者は今後の課題であるとしている。申請者の質疑応答 は、的確かつ端的で、今後の展望についても真摯に受けとめた上で議論を交わすことがで きており、申請者がひとりの実証研究者として高度な知識を備えていることが明らかにな った。また、男性と女性で階層を規定する空間(要因)が異なるのではないか、といった 意見もあった。階層研究そのものに対する議論展開を促す意味で、参加者全員にとって有 意義な機会となった。

以上のような評価に基づき、審査委員一同、一致して、脇田彩に博士(社会学)の学位 を授与することが極めて適切だと判断した。

参照

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